◆ マリアナ沖海戦3 ◆

 ◆ 米軍の追撃 ◆

 6月19日 夕刻になっても攻撃の成果が判然としないため、
 1710 小沢長官はひとまず全軍に北上を命じ、翌日の決戦再興を期することにした。
 6月20日 補給部隊と合同、1119 油槽船から補給開始が下令された。
 この日は早朝から索敵機を発進させていたが米機動部隊を発見できなかった。
 しかし基地索敵機から敵発見の報があり、西方へ艦隊は退避を開始した。
 午後になって発進した索敵機は1615 敵機動部隊発見を通報、
 また敵信傍受によって米機が我が艦隊の動静を米機動部隊に報告していることがわかり、
 敵艦隊の追尾が明らかとなった。

 1725 薄暮雷撃のため1航戦から7機の天山雷撃機が発進したが目標を発見できず、
 未帰還3、不時着水4で全機喪失した。
 同発艦直後に敵機216機(日本側の把握では150機)が来襲、
 機動部隊の迎撃機は44機で、自爆、不時着水を含めて25機を失った。
 艦船の被害は、「飛鷹」沈没、補給部隊の「玄洋丸」「清洋丸」が被爆後航行不能となり、
 味方駆逐艦により処分自沈した。
 「隼鷹」「瑞鶴」「千代田」「榛名」「摩耶」も直撃弾で損傷したが航行に支障はなかった。
 この攻撃は急降下爆撃が主力で雷撃が少なかったために機動部隊の被害は少なく、
 加えて上空直援機はベテランが多く、敵機に対し互角に戦っていた。

 これより先、薄暮航空攻撃に呼応して遊撃部隊による夜戦命令が下り、速力24ノットで
 東進を開始したが目標を捕捉できず、小沢長官は「夜戦の見込みなければ西方に退避せよ」と命令
 栗田第2艦隊長官も「敵情不明、夜戦の見込みなし」として2105 反転を命じた。
 残存母艦機数は「一航戦」7機、「二航戦」33機、「三航戦」21機、計61機に過ぎず、
 敗戦は既に明らかとなっていた。

 なお米側の損害は戦闘機6、急降下爆撃10、雷撃4 計20機が撃墜。
 さらに攻撃終了が夜間となったため、着艦に失敗する機が続出、80機が喪失、
 計209名の事故搭乗員中49名が死亡した。

 
 ◆ 米軍の反省 ◆

 米艦隊はその勝利にもかかわらず、作戦が消極的であったということで、
 最高指揮官スプルーアンスは部内の不評を買った。
 部下のクラーク提督は「世紀のチャンスを逸した」と悔しがり、モンゴメリー提督は
 「この結果はすべての者にとって著しく失望すべきものであった」と嘆いた。
 さらに真珠湾の米海軍航空本部は「航空専門家でない者を空母部隊の指揮官にしたからだ」と非難した。

 まさに南雲中将に対する真珠湾第2撃問題やミッドウエーの批判と同じである。
 しかしスプルーアンスはサイパン全作戦の最高指揮官であったから、ニミッツの要請である。
 サイパンの上陸作戦援護に重点を置いたのであって危険なギャンブルを賭すことはできなかったのである。

 
 ◆ むすび ◆

 マリアナ沖海戦における敗北、「あ」号作戦の失敗は、海軍ひいては日本の戦争指導に大きな影響を及ぼした。
 海軍はこの作戦に聯合艦隊のほぼ全兵力を投入、更には多くの内地部隊をも動員、即ち帝国海軍の
 ほとんど全力をあげての決戦であった。
 この敗北により機動部隊は三隻の空母(うちニ隻は正規空母)と艦載機・搭乗員の大部を失い、
 機動部隊としての戦力を喪失、再起不能となった。
 海軍としては連合軍の急速な進攻に対して当分の間反撃戦力を有しない状況となった。
 この敗戦は、制海権の喪失=マリアナ諸島及びビアク島の失墜を意味し、
 戦略的に日本を著しく不利な状況にたち至らしめた。

 海軍は「あ」号作戦に相当の自信を持って臨んでおり、
 陸軍もマリアナ諸島、特にサイパン島の防衛には相当確信を表明していた。
 しかし結果的にマリアナ沖海戦は完敗に終わり、サイパン島の陸上戦も戦況が悪化していた。
 「あ」号作戦の失敗が日本の政府、大本営に与えた衝撃はきわめて大きく、
 これが直接の原因となって東條内閣は総辞職、小磯内閣が成立するに至ったのである。

 本作戦の敗因については、

 1) 十分な作戦準備が不可能であった
 2) 圧倒的な兵力差
 3) 彼我の兵器、術力の相違

 などで、さらに具体的には

 1) 我が空軍の練度が低かった
 2) 米側の艦艇と航空機に電探が完備されていた
 3) 優秀なF6F「ヘルキャット」が待ち伏せていた
 4) 対空砲火にVT信管(ドップラー効果を利用した近接触発の電子信管、計算上目標が50倍となる)が使用されていた

 などが揚げられる。
 またアウトレンジ戦法について戦後いくつかの批判が生まれたが、
 小沢長官は搭乗員の練度の実状を認識し、劣勢な兵力で勝つ手段はこれ以外にないと確信したためで
 「死中に活を求めた」戦法であったものと思われる。

 戦闘の要訣は「先制」と「集中」にある。寡をもって衆と戦う場合は尚更であろう。

 
 ◆ 戦果と損害 ◆

  日 本 軍 米  軍
  参加 喪失 損傷 参加 喪失 損傷
 正規空母  5  2    7    1
 軽空母  4  1    8    1
  戦艦  5    1  7    2
  重巡 11    1  8    1
  軽巡  3     12    
  駆逐 28    1 65    
             
  母艦機 482 426   956 130  
 基地航空 240?  50        
  搭乗員   445      76  


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