「ほらほら、早く着席しないとHRが始まってしまいますよ」
「あ・・・あぁ、そうだね」
琥珀さんに急かされ着席する。
「ねぇ、HRの担当はやっぱり秋葉なの?」
「そうですよ・・・ほら来ましたよ」
ガチャ
「おはようございます・・・」
秋葉が出席簿を持ってやってきた。
・・・・・・・・・。
「ねぇ、琥珀さん」
「はい、何ですか?」
「秋葉って着替えるのいやだとか言っていたよね」
「秋葉さまは恥ずかしがりやさんですから」
「確かにそうだね」
「ほら、静かに。HRを始めますよ」
「は〜い、すいません」
どこまでも、琥珀さんは元気だ。
そして、秋葉も乗り気に見えるのは気のせいだろうか。
「では、出席をとります・・・翡翠」
「・・・はい」
3人しかいないんだから見ればわかると思うのだが・・・。
「・・・琥珀」
「はい、元気で〜す」
ビシっと手を上げて返事を返す・・・。
琥珀さん、それは小学生の挨拶だよ。
「琥珀さん、別に元気ですとかは言わなくてもいいんだよ」
「そうなんですか、でも出席の時に自分の健康状態を先生に伝えておくんですよ・・・あ、やっぱり連絡帳に書いたほうが良かったですか・・・」
・・・そんな情報どこで仕入れたんですか。
「とにかく、普通でいいですから」
「ちぇっ・・・」
・・・すごい不満そうだ。
「次・・・に・・・・・・遠野・・・志・・・貴・・・くん・・・」
「はい」
何か、不思議な感じだ・・・妹に君づけで呼ばれるのは。
「・・・・・・・・・」
秋葉がぼぉ〜っと何かを考えているようだ。
「・・・・・私ったら・・・兄さんを名前で・・・。でも、結婚したら名前で呼ぶようになるんだし・・・」
「・・・どうしようか。このままじゃこれで1日終わってしまう気が・・・」
「そうですね・・・」
といいつつも琥珀さんはこんな状況を楽しんでいるようだ。
翡翠は翡翠で下をむいたままだ。
たまに目があうのだが、その度に顔を赤くしてしまう。
・・・よくわからない。
とりあえず、この状況を何とかしなければ・・・。
「秋葉をこっちの世界に呼び戻したいんだけど、秋葉のこと何て呼べばいいのかな」
琥珀さんに聞いてみる。
「そうですね・・・やはり先生じゃないかと」
「やっぱり?」
でも・・・まぁ、いいか。
「あの〜、先生・・・秋葉先生」
何か変な感じだ。
「は・・・はい、何でしょうか。に・・・志・・・貴くん」
「いや、出席取り終わったことですし連絡事項とかいろいろまだあると思うのですが」
一応敬語を使ってみる。
「そ・・・そうですね、連絡事項は特にありません。では早速授業に入りたいと思います」
変わり身の早さは流石というべきか、もういつもの秋葉に戻っていた。
「では・・・今からちょっとしたテストを始めます。最初ですし、皆さんがどのくらいの学力なのかを計るものでもあります」
テストか・・・そうかもしれないな、その方が秋葉の方も授業を進めやすいだろうし。
「科目は五科目の単純な小テストと思ってもらえれば結構です。時間は1時間です」
と言って、テスト用紙を配られる・・・。
「テストよ翡翠ちゃん♪♪ ついに前から憧れていた授業の醍醐味、生徒を苦しますテストが受けれるよ、翡翠ちゃん♪♪」
何故そんなにご機嫌なのかはあえて聞くまい・・・。
「テストはそんなにいいものじゃないと聞いてるけど、姉さんは何でそんなに嬉しそうなの?」
翡翠・・・君が正しいよ。
「だって、テスト、テストなんだよ翡翠ちゃん」
・・・いや、理由になってないよ琥珀さん、学生苦しますテストが何で嬉しいのかが疑問なのに。
「翡翠・・・今の琥珀さんに何言っても無駄だと思うよ」
「そうですね・・・」
「はい、いいですか。では、始め・・・」
用紙を返しテスト問題を見る・・・流石は秋葉といったところか。
少ない問題ながら、確実に学力が計れるような問題形式になっている。
でもこれ作ったってことは秋葉は少なくともこれらの問題は解けるということか・・・。
・・・恐るべし遠野秋葉の学力。
馬鹿なこと考えてないでやるか・・・時間もそんなにないことだし。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・
「時間です。用紙を集めます」
秋葉が用紙を集めていく。
出来は・・・はっきり言ってやばい。
しかも勘で当てられないよう全て記述式の問題にしてある。
流石は秋葉先生である。
「では、今から採点をしますので少しの間待っていてください」
暗記物のやつは出来たか出来ないかはすぐわかるのだが、国語や英語はわからないからな・・・琥珀さんや翡翠はどうだったんだろう。
「志貴さん、志貴さん・・・どうでした、出来の方は?」
何故そんな嬉しそうなんですか、琥珀さん。
「うーん、やっぱり難しいね、自信ないよ」
