序

それは夢だった。
それは『あの娘』の夢だった。
それはいつしか私の夢となった。
想いと感情を共有する夢。

でも……夢は夢でしかない。
それがどんなささやか夢でも。

あたしは泣かなかった。
『あの娘』も泣かなかった。
人は…悲しみが深過ぎると泣けない。
そんなをありきたりの言葉が頭をよぎった。

苦しかった。
悲しかった。
『あの娘』の笑顔が。
『あの娘』の声が。
『あの娘』の私を呼ぶ声が。
『あの娘』がいなくなるという現実が。

そして……『あの娘』の存在そのものが……



Kanon side story
Featuring kaori misaka



夢の終わりに
作:御巫吉良(KIRA・MIKANAGI)


        1

「お姉ちゃん……」

声に振り向くと参考書を抱えてモジモジとしている栞がいた。

「勉強……教えて欲しい所があるんだけど……」

昔から体の弱かった栞は学校の授業をほとんど受けていない。
この娘は自分が頭が悪いと思っているようだけど、そんなことはない。
あたしが教えれば、すぐに難しい問題を解けるのだ。
普通の学校生活を送っていれば、きっと好成績を上げれるだろう。

「お姉ちゃんの教え方が良いんだよ」

あたしの意見に栞はそう答える。


栞があたしの通う高校に行きたいと言い出した時は驚いた。
今でこそ入院はしていないものの、自宅療養中であることは変わっていない。
当然あたしは反対した。
普通の学生でも精神的、肉体的にもかなりの負担となる受験。
まして、義務教育もまともに受けていない栞には到底無理だと思ったからだ。
しかし、意外にもにもお父さんとお母さんは賛成した。
…いや、今にして思えば賛成と言うよりも、『好きなようにしていい』という感じではあった。
その時の栞の嬉しそうな笑顔……その笑顔にあたしはアッサリ陥落した。


それから1ヶ月。季節は8月。
外出することが難しい栞の家庭教師役をあたしが務めていた。
前々から学校に行けない栞に勉強を教えていたのだから、やってることはそれほど変わらない。
問題が高度になることは確かだったが……栞は決して挫けなかった。
毎日夜遅くまで勉強を続け、解けない問題があればあたしに質問する。
何度あたしが休憩をさせようとしても、あたしが目を離すと勉強を再開する。
何がこれほどまでにこの娘を駆り立てているのだろうか?


        2

季節は巡り、10月。
栞の受験勉強は順調に進んでいた。
栞はあたしが想像以上のスピードで学力を身に付けつつあった。
心配なのは……近頃、前にも増して顔色が優れない日が多いこと。
週に一回、病院に通うのも変わっていない。
受験勉強の無理がたたっているのではないか…そう思うと気が気でなかった。


過ごし易くなった季節の日曜日。あたしは栞と二人で公園に散歩に来た。

「わあ、綺麗!」

公園の中央の噴水を見て栞は目を輝かせる。
商店街から少し外れたところにある公園。意外と穴場の場所だった。

今日は気分転換のつもりでお弁当を持ってここに連れてきたのだ。
通院以外に外出することの少ない栞だったが、この公園は気に入ってもらえたようだ。
嬉しそうに、あたりを見回している。
枯葉で敷き詰められた芝生の上にシートを引き、二人でお弁当を食べる。


「くす……少し、夢がかなっちゃった、かな」

夢?
…そう言えば……栞はあまり自分の要求を言わない。
高校進学の件以外は、特に自分の意志を示さない娘だった。

「ねえ…栞? あなたの夢って、なあに?」

「え?……えーと……」

栞は照れくさそうにあたしを見つめて言った。

「私の夢は……お姉ちゃんと同じ学校に通うこと」

「え?」

「お姉ちゃんと同じ制服を着て、そして一緒に学校に行くこと…お昼ご飯を一緒に食べて、学校帰りに偶然会って、商店街で遊んで帰る…」

「アハハハハハ……! 安上がりな夢ねえ…」

「ああ! 笑うなんてヒドイです! お姉ちゃんなんか大嫌いです!」

あたしは笑った。笑わずにはいられなかった。
こんな、些細な事が、この娘の夢。
こんなささやかな夢が、栞を、この娘を支えている、そして駆り立てている夢。
あたしは膨れっ面でそっぽを向く栞を横目に笑い続けた。
笑わなければ……泣いてしまいそうだったから。 


