突如大ブレイクの左腕投手
2001年、セ・リーグの最多勝投手には、ヤクルトスワローズの藤井秀悟が輝いた。
27試合に登板して14勝を挙げ、ヤクルトのリーグ優勝に貢献した。
藤井はプロ入り2年目の24歳。
昨年は1勝しか挙げておらず、まさに大躍進だった。
大躍進といえば、阪神タイガースの井川慶も忘れてはいけない。
井川は4年目22歳で、通算成績はわずか16試合で2勝というものだった。
ところが今年は防御率2.67で、中日の野口に次ぐリーグ2位。
投球回数でも野口に次ぐ2位と、最下位のチームにあって孤軍奮闘した。
突如大ブレイクした、この若い左腕投手ふたりを数字で比較してみたい。
名前 | 試 | 勝 | 敗 | 防御率 | 投球回 | 被安打率 | 本塁打 | 四球 | 三振 | 安+四死 |
藤井 秀悟 | 27 | 14 | 8 | 3.17 | 173 1/3 | 0.231 | 19.38 | 3.32 | 6.44 | 11.01 |
井川 慶 | 29 | 9 | 13 | 2.67 | 192 | 0.249 | 8.02 | 4.17 | 8.02 | 12.47 |
※・・・本塁打とは140投球回あたりの被本塁打数。
四球、三振とは、9投球回あたりの与四球、奪三振数。
安+四死とは、9投球回あたりの被安打、与四死球の合計。
数字で見るとタイプこそ違えど、お互い見事な成績である。
藤井の被安打率.231は、セ・リーグの規定投球回到達者17名中3位。
(1位は石井一.216、2位は三浦.230)
奪三振は多くないので、打たせて取るピッチングが藤井の真骨頂だろう。
与四球は平凡だが、被安打と与四死球を足した数値11.01はリーグ4位と立派。
(ベスト3は野口9.15、三浦10.25、黒田10.80)
野次にも負けない精神力をつけた藤井。
不用意な一発にさえ注意すれば、もはや彼に弱点は見当たらない。
一方の井川は藤井よりぐっと豪快だ。
1試合の奪三振は8.02とまずまずだが、与四球が4.17と一人相撲タイプ。
与四球4.17は石井一の4.22に次ぐリーグワースト2位だ。
そのせいで、被安打と与四死球を足した数値が12.47とあまりよくない。
ところがそれにもかかわらず防御率は文句なし。
その理由は、まず、本塁打を打たせないこと。
(被本塁打8.02は、野口の5.06に次ぐリーグ2位)
そして、ランナーを出しても粘り強いことにあるのだろう。
これぞまさに好投手に必要な条件である。
その条件を満たしている井川が、
もしもっと打線の援護が望めるチームにいたとしたら、果たして何勝していただろうか・・・
最後にふたりの実際の成績を載せる。
名前 | 年度 | 試 | 勝 | 敗 | 投球回 | 安打 | HR | 四球 | 三振 | 防御率 |
藤井 秀悟 | 2000 | 31 | 1 | 0 | 32 1/3 | 23 | 5 | 18 | 36 | 4.73 |
藤井 秀悟 | 2001 | 27 | 14 | 8 | 173 1/3 | 145 | 24 | 64 | 124 | 3.17 |
藤井 秀悟 | 通算 | 58 | 15 | 8 | 205 2/3 | 168 | 29 | 82 | 160 | 3.41 |
井川 慶 | 1999 | 7 | 1 | 1 | 15 1/3 | 23 | 1 | 13 | 14 | 6.46 |
井川 慶 | 2000 | 9 | 1 | 3 | 39 1/3 | 36 | 5 | 19 | 37 | 4.35 |
井川 慶 | 2001 | 29 | 9 | 13 | 192 | 174 | 11 | 89 | 171 | 2.67 |
井川 慶 | 通算 | 45 | 11 | 17 | 246 2/3 | 233 | 17 | 121 | 222 | 3.17 |
藤井は、2000年に、あとほんのちょっと投球回が少なければ、
今年も新人王資格(30投球回以下)を持っていた。
その場合、赤星を退けて新人王になれただろう。
1996年の西口を思い出す。
この年2年目の西口は13完投し16勝を挙げた。
しかし1年目に45.1イニング投げていたので、新人王資格はすでになかった。
「ああ、1年目の出番があとちょっと少なければ新人王だったのに・・・」
ぼくはそう残念に思った。
だが、1年目に少しでも多く1軍のマウンドを経験したからこそ、
藤井も西口も、翌年に大活躍できたのかもしれない。