編集後記



 と、いうわけで編集後記です。
 このESSはわたしが以前から案を温めていた物語を題材にして、書きあげました。
 本来の物語では、姉を奪われ、その際に両親や縁者を皆殺しにされた将軍ベルマン・ドゥールの次女ミーティア・ドゥール(正妻の娘でマリア・ドゥールの異母妹)と長男クレブス・ドゥール(側室の息子でマリア・ドゥールの弟)が、姉を取り戻し、暴君ドッペル・ジェリ・ファイスンを討つために反乱を起こした、というお話が元になっています。

 今回は、滅び行く帝国に忠誠を尽くすものとして、ヴェルゼ・リドージュを書きあげました。
 彼は少年の時、病にかかり去勢手術、すなわち陰部を切除する手術を受けています。彼はこれが原因で、親に勘当され、多くの人々の笑い者となり、差別と嘲笑の中で成長してきました。
 そんな時、皇子ユリアン・ジェリ・ファイスンに才能を見出され、彼の従者となるのです。もはや自分の能力以外になにも頼れるものを持たなかったヴェルゼにとって、ユリアン皇子はただひとり、自分の才能を偏見や先入観なく正当に評価してくれた人物でした。

 こうしてヴェルゼは、全て自分を正当に評価してくれたユリアン皇子のために、全てを尽くすのでした。
 しかし、ユリアン皇子は一本気の上に潔癖ぎみだったため、美貌のマリアとの関係を深めると共に、父がそうであったように、マリアを他の人に奪われることを極端に恐れるようになりました。そして、マリアを奪われるのではないかという恐怖と反乱の理由を理解することを妨げるその子供じみた潔癖症のために、次第に彼もまた父同様の暴君へと変貌していくのです。
 そんなユリアン皇子にたいして、ヴェルゼは一心にユリアン皇子のために尽くし、最後は共に死ぬことを決心します。

 彼は、すでに正義が反乱軍にあり、帝国に勝ち目がないことはよく認識していました。でも、いまさらユリアンを裏切れない。それは、これまで人の笑い者にされ、信じられるものの無かったヴェルゼにとって、恩人を裏切ることは考えられなかったからでしょう。彼が名誉のために戦うというのは、単なる騎士道といったものより、自分とユリアン皇子との恩義や信頼関係を守りたいという純粋な思い、そして不名誉な扱いをされてきた彼なりのかすかな反骨精神があったからかもしれません。

 彼は、基本的にやさしい人なのでしょう。しかし、大事を成し遂げるために、あるいは支配者として国家や人民を守るためには、ときには鬼になることも必要であることもまた確かです。その意味では、彼は指導者たる能力も、君主を支える王佐の才も持ち合わせていなかったでしょう。でも、彼はまた鬼になることはできないことははじめからわかっていたのでしょう。
 だからこそ、彼は自分の信頼も名誉も投げ捨てて実を取るという選択肢を選ばず、あえて身を呈して自分の信頼や名誉を守りたかったのかもしれません。それが、差別と欺瞞のただなかに身を置いてきた、彼の取るべき立場だったのでしょう。

 今回のお話は、話の事情から若干なまめかしい内容が含まれています。言葉遣い等にはできる限り気を使いましたが、それでも「これ以上は」というような部分もあり、若干お見苦しい表現やCGもございますが、できる限りご理解賜りますよう、読者の皆様に謹んでお願い申し上げます。

2000年6月17日 とぅるーすたでぃ

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