仮装パーティー(第一話)

 

 

≪12月23日≫

「じゃあ、今年も恒例のクリスマスパーティーは折原君の家でやることになりました♪♪」

 

「・・・・・・」

わ〜い。

 

手を上げて喜ぶ澪。

 

柚木のやつ当たり前のようにいいやがって、しかも恒例って俺はまだ二回目だぞ。

 

まぁ分かっていたことだがな・・・しかし、

 

「別に構わないが、条件がある」

 

「条件?何?」

 

「ただのパーティーじゃつまらん。だからみんな仮装するんだ」

 

「仮装ってドレスとか?そんなの私持ってないよ」

 

「大丈夫だ、ちゃんと衣装は用意してある」

 

「面白そうね、いいわよ。茜は?」

 

「・・・嫌です」

 

・・・ぐ、やっぱりそうきたか、茜のことだから絶対に言うと思ったが。

 

しかし、そんなことぐらいではこの折原プロジェクトは屈指はしない。

 

「いい忘れていたがな、茜」

 

「・・・嫌です」

 

「少しは人の話しを聞け」

 

「・・・嫌です」

 

こうなったら我慢比べだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・嫌です」

 

「・・・・・・・・・」

 

「わかりました」

 

「これは俺だけの提案じゃないんだ。澪と一緒に考えたんだ。な、澪」

 

「・・・・・・」

うんっ、うんっ。

 

「しかも、服を選ぶのは俺じゃない、澪だ」

 

「・・・・・・」

うんっ、うんっ。

 

「どうだ、これでも断るか?」

 

茜は澪の頼みには滅法弱い、これなら承諾するはずだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

予想通り、考えてるな。

 

・・・ぐいぐい。

 

澪が茜の袖を引っ張る。

 

「何ですか、澪」

 

『あのね』

 

『選んだ服、着て欲しいの』

 

上目遣いで見つめる澪。

 

「・・・・・・わかりました」

 

よし!!でかした澪。

 

「良かったな、澪」

 

「・・・・・・」

わ〜い。

 

「何でそんなに浩平が喜ぶんですか?」

 

・・・う、鋭いな茜。

 

「そ・・・それは澪と俺が一緒に考えたんだから喜ぶのは当たり前だろ」

 

「そうですか」

 

「そうだとも」

 

「・・・・・・」

うんっ。

 

というのは冗談で、澪をパフェで奢ることで承諾させたのだ。

 

まさか、こんなに上手くいくとは思わなかったが。

 

しかし、茜が着る服以外は澪が選ぶから、当日にならないと俺にもわからない。

 

「ねぇ、その服は何処で着替えるの?」

 

「あぁ、家で着替えていいぞ。それとみんな何か作ってくること。茜1人に任すのは辛いだろうから」

 

「えぇ〜、あたし料理なんて出来ないよ」

 

「威張るな」

 

『がんばるの』

 

「おぉ、頼んだぞ澪。それと茜は悪いけど結構料理をたくさん作ってくれると嬉しい。なんなら家来て作ってもいいから」

 

「わかりました。ケーキはどうしますか?」

 

「う〜ん、俺や澪が作るとなぁ・・・前例があるから」

 

「なら、みんなで作りましょう」

 

「・・・・・・」

うんっ、うんっ。

 

「じゃあ、これにて解散だな。柚木、お前もちゃんと作るんだぞ」

 

「分かってるわよ、びっくりさせてやるんだから。あっ、茜、料理教えてよ」

 

びっくりさせてやるといいながら、すぐ人に助けを乞うか・・・柚木。

 

「いいですよ、じゃあ家で練習しましょうか」

 

「助かるわ、やっぱり持つべきものは親友よね」

 

「浩平達も来ますか?」

 

「いや、澪とちょっと打ち合わせだ。一応提案者は俺と澪だから」

 

「そうですか。ではいきましょうか、詩子」

 

「じゃあ、まったね〜」

 

「あぁ、じゃあな」

 

『バイバイなの』

 

・・・よし、行ったな。

 

「澪、衣装の方は大丈夫なのか?」

 

「・・・・・・」

うんっ。

 

『部長さんだから、平気なの』

 

・・・それは職権乱用と言うんだぞ澪。

 

それを知ってて澪に頼んだんだが、改めて言われると・・・。

 

「そうか、頼んだぞ」

 

「・・・・・・」

うんっ。

 

「じゃあ、約束どおりパフェ食べにいくか」

 

「・・・・・・」

わ〜い。

 

・・・ぐいぐい。

 

『はやく行くの』

 

「大丈夫だ、そんなに急がなくてもパフェは逃げないぞ」

 

 

 

 

 

 

≪12月24日≫

 

チュンチュンチュン・・・

 