        3

今日は高校の願書提出日。
栞が初めてあたしの高校に来る日。
あたしは放課後にさっそく校門に向かった。あの娘を迎えるために。


「栞!」

「あ、お姉ちゃん!」

校門で待つ事10分ほど。栞は徒歩でやって来た。
あたしは栞を連れ添って事務所受付まで向かった。


「……はい。結構です。受験、頑張ってください」

「はい! よろしくお願いします」

栞の願書は無事に受理された。

「…さて、今日は一緒に帰りましょうか?」

「ねえ…お姉ちゃん。少し校内を見ていっても良いかな?」

上目遣いにあたしの顔色を伺いながら遠慮がちに言う栞。
この娘はいつもそうだ。決してわがままを言わない。
いつも自分の体のことで、迷惑を掛けていると思っているのだろう。
そんなことは全然ないのに。
入院生活の長かった栞。病院に行かなければ会えなかったあたしの大事な妹。
ただ、そこにいてくれるだけで、あたしは『幸せ』でいられるのに。
栞にはそれがわからないのだろう。

「いいわよ。それじゃあ、適当に回ろうか?」

「はい!」

栞は嬉しそうに返事をした。


校舎、体育館、食堂、グラウンド……どこに行っても栞は目を輝かせて歓声を上げながらジッとその風景を見つめた。
まるで……その風景を目に焼き付けるように。
あるいは、その風景の中に未来の自分を重ねているのかもしれない。
あたしと栞。二人で歩くこの光景を……


「それじゃあ、最後にとっておきの場所を教えてあげるわ」

「え?」

不思議そうな栞を連れてあたしは校舎裏の中庭へと足を運んだ。
今は冬。あたりは一面雪景色だった。

「ここ…?」

「ええ、そうよ。この場所って、今の時期はこんなに寂れてるけど…雪が溶けて、そして暖かくなったら、もっとたくさんの生徒で賑わうのよ」

「へえ〜、そうなんですか」

「休み時間にお弁当を広げるには最高の場所…今そんなこと言っても、まったく説得力ないけどね」

パッと栞の表情が明るくなった。

「お姉ちゃん、覚えててくれたんだ…」

「ええ、もちろんよ。春になったら…ここで一緒に昼ご飯を食べましょう、栞」

「嬉しい…暖かくなるのが楽しみです…」

嬉しさを隠し切れないままに栞はキョロキョロと周りを見回していた。

「お姉ちゃん! 雪だるま作りましょう!」

「え?」

「こんなに綺麗な雪がたくさん積もってるんだから、全長10mくらいのを作れますよ」

「…10mは無理よ…」

「えー、そうですか…?」

言葉を交わしながら栞はさっそく小さな雪球を作って転がし始める。

「栞! 無茶しちゃ駄目よ!」

「わかりました〜」

少しため息をついて、あたしも雪球を作り、転がし始めた……


「栞、その辺にしておきなさい」

「えー、もっと大きくしたいです」

「それ以上大きくしたら持ち上げられないわよ」

「あ……そうですね」

渋々栞は雪球を転がすのを止めた。
あたしは自分が作った大きな雪球を栞の方へ転がして行った。

「さあ、あたしはこっちを持つから、栞はそっちを持って」

「はい!」

合図をして、二人で一つの雪球を持ち上げて、もう一方の雪球に乗せた。

「顔はどうする?」

「あ、さっきあっちに石がありました」

栞はすぐに駆け出そうとして……その場にへたり込んだ。

「栞!!」

あたしは慌てて栞に駆け寄って体を抱える。
軽かった。女のあたしでも抱えられるほどに。

「だ、大丈夫です。ちょっと立ち眩みがしただけで…」

「帰るわよ、栞。今すぐに」

「え…でも……」

「雪だるまくらい、入学したらいくらでも作れるわよ。4月ならまだ雪は残ってるわ…ね?」

「……はい。ごめんなさい」

あたしは栞を抱えたまま昇降口へと向かった。
栞は何度も振り返って、顔の無い雪だるまを見つめていた……


事務所でタクシーを呼んでもらってそのまま病院へと連れて行った。
お医者さんの話では、疲れが溜まっていたのだろう、と言われた。二、三日安静にしていれば大丈夫とのことだった。
あたしは胸を撫で下ろした。そして、これまで以上に栞に無理をさせないことを心の中で戒めていた。



        4

瞬く間に月日は流れた。
栞の受験勉強は順調に進んだ。
むしろ、あたしが何度も無理をしようとする栞を止めて、休ませる事の方が大変だった。

そして……受験まで後三日という日。栞は熱を出してしまった……

「…寝てなかったんでしょう?」

「…ごめんなさい…お姉ちゃん」

栞はベッドに横たわったまま、あたしの言葉に俯いた。

「どうしても…勉強してないと不安になっちゃって…」

「とにかく、今日はゆっくり休みなさい。今から休めば明後日には大丈夫だってお医者さんも言ってたから」

「…うん」

栞はゆっくりと目を閉じた。

寝息が聞こえてきた事を確認してからあたしは洗面器の水をかえる為に台所へ向かった。


嘘だった。
診察に来てくれた先生は薬を注射してくれたが、いつ直るとは言ってくれなかった。
それどころか、明後日の受験の話をするとひどく驚いていた。
その後は何も言わなかったが……あたしにはわかった。受験なんてとんでもない、と言う先生の心の声が。

