主人公「赤碕翔」のモノローグです。
役得なのか、文章は質、量ともに圧倒的。芸術の域に達しています。
冗談にしか見えねえが……
シナリオライターは本気のようさ……
ゲーム界の極北に燦然と輝くモノローグを、ここに一挙掲載!
不思議と意識はしっかりとしている
アイツの【声】は聞こえない……
ここにいるのは
紛れもない俺自身だ
ただ……
時間の感覚が麻痺しはじめてた
いまが何時なのかもよくわからねえ
どこまでも走っていける……
そんな気がしてた
俺の中の【声】……
誰にも聞こえない【声】……
難馬さんや藤沢先輩にも
聞こえてたのかもしれない【声】
こいつの正体がわかるまでは
誰にも相談はできない
万一、乗り移られたりでもしたら
俺たちは……みんな……
……殺られちまう……
……『10年前の最速の男』……
……【声】は言った……
……箱根に行けば……
……なにかがわかる……
……俺に、あるてがかりは……
そんな不確かな予感……
それだけだった……
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SouthYOKOHAMA……
……俺たちのSTREET……
……この街ですべてがはじまった……
……疾走する俺たちの物語……
……俺がよく知ってるはずの街……
……だけど、今は……
……見知らぬ街角……
夜に包まれる幾多の人々……
幾千の行き交う車……
……交わされる声は聞こえてるのか?
……俺たちの心に届いているか……?
……走りに飢えたハイエナ……
……そうさ……
……それが……俺……
……本当の俺なんだ……
俺の中の【声】は言った……
『自分は10年前の最速の男だ』と
10年前の真実を知る者……
HAKONEにいる織田……
藤沢先輩は何も答えなかった。
……何かを隠してる……?
HAKONEにいけば
この【声】の手がかりがつかめる……
そんな気がする
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……BayLagoon最終コーナー……
沢木が事故ったコーナー……
そして、藤沢先輩も…………
沢木……おまえが事故った
あの時から……
はじまっていたのか……
……悪夢のような現実が……
まるで……
そうなるのが自然であるかのように
目に見えないちからに
引き寄せられるようにして……
Sil-14Qも……
RS2000tbも……
ステアはきれてった
藤沢先輩も……沢木も……
何かを覚悟するかのように
微動だにしてなかった
……恐怖を忘れたかのように……
高速域で抜き去る俺のウインドウ越し……
…………あまりに異様で…………
その瞬間だけは鮮明に覚えてる……
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……C1-ROADSTARS……
楠木蒲生……
『関東最速UNIT』……
TEAMの枠にとらわれない
最強の軍団……
集合場所は、HIGHWAY AREA
DAIKOKU P.A.
HIGHWAYが完全に開通した……
俺たちのAREAがすべて開放された
ってことさ
新しい走り屋が現れ……
生き残れなかった走り屋は
消えていく……
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いらだちげにステアを切った跡……
道に埋まるくらい深い
タイヤの轍が残されてる
かなりのマシンスペックの車が
この場所に停まってた……
おそらく、BLR……
……俺に……
挑戦するために
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山田に指摘されるまでもない……
事実は噂と相違ないからだ。
おそらくは…………
…………そうさ……
>昨日の事件に思いをめぐらす
…………仕方ねえ
昨日、俺は藤沢先輩と
走ってた……
そうさ…………
あの時走ってたのは
確かに俺だった……
藤沢先輩は……
俺の目の前で事故ったんだ
だが、その後……
……俺はどうした?
……事故の後だけじゃない……
自己の前の俺の行動は………?
覚えてるのは……
断片でしかない
そうさ…………
沢木の事故の時も同じ…
俺には断片の記憶しかない
……事故の前後……
……俺の見た情景……
……俺のとった行動……
……俺にわいた感情……
何一つ、確かなものはない……
冗談じゃねえ……!!
