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枷(第三話)

 

「シエル先輩が何を言っているのかわからないですけど、答えを導いてくれるなら・・・教えてくれませんか」

 

この終わりのなかった思いに終止符を打てるのなら。

 

「遠野君・・・彼女は貴方が少しの間だけでも真剣に見つめてくれた・・・ただそれだけで幸せだったんですよ」

 

・・・・・・・・・。

 

・・・何を言うかと思えば。

 

「何、言ってるんですか。そんなわけないじゃないですか」

 

たった少しの時間彼女と対峙して・・・しかも殺し合おうとして・・・そんなことで幸せになるわけなんてない。

 

「いいえ、実際そうだったんだと思います。でも、このことは今の遠野君には絶対にわからないことです」

 

「えぇ、そんなことわかりませんよ。第一わかりたくもないです。そんなことで満足できる人なんて・・・」

 

いるわけない。

 

「それは、遠野君からの主観ですよ。決して彼女側からの主観ではないはずです」

 

それは・・・そうだけど。

 

「シエル先輩だってそうじゃないですか・・・その考えはシエル先輩の考えじゃないですか」

 

「いいえ」

 

シエル先輩は首を振って・・・。

 

「私はあくまで第三者側、客観的に物事を見つめていたからわかるんです。そして、何故遠野君にはわからないか。それは、遠野君が常に舞台の中心にいるからですよ」

 

舞台の・・・中心?

 

「貴方は無意識のうちに、舞台の中心に立ってしまう。だから客観的に物事を見れない。常に相手側を思いやった考え方しか出来ないんです」

 

「そんなことは・・・」

 

「遠野君はこう考えてはいませんか? 彼女がそんなこと考えるわけがない。あの笑顔は自分を気遣ってのことなのではと」

 

「それが間違いとでも?」

 

「遠野君から見ればそうなのかもしれません。でも彼女のあの笑顔と言葉は本物ですよ」

 

「だから何故それがシエル先輩に・・・」

 

わかるのかと言おうとするが次なる言葉に遮られる。

 

「私も最初わからなかったんですよ・・・お父さんが何故笑っていたか。そして父を・・・母を失い街を死の街に変えてしまった私がおめおめとまだ生きている・・・」

 

・・・シエル先輩は右下に視線を逸らし自分の過去を語る。

 

「この地に来るまで・・・私は常に死に場所を、自分が死ぬことだけを考えてきました。しかし私は死ぬことが出来なかった」

 

「そうでしたね、シエル先輩がこの地に来た目的って確か・・・」

 

「はい、ロアの消滅です。そして転生先を決めたのも私です。だから遠野シキと呼ばれる貴方に近づいたんです」

 

「しかし、イレギュラーが生じていて・・・そのことを見極めるために貴方の行動を監視していたんです」

 

そっか・・・そうだったんだ。

 

「そんな時です、遠野君と弓塚さんが対峙していたのを見たのは・・・」

 

「その時彼女はもう消える寸前で・・・でも、彼女笑っていたんです。そして、父さんと同じ目をしていました。この時解ったんです。父さんは全て解っていたんだと、全てを解った上で私に殺されたんだと」

 

俺は黙ってシエル先輩の話しを聞いていた。

 

聞かずにはいられなかった。

 

「私・・・気付いたら泣いていました。そして、それと同時に今ここにいる遠野シキはロアの転生先ではないと判断したんです」

 

「そう・・・だったんですか」

 

「はい、だから彼女のあの笑顔は本物とわかるんです」

 

・・・何か悪いことをしてしまった気分だ。

 

俺なんかのためにシエル先輩にこんなことを話させてしまって・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

「と〜お〜の〜く〜ん」

 

「は・・・はい、何でしょうか」

 

何やら先輩が怒っている・・・何か悪いことしたかな。

 

「今、先輩にこんな顔させてって思いましたね?」

 

「えぇ、思いました・・・って何でわかるんですか」

 

見事に言い当てられて流石にあせる。

 

「そんな曇った顔をしていれば誰だってわかります。いいですか、これは私が好きでしているんですからそんな顔しなくてもいいんです」

 

「は・・・はぁ」

 

「そんな遠野君にはもう1つ教えなくてはいけないですね」

 

はぁ・・・とため息をついてシエル先輩は話し始める。

 

「彼女は・・・弓塚さんは遠野君とは中学校の頃からのクラスメートだったんですよね」

 

「え?・・・はい」

 

と言っても、覚えてなかったわけだが。

 

「弓塚さんは随分前から遠野君と親しくなりたかった。しかし、それは叶いませんでしたよね。その証拠に遠野君の記憶の中には弓塚さつきという存在はほとんどない」

 

・・・何も言えない、確かにその通りだ。

 

「そして、遠野君が有馬の家から遠野の家に移ったとき・・・彼女にとっては転機だったのではないですか」

 

そういえば、あの日弓塚と初めて帰った気が・・・今考えてみると、あれは・・・。

 

誰かを待っていた様子でもあった・・・。

 

「そんな彼女がはじめて、貴方と真剣に向かい合うことが出来たんです。彼女からしてみればそれは・・・」

 

・・・たとえそうだとしても。

 

「たとえそうだとしても、結果俺は弓塚を救ってあげることが出来ませんでした。今さらどう言われようとこれだけは変わらないんですよ」

 

「えぇ、確かに過去に起きたこの結果だけは変わりません。でも遠野君が彼女をどう受け止めるかでこれからのことが変わってくるんじゃないですか」

 

・・・・・・・・・。

 

「すぐに理解することは出来ないと思います。ただ、一度弓塚さんの気持ちになって考えてみて下さい。ずっと向かい合うことが出来なかった人の気持ちを・・・」

 

ずっと・・・向かい合うことの出来なかった人。

 

「それは・・・身近なところから・・・何年も会えなかった身近に人を参考にしてみるのもいいかもしれませんね」

 

何年も会えなかった身近な・・・人!?

 

「私に出来るのはここまでです。大丈夫、遠野くんならいずれ理解することができますから」

 

それでは・・・とシエル先輩は去っていった。

 

身近な人・・・それは妹の秋葉のことを指しているんだろう。

 

・・・俺も帰るか、屋敷に戻れば答えを見つけ出せる気がする。

 

シエル先輩には弓塚のあの笑顔の意味を教えてもらった。

 

秋葉と話せばもう1つの・・・向かいあうことが出来た気持ちというのものがわかるかもしれない。

 

この二つがわかったとき・・・心から弓塚の気持ちが解ると思う。

 

「ごめん、弓塚・・・また来るから」

 

それだけ言い残し路地裏を後にした。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

あとがき

終わらない・・・終わらなかったです。しかも今回短い・・・。ここで1ついい訳などを聞いていただけると嬉しいです。シエル先輩の話しで志貴が理解して・・・心の枷を外すことできて終わりという感じにしようと思ったんです。でも書いているうちにこんな複雑な思いをシエル先輩の説得だけでいいんだろうかという思いにかられて・・・急遽新しい話し役を出すことにしました。それは誰だかもうおわかりだと思いますけど・・・。では第四話でまたお会いしましょう。本当だらだらと続いてしまって申し訳ないです。これも私の文章力のなさか・・・。

 

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