韓国語環境構築までの
ながいながい道のり

留学して半年が過ぎたころ、ひょんなことからパソコン通信を始めることになりました。それまでは日本にいる友人とのやりとりはすべて手紙で行っており、Niftyなどのパソコン通信ユーザからは、手紙は面倒だから早くメイルを送れるようにしろ、としきりに催促されていました。1月に、いっしょに留学中の友人が、日本に一時帰国することになり、彼にモデムを買ってきてくれと頼みました。
さて、頼んでおいたものは無事に手元に届きました。US Robotics の 28,800kbps 外付け型モデムです。当事としては、たいへん汎用性のあるモデムで、特に国内でパソコン通信だけをするユーザにはこれで十分といったところです。ソフトもいろいろと付属しており、この中の 「EmTerm」 を、帰国までの約6ヶ月間使い続けることになります。このソフトの会社でエムソフトには、帰国後も「EmEditor」というすばらしいテキストエディタでお世話になっています。ちなみに、当時使っていたOSはWindows3.1日本語版でした。
パソコン通信をするのが韓国であるわけですから、プロバイダ(？)も当然韓国の会社です。たまたまソウル大の大学院で研究をされている先輩が近所に住んでいたので、その方にお願いして手続きを手伝ってもらいました。契約先は「千里眼」といいます。ハングルフォントは「KoreanWriter」付属のKSフォントを使いましたが、時々文字化けして表示されない部分もありましたが、おおむねうまく行きました。メイルも、日本語アプリケイションの上でハングルを打ちこみ、そのまま送信できました。これはとても不思議なことで、どういうシステムになっていたのか、今もよくわかりません。「千里眼」と契約したことにより、まず韓国内での通信に支障はなくなりました。

問題は、日本、あるいはそのほか韓国外の国とのメイル交換です。メイルアドレスが決まったことをまず手紙で知らせ、わたしのアドレスに送られてきたメイルを見ると、日本語が問題なく表示されました。それならこっちから送るのも大丈夫だと思い、日本語で書いて送りましたが、すべて文字化けして判読不能とのことでした。仕方がなく、こちら(韓国)からはローマ字で書いて送ることにしましたが、なぜそういう一方通行なことが起こるのか、さっぱり分かりませんでした。しばらくして、「千里眼」が日本の「PC-VAN」と提携があることが分かり、それならば、と追加サービスを申し込みました。
「韓国の『千里眼』からTelnetで日本の『PC-VAN』に接続する」とのことでしたが、実際どういう具合になっているかは知るよしもありません。あらかじめテキストエディタで作っておいた文章を、メイル作成画面に貼りつけるのですが、その中に一ヶ所でも「不正な」文字があると、それに続く文字列がすべて文字化けするという、とんでもないことが起こりました。結局、漢字使用率を減らすということである程度解消はされましたが、それでも時々は文字化けが起こり、該当する漢字を削って貼り付けをやり直す、といううんざりする毎日を送っていました。
結局、韓国にいる間はこのように不便きわまりない状態でメイルを送っていました。

1997年の8月に、わたしは日本に帰ってきました。このときは、「インターネット」というものはまったく分からず、日本でもNiftyやPC-VANに入るもんだと勝手に決めていました。しかし、雑誌をいろいろと読みあさり、インターネットというものでもメイルの送信が可能であることを知り、また、パソコン通信の料金が高いこともあって、この際だからインターネットというものをやって見ることに決めました。
最初に選んだプロバイダが、ダイヤルQ2で3分10円のところでした。手続きが簡単だから、としばらく使っていたところ、毎月の請求額に驚き、何かよいところはないか、と探していたところ、「アスキーインターネットフリーウェイ」という無料プロバイダがあることを知り、すぐにクレジットカードを作って申し込みました。これは、画面のはしに広告が送信されつづける代わりに、接続料金を無料にするというシステムでした。ちょいとうっとおしいけど、ただだからいいや、と2ヶ月ほど使ったところで、いきなりサービス終了通知が来ました。すぐに終了するということではなかったので、残された短い時間を新しいプロバイダ探しに費やすことにしました。そして、やっとたどり着いたのが、現在使っているODNです。このごたごたのせいで、日本からの韓国語メイル送信はちっとも進展しませんでした。

