藤沢演説集

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チームBLRを束ねる藤沢先輩。
人心掌握術を極めた彼の演説は、聞く者の心を打ってやみません。
全国の管理職の皆さんも、これを読んでより強いリーダーシップを発揮してください。




これを見てくれ……

このかけら…
沢木のSil-14の事故現場で見つけた
テールランプの破片だ

もろくて小さい……

こわれちまって、はじめてわかる
ちっぽけなもんだ

オレたちのおいかけてるものも
このテールランプと同じ……
そんなものかもしれない

走りってやつも、な…………
きっと、ちっぽけなもんだ

だけどな…………

沢木は言ってたぜ…

オレたちには……
走りっきゃねえんだ……
ってな

乗せてるものは、たくさんあるぜ

命は賭けるもんじゃない
どうしようもなく
乗っかっちまうもんだ

乗っかっちまう重さに耐えられなければ
…………怖ければ…………
走るのはあきらめるしかない

誰よりも速くなるってことは
そういうことだ

挑むのも逃げ出すのも
オレたち次第……

いいか……今日、俺たちが
ここに集まったのは……

過去を振り返るため
なんかじゃない

明日の走りに……
誓うためだ……

…………お前たちも
噂に聞いたことがあるだろ?

………横浜GP………

「横浜GP」



横浜全市の公道を
クローズドサーキットとして使用する
世界にも類を見ない大規模な
公道GrandPrixRace



横浜地区の予選が今週末、開催される。


横浜GrandPrix!

オレたち走り屋が待ちに待った
世界初の公道グランプリレースだ

公道で走ってるオレたち
誰もが優勝するチャンスがある

どんなにちっぽけなチャンスでも
賭けてみる価値はある

……オレは降りないぜ……

スタートラインを踏み出さなければ
わからないことがきっとある

昨日、連絡があった……

悪いな……
オレは、予選免除でGP本選への出場権を
獲得することになった

オレたち、TEAMには
予選出場権が、あとひとつ
与えられてる……


山田
「あやまることないっス!
すごいじゃないスか!」


難馬
「チームからの残りの代表は
1名か…」


赤碕
「…………………」



横浜GP予選は1週間後だ

オレたち、BLRの代表者は
明日、横浜GPのメインコースとなる
NorthYOKOHAMAで
1度きりのレースで決める

走りの世界は非情なもんだ……
一度でも負けは負けだ……

……一度敗れたものが……
そのまま立ち直れないことだってある

だがな…
どのみち勝ちあがってかなければ
どんな奇跡もおきやしないんだ


難馬
「おれは異議はない
な、赤碕?」


赤碕
「…………ああ」


由佳
「ねっ!! みんな
走ろうよ!!
代表決定戦だからって
ぎくしゃくするのもなんだしさっ
ねっ!! そうしよ!!」



そうだな……
久しぶりに、TEAM走行としゃれこむか


山田
「横浜GP…………
(おれの人生最大の
チャンス)……」


由佳
「沢木クンのぶんまで
わたしたちが盛り上げなきゃ!!」


−−−−−−−−−−−−−−−−−

準備はいいな?

今夜は

ただのレースじゃないぜ

GOAL LINEの先にあるものは
オレたちの夢だ

横浜GP……
たしかな結果がついてくる

いままでは……
オレたち、誰もが子供だった

走るのに、精一杯でな。
買った負けたで
どうなるかなんて考えもしない

走りはじめれば
一瞬一瞬が襲ってくる

襲ってくる瞬間の積み重ねが
オレたちの走りになる……

よけいなことは
考えられない

だがな、シートで感じる
空気の密度がいつもと違うなら
それが……レースの重みだ

特別なレースの重さ……
今夜のようにな……

オレたちにそう何度も
チャンスは訪れない

……おそらくな
人生にチップを賭けるなら
いまがその時だ

その手につかんでこい……
本当のREWORDSを……

−−−−−−−−−−−−−−−−−

最速の彼方へ行ける……
……走り屋か……

赤碕……走りの世界には
ある一線を越えてる奴等がいる……

…………死線…………

……死への恐怖を厭わない走り屋……

人間の条件ってヤツがあるなら……

死を恐れる気持ちは
おそらく、そのひとつだ

死ぬことを恐れない者を
『人間』と呼べるかどうか……
……オレにはわからない

……そいつと走ってるとな……

引きずられる……
人間を越えた闇の世界に……

箱根の峠には……
そんな力をもった魔物が
棲んでるんだ……

「箱根に棲む……魔物……?」

……箱根の虎口美春……

箱根峠の皇帝の名を
継承する走り屋……

……オレが唯一完敗した男……

……あれは、2年前のバトルだった……

…………オレか虎口か…………
ふたりのうち、どちらかが……

……箱根の皇帝の名を継承する……

……1度きりの真剣勝負……

(藤沢の回想)

オレたちの勝負はそこまでだった。
……ブレーキをふんだのは
オレのほうだ

……あいつには見えてなかったんだ……

……道の先だけしか……

……まわりは関係ない……

……誰と走ろうと関係なかったんだ……

……このRACEの後……

……虎口は箱根の皇帝の名を継いだ……

…………そして…………

……オレは、峠を降りたんだ……

心配するな…………。
翔……

明日、オレたちは箱根に向かう。
山田と由佳には連絡済みだ……

それで満足だろ……?

オレは……もう一度……
虎口と走る……

それに……あとひとつ……

箱根には
オレの走りの師匠だった人がいる

10年前から走り屋だった……
オレに『横浜最速伝説』を教えた人だ

おまえたちの知りたいこと……
『横浜最速伝説』の真実……
なにか、わかるかもしれない

……遠征は……
なにより気分転換になる

オレたちには、傷ついちまった心の痛みを
癒やす時間が必要なんだ……

それに、翔……お前は
虎口の走りを知っておく必要が
あるしな

忘れるなよ……翔。
おまえもな……

最速の彼方へと行ける……
そんな種類の走り屋なんだ

−−−−−−−−−−−−−−−−−

楽になれる……
これで……

嫌な声も……
聞こえない……

赤碕
「嫌な声……!?」


……こわかった
走るのが……

どこにも…行けない
たどりつけない……

なにかに追われて
どこまでも逃げてる

終わらないぜ……

いつか誰かに
自分より速い誰かに…
抜かれるんじゃないか…

おびえてたぜ……

赤碕
「……先輩…」


夜通し、走り続けてた
朝日を見ると思い出しちまう
我にかえっちまう…

朝を繰り返すんだ
同じ朝を……

明日から逃げたかった……
……遠くへ……速くなれば
いける気がした…

…………それが…
オレの走りだ

……おまえは負け犬だ……

そんな声が……
聞こえるんだ……

……声から……
逃れられない……

難馬だけじゃない
オレにも……
聞こえてた……

難馬が死んだ
あの夜から………

声は……オレに……
乗り移った……

勝てるはずだ……信じてた
…勝てば終わる……
……声は言ったんだ

オレが終わらせなけりゃ……
…オレが戦わなけりゃ……

おまえたちを……
…守りたかった……

……ごめんな、翔……

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