ピーンポーン・・・

 

「・・・・・・・・・」

 

ピーンポーン・・・ピーンポーン・・・

 

「・・・・・・・・・」

 

ガチャ・・・トントントントントン・・・ガチャ・・・

 

ゆさゆさゆさ・・・。

 

「浩平・・・起きてください・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

ゆさゆさゆさゆさゆさ・・・。

 

「浩平・・・朝です、起きてください」

 

・・・誰かが揺すっている気がするな、まぁいい、ほっとけばおさまるだろ。

 

「浩平・・・起きているのはわかっています、起きてください」

 

ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ・・・・・。

 

「・・・・・・・・・く」

 

しつこい・・・しかもこの中途半端な揺すり方は・・・意外と・・・。

 

「浩平・・・お願いです」

 

なんか、声の感じが変わったな・・・泣きそう・・・なのか。

 

「分かったよ・・・起きる」

 

お願いされては仕方ない、起きることにする。

 

「・・・おはよう、茜」

 

「おはようじゃないです、何で起きてくれないんですか?」

 

あれ、口調が元に戻ってる・・・ということは、演技か!?

 

やるじゃないか、茜・・・なら俺もその挑戦にこたえてやらねばなるまい。

 

「眠いから・・・それに、何でこんな朝早く起こすんだよ」

 

「祝日は昼まで寝てると決めている・・・その俺の信念を崩す気か」

 

「・・・・・・・・・」

 

・・・茜の顔が少しこわばる。

 

「浩平はケーキ、いらないみたいですね」

 

・・・ケーキ!? 

 

・・・いらない!?

 

「浩平の好きなチーズケーキを作ろうと思ったんですが」

 

・・・勝負は決したようだ。

 

「よし、1階に行くぞ」

 

「元気じゃないですか、さっき眠いと言っていました」

 

「気のせいだ、いくぞ」

 

茜は、仕方がないという顔をした後・・・。

 

「・・・はい」

 

笑顔で返事を返した。

 

 

1階に下りて台所まで降りてきたのはいいのだが・・・1つひっかかることがある。

 

「ケーキってみんなで作るんだよな?」

 

「そうですよ」

 

「今から作るんじゃないんだよな?」

 

「はい、でも澪と詩子にもできるように下ごしらえだけはしてきました」

 

「じゃあ、何で茜はこんなに早く来たんだ?」

 

「私は他の人より料理をたくさん作らないといけませんし、家ではお母さんが使うので・・・」

 

そっか、そう俺が頼んだんだったな。

 

「それと昨日浩平が家で作ってくれても構わないと言ってたから」

 

・・・それで、家に来たと。

 

なるほど、納得がいく説明だな。

 

「じゃ、何で俺はここにいるんだ?」

 

「手伝ってください」

 

「・・・え」

 

「浩平も料理を作るの手伝ってください」

 

「何で・・・俺が手伝うんだ?」

 

「みんな何かしら料理を作る約束のはずですよ」

 

「それは、分かっている。俺が聞きたいのは何で手伝わなければいけないんだ」

 

「ケーキ・・・」

 

「・・・く、俺を脅迫する気か?」

 

「嫌でしたら構いません」

 

「・・・・・・・・・」

 

「それに、1人よりも2人で作った方が楽しいですから」

 

・・・その言い方もかなりずるい気がするが。

 

「分かった。でも手伝うといっても大したことは出来ないからな」

 

「はい・・・わかっています」

 

納得してもらってもなんか悔しい気がする。

 

「私も浩平の作るのを手伝いますから」

 

「お、手伝ってくれるのか?」

 

「はい、浩平は何を作るんですか?」

 

「チャーハン」

 

「・・・嫌です」

 

「いや、嫌ですと言われてもそれしか出来ない」

 

「・・・分かりました」

 

「俺がこういうのも何だが、澪も柚木もあんまり凝ったものは作ってこないと思うぞ」

 

澪も結構不器用だしな、柚木は論外だ。

 

「・・・そうですね」

 

「澪は多分頑張って何か作ってくると思うが、それが料理と言えるのか問題ってところだな」

 

「はい、澪は頑張り屋さんですから」

 

「でもって、柚木は・・・ほんっとに簡単なものか、最悪何か既成のものを買ってきそうだ、いやむしろその方がいい気もするが」

 

「詩子には昨日ちゃんと初心者でも出来るものを教えました」

 

「期待していいのか」

 

「・・・分かりません」

 

・・・正直なのはいいことだ。

 

「・・・茜」

 

「何ですか」

 

「頑張ってくれ」

 

「・・・はい」

 

 

トントントン・・・

 

料理が作られていくわけだが、俺には茜が何してるかさっぱりだ。

 

時折調味料を手渡してるだけで、手伝っているかもどうかもわからない。

 

一応自分の料理のチャーハンを作ったが、茜の言いつけどおり作っただけなので、あまり自分が作った実感がわかない。

 

しかし、いつもより少しだけ高価な食材を使って作っただけでこんなにも味が変わるとは、正直驚きだ。

 

もしかして、俺は料理の天才か!?