前々から感じていた疑問が大きくなった。
栞はなぜ退院できたのだろう? とても万全の容体とは言えないこの体で。
昔から入退院を繰り返していたが、これほど長く家にいたことはない。
そして、栞が高校進学を希望した時のお父さんとお母さんの不可解な態度。
少し迷ったようだったが、すぐに栞の願いを聞き入れていた。
そして……栞の喜ぶ姿を……喜んではいなかった。

あたしは考えるのを止めた。
すべてあたしの想像だ。あたしが思いつかないこともあるのかもしれない。
考えすぎると……怖い想像をしてしまいそうだから。


        5

チュン、チュン……

「うん?…あたし…寝てたの?」

時計を見ると、時刻は5時過ぎだった。
昨日はずっと栞に付いて徹夜で看病していた。
そっと、栞の額の濡れタオルを取って、額に手を当てる。
……熱は引いたようだった。
顔色を見る…うん、昨日より随分良くなったように見える。もう大丈夫だろう。

「お…姉ちゃ…ん?」

「あ、起こしちゃった? まだ寝てていいのよ」

「…ごめんなさい…私、また迷惑かけてる…」

「何言っているのよ。病気なんだから仕方がないじゃない」

「でも…私はいつも」「栞」

栞の言葉を遮って言葉をかける。

「病人は黙って休んで元気になることよ。それが恩返し、でしょ?」

「……はい」

「熱は下がったみたいだけど、今日は安静にしてなさい」

「でも…」

「…多いのよ。一生懸命勉強してきたのに、試験の日に病気で散々な結果に終わる人って…」

「…そんなこと言うお姉ちゃん、嫌いです…」

「はいはい。わかったなら今日は大人しくして、明日に備えるのよ」

「……はい」

あたしは栞の頭を撫でる。細く、短く切り揃えた髪を撫でながら思う。
細く、白い肌の人形のような少女。これがあたしの妹。
両親は共働きだった為、栞にはいつもあたしが付き添っていた。
入院中はほとんど毎日通った。
家にいる時は、真っ先に帰り、栞の様子を見るのが日課だった。
あたしの、大切な、かけがえのない宝物。

「くすぐったいよ……」

栞が照れくさそうに笑う。

大切なモノ。決して失いたくないモノ。
……!
あたしは考えを振り払うように頭を振る。

「……どうしたの? お姉ちゃん?」

怪訝な表情であたしの顔を覗き込む。

「ううん、なんでもないわ。あたしもここで少し横になるから、何かあったら起こしてね」

「うん」

栞を寝かしつけるとあたしも、その横で掛け布団だけ被って横になる。

…徹夜の看病で疲れているのだろう。
だから…おかしな事を考えるんだ…きっとそう……


        6

日曜日。いよいよ栞の入学試験の日。
栞は元気になった。もちろん、無理ができないことには変わりないのだが。
あたしは栞に付いて一緒にタクシーで学校へ向かう。
栞は歩いて行くと言ったが、病み上がりの栞に無理をさせたくなかったからだ。
試験前に再び体調を崩しては元も子もない。

「ねえ…お姉ちゃん」

「ん? どうかしたの、栞?」

「ううん……えーと……」

タクシーの中で栞が言いにくそうに言葉を濁す。
不安なんだろう。
学校という空間にほとんどいたことのない栞。
試験という未知の舞台への恐怖と、病気で二日間勉強できなかったことが。
あたしは栞の頭を抱え込むようにして、自分の胸に押し当てる。

「お姉ちゃん…?」

「…大丈夫よ。栞はあれだけ頑張ったじゃない…」

「あ…」

「きっと、大丈夫よ…」

「…うん」

小さく栞が返事をした。



それから5分ほどでタクシーは学校の正門に付いた。
続々と受験生が入って行く中、あたしは校舎の前で栞に向き直る。

「…それじゃあ、あたしはここで待ってるわ」

「え、でも…」

「いいのよ。部室にも用事があるから。試験の終了時刻にはここに来るから」

「…はい」

「頑張ってね…栞なら大丈夫よ。なんてったって、学年主席のあたしの妹なんだから」

「…あまりプレッシャーかけないでください…」

言葉とは裏腹に栞の表情は微笑んでいた。



        7

キーーンコーーンカーーンコーーン

試験開始のチャイムが鳴った。
あたしは部室で一人、椅子に座っていた。
部室に用があったわけではない。ただジッと待つ場所をここ以外知らなかっただけのこと。
入学試験中ということもあって、図書室などの施設の教室は開いてなかった。
どうにも気が滅入る。することが無いとどうしても考え事にばかりしてしまう。

栞はちゃんと問題を解けているだろうか?
栞はちゃんと筆記用具を揃えていたのだろうか?
栞は物を消しゴムを落として困っていないだろうか?
栞は解答欄を間違って書き込むような事はないだろうか?
栞は……気分を悪くしているような事はないだろうか……?

