コンコン。 「織姫さ〜ん、入りますよ〜」 「……」 「あれ?……織姫さん、寝てるんですか?」 「……ナンデスカ、アキコ」 「ああ、起きてましたか。はい、夕御飯ですよ。まだ食べてないんでしょう?」 「イラナイ……」 「いけませんよ。御飯を食べないと大きくなれませんよ!」 「ハア?ナンデスカ、ソレハ?」 「え、あ、ご、ごめんなさい!母の口癖でつい……」 「クックック……ジャア、アキコハ、ディナー、食ベナカッタノカシラ?」 「ええ!? ヒドイなあ〜。ちゃんと食べてましたよ。大きくはなれなかったけど……」 「ソーリー。ジャア、食ベヨウカシラ。大キクナラナイト困リマースシ」 「あああ!もう言わないで〜恥ずかしい……」
「アラ、アキコ。今日ノ実験演習ハドーシタノデスカ?」 「え、あ、それは、その…… あ、そう!鳴滝さんが織姫さんの具合が悪いから中止にしてくれたんです!」 「アキコ……嘘ガ下手デース」 「う……」 「アキコ、サボッタノ?」 「鳴滝さんには断ってきたんですよ……」 「ジャア、今、レニと2人ダケデ実験演習シテルノデースカ?」 「ええ……あ、えーと、そうそう! 鳴滝さん、織姫さんの事心配してましたよ! 早く元気になって欲しいって!」 「……ソレモ嘘ネ」 「う……」 「ホーントハ、ナンテ言ッタノデースカ?」 「……怒らないで下さいね……『駄々っ子は放っておけ』って……」 ムカ! 「……行クワ」 「え?」 「今カラ演習ニ参加スルデース! アキコ、行キマスヨ!」 「え?え?え?……ああ、待ってください織姫さ〜ん!!」
「……織姫さん、判ってあげてくださいね。鳴滝さんは別に悪気があって言ったわけじゃないんですよ」 「……ハイハイ、モウ結構。ホーント、アキコハ、鳴滝ノコトニナルト必死ナンデスネー」 「(ボッ!)な、な、な、何ですか、それ! べ、べ、べ、別にそう言うわけでは……!」 「隠サナクテモ、タブン、レニデモ判ッテマースヨ。アキコガ、鳴滝ニ、アイラブユー、ッテコトハ」 「は、はうう……」 「マーッタク、日本人ノ男ナンテ、ドコガ良イノヤラ……」 「え〜、でも鳴滝さんは良い隊長さんだと思いませんか? みんなに分け隔てなく優しいし、何時も私達への気配りを欠かすこともありませんし…… 最高の隊長だと思います」 「……マー、日本人ノ男ニシテハ、マシナホウカモシレマセンネ……」 「……」 「?……アキコ、ドーシタノ?」 「……ぶつぶつ……そうですよね……鳴滝さん、素敵ですし。 あたしみたいなチビブスなんかより……織姫さんみたいな綺麗な子のほうが…… 釣り合いってものが……」 「アーキーコ! ナーニ訳ノ判ラナイコト言ッテルデスカ! 私ハ日本人ノ男ナンテ、 ノーセンキュー、デース!」 「……いいんです。どうせ私は17歳にもなって身長は150cmもないし、体も子供みたいだし、 14歳の織姫さんと一緒に歩いてても妹と間違われるし……」 「アーキーコ! 人ノ話ヲ聞キナサーイ!!」
……眼が開いた。 「夢……」 すっかり見慣れた大帝国劇場、自室の天井を見ながらソレッタ・織姫は呟いた。 (どうしてあーんな夢を……) そう考えた瞬間、昨日の出来事を思い出した。 鳴滝鉄幹(なるたき・てっかん)。かつての『星組』隊長との3年振りの再会。 (ずっと忘れてた……違う、思い出したくなかった……) 上半身を起こして部屋を見まわす。まるで台風が通り過ぎたかのような散かり様だった。 昨日の自分の荒れ様を思い出して織姫は赤くなった。 「これを片付けるのは苦労しそーでーすね……」 ベッドから降りて立ちあがると床に落ちたものを一つ一つ拾い上げる。 その時、一枚の写真が目に入った。 「……まだ、一枚残ってたのでーすね……」 写真は6人の集合写真だった。 織姫、レニ、米田、あやめ、鳴滝。そして……もう一人。 「アキコ……私、もうアナタと同い年なんでーすね……」 鳴滝に寄り添うように立つ小柄な少女は幸せそうに微笑んでいた。 サクラ大戦外伝〜星屑の記憶〜 第2話 星の記憶・心の記憶 作:御巫吉良(KIRA・MIKANAGI)
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