俺は俺自身の気持ちさえも
満足にわかっちゃいないんだ……
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俺の車を見て逃げ出した…………
名もなき走り屋…アイツらにとって
俺は避けて通りたいような存在……
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元町Queen'sのメンバーも
随分減ってるようだ
北横浜への道が開通した時の
Queen's大移動……
あの頃の半分もいない
CHINATOWNを夜毎訪れてた
走り屋たちは、DRAG RACEに
飽きちまったのか…………
HIGHWAY AREAの
DAIKOKU JIMCARNAに
流れてるって話だ
走りのスタイルに流行があるように
RACEの人気にも流行り廃りがある
逆に言えば……流行に左右されない
真に速いヤツはいまもCHINATOWNに
残ってるってことさ
気分転換に走ってくか…………
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……俺は……
店を出るしか
なかったんだ
あいつらに……
なにを言ったところで
変わりはしない
真実をつかめるのは
俺一人さ
……たとえ、それが
覚めることない悪夢のはじまり
だったとしても……
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明かりの消えた部屋……
わかってる……
……当分、留守なんだ……。
藤沢先輩のマンション…………
ひとりには広すぎる部屋。
寝返りを打つ音の聞こえないベッド
そんな生活のひとつひとつが
あの部屋にいたら
押し寄せてくるのだろう
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重い沈黙だけが……
この部屋に満ちていた
なにひとつ……
言い出せなかった
たとえば、ここが無人島
だったとしても……
俺たちは……
……永遠に……
出会うことない
……そんな気がした……
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それから起きたことは……
不思議な出来事だった
……葵さんはなにかを
話し続けてる……
それが大事な話なのか……
苦しさをまぎらわせるための
どうでもいい話なのか……
俺の耳に葵さんの話は
聞こえてるのか……
聞こえてないのか……
絶えず、にごったフィルターの
向こうから聞こえるような【声】が
俺の聴覚を麻痺させてた
……冗談じゃねえ……
……これが【声】のすることなのか……
俺の代わりになにかを
コイツが聞いてるのか?
……俺にできたのは葵さんに
よけいな心配をかけないように
適当に相づちをうつこと…
………それだけだった
俺に聞こえた最後の一言
聞いていたふりをするだけでも……
楽になったのかもしれない
そうやって自分を納得させる
ふたりっきりの病院の屋上から
横浜の街が見えた
とめどなく広がってる夜の闇……
……点在する街の光……
俺の中の闇…絶望に抗しようとする
ちっちゃな光……それを希望と呼ぶのか
……かすかに震えるように光ってる
そうさ、こんな風に思ってたんだ……
……希望なんて言葉を使って……
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葵さんは俺に何を話そうとしたのか?
俺の中の【声】が邪魔をしなかったなら
俺にはなにかできたっていうのか?
……そうさ、葵さんの悲しみを癒すのに
必要なのは俺じゃない……
元気になった藤沢先輩が聞けばいい話……
きっと、これでよかったんだ
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……HIGHWAY AREA……
俺たちのLAST STREET……
『関東最速UNIT』……
走り屋の噂になってる
今夜、走行会が開かれる
このHIGHWAY AREAに
各チームの主要なメンバーが
ぞくぞくと集合している
DAIKOKU P.A
いまの俺を癒すのは
BATTLEの熱狂だけさ
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HASHIRIYA'S HOLYPLACE
織田は今夜も必ずこの場所に現れる
話を聞くためには……そうさ……
バトルに勝たなけりゃならねえ……
その時が来るまで、峠を走り込む
いまの俺にできるのはそれだけだ
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俺の目の前を2台の車が
通り過ぎてった
箱根の新旧の皇帝……
……虎口と織田……
何かを確かめあうように……
激しい走り……
……藤沢先輩の事故……
おそらく既知の事実……
怒りや諦めを認め
走りにぶつけてる?
……そんなんじゃない……
走ることでしか信じあえない……
自分の走りを信じることでしか
癒されない……
……走りを疑うこと……
それは世界の全否定……
これまで生きてきた人生の全てが
無しになっちまう
……事故った仲間……
自分の影を重ねながら
……走り続ける……
影を振り払いながら……
その道の先へ……
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HEAVEN'S HILL……
今夜はうわついた車も
停まることを拒んでる
そうさ……あいつらの走り……
誰をもよせつけない
永遠のバトル……
星だけが見てる
この宇宙……消えゆく過去の星……
……生まれ出る新星……
果てなき深淵…………
今夜……俺も……
あいつらと走る
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HASHIRIYA'S HOLYPLACE
虎口と織田……新旧の箱根の皇帝……
同じ思いを走りにぶつけてたのか
藤沢先輩の事故……
箱根にも伝わってる
この場所で俺を待ちぼうけてる。
……いつまでも……
そうさ…………
もう少しだけ……峠を走りこむ
>…………会わなけりゃならねえ
勝たなけりゃならねえ…あいつらに
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……10年前の真実……
『横浜最速伝説』を知る
当時の走り屋……
…………織田を探して
俺は走り屋の聖地を訪れた……
……藤沢先輩には言えない秘密……
こんなことになった今なら
聞かせてもらえる……
……そう思えたからさ……
………………だけど……
俺の前に現れたのは………………
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『………北へ………』
俺の中のアイツが満足げに
つぶやいてた……
…………北へ
アイツは俺の中で……
…………聞いてたんだ
ちがう……!!!
俺が……聞いてたんだ……
アイツの話すのを……
『おまえはオレだ』
『何の不思議もない』
冗談じゃねえ……
おまえは……?
【声】との会話
おい! 俺がここで
走るのをやめたなら
どうするんだ?
『……………………』
……他のヤツを探すのか?
俺に逃れる道はない……
おまえを止めなければ……
…………俺は……
おまえに……殺られる……
手のかかる野郎だな
……おまえは……