駄目だ。もう限界だ。このままここにいたら心配のあまり正気を保っている自信が無い。
あたしは部室を出ると、試験中の教室へと向かった。


試験教室の棟が近付くと、あたしは音を立てないように静かに歩いて行く。
柱の影から廊下を覗き見る。
廊下には先生の姿は見えない。
そっと、歩いて栞の教室を探す。
確か……1−Fの教室だったはず。
1−A、1−B、1−C、1−D、1−E……1−F! ここだ!
あたしはそっとドアの前にしゃがみ込むと慎重にドアをほんの少し開ける。
そして教室を覗き込んだ。
………………いた!
栞は教室の最後部の席にいた。テスト用紙を真剣な表情で読みながら、答えを書き込んでいる。
見た所、問題に詰まっている様子はない。順調なのだろう。
思わず、安堵のため息を小さく付く。

「君、何をしているんだ」

「!?」

突然背後から掛けられた声に悲鳴を上げそうになりながら辛うじて堪えて、後ろを向く。

「…? 美坂じゃないか。こんな所で何をしてるんだ?」

声の主は担任の石橋だった。



「…なんだ、そういうことか。美坂に妹がいたとは初耳だな」

無人の職員室で事情を聞かれたあたしは素直に理由を話した。
別に隠すようなことではないと思ったから。しかし、

「石橋先生。あの娘…昨日まで体調を崩していたので…それとなく見てて上げてくれませんか?」

栞の病気の事は言わなかった。

「ああ、わかった。最後部の窓側から3列目の娘だな。注意しておくよ」

「よろしくお願いします」

あたしは深々と頭を下げて、職員室を後にした。


部室にいても、気が滅入るだけなので、校内をうろつく事にした。
校舎、体育館、食堂、グラウンド……誰もいなかった。いつもの喧騒が嘘のように静かだった。
歩きながら気付いた。これは出願の時に栞を案内したルートだ。
栞が合格すれば……あの時のように肩を並べて歩くことが普通になるのだろうか?
未だに外出すら制限をしているあの栞が。

栞と一緒に通学して、
栞をあたしの友達に紹介して、
栞が忘れた辞書をあたしのクラスまで借りに来て、
栞と一緒にお昼ご飯を中庭で食べて、
栞と一緒に下校して、
栞と一緒に商店街に寄り道をして、
栞と一緒に帰宅する。

事ここに到ってもどうにも不思議な気分になる。
そうなれば、どんなに楽しいことだろうか。
しかし、実感が湧かない。
まるで眠りの中、楽しい夢を見ているようにリアリティのない話に思えてならない。
思わず自分の頬をつねってみた。

「…痛い」

夢ではない。
そう、きっとこれからがあの娘にとっても、あたしにとっても初めて訪れる充実した時なのだ。
この時の為にあの子は生まれてきた……神様なんて信じたことはないけど、これ以上悪い事ばかりではないはずだ。きっと……

気持ちの整理ができた時、試験終了のチャイムが鳴った……


        8

昇降口に入って栞がやってくるであろう廊下を見つめる。
続々と出てくる受験生。
長らく続いた『戦争』を終えた直後とあって、賑やかに会話をしながら歩いてくる。

「あ、お姉ちゃ〜ん」

栞があたしを見つけて駆け寄ってくる。

「どうだった?」

「う…ん。一応全部書けたけど…」

「え? 全部解けたの?」

「う、うん。間違ってるかもしれないけど……」

普通の受験生は解けない問題の一つや二つはあるものだろう。
栞はあたしの想像以上に優秀なのかもしれない。

「大丈夫よ、栞はあたしの妹なんだから。姉妹揃って学年主席も夢じゃないわね」

「そ、それは、ないですよ〜」

白い頬を赤く染めた表情が可愛かった。

「後は結果を待つだけね……あ、そうだ。ご褒美にアイスでも買っていこうか?」

「…アイスクリームは好きですけど…冬にはちょっと……」

「冗談よ」

「あ、そんなこと言うお姉ちゃん、嫌いです!」

会話を楽しみながら今度は栞の強い希望で二人で徒歩で帰った。
これが現実。あたしは悲観的過ぎたのかもしれない。
そんな事を考えながら栞との会話は途切れることはなかった……


        9

「栞、なにやってるの。遅れるわよ」

「わ、ま、待ってくださ〜い」

栞が情けない声を上げながら髪を整えている。
今日は合格発表の日。
いつものようにあたしが付き添って行くのだけど…
栞はその大事な日に思いっきり寝坊した。
まあ、試験と違ってそれほど慌てる事はないのだけど…

