かまくら内部から漆黒の外界を見る
真っ白なかまくらを作ろう!

〜 松本市総合運動公園 〜

member
伊藤顕・佐藤和哉



 もともと松本というところは、内陸性の気候ということもあり、国内でも極めて降水量が少ないところらしい。そのため冬は一日中気温が氷点下である日が何日もあっても、雪はそれほど降らない。
 ところが、いったん降ってしまうと、建物の影などでは、それこそ春になるまで溶けずに残るんじゃないか、というような雪がずっと残ることになる。
 ドカっと降っても次の日にはあとかなもなく無くなってしまうような、東京など平地の雪とはそこら辺が大きく異なる。そのせいか、東京とさほど変わらない降雪量でも、印象としてはかなり雪が多いような錯覚をうけてしまう。

 松本に限らず信州の子供は意外と雪遊びをしない。いや、信州といわず雪の降る地域では概してそうなのかもしれないが、雪のやまぬうちから雪を惜しむかのように、積もったわずかな雪で雪合戦をしたり雪だるまを作ったりという、東京近辺の子供のような姿を見ることはあまりない。
 時を惜しまなくても、雪はしばらくそこに留まっていてくれるからだ。子供たちは、日が高くなっていくぶん暖かくなってから雪遊びをはじめる。

 そんな中でも自分はというと、雪の少ない神奈川県で生まれ育ったからだろう、この歳になっても、信州に住んではや10年近くなろうというのに、雪が降ると妙にうれしくなってしまう。
 ほかの人間がヤレヤレと思いつつ嫌々する雪かきも、自分としては嬉々として行ってしまう。朝早くから雪かきをしていると、近所のお父さんたちが、うちもやらなきゃまずいんだろーなー、という面持ちでしぶしぶ雪かきに参加してくる。まったくいい迷惑だろう。



 98年1月、松本は観測史上最高という大雪に見舞われた。ひと晩で60cm以上も積もってしまった笑ってしまうような大雪だ。
 それを聞いては落ち着いていられない自分は、長野から松本へわざわざ雪遊びをしにやってきたのだった。
 長野市のほうは松本と違って、どちらかというと日本海側の気候に近いので、冬になるとどんよりとした雲のもと、のべつ小雪が舞っているような状態になる。地元民はこの程度の小雪では「雪が降っている」とは決していわない。
 そんな、のべつ雪が舞っているところから、珍しく雪がたくさん降ったところへわざわざ遊びにいくというのは、冷静に考えれば酔狂以外の何物でもない。
 我ながら困ったものである。

 一面の銀世界。うひょー。
 松本は長野より標高が東京タワー1基分ほど高いせいで気温も低く、雪質はバッチリなのだ。
 童心に返るというよりは、かなり変な人になりつつ、一つの目標を立てた。

 真っ白なかまくらを作ろう。

 雪の少ない地方の人間ならわかると思うが、少ない積雪を拾い集めるようにして作ったかまくらや雪だろまは、どうしても地面の砂や泥が混じった、表面が茶色いものになってしまうのだ。
 それでも、年に何度もあるわけではない雪を見て、大喜びで一心不乱に作っている時はあまり感じないが、出来上がったものをみると実にキタナい。
 だけどこの、70cm近い雪ならば、地面から数十センチ上からの雪だけを集めて、贅沢なかまくらが作れるんじゃないだろうか!

 というわけで当時建設中だった松本市総合運動場脇の公園に作ったかまくらがこれ。  写真のとおり、出来上がったときにはもう日が暮れていたが、なかなかの出来に満足。大きさはちょっと小さいけれども、形、色ともに申し分ないものが出来上がった。
 中に銀マットをひいて、大人2人かろうじて入れる。コンロを持って来ればよかったな。

 大の男2人が日が暮れるまで、手袋の中も服の中まですっかりびしょぬれにならながらも、一心不乱にかまくらをつくる光景は異様なものだったろう。
 しかし案の定というか何というか、結局大人はおろか子供に至るまで、雪遊びに公園に訪れるものは他に誰ひとり現れなかったのだった。

2003.6.8 Itoh Akira

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