待ち行列
■ 待ち行列。Queue。
母集団からのシステムに対する要求が、
窓口の処理能力をオーバーした場合に発生する。
この待ち行列と、次に示す母集団、窓口の関係を
理論的に表現したものを待ち行列モデルと言う。
待ち行列理論では、
システムに対するサービスを要求している集団を母集団と呼ぶ。
ネットワークシステムでは、トランザクションの発生源を指す。
また、母集団からの要求に対し、それを実行するところを、窓口と呼ぶ。
具体的には、システム全体、もしくは回線、CPU、磁気ディスクなどの諸要素が
相当する。
■ ポアソン到着。
トランザクションが時間的にランダムに発生するとき、
単位時間中に発生するトランザクションの個数は、ポアソン分布に従う。
ここでトランザクションの窓口への到着が、ポアソン分布に従い、
かつ下記の仮定を満たすとき、これをポアソン到着と呼ぶ。
(1)独立性
あるトランザクションの到着は過去の事象と無関係であり、
次のトランザクションの発生に影響を与えない。
(2)希少性
ごく短い時間に、2つ以上のトランザクションが同時に到着することは、
無視できるほど少ない。
(3)定常性
ある時間に対し、トランザクションの到着する確率は、
どの時間帯を取っても同じである。
■ M/M/1モデル。
待ち行列モデルの表記法。
ケンドールは、待ち行列モデルを、
トランザクションの到着間隔の確率分布、窓口のサービス時間の確率分布、
窓口数の3つの観点で捉え、A/B/n形式で表した。
このケンドール表記で表される
最も代表的な待ち行列モデルは、M/M/1モデルである。
M/M/1とは、トランザクションの到着間隔がランダムで、
サービス時間が指数分布、窓口数が1つであることを表す。
ほかにも、窓口が複数になるM/M/nモデルなどがある。
■ M/M/1モデルの公式のまとめ。
■ 平均到着率。
単位時間当たりに何個のトランザクションが到着するか、を表す。
トランザクションの平均到着率は、トランザクションの平均到着間隔taの逆数である。
λ=1/ta (a=arrival)
■ 平均サービス率。
窓口が、単位時間当たりに処理可能なトランザクションの数を表す。
窓口の平均サービス率は、窓口の平均サービス時間tsの逆数である。
μ=1/ts (s=service)
■ 利用率。
窓口がどれだけ利用されているか、の度合いを表す値。
利用率は、トランザクションの平均到着率λと
窓口の平均サービス率μの割合で求められる。
システム設計においては常に、λ<μでなければならない。
利用率 ρ=λ/μ (0<ρ<1)
利用率はまた、トランザクションの平均到着間隔taと
窓口の平均サービス時間tsの割合に等しい。
システム設計においては常に、taa/ts (0<ρ<1)
■ 待ち行列の長さ。
処理中のトランザクションを含めて、
現時点でシステム内にあるすべてのトランザクションの個数Lは、
次式で求められる。ここで、0<ρ<1である。
L = ρ/(1-ρ)
処理中のトランザクションを除き、
現時点で待ち行列内で待っているトランザクションの個数Lqは、
次式で求められる。ここで、0<ρ<1である。
Lq = ρ/(1-ρ)-ρ = ρ2/(1-ρ)
■ 平均待ち時間。
トランザクションが自分の処理が始まるまで、
待ち行列の中で待つ平均待ち時間Wqは、次式で求められる。
Wq = ρ/(1-ρ)×ts
トランザクションが自分の処理が終わるまでに、
システムの中で待つ平均応答時間Wは、次式で求められる。
W = ρ/(1-ρ)×ts +ts = 1/(1-ρ)×ts
■ 2個のM/M/1と1個のM/M/2の比較。
トランザクションが2倍に急増した場合には、
M/M/1を2本設ける方法よりも、M/M/2を1本設ける方法がより有利である。
M/M/1を2本設けた場合、2個の窓口に対して2個の待ち行列ができる。
窓口のサービス時間は変わらず、到着率も変わらない。
このため、利用率も変わらない。
平均待ち時間ρ/(1-ρ)×tsも従来と同じである。
M/M/2を1本設けた場合、2個の窓口に1つの待ち行列ができる。
窓口のサービス時間は事実上半分になり、到着率は2倍になる。
このため、利用率は変わらない。
しかし平均待ち時間ρ/(1-ρ)×tsでは、半分になる。
以上。
2004/03/12 pm