「栞、あなた眠れなかったんでしょう?」

「は、はい…」

やっぱり…まあ、無理もないけど……


徒歩で15分。登校中、栞は一言も喋らなかった。
ここは何を言っても気休めにしかならない。
あたしはあえて何も言わなかった。


学校に着いた。家を出るのが遅れた為、すでに受験生の姿はそれほど多くは無かった。
人込みを避けれたのは栞にとっては幸いだったかもしれない。

「栞、あそこの掲示板に載ってるわ。番号はわかってる?」

「はい……537です…」

栞が受験票を確認しながら言った。

「じゃあ、一緒に探しましょう」

不安げな栞の背を押してあたしは掲示板へと向かった。

「えーっと……537だから、500番台は…あそこね。栞、あの辺にあるはずよ」

「は、はい……」

530、532、533、535、536、53……7!

「あ……」栞が小さく声を上げる。

栞を見る。栞は呆然とした様子で掲示板を見つめていた。

「栞…?」

「あの…私…つまり…その…ご、合格なんで、きゃあ!」

あたしは栞の軽い体を抱きしめた。

「そうよ…あなたは、あたしの後輩になったのよ…おめでとう、栞!」

「あ…は、はい!」

抱きしめた栞の体が震えていた。泣いてるのだろうか?
あたしは確認しなかった。栞の顔を見れば…あたしの泣き顔を見られてしまうから……


それから入学手続きの書類を受け取り、学校を後にする。

「…栞。身体はなんともない?」

「え?…はい、大丈夫ですよ」

「よし…それじゃあ、商店街に寄って行こうか?」

「ええ! 本当ですか!?」

「ええ。少しぶらつくのも良いでしょう。それに…制服もあるしね」

「え?」

「だ・か・ら。栞の制服よ、高校の。用意しなきゃダメでしょう?」

「あ…」

「栞は小さいからね…サイズがあれば良いけど…」

「そんなこと言うお姉ちゃんなんか大嫌いです!」

他愛のない会話をしながら商店街に寄り道をする。
これが普通になるのだ、来月から。もう、まもなく…


        8

4月8日。今日は始業式の日。
栞の高校生活最初の日。

「…栞、早くしなさい、遅れるわよ」

「わわ、ま、待ってくださ〜い」

栞が情けない声を上げながら髪を整えている。
今日も栞は寝坊した。

「そんなに髪の手入ればかりしたってしょうがないでしょう」

「そんなことないです。ひょっとしたら運命の人と出会えるかもしれないじゃないですか!」

「…栞、あなたドラマの見過ぎよ…」

「えー、でもでも…」

「いいから早くしなさい。入学早々遅刻なんかしたら運命の人も逃げ出しちゃうわよ」

「そんなこと言うお姉ちゃんなんか嫌いです…」


それからまもなく二人で家を出た。
登校中も、栞は終始、笑顔だった。
通り過ぎる自分と同じ制服を着た生徒を物珍しそうにジッと眺めている。

「…栞。あまり他人をジロジロ見るのは止めなさい」

「えー」

「えー、じゃないわよ。変な子だと思われるわよ」

「…はーい」

答えて、栞はまたジッと眺めだす。
小さくため息をついてあたしは栞への注意を諦めた。


学校に到着した。
新学期の為、クラスが変わる。あたしはクラス構成のプリントを係の人間から2枚受け取ると、栞に渡す。

「まずは、クラスを確かめないとね…栞は…」

「1−Eです!」

「1−Eね…あたしは…2−Fね。栞、何かあったら2−Fまで来なさいね」

「はい!」

昇降口で上履きに履き替えた。

「それじゃあ、栞。頑張ってね」

「はい!」

栞は元気良く答えて、片手を振りながら教室に向かった。
その姿を見届けてからあたしも自分のクラスに向かった。
自分が浮かれているのがわかる。
自分がこれほど、わかりやすい性格だとは思わなかった。
それとも…あの娘があたしにとって特別だからだろうか?


