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トヨタ・アリストに乗る三菱自動車出身者

今回は野球選手とその愛車の話。
まるで小学生が好みそうな下世話なネタなので、良識ある方は眉をひそめるかもしれない。
しかしそこは「インチキコラム」ということで、どうかお許しねがいたい。

 

広島カープの高橋建は今年初めて2ケタ勝利をあげた。
後半はやや息切れしたものの、
5完投し、規定投球回に達するなど最高のシーズンを送った。

高橋は、1969年生まれの32歳。
神奈川県出身で、横浜高から拓殖大へ進学。
トヨタ自動車に3年間在籍ののち、1994年のドラフト4位で指名された。

 

高橋は入団時すでに自動車を所有していた。
入社2年目に社員割引で購入したと思われるトヨタ・チェイサーである。
彼はトヨタ社とトヨタ車を愛していた。
6年間チェイサーを大事に大事に乗りつづけた。

そして、プロに入って4年が過ぎ、年俸も2000万円を超えた。
このままこの世界でやっていく自信もついた。
高橋は新車を買うことにした。
ついついメルセデス・ベンツを購入してしまう野球選手が多いなか、高橋は愛を貫き通した。

そう、トヨタ・セルシオを買い求めたのだ。
セルシオとはトヨタの最高級車である。
トヨタのなかでイチバンということは、世界一だということだ。
古巣を愛する高橋はそう思ったのだろう。
そして、世界一の車に乗るからには、それに恥じない活躍をしなくてはいけない。
その思いが今シーズンの好成績につながったのだろう。

豆知識 広島ベンツ所有選手
投手
 河野、澤崎、山内、佐々岡、小林
捕手 西山
外野手 木村拓、前田、町田、浅井、緒方、金本

高橋建の年度別愛車は、下の表のとおりである。

年度 愛車 値段 馬力 ps/g 排気量 cc/g  S 防御率 年俸 契約金
1995 チェイサー 294 180 4.62 2491 64 39 4 4 0 3.90 840 4000
1996 チェイサー 294 180 7.50 2491 104 24 2 1 1 4.96 1400  
1997 チェイサー 294 180 5.29 2491 73 34 3 4 0 4.79 1800  
1998 チェイサー 294 180 4.39 2491 61 41 3 8 0 3.83 1700  
1999 セルシオ 598 280 7.78 3968 110 36 3 7 0 4.68 2100  
2000 セルシオ 598 280 5.60 3968 79 50 5 9 4 3.93 2200  
2001 セルシオ 598 280 9.33 3968 132 30 10 8 0 4.27 3300  

※・・・値段は万円。馬力はps。ps/gは1試合あたりの馬力。
排気量はcc。cc/gは1試合あたりの排気量。年俸、契約金は万円。

 

私は高橋の義理堅さに感動し、その余韻にひたりながら選手名鑑を眺めていた。
するとある選手のプロフィールに目が止まった。
読むうちに、怒りで体が震えてきた。
私を憤慨させたのは広島カープの玉木重雄だ。

 

玉木重雄は1971年生まれの30歳。
ブラジルのカスペル・リベロ高校から三菱自動車川崎に在籍。
1995年のドラフト3位で指名された。

最初はブラジル出身の日系選手として注目されたが、
タフな中継ぎ投手として、チームに欠かせない存在となった。
今シーズンもチーム2位の62試合に登板し、9勝3セーブを挙げ、防御率は2.76。
やや頼りない広島リリーフ陣のなかで健闘した。

では、玉木の年度別愛車を見てみよう。

年度 愛車 値段 馬力 ps/g 排気量 cc/g  S 防御率 年俸 契約金
1996 なし   1 0.03   0 30 3 1 1 4.11 1000 5500
1997 なし   1 0.04   0 25 0 3 0 4.84 1400  
1998 なし   1 0.02   0 50 6 4 2 4.99 1350  
1999 アリスト 436 280 7.18 2997 77 39 3 3 0 4.08 2000  
2000 アリスト 436 280 10.77 2997 115 26 2 1 0 2.61 2000  
2001 アリスト 436 280 4.52 2997 48 62 9 3 3 2.76 2100  

※・・・値段は万円。馬力はps。ps/gは1試合あたりの馬力。
排気量はcc。cc/gは1試合あたりの排気量。年俸、契約金は万円。

豆知識 馬力
成人男性の平均的な馬力は0.7〜0.8馬力だという。
世界のトップアスリートで1.5馬力ほど。
玉木は1996〜98年の間、車を所有していないため、推定で1.0馬力とした。

 

玉木の愛車は1999年プロ入り4年目に買ったトヨタ・アリストである。
その選択がどうも納得できず、私は我を忘れて憤慨したのだ。
玉木は三菱自動車にいたのだ。
ならば、高橋建の例を挙げるまでもなく、三菱の車を買うのが筋ではないか。

百歩譲って、みんなが乗ってるベンツや、
広島ということでマツダ車を買うのなら許そう。
しかしなぜ、よりによってトヨタの車を買う必要があるのか。

義憤にかられた私は、玉木の父親に話を聞きたいと思った。


ブラジルにいたころ、わたしたちの一家はとても貧しかった。
重雄をはじめ、たくさんの子供がいた。
わたしは妻子を養うために、ブラジルから日本へ出稼ぎしなければならなかった。
わたしはトヨタ自動車の工場で働いた。
一生懸命働いて子供たちを育てた。

やがて重雄がプロ野球選手になり何年かすると言った。
「父さん。車を買おうと思うんだ。
何を買うかはもう決めてある。
ぼくはトヨタ・アリストに乗りたいんだ。」

それを聞いた時、涙がこぼれた。
トヨタ・アリストとは、わたしが組み立てていた車なのだ。

 

 

おことわり
年俸、契約金は日刊スポーツによる推定であり、
愛車の値段、馬力、排気量、玉木の父親の話は私による推定である。

最後にふたりの実際の成績を載せる。

名前 年度  S 投球回 安打 四球 三振 防御率
高橋 建 1995 39 4 4 0 90    85 45 54 3.90
高橋 建 1996 24 2 1 1 52 2/3 57 20 40 4.96
高橋 建 1997 34 3 4 0 62    69 34 35 4.79
高橋 建 1998 41 3 8 0 101    92 46 76 3.83
高橋 建 1999 36 3 7 0 102    102 40 90 4.68
高橋 建 2000 50 5 9 4 112 1/3 89 57 88 3.93
高橋 建 2001 30 10 8 0 173    165 60 132 4.27
高橋 建 通算 254 30 41 5 693    659 302 515 4.26
                   
玉木 重雄 1996 30 3 1 1 46    41 23 40 4.11
玉木 重雄 1997 25 0 3 0 35 1/3 34 20 29 4.84
玉木 重雄 1998 50 6 4 2 74    73 30 53 4.99
玉木 重雄 1999 39 3 3 0 70 2/3 78 35 44 4.08
玉木 重雄 2000 26 2 1 0 48 1/3 35 13 27 2.61
玉木 重雄 2001 62 9 3 3 75    71 27 65 2.76
玉木 重雄 通算 232 23 15 6 349 1/3 332 148 258 3.86

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