「そうなんですか。実は私もなんですよ」
「翡翠は?」
「私も・・・自信がないです」
「そっか・・・みんな自信ないのか」
ちょっと安心した、もし自分だけ悪かったらどうしようかと思っていたが、皆悪いと何故か安心してしまう。
「・・・はい、それでは採点が終わりましたので答案を返します」
・・・何だか秋葉の口調が怖い気がするのは俺だけだろうか。
「予測はしていましたけど、皆さんあまり点数が良くありません」
そりゃそうだろう、大学入試レベルのも入ってるのなら、尚更だと思う。
「では・・・返します。まず、琥珀」
「は〜い」
ご機嫌で返事をして答案を返してもらう・・・。
「68点です・・・一応この中では最高得点です」
「ほんとですか? 嬉しいですねぇ」
・・・68点で最高か、なかなか厳しいな。
「英語と数学に関しては文句なしです。ただ、国語が足を引っ張ってしまったようですね」
「あは〜・・・英語は秋葉さまと毎年海外に行っていますし、計算は得意ですから」
計算が得意・・・そりゃそうだろうな、良い意味も悪い意味でも・・・。
「続いて、翡翠・・・」
「はい・・・」
「64点です、琥珀とは対照的に国語はいいのですが、数学で点数を落としてしまいましたね・・・」
「すいません・・・」
「いいのよ、これからそういう弱い部分を勉強するのだから」
「はい・・・」
あ・・・ちょっと嬉しそうだ。
「翡翠・・・国語が得意って本当なんだね」
「そ・・・それはたまたまです。たまたま一度本で読んだことのある文章が出ただけですから」
顔を赤らめて答える。
「いや、でも読んだのがテストに出るなんて滅多にないよ、それだけたくさん読んでるってことだよ」
「は・・・はい、ありがとうございます」
翡翠は照れているのか、顔を赤らめて俯いてしまった。
「最後に・・・志貴君・・・」
「はい・・・」
・・・・・・・・・。
先の2人とは別人のように、口調が怖い・・・。
この後の展開が・・・何となく解ってしまう。
「あまり・・・良くありませんね」
・・・やっぱり。
「59点・・・兄さんは今まで何を勉強していたんですか?」
いつのまにか、兄さんに戻ってるし・・・。
「いや、それは・・・」
「まさか、期末テストの範囲内だけを短期的に勉強していただけじゃないでしょうね」
そんなの当たり前じゃないか・・・とは、思っていても言ってはいけない。
この場で秋葉の感情を逆撫でする発言はある意味死を意味する。
こう言うときは曖昧にごまかしていた方がいいな。
「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」
「いいですか、兄さん。短期的に頭に詰め込むだけではすぐ忘れてしまうんです。短期的に勉強するのが悪いとは言いません。テストですしそれは当たり前のことです。でも、その後も継続的にやることが大事なんです」
まさしく、秋葉の言うとおりだ。
しかし、それが出来れば苦労はしないんだよ。
「兄さんが日々の予習復習をしていないことは今のテストでよく解りました。これからみっちりと勉強を教えて差し上げます」
・・・まさか、マンツーマン!?
「あは〜個人指導ですね、放課後居残り勉強♪♪ これぞ学校ですよね」
琥珀さん、貴方は偏ったゲームのやりすぎです。
「い・・・いや、でもそれは駄目だろ。一応学校って設定なんだし、そもそも学校というのは先生を中心として解らないところは生徒同士が助けあうもので・・・」
「じゃあ、私も及ばずながらお手伝いしますよ、志貴さん♪♪ 翡翠ちゃんもいいよね」
「はい・・・志貴・・・くんのお役に立てるのなら」
・・・・・・・・・。
もしかしなくても・・・墓穴を掘ったしまった気がする。
怖いくらいの笑みを浮かべる秋葉。
とっても嬉しそうな琥珀さん。
ずっと頬を赤らめている翡翠。
果たして3人に囲まれての勉強・・・結局いつも通りになってしまうのか。
というより今回俺の体力は持つのだろうか。
1時間目にしてこれだ・・・今日の1日はとても長いような気がする・・・。
迫りくる圧倒感・・・といってもそれは秋葉だけのようだが、少なくともこれで予習復習はかかさずやろうと心に決めただけでも効果があったんだろうか・・・。
続く
やっとこさで描き終えました・・・この話の前までは結構さくさく書けたのですが、今回やたらと時間がかかってしまい、そんなに内容も濃くないという・・・授業をどうしようかなと思ったのですが、オチというかまぁこんな感じで。何か終わりっぽい感じなっていますけど、まだ続きますよ♪♪ ちなみに、どうでもいいことですが、翡翠はがいつも頭につけているヘッドドレス(調べてみて初めてしりました)の代わりにかチュ―シャつけてます・・・本当にどうでもいいですね♪♪ というわけで次回でまたお会いしましょう。