??:「ならば、私がお相手いたしましょう」
爆裂山:「むっ!」
一同:「!!」
俺:「あ、あなたは・・・」
華澄:「せっかくだし、私が赤井さんのお手伝いをさせてもらうわ」
俺:「か、華澄さん・・・」
その場にいる人々全ての視線が一斉に客席にたたずんでいる一人の女性に注がれた。
爆裂山:「おお、華澄さん」
光:「華澄さん・・・どうしてここに?」
舞佳:「華澄・・・いるならいるって早く言ってよ!んもぅ水臭いわねぇ!」
かつてひびきの高校には伝説があった。ひびきの高校の裏社会・・・とてつもないレートで行われていたという裏マージャンの世界があった。その裏マージャンの世界で3年間一度もトップを譲ったことのない伝説の雀士・・・
舞佳:「その名を麻生華澄・・・」
光:「知らなかった・・・そんなこと」
華澄:「こらこら、勝手にヘンな噂をばらまかない」
俺:「相手は華澄さんか・・・」
舞佳さんがいったことの真偽は分からない。だが、華澄さんが雀豪であることは事実だ。かつて俺は数度に渡って華澄さんにバトルを挑んだが、その度ごとに返り討ちにあった。周りの大人たちも一目置いていた雀士だ。
華澄:「そういうわけで赤井さん、いいでしょ」
ほむら:「おう!誰だか知らねぇがいいぜ!一緒に勝とうぜ!」
琴子:「いいわ、相手が誰だろうと、勝てばいいんだから」
俺:「ああ、おれもいいぜ」
爆裂山:「おお〜っこれこそ友情じゃ〜!すばらしいぞ〜ほむら」
舞佳:「さぁ!部費の満額解答を狙う茶道部代表に立ちはだかったのは生徒会長赤井ほむらとひびきの高校伝説の雀士麻生華澄!茶道部代表平和広士と水無月琴子は、このかつてない強敵を倒して部費の満額回答を勝ち取れるか!」
ほむら:「燃えるぜ!」
こうして俺たちの最終決戦は始まった。
ほむら:「あっ、それポン!」
琴子:「あら、仕掛けが早いのね」
ほむら:「ニ索もポン!」
俺:「ちっ、早いな!急いてはことを仕損じるぞ」
華澄:「あら、そうかしらね」
琴子:「私も早めに上がらせてもらうわ、リーチ」
ほむら:「ロぉン!タンヤオドラ3!!」
琴子:「あらぁ、もう上がれたの?」
舞佳:「さあいきなり赤井選手上がったぁ!さすがは生徒会長!」
ほむら:「や、やめろよぉ、照れるじゃねぇか!」
だがその後は赤井さんと水無月さんの激しい上がりあいとなった。とにかく赤井さんは仕掛けが早く、どんどんトイツを食い仕掛けてきた。だがそこでただの仕掛けをしないのが赤井さん。巧みにオタ風を単騎にしたりリャンメン待ちにしたりしてこちらを幻惑してきた。一方の水無月さんもオーソドックスなピンフタンヤオ待ちで赤井さんから出あがった。
舞佳:「さあこの部費争奪戦も早くも南場!ここまで赤井さんと水無月さんがそれぞれ二回ずつ上がって全くの五分!一方まだ上がりのない麻生、平和の両名はここからどうするか?」
その通りである。実は、ここまで俺も華澄さんも一度も上がっていない。だが、俺も華澄さんも一度も振り込んでいないのである。いや、それ以上に・・・
華澄:「西」
なんというのか、無言のプレッシャーを華澄さんが発しているのである。そして・・・
華澄:「發ポン」
ついにここまで一度も鳴くことのなかった華澄さんが鳴いた!
琴子:「六索ね」
華澄:「六索もポン」
琴子:「ふーん、じゃあ一萬は?」
華澄:「ロン」
琴子:「・・・」
俺:「ああ・・・」
華澄:「小三元ドラ4、倍満ね」
舞佳:「決ぃまったぁ!麻生選手倍満をゲットォ!これは水無月選手痛い失点だ!」
華澄:「・・・そんな感じかな?」
俺:「やられた・・・」
普段は静かに機をうかがい、攻める時は一気呵成に。これが華澄さんのマージャンだ。もう華澄さんが上がりを決めて勝負に来ている時は止めることができない。逃げることすら許されない。大げさに思うかもしれないが、これは実際に対局しているものにしか分からない感覚だと思う。
華澄:「あ、ツモ」
俺:「なにっ?!」
またもや食いタンヤオに打って出た華澄さんは、親番であっという間にツモ上がった。さらに連荘の華澄さんはリーチをかけてまたもやツモ上がったのである。当りは安いがこれでもかなりのダメージである。
華澄:「さあ麻生選手のエンジンがかかり始めてきたか?!あっという間に三連荘!リードがついに40000点差に広がってしまったぁ!これで決着したか?それとも茶道部の起死回生なるか?」
そして・・・
華澄:「リーチ」
俺:「またかっ!?」
琴子:「さあどうしたものかしら・・・西を落とすわ」
ほむら:「ニ筒を切るぜ」
俺:「・・・」
普通なら五索を切ってリーチと行きたいところだが、すでに華澄さんがリーチをかけている。ここで五索は危険が大きすぎる。そう考えて二索を切り、ヤミテンに構えた。
華澄:「ふーん、六索を切るわ」
琴子:「二萬を切るわ」
ほむら:「よーしもらったぁ!四索を切ってリーチだぜ!」
俺:「ロン。タンヤオイーペーコードラ2」
華澄:「あらぁ、テンパイ黙ってたのね・・・」
満貫をあがって8000点をしとめたことも意義があるが、ようやく華澄さんの親番を切りぬけたことも意義があった。