 

・・・いや、実際は茜の細かな指示による微妙な調味料の具合と火加減のせいだと思うが。

 

それにしても・・・。

 

「・・・暇だな」

 

茜に頼まれるのはたまになので、暇なことこの上ない。

 

しかし、ソファで休むことも許されない。

 

「何かいいましたか」

 

『暇だ・・・だからソファで休ませてくれ』

 

「・・・駄目です」

 

この通りである。

 

「いや、だって俺ここにいても意味ないだろ、しかも俺の料理はもう出来た」

 

「私は浩平の料理を手伝いました。だから浩平も手伝ってください」

 

「それと・・・ケーキ・・・」

 

「はぁ、分かったよ」

 

しかし・・・そうか、ここにいても面白くなればいいんだな。

 

「・・・茜」

 

「何ですか」

 

「その・・・何だ、エプロン似合っているな」

 

茜は少し顔を赤らめながら・・・。

 

「ありがとうございます、お気に入りなんですこのエプロン」

 

茜が着けているピンク色のエプロンは本当によく似合っていた。

 

「もっと似合う方法があるんだがやってみないか?」

 

間髪いれず、

 

「・・・嫌です」

 

「まだ、何も言ってないぞ」

 

「・・・嫌です」

 

「その・・・エプロンだけを・・・」

 

「絶対に嫌です」

 

「分かった・・・分かったから包丁をこっちに向けるな」

 

手を上げて降参のポーズをとる・・・。

 

「・・・なんでそんないやらしいことを考えるんですか」

 

「何だよ、いいじゃないか。男の浪漫なんだよ」

 

「そんなことは知りません、とにかく嫌です」

 

ふぅ・・・作戦失敗。

 

「分かったよ、あ〜あ退屈だな」

 

かなり嫌味っぽく言ってみる。

 

「・・・・・・・・・」

 

茜が手を止めてこちらを向く。

 

「・・・浩平」

 

「ん、もう変なこと言わないから、ちゃんと手伝うぞ」

 

「いえ、ちがいます」

 

「じゃあ、何」

 

「その・・・・・・」

 

「え・・・何」

 

「その・・・キス・・・なら」

 

「・・・いいのか」

 

・・・災い転じて福と成すといったところか。

 

「・・・はい」

 

茜が俺に身体を寄せる・・・指と指が絡み合い、そして・・・

 

 

 

ピンポーンピンポーンピンポーン

 

瞬間、茜が後ろに下がる。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

ピンポーンピンポーンピンポーン

 

「出なくていいんですか?」

 

「あぁ、そうだな」

 

恐らく、澪か柚木だろう・・・ったくいいタイミングで来てくれるよな。

 

まぁ、あの2人なら問答無用で入ってくる可能性もあったからな。

 

呼び鈴を鳴らしてくれたのは幸運かもしれない。

 

ガチャ

 

「はい・・・・・・え!?」

 

目の前にあったのは・・・巨大な紙袋だった。

 

「な・・・な!?」

 

ずずっと紙袋が迫ってくる・・・反射でそれを受け取ると・・・澪だった。

 

『こんにちはなの』

 

「澪か・・・驚かすなよな」

 

『あのね』

 

『すっごく重かったの』

 

「そうか、衣装か。悪かったな澪」

 

『かまわないの』

 

『それと』

 

『ちゃんと、作ってきたの』

 

「あぁ料理か」

 

「・・・・・・」

うんっ。

 

『頑張ったの』

 

「そうか、ご苦労さん。とりあえず上がってくれ。今茜が台所で料理作ってるから」

 

『ケーキ食べたいの』

 

「そうだな。茜が気を気かしてくれて、下ごしらえしてきたみたいだぞ」

 

『嬉しいの』

 

と、同時に澪は茜のところに行ってしまった。

 

・・・紙袋を残して。

 

・・・俺が出たとき澪は紙袋持っていたんだよな。

 

・・・どうやって呼び鈴押したんだ?