「おはようっ」

「あ、香里! おはようっ」

クラスに入ると、同じクラスの友達に声を掛ける。

「名雪は…来てるわけないか…」

「アハハ、香里も当たり前のこと言うもんじゃないわよー」

「…今、あたしの悪口言ってなかった…?」

言ってるそばから名雪が教室に入ってきた。時計を見ると予鈴二分前だった。

「おはよう、名雪。相変わらず心臓に悪い登校しているみたいね…」

「おはよう、香里。好きでやってるんじゃないよ…」

ため息をつきながら名雪はあたしの顔を見て、怪訝な表情をした。

「…香里……なにか良いことでもあったの?」

「え?」

「なんだか…嬉しそうだから…」

鋭い。このボーとした外見に騙されそうになるが、名雪は意外とこういう洞察力に優れている。

「まあ…ね。機会があれば教えてあげるわ」

「そんな言い方されたら気になるよ〜」

不服そうな名雪をよそに、あたしは窓の外を見る。
外にはまだ残雪の包まれた中庭が見えた。

雪が解けたらあそこで栞とお弁当を食べよう。
そうだ。名雪も呼べば、どちらも喜ぶだろう。
栞もそれまでには友達も出来るだろうし、その子も一緒ならいいな…


体育館で始業式がとり行われた。
校長の長い話を聞きながら、栞の姿を捜す。
しかし、大勢の生徒の中、栞を見つけることはできなかった。

始業式はおよそ30分で終わった。
後は自己紹介などを兼ねたHRだけだ。
担任は去年と同じ石橋だった。
自己紹介を始めて、まもなくの事だった。

コンコン。
教室の前のドアが開いて、社会科の先生が顔を出した。
怪訝な様子でクラス中の人間が見つめる中、その先生は担任の石橋を手招きで廊下に呼んだ。

「あー、ちょっと待っててくれ」

石橋が声を掛けて、廊下に出る。
一斉にクラス中の人間が会話を始めて騒がしくなった。

「なんだろうね?」名雪があたしに話し掛けてくる。

「さあ……」あたしはどうでもいいと言った感じで答える。

数分後に、石橋が再びドアを開けて入ってくる。ピタリと会話が止んだ。

「おい、美坂。ちょっとこっちに…」石橋はあたしを呼びながら手招きをする。

「え?」戸惑うあたし。

全員の注目が集まる中、あたしは招かれるままに廊下へと出た。


「あの…なにか?」

「美坂、確か新入生にお前の妹がいたよな?」

ズクン!
心臓が鷲掴みされたような衝撃を感じた。

「栞に…栞に何かあったんですか……」

震える体と声を必死に抑えながら、尋ねる。

「さっきHR中に教室で倒れたんだ。保健室に連れて行ったんだが、保健医が異常を感じて、
急遽病院へ連れて行ったんだ。家に連絡しても繋がらなかったので……」

目の前が真っ暗になったような気がした。
それから自分がどうしたのか、まったく記憶にない。
後で聞いた話では、あたしは落ち着いた様子で、早退して病院に向かったらしい……


        9

栞は再び入院した。
意識不明の重症だった。
病院の手続きは夜になってから来たお母さんがしたらしい。
あたしは…無理を言って、栞の病室にいた。
暗闇の中、椅子に座ってただ栞を見つめていた。
口には酸素マスクを付けて、片手には点滴。心音を計る機械、それ以外にもあたしにはよくわからない機械がたくさん取り付けられている。

失望と諦めがごちゃ混ぜになってあたしの心を苛んでいた。
なぜ、こんな事になってしまったんだろうという、失望。
やはりこうなってしまったかという、諦め。
そして…栞を追い詰めたのは、栞の夢と言われて浮かれていたあたしではないかという思い。
そうだ。最初から無茶だったのだ。そんな事はわかっていたはずなのに…あたしが…あたしが…止めなかったから…栞は……

あたしは物音を立てないようにそっと部屋を出た。
もう栞の顔を見ている勇気がなかったから……


部屋を出た後、宛てもなく夜の病院を彷徨っていた。
どこへ向かおうとしてるわけでもない。ただ、立ち止まると二度とそこから動けなくなる。そんな奇妙な思いに取り付かれてあたしはゆっくりと病院内を歩き回った。
そして……一つの部屋を横切ろうとした時……それは聞こえた。

「だから、私は無茶だと言ってたのよ! それをあなたが…!」

「今更、何を言ってるんだ! お前もあの時は賛成しただろう!」

お母さんと、お父さんの声だった。

「お二人とも止めてください!……まだ助からないと決まったわけではありません。どうか我々を信じて…」

助からない……?
誰が……?

「…とにかく、今日の所はこれでお引取りください。私たちが介護しておきますので……」

二人、誰かが文句を言いながら部屋を出て行く。
あたしは反射的に柱の影に隠れた。
その二人を見送った男は、小さくため息をついて、部屋に戻った。
あたしは……導かれるようにその部屋に入った。


「?……君は、確か美坂さんの…」

「先生……誰が助からないんですか?」

「!?……聞いていたのかい?」

「あの娘の…こと…なんですね…?」

「……」

「答えてください…あの娘は…後どれくらい…」

「……このままだと……1年……いや、10ヶ月といった所だろう」

10ヶ月。
来年の1月?
あの娘の誕生日も…もたない?

「……」

「希望を捨ててはいけない。確かに現在の医学では難しい症状ではあるが、回復した人がいない訳ではない……奇跡を信じて、見守ってやってくれないか……?」

「奇跡……?」

奇跡。
奇跡…
奇跡……?

