モノローグ5th

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主人公「赤碕翔」のモノローグです。
役得なのか、文章は質、量ともに圧倒的。芸術の域に達しています。

冗談にしか見えねえが……
シナリオライターは本気のようさ……

ゲーム界の極北に燦然と輝くモノローグを、ここに一挙掲載!




……夢を見てたんだ……

……何度も見たことがある
仄暗い海の底の夢……

……深く暗い海の底に
光り輝く星のかけらが
眠ってる……

俺は……静かな波の層に
包まれて眠ってる……

光の明滅が
俺のまぶたを…意識を……
揺り動かす……

誰かの声が聞こえる……

……俺を呼ぶ誰かの声……

無意識の眠りから
解き放たれたかのように……

……海の底で
俺は独り……
ゆっくりと目を覚ます……

……そんな夢さ……

……だけど、現実は…………

−−−−−−−−−−−−−−−−−

山田からの携帯の呼び出し音が
俺の意識を呼び覚ました……

……山田の電話は
おびえた声で告げた……

……難馬さんの行動が
気になるんだって……

……昨日の夜と朝の狭間の時刻……

NightRACERSの石川と
難馬さんが…本牧埠頭で
落ちあったっていう……

遅い者同士……
山田と奇妙な連帯感で結ばれた
石川の弟からの情報……

……信憑性が
どこまであるのか
わからねえ……

難馬さんと石川を
結びつける点も線も……
何一つ思い浮かばねえ……

…………だけど…………

……『ショータイム』……

石川の言葉が
脳裏をかすめた……

難馬さん……石川と会ったのが
事実だとしたなら
なにをしてた……?

……危険な誘いさ……

なにかの罠にはまりこんだのか……
断れぬほどの甘美な罠……

……冗談じゃねえ……

難馬さんが……
そんな馬鹿なこと
あるはずねえ……

……いずれにしても、今夜…俺たちは
バトルをしなけりゃならないんだ……

……勝ち目のない戦い……

……そうさ……
俺たち誰にとっても……

−−−−−−−−−−−−−−−−−

NorthYOKOHAMA……
SpecialNight……

今夜、BLRの横浜GP代表が
決定する……

……特別な夜……

……俺は、徹底して
この街を走り込む……

……そう決めたんだ……

……見えない勝機を
少しでも近づけるために……

……DRIVING STREET……

……見知らぬ街を……
俺のものにするために……

−−−−−−−−−−−−−−−−−

SouthYOKOHAMA……
……今夜は、無用の街……

野暮用なら……
手早く済ませちまうのがいい

−−−−−−−−−−−−−−−−−

SPENCERの駐車場で
エンジンを暖めてた俺の前を
1台の車が駆け抜けてった

BLUEのSEVEN……
ナンバーは1969…

……………そうさ……………
難馬さんのSEVENだった

昨夜の石川との密会が
事実なのか、確かめるために
俺は、後を追いかけた

「難馬さん……
 どこへ向かって走ってるんだ……

 ただの練習走行なのか……?
 なぜ……俺を無視する……

 対抗心……
 それだけなのか?」

……難馬さんの走り……

勝負に……走りに……
追いつめられてるかのように
周りが見えてない……

どうしちまったんだ?
らしくない……

あせってる……?
それを俺に見せたくない……。
ただ、それだけなのか?

……確かめることもできずに
難馬さんのSEVENは
夜の闇にまぎれちまった……

−−−−−−−−−−−−−−−−−

高速入口のすぐ下の
板金屋ムラオカ……

……錆びちまった
ポンコツを蘇らせる音……

……今夜は、やけに熱心に響いてた……

(会話シーン)

……メカニックエンジニア?
 ……本気なのか……?
  ……あいつ……

……それぞれのRACEへの想い……

……ここにもひとつ……
……勝ち目のない戦い……

…………だけど…………

……賭けてみるのは
……俺たちの自由さ……

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難馬さんとは
会えもしない……
話もできない……

そのままの状態で、俺たちは
代表決定戦の時を迎えた

決戦場に遅れて
駆けつけた難馬さん……

いつもなら誰より先に
集合してる人なのに……

……難馬さんの目は
俺をうつろににらみつけてた

なにも聞くな、話すことはない。
そういう目をして
にらみつけてた…

あの視線……

…………俺は怖かった

−−−−−−−−−−−−−−−−−

カラカラだった……。
……俺も。
おそらく難馬さんも

藤沢先輩の声は
遠くに流れてた

俺たちは
声も出せなかったんだ

なに言ったって違う気がして
嘘になっちまう……
そんな気がしたんだ

−−−−−−−−−−−−−−−−−

勝負はあっけなくついちまった

奇蹟を夢見る時間は
永遠と思えるほど長くて
それが錯覚であると
わかってるけど……

トルクがあがっちまうんだ。
どこまでが限界かなんて
わからねえ

……本気で信じてるから……

裏切るわけねえ……。
そう思っちまう

だけど……
エンジンがいっちまえば
それが錯覚であったことに
気づくんだ

終わっちまったことが
否定しようのない
現実として押し寄せてくる

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難馬さんのSEVENは
GOALしてすぐにエンジンから
火を吐いて止まっちまったんだ

人がRACEに求めるものって
何なのか…………?

夢見る奇蹟と……
それがなくなっちまった後の
圧倒的な喪失感……

俺はたしかに
勝ったのかもしれねえ

だけど……
同時に失ってた

なにかがなくなっちまうんだ。
はじめから、それがあったのかも
わからねえけど……

−−−−−−−−−−−−−−−−−

走るってことは
繰り返しなのかもしれねえ

ちっぽけな奇蹟を信じて
どこまでも続く道がある

そうさ……

路上さ……俺は路上にいる。
行きつく先は、どこだか………
わかんねえ……

……まだ……
わかりゃしねえ……

……いまはまだ道の途上……

俺に……
走りきることができるのか…?

難馬さんの背中を見ながら
俺は、自分の姿を重ねてた

そうさ………
俺だって一緒さ

走りきれるかなんて
わかりゃしないんだ

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