舞佳:「さあこれで16000点を詰めて24000点差!勝負はいよいよ佳境に突入します!こんどは水無月さんの親番です。」
勝負というものは不思議なものである。どれほど知識や技術が完璧でも、状況が不利であっては勝利はおぼつかない。特にマージャンの勝負は、どんなに強い人でも素人三人の間に混じって必ず勝てるとは限らない。いや、相手を知らぬがゆえに序盤は手探りとなり、ようやく相手勘をつかんだ時にはツモが悪いというようなこともある。一方、素人が親番で思いがけなく連荘を続けることもある。それだけに、一度つかんだ流れは手放してはならない。華澄さんの流れを立ちきったのは大きな意義があった。そして、こちらは流れをつかまなければならない。
華澄:「まあまあ、勝負はこれからよ」
だが、俺にはなぜか華澄さんが強がっているようにすら見えた。華澄さんには悪いが、こういうときはなぜか配牌も引きもいいものである。
10巡目に来てここまで手が育った。こういう好手のときはかえってどうするか迷うものではある。普段の俺なら迷うことなく筒子を落としてダブル役満を狙うところだが、ここはタッグマージャンである。それをしたいところをぐっとこらえて相手から出あがることだけを考えるべきである。俺はまず白を切って四喜和のイーシャンテンに取った。
華澄:「ふーん、じゃあ六索はダメ?」
琴子:「南を切るわ」
ほむら:「ニ筒だぜ!」
俺:「!」
こういうときはとことんツイているものである。なんと最後の南をツモった。水無月さんが南を切った時点で半分あきらめかかっていただけに、これはツキが自分にきていることを確信した。俺は水無月さんに密かにテンパイした旨を伝え、暗に降りてくれるように頼んだ。
俺:「發を切るぞ」
琴子:「それポンするわ。はい七筒」
俺はびっくりして水無月さんのほうを見た。平気で危険牌を捨てたところを見ると、彼女は勝負を降りてはいなかったようだ。俺は必死になって水無月さんにサインを送った。だが、水無月さんは我関せずという顔つきであった。
ほむら:「ちぇっ、一萬か。いらねえ、捨てる」
俺:「何だ中か。いらねぇな」
華澄:「うーん、じゃあ九筒」
琴子:「どうかしら・・・ってあら、これは上がり牌じゃない!」
俺:「なにっ!!」
華澄:「あら、先に上がられちゃったのね」
なんてことをしてくれたんだ、と俺は思わず口にしそうになった。これほどのチャンスはもう絶対に見こめない。それなのに、チーム内で自爆するとは!いくら水無月さんが親とはいえ、これではみすみす勝利を相手に与えるようなものだ。だが・・・
琴子:「混一色、混老頭、対々和、三暗刻、小三元、中、發、・・・といったところかしら」
俺:「!!」
ほむら:「な、なんだよーこれ!」
華澄:「あらぁ、これは完敗ね」
舞佳:「これはすごい!なんと水無月選手三倍満だぁ!!これで茶道部チーム24000点を奪い取り一気に大逆転!」
琴子:「これなら・・・いいんでしょ」
俺:「あ、ああ・・・済まなかった。俺が悪かった」
琴子:「さあ、残りニ局も全力でいきましょ!」
まだ勝負は二局を残していたが、すでに流れは俺たちにあった。確かに相手をフリコませることがタッグマージャンの真髄ではある。だが、それ以上に親での連荘はタッグマージャンで勝つ最大の条件である。自分の手に溺れ、その基本を忘れていた俺はこの時俺自身のことが情けなくなった。そして、この当たり前のことに気付かせてくれた水無月さんに感謝していた。
琴子:「それで上がりね。断公九ドラ2」
・・・
俺:「どうだぁ!チャンタ三色だぁ!」
・・・
華澄:「完敗ね」
ほむら:「まけたぜ・・・燃え尽きたぜ」
舞佳:「決まったぁ!!勝者、茶道部代表、平和広士、水無月琴子コンビぃ!!!」
「わあぁぁぁぁぁぁぁぁっつ!!」
俺:「勝ったん・・・だな」
琴子:「ええ、私たちの勝ちよ」
光:「琴子ぉ・・・琴子すごいよ・・・ヒロくんもすごいよぉ・・・」
華澄:「うふふ・・・広士くん、あなた本当に強くなったわね」
俺:「いやいや・・・水無月さんのおかげです。俺に、本当に大切な事を・・・パートナーを、信じることの大切さを・・・教えてくれたのは、水無月さんです。水無月さんがいたから、俺は勝てたんです」
華澄:「はぁ・・・いいわねぇその言葉。でも、光ちゃんを泣かせたらダメだからね」
俺:「うっ!」
光:「え、えぇっ・・・ヤダぁ、華澄さんったら!」
爆裂山:「うおぉぉぉぉぉっつ!青春じゃぁあ!!そうじゃのうほむらぁ!」
ほむら:「こ、こら和美ちゃん、そんなはずかしいこと言うなよコラ!」
琴子:「・・・で、校長。部費のほう、大丈夫なんでしょうね」
爆裂山:「あ、ああ・・・大丈夫じゃ!この爆裂山に二言は無い!!」
こうして、第一回「ひびきの高校部費争奪マージャン選手権」は大好評のうちに幕を閉じた。正直言って、最高の大会だったと思う。優勝を勝ち取り、見事部費の満額回答を勝ち取ることに成功したこともうれしかったが、それ以上に、以前よりも水無月さんがより身近な存在に感じられるようになったことがうれしかった。まあ、最高の大会だった。また来年も水無月さんと共に戦い、優勝したい。そう思った。