「奇跡ってなによ…」

「え?」

「いい加減なこと言うんじゃないわよ! 奇跡ですって? そんな安易な言葉で誤魔化さないでよ!」

興奮したあたしは先生の胸倉を掴んで引き上げた。

「はっきり言えば良いじゃない! 助からないって! どうしようもないって! あの娘は、あの娘は……」

「あなた、何をしてるの!」

通りかかった看護婦があたしを後ろから抑えて、先生から引き剥がした。
あたしは、その看護婦を振り切ると、全力で廊下を走った。後ろから呼び掛ける声がしたような気がしたが、あたしには聞こえなかった。


逃げようとか、そんなことを考えたわけじゃない。
ただ、ジッとしていられなかった。
走って、走って……

「ハア、ハア、ハア……」

息が続かなくなって止まったそこは……公園だった。
栞と以前に来た公園。
今は夜。噴水は止まって、少ない外灯があたしだけを照らしていた。
ゆっくりと辺りを見回す。噴水から少し離れた場所……天子像だろうか?
あたしは導かれるようにその銅像に近付く。
薄闇の中ではっきりとはしないが、確かに天子像のようだ。

『奇跡を信じて、見守ってやってくれないか……?』

医者の先生の言葉が頭の中に蘇る。

「…ったわよ…」小さく呟く。

「何度も、何度も。15年間毎日祈ってたわよ! あたしは!!」

銅像の台座に拳で殴りつける。興奮の為か、痛みは感じなかった。

「祈って、願って、想い続けたわよ! それでも、それでも何も変わらなかったじゃない!!」

叫びながら両手の拳を繰り返し叩きつける。思い切り。力の限りに。

「何が奇跡よ! 何が希望よ!! そんなもの何もないのよ!!!!」

ガツゥ!

「う……」

さすがに痛みを感じてあたしは銅像の台座にすがりつくように倒れこむ。

「あの娘が何をしたっていうの……? あたしたちが何をしたっていうの……?」

理不尽だ。
もっと死ねばいい人間なんていくらでもいるのに。
どうして……あの娘なの?

「あの娘、なんのために生まれてきたの…」

あたしはそのまま台座にすがりついたまま動けなかった。
不思議と涙は出なかった。
ただ、両手から滴る赤い血が、涙のように見えた……


        10

季節は流れる。
栞が意識を失ってから半年以上が過ぎた。
栞は、まだ意識を回復していない。
時は10月。
あの先生の言葉の通りならば、栞の寿命は後、4ヶ月……


あたしはあれから一度も病院に行っていない。
意識不明の状態だから世話は看護婦の人がしている。お見舞いに行っても仕方がない。
それが表向きの理由。

あたしは怖かった。
自分があの娘をどう見れば、どう接すれば良いのかわからなかった。

家にいれば否応無しに栞の事を思い出す。
だからあたしは出来るだけ家に帰らなかった。
特に学校に長居するようになった。
名雪には「学校にいるのが好きなんだね」なんて言われていたが。
…あるいは名雪はあたしの想いに気付いているのだろうか?
妹の事は言ってないはずだが…

とにかく、学校を出れば、意味もなく商店街をぶらついて帰る。
家に帰れば、夕食、入浴を済ませると、すぐに眠った。
早く朝になれば良い。そうすればまた学校に行ける。
そんな生活を続けていた……


10月も半ばのある日。
栞の意識が回復したとの連絡があった。
両親はやはり仕事でいない。
あたしが…行かなければならなかった。
心の整理がつかないまま……


時間は午後2時過ぎ。
看護婦に案内されて、病院の廊下を俯いて歩くあたし。
今の栞の様子を話してくれていたようだが、あたしの耳には一つも入っていなかった。
ただ、どう話し掛け、どう接すればいいのか。その事で頭の中がいっぱいだった。

「さ、どうぞ」

看護婦の言葉にハッとして、顔を上げた時、開かれた扉の向こうに……あの娘がいた。


栞はベッドに横たわっていた。
相変わらず点滴を受けているが、それ以外の機器はない。
そして、栞の姿は……以前とは比べようもないほど、やせ衰えていた。
ただでさえ、軽く、細かったあの娘が。
栞の視線が動いて、あたしを捕らえる。

「ん……!!」

あたしは……身を翻して逃げ出した。


そのままあたしは栞に会わなかった。
あたしの様子を察した病院の人が両親に連絡してくれた。
両親はそれからしばらくして病院に来ると、今後の方針を話し合ったらしい。
栞はしばらく体力が回復するまで入院を続けることになった。
あの姿は……病気よりも長期間の意識不明状態の為らしい。しばらくリハビリをすれば入院前の状態に回復するそうだ。
でも……それだけ。病気が直るわけではない。
そして……あの娘は家で死を迎える。現実は何も変わらない。