「第一種プロバイダ」という宣伝につられ、わたしはODNに契約をしました。初めは確かにすばらしく快適でした。しかし、11月半ばを過ぎるころからビジーが多発し、今や午後11を過ぎると、一発で接続できることはほとんどなく、ひどいときで数十回つなぎ直し、ということもあります。1ヶ月2000円で固定というのは、ユーザにとってはたいへん魅力的です。インターネットユーザにテレホーダイが浸透したことで、午後11時以降のビジーは仕方がないことだとは思いますが、回線増強もせずに、新規契約者集めに奔走する体制には、ただ飽きれるばかりです。 そして、だいたいこの時期に、MS社から InternetExplorer4.0 の評価版が雑誌の付録につくようになりました。早速試して見たところ、韓国語メイルの送信に関してはまったく使えない代物でした。どういう形で送信しようとも、受け取った先で必ず文字化けします。仕方なく正式版が出てから再インストールしました。しかし、これからもまたひと悶着ありました。

そのころはまだ「KoreanWriterV3」の存在を知らず、ハングルメイルは「アレアハングル日本版」で作ったものを貼りつけて送っていました。しかし、これがうまくいかない。NetscapeMessenger では正しく送信されるものが、 OutlookExpressでは例外なく文字化けするのです。何でこんな理不尽なことばかり起こるのか、MSは文字コードからハングルを排除したのか、と悩んでいたところ、MS社のサイトにOEのニュースグループがあることを知りました。よい知恵を貸してくれる人はいないか、とさっそく投稿しました。わたしの投稿に対して、すぐに反応がありました。しかし、そのすべてがすでに試してうまくいかなかったものばかりでした。どうしたものか、と再び悩んでいたときに、MS社のIE開発チームの方からわたしの投稿に対する反応があり、わたしの状況を詳しく知らせてほしい、とのことでした。その後何度もメイルのやり取りがあり、韓国のIEチームから来た1通のメイルが終止符を打ちました。

「朝鮮日報のサイトにアクセスし、その文字列をコピーしてOEに貼りつけて見てください」

言われた通りにやって見ると、なんとハングルが正しく表示されるではないですか。すぐにお礼の返信を出し、やっと明るい見通しがついたことにほっとしました。しかし、この方法でハングルメイルを送るためには、「アレア」で文章を作り、それを韓国語HTML形式で保存した後に、それをコピーアンドペイストしなければなりません。これでは NetscapeMessenger よりひと手間多くかかります。
そして、最後にたどり着いたのが「KoreanWriterV3」でした。

インターネットでの共通語(標準語)が英語であるとはいえ、やはり身近な言語でメイルのやりとりができたらいいな、というのが率直なわたしの思いです。Windows95においては、いったん安定した状態が続いております。しかし、数ヶ月後にWindows98が発売されたときに、果たしてこれと同じ方法が通用するのか、はなはだ自身がありません。「Windows3.1のソフトは95でも使える」と言っておきながら、平気で互換性を破棄する、そんなMS社の態度は信用するに値しません。3.1用の「KoreanWriter」は、結局95では動作しませんでした。わたしはWindowsユーザではありますが、WindowsというOSが優れているからと積極的に支持するものでは決してありません。たまたま初めててにしたのがWindowsだったから、使いたいソフトがたくさんあるから、友人との互換性を保ちたいから、その程度の理由です。今まで四苦八苦してやっとのことで確立した韓国語入力を、いま他のOSでやり直す気力はない、ということもあります。いずれにせよ、今のわたしの使用に堪えるOSが現れたら、それがWindowsであろうとなかろうと、条件が整い次第そちらに移行するつもりです。

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