「加害者も地獄。被害者の地獄。みんな地獄だ」　（役所広司）

怨念の吐きどころとはなっても、所詮は日曜朝の東映枠。子どもたちに夢と希望と絶望を与えることはできても、世間的には際物扱いである。かれらの増幅するフラストレーションを想像するに難くない。

だが、ついにチャンスは巡ってきたのである。ゴールデンタイムに王道の刑事ドラマという場を与えられて、かれらはついに核融合した。

出産を控え幸福の絶頂にあったサチ。ところが、彼女のやさしい夫は、バラバラ死体で発見される。犯人は、彼に現場を目撃されたと勘違いした強盗殺人団（中年男に率いられた予備校生）。針むしろの二時間スペシャルであった。

まじめな会社員・戸村精一は苦労人であった。妻は癌でなくなり、長女は強姦され殺されるという惨状だった。だが、そんな彼にもやっと幸せが巡ってきた。男一人で育ててきた次女が、いよいよ結婚することになったのだ。

そんなある日、強姦された長女の現場写真（警察から流出）を手に入れ、これを猟奇マニアに売り渡すと言ってゆすりをかけてくる男が、戸村の前に現れた。かっとなった戸村は男を撲殺。次女の結婚話は流れてしまう。

取調室で戸村は嗚咽する。「娘二人、結局、幸せにしてやれなかった」

父親が株で失敗し一家離散の憂き目にあった野口かずお(19)。生来がドジな野口は旋盤工、ペンキ屋と職を転々とするが、へまばかりして長続きしない。どんぶりを割ったことを理由にラーメン屋をやめさせられたとき、ついに堪忍の緒が切れ、通行人のおねいさんを人質に取って空き家に立てこもる。

そんな野口の元に、町工場時代に何かと気をかけてくれた元同僚が駆けつける。彼は今度自分の工場を持つことになり、そこで働いてもらおうと野口の行方を探していたのであった。

「早く娘さんを解放しろ。そうじゃないとおまえを俺の工場に連れて帰れない！」

元同僚の説得によって、野口は号泣して人質を解放しようとする。だが、とつぜん悲鳴が家の中にこだました

扉を開けてみると、そこには人質のおねいさんに刺されて冷たくなった野口が転がっていた。実はこのおねいさん、大麻不法所持で逮捕歴があり、人質に取られて恥をかかされたことに激怒していたのだった。

強盗殺人で服役中の兄を持つカズエ。世間の冷たさを堪え忍んできた彼女に、苦労が報われる時がやってきた。理解ある彼氏と婚約し、“人生で一番いい時”を迎えるのだった。

ところが、兄が強盗殺人犯であることが彼氏の家族に知られた途端、婚約は解消。逆上したカズエは、兄を逮捕した刑事の妹が結婚を間近に控えていることを知り、その婚約者を殺害する。

拳銃を持って人格の変わったアニメファン男が、隣に住むロリ娘を救うため暴走。あまりにも痛すぎて詳しい内容は書けません。

刑事の吉村は、結婚を目前にして、やっぱり幸福だった。だが、元彼女が結婚を妨害したので、これを殺害する。そして、よりにもよって、結婚式当日に逮捕。クルマで連行される吉村。それをウェディングドレス姿の花嫁が追いかける。

強盗殺人犯・相沢浩一は、刑務所で改心して善人になっていた。相沢は被害者の一人娘に謝罪したいと願っていた。だが一方で、被害者の娘・愛子は、15年たった今でも、母親が殺されたショックから立ち直れずにいて、とても相沢と会えるような状態ではなかった。

しかし、悪徳出版社と悪徳弁護士の陰謀で、愛子は相沢と会う羽目に。錯乱した愛子は、相沢を罵倒し道路に飛び出す。すると、やってきた二輪車にはねとばされてしまい、絶命してしまう。

病院で相沢は泣き崩れる。

「これだったら死刑の方がましだった」

『踊る大捜査線』や『ケイゾク』がいくら束になってもかなわない『刑事追う！』の魅力がわかっていただけたであろうか。ちなみに、この作品がビデオ化されているのは第１話だけ。やはり、われわれは最初から敗北していたのである。

でもわれわれは、時代に抗ってこんなどうしようもない話を作り上げた人々の勇気を決して忘れることはないであろう。

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