        11

12月24日。クリスマスイブ。
あたしはいつもと変わらず、栞のお見舞い。

あたしと栞の関係は……まったく変わってしまった。
あたしたちは顔を合わせても話し掛けることはない。
まるで、お互いが存在しないかのように。

栞は知っているのだ。あたしが逃げた事を。
栞から目を逸らした事を。
栞は…あたしを軽蔑したのだ。

そんな栞に声を掛ける勇気が…あたしには無い。
ただ、無言で病室に入り、持参した着替えを交換する。

無言。

今日もそのまま終わる…そう思っていた。


いつもの通り、着替えを交換し、冷蔵庫に飲料水を補充する。
そして、いつもの通り帰ろうとした時……

「お姉ちゃん…」

ドアノブに手を掛けて止まる。
そのまま…あたしは動けなかった。

「今日は…クリスマスイブですね…」

半年…いや、およそ8ヶ月ぶりに聞く栞の声……ひどく弱々しく聞こえた。

「お姉ちゃん…ゴメンね」

「え……」

「私バカだから…お姉ちゃんを怒らしちゃったけど…」

違う。栞のせいじゃない。悪いのはあたし…逃げてしまったあたし。
だけど…声が出なかった。

「これだけは教えて……お姉ちゃん、私は…いつまで生きられるの?」

「!!」

栞は知ってたの?……いや、違う。栞は悟ったのだ。自分の寿命がわずかな事を。
でも……それをあたしに言わせるの?
あたしが……辛くないとでも思っているの?

この辛さは…悲しみは…誰のせいで、こんな想いをしていると思っているの!?

「……誕生日」

「え?」

「お医者様が言うには……あなたの誕生日までもたない……そう言ってたわ」

あたしはひどく冷めた口調で言った。
どうでも良いことを口にするように。
今まで感じていた胸の痛みは無かった。

「そう…か…」

「……」

「それじゃあ、体力も戻ってきたし最後は家に帰れるかな?」

明るい声で栞が言った。

「でも、学校は無理かな……お姉ちゃんに迷惑は…」

「あたしには…」

「え?」

「あたしには、妹なんていないわ」

「……」

言った。
それは決別の言葉。
あたしの前からいなくなる少女。何よりも大切なモノ。
この辛さを、この悲しみを捨てる為に。
あたしは……全てを白紙にした。
最初から妹なんていなかった。
大事なモノが無ければ……失う辛さも悲しみもありえない。
それが……あたしの結論だった……


年が明けて1月7日。
栞は退院した。
あたしは…顔も合わせなかった。



        終章

朝の校門前。

「名雪、時間は?」

「えっと…わ、まだ10分もあるよ」

「奇跡だな」

奇跡?

「そうだね」

「相沢君」

「うん?」

「奇跡ってね、そんな簡単に起こるものじゃないのよ」

「…?」

そう、起きないから、奇跡なのだ。だから……

あたしは奇跡なんか信じない。
あたしは神様なんて信じない。

信じても、裏切られるだけだから。

あたしは全てを捨てたのだ。
神も奇跡も、現実も……

FinTo be continue……Kanon's Game)


あとがき

ここまで読んでくださってありがとうございます。御巫吉良です。

実を言うと、カノンのSSを書こうと思ったとき、初めは栞の話を書こうと思っていました。
その為に、もう一度、栞ルートでカノンをプレイしていたのですが……ジックリ読んでいるうちに次第に香里に注目しだしました。
ずっと体の弱い妹を持つ姉。
まして、15年もの間、病弱な妹を持てば、何かと苦労も多かったであろう彼女。
そんな大切な妹の『確実な死』を宣告された彼女。
彼女が正気を保っているだけでも『奇跡』だと思いました。

栞と祐一のストーリーも良いですが、二人とも「どうしてそんなに強くいられるんだ?」と疑問に思いました。
私では耐えられません。香里と同じ選択をしたと思います。

祐一が、香里に栞と接してやれと説得するシーンには祐一に対して怒りすら湧きました。
「会ったばかりのお前に何がわかるんだ!」と。
共に過ごした時間が問題ではないと意見もあるでしょうが、私には15年もの間、接してきた彼女にしか持ち得ない想いがあると思ったのです。
そして、香里が栞を妹と認めるシーン。
認める前の「……」に、どれほどの葛藤が渦巻いていたのかを考えると、涙が出てきました。

ゲーム中の香里を追うストーリーにしようと思いましたが、どうも私は既存のストーリーの再構成は苦手なようで……
そこで美坂姉妹の過去を想像して書いてみました。
彼女の妹への深い想いと愛情、その重さ故に誤った選択をせざるを得なかった彼女の悲しみが少しでも表現できたなら幸いです。

掲示板メールか、感想用フォームでのご感想、お待ちしております。
次はうって変わって、カノンのギャグSSの続きを書く予定です。
それではまたよろしくお願いします。

追記:暗いSSですいません。気分を害した方はこちらのラブラブなSSを御覧ください♪

99/8/26作成

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