水瀬名雪SSfrom Kanon

How many strawberry sundaes

written by YOU

「遅い・・・」

祐一はそう呟くと腕時計に目をやった。
駅前の広場での待ち合わせ。しかし、待ち人の姿は見えない。
予定の時刻をもう30分も過ぎている。
普通なら、待ち人の安否を心配するところなのかもしれないが、

(名雪だしな・・・)

この一言で済まされてしまう。
別に、いつぞやのように雪が降っているわけではないので、待っていても苦にはならない。
柔らかな陽光が、ここにも春があることを、そして、春が訪れようとしていることを教えてくれる。
祐一は、ベンチの背もたれに体を預けると、そのまま空を見上げた。
微かに霞んでこそいるものの、よく晴れた青空が広がっている。
適当に散らばった雲がゆっくりと風に流されて行く様は見ていて何となく心地よい。

ふと、祐一に影がかかる。

「ごめん、祐一」

その声に祐一は視線を元に戻した。
目の前には、顔の前で手を合わせて謝っている名雪の姿があった。

「マイナス3個」

そう言って指を3本立てる。

「え〜っ。せめてマイナス2個だよ」

名雪は不満げにそう言うと自分の胸の前で指を2本立てる。

「前に俺が5分遅れてプラス2個だったぞ」

「だから今日も2個だよ」

「今日は35分遅刻だ」

「1分でも35分でも遅刻は遅刻だから一緒だよ」

そう笑顔で言いきる名雪。
それに祐一は脱力感を覚えてしまう。
が、ここで妥協するわけにはいかない。なにしろ生活?がかかっているのだ。

「待つ方の身にもなれ!」

気を取りなおして祐一。
と、名雪は急に表情を翳らせて・・・

「私は7年待ったよ・・・」

「う・・・」

「でも7個で許してあげたよ」

表情一転。にこっと笑う名雪。

「・・・それを言うのは反則だろ」

うめくように祐一が言うが、名雪の耳には届いていない。

「だからマイナス2個なんだよ」

そう言うと再び名雪は指を2本立てた。

「わかったよ」

仕方なく負けを認める。あの話をだされては反論のしようがない。

「うん」

名雪はそれを聞いて嬉しそうに微笑んだ。

「で、これで何個だ?」

という祐一の問いに、

「えっと・・・」

名雪は指を折って数え出す。
ひとしきり、指を折った後、

「多分16個だよ」

そう言ってまた微笑む。

「そんなにあるのか?」

ちょっとぎょっとしながら祐一。

「うん」

名雪がやはり嬉しそうに頷く。

「昨日食った1個は引いたか?」

「うん。でも、宿題写させてあげてプラス2個だよ」

「俺、そんなに金無いぞ・・・」

「いいよ、ある時で・・・だって・・・」

そう言いながら、ベンチに座ったままの祐一の腕をとる。

「祐一はずっとこの街に居るんだから」

その声と共に、祐一の腕を引っ張った。
仕方なく祐一が立ちあがる。

「行こっ! 映画、始まっちゃうよ」

名雪はそう言って祐一を引っ張るように歩きだした。

「もうとっくに始まってるよ」

「じゃあ、それまでイチゴサンデー食べに行こうよ。そしたら15個になるよ」

「おごって減らしても意味無いじゃないか」

「借金は少ない方がいいよ」

「借イチゴサンデーだ」

憮然として祐一が言うが、案の定、名雪の答えはずれている。

「今日は2個食べようかな」

そう言って笑う名雪を見ると、祐一はそれ以上何も言えなくなった。

「ああ、もう。1個でも、2個でも、・・・16個でも好きなだけ食え」

「うん」

桜のつぼみが膨らみ始めていた。
長い冬の後の、遅い春の訪れだった。




後書き

KanonSSの第1作です。。めちゃくちゃ短いです。
やっぱり、初めてのSSは好きなキャラからということで、名雪SSです。
ちょっと、名雪の性格が違う気もしますが・・・お見逃しを(^^;
先ほど気づきましたが、好きなキャラ「みなせ」つながりだ(笑)
他には、佐裕理に栞が好きです。

この作品は、カザンさんのサイトの趣旨替えに伴い、じろ〜さんのご好意により
こちらに置かせていただくことになりました。
掲載サイト変更に伴い、若干の修正を加えています。

拙作に最後までお付き合い頂きありがとうございました。
では〜☆

YOU@YOU's SS Library


 戻る

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!