File No.011
アラゲキクラゲ
Auricularia polytricba(Mont.) Sacc.
(キクラゲ目キクラゲ科)
わが家には胡桃の木があります。今は亡き祖父が植えたもので樹齢は50年くらいで太さは40cmくらいになりました。今年はあまり実がならなかったので,風に吹かれて落下した実が舗装道路をたたく派手な音がほとんど聞こえず、寂しい秋を迎えました。そんな胡桃の木に生えたキノコの報告です。
梅雨あけの久しぶりの青空が嬉しくて上をむいてきょろきょろしていたら、その胡桃の木の樹上(数年前に枝を払ったところ)に茶灰色のべろべろしたものが生えているのを発見しました。「なんか変な奴」と気になりつつも、登るのも面倒でほったらかしにしていました。それから1ヶ月、べにてん夏合宿の帰りの途中にふと思いだして、家まで送ってくれたN氏についでに見てもらったところ、「アラゲキクラゲ」とのこと。おお,食べられるのか!!
台風の豪雨の合間をついて採取することにしました。ただ,虫が食っていないかが心配だったのですが(わらわらと虫のたかったキノコはどうも苦手)、幸い一匹のナメクジ殿が食事をされているだけでした。採集したキノコの形はお椀を伏せたような感じで山渓フィールドブックスの写真にそっくり。径3〜15
cmで大型のものが多く、枝の切り口(太さ15
cm位)の角のところから10個ぐらいが群生していました。ちょっと時期が遅かったのか、とろけた残骸もありました。
小さなボールに一杯分の収穫があったので、めでたくN氏と山分けすることができました。それにしても、こんな町中のそれもごくごく身近なところでキクラゲに出会えるとは驚きでした。いったいどこから胞子が飛んできたのやら。不思議なめぐりあわせを感じました。でも図鑑によればキクラゲ&アラゲキクラゲは普通に見つかるそうですね(深山幽谷のキノコだと思っていました)。
さて、採ったキノコはどうなったかというと、早速その晩の中華スープの具になってもらいました。なんだか幸せな気分でした。
[データ]
採集日:1998年8月30日
発生地:東京都文京区。
胡桃の木の枯枝上(地上4 m位のところ)に群生。