主人公「赤碕翔」のモノローグです。
役得なのか、文章は質、量ともに圧倒的。芸術の域に達しています。
冗談にしか見えねえが……
シナリオライターは本気のようさ……
ゲーム界の極北に燦然と輝くモノローグを、ここに一挙掲載!
……夢を見てたんだ……
俺は炎の中を走ってた
どこまでも……
熱さも感じねえ
……出口のない道を……
……走り続けて……
……朝なんてこなけりゃいい……
……そんなことを
願ってたんだ……
沢木の事故が起きたのは
現実のことだった……
醒めちまった夜の現実に
……俺たちは……
……戻された………
一人の走り屋の……
いないこの夜に……
コーナーにかかる重力……
重くてステアもまともに切れやしねえ
……重いのは、生命……
つなぎとめるのも
手放すのも……
……生命の重力……
気付いてなかったわけじゃないけど
俺たちは、そんなもんまで乗せて
走ってる……
−−−−−−−−−−−−−−−−−
………俺の感情………
自分でもぼんやりとしか
つかめねえ…この想い
ぶつけられるとしたら
ただひとりさ……
……藤沢先輩……
この街のどこかで……
今夜も走ってる
−−−−−−−−−−−−−−−−−
忘れられる……
走ってさえいれば……
いらだちにも似た焦燥感………
誰もが、まぎらわせてた
鋭角に刻む……
えぐるように回るエンジンの咆哮の中に……
−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここで鈴木がさらわれた……
あの夜から
歯車が狂っちまった
RevengeNight……
復讐のレース……
いまは…どこにぶつけたらいい?
糸がぷっつり切れちまった
俺たちの思いを……
どこかにつながってた……
ただ感じるままに走る……
それだけなのかもしれねえけど
俺たちは…………
たったひとつのことを……
おいかけてたんだ……
−−−−−−−−−−−−−−−−−
ひんまがっちまった
ガードレールのようさ……
……今の俺たちは……
沢木のSil-14Qのガラス片……
ふみにじる靴……
そうさ……あれは
夢のかけらさ……
スピードに賭けた
沢木の……
俺たちの……
……夢のかけら……
……俺たち、走り屋の……
……誰もが持ってる夢……
『……なあ、オレたちはよう!
速くなりてえ
それだけで走ってる……
……自分より速いやつにあこがれて
いつかよう、そいつより
速くなれればそれでいい……
……負けたら負けたで
ガキの喧嘩みたいに
笑いあってよう……』
そうさ……沢木……
走るのは、簡単なことだって
思ってたよな……
−−−−−−−−−−−−−−−−−
沢木の事故ったコーナー……
BLTowerのサーチライトが
照らしてる……
いつもと変わらず……
虚しい光に
何の意味なんてありゃしねえ
……街の神話ってやつさ……
このタワーが着工停止になったのには
理由があるっていう……
沢木の事故が……
この街の大多数の人間にとって
そうであるように……
とるにたらない理由なんて
覚えちゃいられねえのさ
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「沢木の事故ったコーナー……
BLTowerのサーチライトが
照らしてる
いつもと変わらず虚しい光に
何の意味なんてありゃしねえ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−
昨日はここで海を見てた……
偽りの街なら
壊れちまえばいい
……昨日の海も……
昨日の……夜も……
海に揺れる……
虚構の現実だとしたなら……
壊すのは
簡単なことだったはずさ……
「………暗い海に
俺の言葉は吸い込まれて
消えちまう……
そうさ……
海はなにもかも飲み込んで
返るものはない
だけど……
それが海の優しさってやつ
なのかもしれねえ
今夜は、特に
そんな風に思えるのさ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−
…………昨日の夜…………
……この外国人墓地の辺りに……
……石川たちの車が停まってた……
…あいつらはこんな風に言ってた…
石川弟
「うまくいったのかよ?」
石川兄
「レディ・ゴーだぜ
まかせとけって
アイツは、単純
熱血バカだからな……
今夜のリベンジレースは
ショータイムになるぜ……」
石川の言った言葉……
今度は茶番なんかじゃなかった
俺に聞かせるために……
俺が近づいているのを
知りながら……
あいつは言った……
……『ショータイム』……
……意味のない言葉なのか……
あいつのSHOWの観客になるのは
まっぴらさ
踊らされる……
道化になるのも
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「JOHNNY’Sの三原……
無料の笑顔も今夜は
オーダーストップさ
店の雰囲気が暗いのは
照明のせいじゃない
笑顔の値打ちも
それなりにあるってことか……」
−−−−−−−−−−−−−−−−−
HARVORVIEW PARK……
俺がBayLagoonRACINGに入るって決めた時
藤沢先輩が話してくれたことがある
藤沢
「走りを追うことは
いつだって死を意識する
そういうことだ
だけど……それを……
走りの恐怖を……
忘れることもな、あるんだ
スピードの中に自分が消えちまって
どこまでもいける……そんな気になる
シグナルRED……
夜の闇にぼんやりと明滅する
赤い光…………
そんなとき、オレは……
HARVORVIEW PARKに来て
高速の車の流れを見つめるんだ
高速に列をなす光の中に
……オレが走ってる……
そんな気がしたら、オレは
……また走り出す……」
藤沢先輩でも走りをこわいなんて
思うことがあるのか……
……オレは漠然とそんな風に思ったんだ……
(原文まま)
−−−−−−−−−−−−−−−−−
……そうさ……
俺は……
何も言えなかった
……藤沢先輩の
でっけえ背中……
シートにこすれて
すりきれちまった
BLRの皮ジャン……
……どこまでも
行けるところまで……
追いかけて、走る……
追いつけるかなんて
わからねえ……
それに意味があるかなんて
わからねえさ……
誰にもな……
だけど………………
……たったひとつ
わかったことがある……
……走るのに……
理由なんていらねえんだ
そんなもんはあとから
ついてくる……
それだけで十分さ……
……どこかでエンジンの音が
聞こえてた……
俺の身体のどこか奥深くで……
静かに脈打ってる……
鼓動の音に混じりながら……
…………確かに…………
聞こえた気がするんだ……
−−−−−−−−−−−−−−−−−