孤軍奮闘の加藤康介
前のコラム(「新人王シカクシャーズ2001」)の続き
「新人王シカクシャーズ」の投手陣を見てみよう。
※・・・2001年シーズンの公式戦に出場した選手のうち、新人王資格があった選手から選抜した。
成績、チーム、年数(入団年数)などすべて2001年のもの。
先は先発、リはリリーフ、抑は抑え。Lは左投げ。
名前 | チーム | 年数 | 試合 | 勝 | 敗 |
S |
投球回 | 安打 | 四球 | 三振 | 防御率 | ||
先 | L | 加藤 康介 | ロッテ | 1 | 34 | 9 | 10 | 0 | 140 | 134 | 68 | 109 | 4.11 |
先 | 中村 隼人 | 日本ハム | 1 | 15 | 6 | 3 | 0 | 89 | 77 | 42 | 63 | 3.94 | |
先 | L | 三井 浩二 | 西武 | 1 | 29 | 3 | 3 | 0 | 88 | 100 | 46 | 70 | 5.22 |
先 | 後藤 光貴 | 西武 | 2 | 35 | 3 | 2 | 0 | 83 | 50 | 30 | 97 | 2.49 | |
先 | 伊達 昌司 | 阪神 | 1 | 28 | 4 | 3 | 0 | 69 2/3 | 59 | 31 | 49 | 3.75 | |
先 | 岩隈 久志 | 近鉄 | 2 | 9 | 4 | 2 | 0 | 43 2/3 | 46 | 13 | 25 | 4.53 | |
リ | 中野渡 進 | 横浜 | 2 | 63 | 5 | 1 | 0 | 86 1/3 | 68 | 28 | 57 | 2.61 | |
リ | L | 竹下 慎太郎 | 横浜 | 1 | 53 | 1 | 0 | 0 | 42 2/3 | 49 | 17 | 29 | 3.16 |
リ | 山口 和男 | オリックス | 2 | 32 | 5 | 6 | 2 | 47 1/3 | 50 | 26 | 37 | 3.42 | |
リ | 井場 友和 | 日本ハム | 1 | 40 | 4 | 3 | 4 | 46 1/3 | 38 | 19 | 46 | 2.53 | |
リ | 條辺 剛 | 巨人 | 2 | 46 | 7 | 8 | 6 | 65 | 64 | 42 | 48 | 4.02 | |
抑 | 大久保 勝信 | オリックス | 1 | 53 | 7 | 5 | 14 | 94 | 68 | 32 | 93 | 2.68 |
加藤は34試合に登板(うち先発19試合)し、規定投球回に到達した。
防御率4.11は、リーグ8位だった。
2001年のパ・リーグは、先発左腕が不作で、
140イニング以上投げた投手13人のうち、左腕はわずかふたり。
前川 勝彦(近鉄)と加藤だけだった。
加藤にはリーグを代表するサウスポーになってほしいものだ。
先発の2番手は、ドラフト4位ルーキーの中村だ。
14試合に先発して、3完封などで6勝を挙げる活躍を見せた。
馬力と度胸は新人離れしている。
西武の三井もルーキーで、15試合に先発した。
しかし、投球内容では中村に見劣りする。
近鉄の岩隈は、9試合にしか登板していないが、
リーグ優勝に貢献したため、新人王の選考では9票を獲得した。
愛敬 尚史(近鉄)、河端 龍(ヤクルト)もそれぞれ1票づつ獲得した。
愛敬は30試合で2勝、河端は41試合で3勝とリリーフできっちり働いた。
このふたり以外にも、リリーフ投手の活躍が目立った。
63試合登板の中野渡を筆頭に、50試合以上が竹下、大久保。
40試合以上が、三浦 貴(巨人)、條辺、井場と続く。
この中で抑えに選ばれたのは、もちろん大久保だ。
大久保は7勝、14セーブを稼いで、堂々新人王に輝いた。
三振奪取率は8.90、被打率は.202と迫力のピッチングだった。
ところが、その大久保を上回る投手がいた。
西武の後藤である。
三振奪取率は驚異の10.52、被打率はわずか.175。
2000年イースタンリーグで最多勝の経験を生かし、大きく成長した。
また、後藤は珍記録も見せてくれた。
7月27日の対日本ハム戦で、1球勝利投手になったのだ。
しかもこれがプロ初勝利というおまけつき。
1球勝利投手とは、2001年開幕前の時点で、プロ野球史上12人しかいなかった。
それがこの年、5月29日の山崎 貴弘(ロッテ)、後藤、9月24日の愛敬と一気に3人が達成した。
そのうち、山崎と後藤はプロ初勝利。
1球でプロ初勝利を飾ったのは、長いプロ野球史上、このふたりだけである。
最後に、2001年に1軍出場した新人王資格者数をチーム別に見てみよう。
単に試合に出た人数をグラフにしたものではあるが、だいたいの傾向は読み取れるだろう。
最多は16人の横浜と日本ハム。
日本ハムが低迷したのに対し、横浜はAクラスを確保。
育てながら勝つ、これが森監督の真骨頂だろうか。
リーグ優勝した近鉄の野手は3人だが、投手は8人とチーム状態が表れている。
年間投手起用の新記録(32人)を達成したのもうなづける。
最少はダイエーの7人。
レギュラーはほどよく脂の乗った年齢の選手が多く、それを押しのけて試合に出るのは大変だ。
それでもその困難を乗り越えて、山村(2001年出場なし)、山田(10試合)、田中総(出場なし)、広田(1試合)ら、
若手投手が台頭することを期待したい。
資金力に物を言わせて、他球団の主力を獲得し、若手を育てないと嫌う人もいる巨人。
ところが、試合に出た若手選手は10人で、阪神よりも多い。
阿部、條辺、三浦は、ほぼシーズンを通して活躍した。
育てながら勝っている証しだと言いたいところだが、
あれだけいい選手がいれば、誰の采配でも勝てると皮肉屋は指摘するだろう。