1/f ゆらぎ


自律神経を調和し、活性化する“ゆらぎ”

 ”ゆらぎ”というのは何種類かに分類されますが、ここで言う“ゆらぎ”とは、揺れているということではありません。では“ゆらぎ”とは何か、その正体についてみてみます。

 “ゆらぎ”とは、温度、音量、密度、周波数、速度、濃淡、力などを測定して得る観測値に対して、その統計的に見た平均値の近くで変動する現象と定義されています。

 別の言い方をすれば、ある物理的な量や質が刻々変化する時、その量や質が平均的には一定の周期(間隔)を示しているように見えますが、正確に測定するとわずかなズレが出ていることがあります。その変化は微妙で人為的なものではなく、完全に予測できないような“ズレ”となっています。

 この予測できないような“ズレ”が“ゆらぎ”であり、自然界をはじめ、様々な場で観測されています。 たとえば、自然界の現象を見るとその全てに変化があり“ズレ”て、ゆらいでいます。 星の瞬きは決してコンピューターで測ったように等間隔ではありません。打ち寄せる海の波にも“ズレ”があります。小川のせせらぎ、そよぐ風、木漏れ日、鳥の鳴き声、白銀の世界でキラキラ光る陽光、かげろうなど、自然界の現象にはみな“ゆらぎ”を見ることができます。心地よく快適で、人々に安らぎや幸せを感じさせてくれる自然界の現象の中には“ゆらぎ”が満ちています。

 人間の生体リズムもまた“ゆらぎ”を伴っています。1分間に平均62回打つ心臓の鼓動(心拍リズムの間隔)や体温の変化、呼吸数にも、“ズレ”があります。脳が感知して指令を出すと、微弱な電気パルスが神経繊維(軸索)に次々と指令を伝えますが、その電気パルスにも、脳波(特にα波)にも“ゆらぎ”があることが検証されています。

 さらに人間の行為や人間が作ったものもみな“ゆらぎ”を持っています。手拍子にはメトロノームに見られない“ゆらぎ”がありますし、和太鼓の響きも同じです。話し言葉の中にも“ゆらぎ”があります。

 そのほか、水墨画や浮世絵、切り絵などの輪郭をはっきり持った絵。日本の伝統的な工芸品である織物や染物、漆器、陶磁器などの手作りで、美しいとか、懐かしさとか、温かさを感ずるものはすべて“ゆらぎ”を持っています。バッハやモーツアルト、ベートーヴェン、ビヴァルディー等の名曲や教会音楽、心に残る日本の歌なども“ゆらぎ”が多く見られます。

 このような自然界にあって人間に和みを与えてくれる“ゆらぎ”は“1/fゆらぎ”と呼ばれています。“ゆらぎ”の中で“1/fゆらぎ”が人間に心地よさや和みを与えてくれるのは、人間の生体リズムも“1/fゆらぎ”になっているからです。

 人間の生体リズムは、外界から五感に伝わってくる“ゆらぎ”の中で“1/fゆらぎ”を感知すると、それが生体リズムと共鳴し、共振します。人間が本来持っているリズムと同調するものは心地良さを呼び、交感神経を刺激し、自律神経を調和します。調和の取れた自律神経は血液の循環を よくし、気分を爽快にして活力を育ててくれます。


“1/fゆらぎ”

 “1/fゆらぎ”とは何かですが、f とはフリクエンシー(frequency=周波数、振動数)の頭文字の f です。 物理学では周波数や脳波に限らず、音、色、光などの変化をすべて波形のグラフに描くことができ、これを※「フーリエ変換」した値を両対数グラフ(関数グラフの一種)に図示し、その分布を見ることで変化を読むことができます。


 このグラフでパワーレベル(P)を縦軸に、周波数(F)を横軸に比例関数的にとり、測定した値を点で表示して“ゆらぎ”を見ます。

 “1/fゆらぎ”を図示すると、周波数が低い部分のパワーレベルが高く、高い周波数部分(右寄り)ではパワーレベルが低いという逆比例(反比例)が観測されています。つまり、パワーが強く周波数の低い左上から、パワーが弱く周波数の高い右下へマイナス45度の角度の直線に沿って振動数が図示されます。