 

しかも俺が出る時に荷物を降ろせばいいものを・・・。

 

・・・まぁいいか。

 

そういえばこの中今日着る服が入ってるんだよな。

 

・・・・・・・・・。

 

一応提案者としては見ておかねばなるまい。

 

・・・いや待て、ここで見たら後の楽しみがなくなる恐れがあるな。

 

だが、この状況・・・見てくれといわんばかりの状況だ。

 

さて・・・どうするか。

 

「ねぇ・・・何してるの?」

 

「いや、この紙袋の中身を・・・!!」

 

即座に紙袋を後ろに隠し、距離をとる。

 

「お・・・お・・・お前いつから其処に!?」

 

「いつからって今来たんだよ。来たらあんたがうずくまってたから何やってんのかなって」

 

・・・ふぅ、どうやらばれてないみたいだ。

 

「そ、そうか。茜と澪ならもう着てるぞ。お前も早く手伝ってくれ」

 

「ねぇ・・・後ろに隠してるの・・・何?」

 

「あ、これか。何でもない」

 

「何でもないなら隠すこと無いじゃない・・・もしかして・・・」

 

なんか不適な笑いを浮かべてるな。

 

「はぁ、仕方ないな。ちなみに、お前が考えてるようなものじゃないぞ」

 

ほら・・・と見せてやる。

 

「・・・服?」

 

「あぁ、今日着る服だな。楽しみにしてるなら今見ない方がいいんじゃないか」

 

「そうね・・・やめとくわ。でも何でそんなの見てたの?」

 

「何でって・・・ん〜、まぁ俺も気になっただけだよ。でもやめた、つまらなくなるから」

 

「何か怪しいわね」

 

「何がだよ」

 

「だって、それ私達が着る服が入ってるんでしょう・・・いやらしいわね」

 

・・・う、図星なのがかなり悔しい。

 

「いやらしいってことは無いだろ。まだ着てもいないのに」

 

「・・・そいうえば、そうね」

 

・・・あっさり引き下がったな。

 

「ところで、お前ちゃんと料理作ってきたんだろうな?」

 

「失礼ね、作ってきたわよ」

 

ほら、と見せる。

 

・・・ふむ、ちゃんと作ってきてるみたいだ。

 

「なんだ、ちゃんと作ってるんだな。てっきりどっかで買ってくるのかと思ったが」

 

「そ・・・そんなことするわけないでしょ」

 

・・・何か今どもったな。

 

「おい・・・もう1つの袋を見せろ」

 

「え・・・こっちは何でもないのよ」

 

明らかに狼狽してるな・・・。

 

「まぁ、そういうことにしといてやる。どうせ食う時にばれるんだ」

 

「何よ、失礼ね。あたしの作ったのは不味いっていうの?」

 

わかっているじゃないか。

 

「もういいから、上がれよ。もう澪と茜は来てるから」

 

「そうするわ」

 

よし、これで人数揃ったな、後は女連中に任せるとするか。

 

・・・・・・・・・。

 

ふぅ・・・。

 

昨日、今日と結構ドタバタしててあんまり考えなかったが・・・俺は二回目のイベント。

 

・・・あいつらは三回目のイベント・・・なんだよな。

 

あいつらの二回目はどんなものだったのか・・・何となくわかる。

 

澪と柚木は何事もなかったように、イベントを企画して・・・。

 

最初は断りつつも結局茜も承諾して・・・。

 

茜のそんな態度を何となく察して、元気づけようとする澪と柚木。

 

自惚れではないが、自分が好きといえる人を目の前で2回も失って。

 

しかし、他の人はそんな人がいたことも忘れていて。

 

覚えているのは自分1人だけ。

 

茜はどんな風に過ごしてきたんだろうな。

 

結局あの世界にいってしまう人は自分のことしか考えていないのかもしれない・・・。

 

自分1人この世界に絶望して・・・まわりが見えなくなって・・・。

 

残される人のことなんて考えていないのかもしれない・・・。

 

だが、俺は戻ってきた。

 

過去にそう思ったとはいえ、この世界で一緒にいたい人がいるから・・・。

 

「ちょっとあんたいつまで突っ立ってんのよ。あんたも手伝いなさいよ」

 

「あぁ、わかってる。今いくよ」

 

 

クリスマス・・・やっと俺と茜が初めて笑って過ごせるイベントになることを祈って。

 

 

続く

 

 

 

 

あとがき

約1カ月ぶりにSSを書きました。しかも初めてONE〜輝く季節へ〜を書きました。初めてのゲームと1カ月ぶりのSSでもうどうやって書いていいかわからなく、かなり苦戦というか、書き始めるまでにかなりの時間を労しました。ほのぼの系はあまり変哲のないSSになりがちなので最後の部分を少しだけシリアスっぽくしてみたのですが、話しが急展開しすぎですね。あと何か感じが終わりっぽいですが終わりじゃないですよ♪♪ちゃんと続き書きます。ここで一旦きるのもいいかなと考えたので。とりあえず、仮装パーティー・・・誰が何を着るか、私の中ではもう決まっていますがとりあえずはまだ内緒です♪♪とりあえず、次で終わりにしますので何を着るかはその時に♪♪

 

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