 このようにF(周波数)に対してパワーレベルが逆比例(反比例)するので1/fと表現され、“1/fゆらぎ”と呼ばれることになりました。

 この研究の歴史はまだ浅いこともあって一般的にはあまり普及していませんが、最初の発見は1925年、アメリカの研究者が真空管を流れる電子流の録音を測っている時に見つけたものです。

 電子を陰極から不規則に放するとポチッと出るショット・ノイズとは別に見い出されたフリッカー・ノイズと言われるものです。この雑音(“ゆらぎ”)は周波数が低いとパワーレベルが高く、周波数が高いと逆になるということで研究が始ったものです。

 本格的な研究はさらに遅れ、1977年に日本で最初の「1/fゆらぎ国際会議」が開かれてからになります。以降この国際会議は2年に一度開催されており、その都度新しい発見と研究が発表され、実生活への応用も徐々に始ってきています。

 “ゆらぎ”の中には1/fを示さないものもあります。周波数値がFに平行で一定のパワーレベルに集約されるものは「雑音」と言われ、やかましく耳障りな音や不快感を覚える色彩や苛立ちを覚える配列などがこれに当たります。

 もうひとつは“1/f二乗ゆらぎ”と呼ばれるもので、グラフ上では1/fよりも鋭い角度で右下に下る数値が生じます。まどろっこしくゆったりとし、リズム感が乏しく眠気を誘うような“ゆらぎ”で、砂丘の風紋は、ほぼこの形をしています。対象によって、完全にこの形をしているわけではなく、入り交じっったりはしていますが、基本として周波数が1/fのマイナス45度のラインに値が多く示されるのは、1/fにゆらいでいると言えるものです。


「名曲と1/fゆらぎとの関係」

そこで生れてくる疑問は、難しい物理学を知らなかったはずのバッハなどの名曲がなぜ“1/fゆらぎ”になっているのか、手作り品になぜ“1/fゆらぎ”が現れるかです。

 作曲家たちが“1/fゆらぎ”を意識して作曲したのではないことは明白ですが、頭と体でリズムをとりながら曲を作ったことは想像に難しくありません。そのときには、自分(人間)の感性や気持ちを豊かにしてイメージを膨らませることになります。

 自らが作る曲を自分の感情を逆撫でするようなメロディーにしなかったのは当然ですから、想いや情感をこめて自分自身が気持ちいい曲を作るのは、自分の生体リズムに合った曲ということになります。

 自分(人間)の生体リズムに合った曲だから、それは魂のこもった曲で“1/fゆらぎ”になり、聞く人の心と生体リズムに共鳴し、魅了することになります。これが演奏される時に楽譜の心を読み、奏者の生体リズムに添った演奏には聴衆は大きな拍手でこたえますが、眠くなる演奏や聞き苦しい演奏は下手だと言えるのではないでしょうか。“1/fゆらぎ”になっていない現代音楽というのは、魂の発露したものというより、作為が強すぎるといえるもののようです。

 手作り品も“1/fゆらぎ”をしているのは機械的に表せない“ゆらぎ”が体全体にあり、そのズレと時間の変化(ズレ)が1/fになっているからで、ゆらいでいるものこそが、生きている証しといえるでしょう。さらに言えば生体リズムが“1/fゆらぎ”になっているからと言って誰もがその力を発揮しているというわけではありません。その力を発揚するものが外部からの“1/fゆらぎ”の刺激であり、その感覚を生かそうという意識が自分の生体リズムを正常にし、活性化することになるのです。 怒りやねたみ、嘆き、嫉妬などの感情が強かったり、ストレスが強い時は外からのゆらぎの刺激を五感で受け止めることはできません。

 やはり前向きで、明るく、心穏やかなことが必要なようです。

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