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持駒不使用将棋


2000年10月末から11月始めにかけて将棋倶楽部24で、「持駒を使わない」というルールの変則将棋大会が、Seleneさん主催で行われました。 私はその大会に出場し、参加者5人中1位になりました。

ここでは、その大会で1位を決めた将棋を紹介しながら、持駒不使用将棋の戦略を解説します。



一枚の駒が勝敗を分ける

 成桂だけの詰み1  右図が大会の将棋の最終盤である。ほとんどの駒は交換されて消えてしまい、残るは2枚の玉と1枚の桂馬だけとなっている。先手は果たしてこれだけで後手玉を詰ますことができるのか不安になるが、うまく後手玉を追いつめて詰みに持ち込むことができる。

まず、桂を成って金にする。こうなれば、歩でも香でも金でも、小駒は同じ価値だ。金は後ろへの利きが弱いので、後手玉に下に潜られると詰まない。そこで、成桂と玉がスクラムを組んで下段までおりてくるところから始める。そして、一枚は5筋に、もう一枚は後手玉と向かい合い、その前進を阻む位置に配置する。そうすると左下図のような状態になるだろう。


 成桂だけの詰み2   成桂だけの詰み3 

ここから、後手玉は成り桂の裏に回り込もうとするが、それを阻止するように玉を動かす。
△6三玉 ▲6五玉 △7三玉 ▲7五玉 △8三玉 ▲8五玉。ここまで来ると△9三玉 ではもう回り込めないので△7三玉 と戻るしかない。そこで、▲5四成桂(右上図)がぴったりとなり、後手玉は後退を余儀なくされる。
これを繰り返せば、九段目から始めても一段目まで追いつめて頭成桂の詰みに持ち込めることがわかるだろう。
さらに、金2枚対金1枚、金3枚対金2枚といった場合でも、駒得した側が勝つことができる(と思う)。

このように、持駒不使用将棋は一枚の駒損が命取りになる。序盤から、一歩も損しないように注意を十分に払わなければならない。
普通の将棋では、横歩取りのように駒損をしても手得があれば良しとされるが、その考え方は捨てなければならない。また、中盤では盤の端に置き去りにされた桂香が取られることがある。そのようなことがないように、一筋から九筋全体を防御する必要がある。



駒の価値の違い

 金だったら…  上のような局面では、小駒はどれも金と同じ価値である。しかし、駒数がまだ残っている状態では、駒の価値は異なってくる。右図を見てほしい。もし、6三の駒が銀でなくて金であれば、△5四金 として持将棋になるだろう。しかし、銀であるために△5四銀 ▲6四金 となってしまう。金銀交換になる場面はよく出現するが、金と銀の差は思う以上に大きい。

一方、大駒は特に序盤において特に重要な役割を果たす。普通の将棋と違い、大駒の利きを止めるために歩を打つことができないので、うっかりするとすぐに受けがなくなってしまう。敵陣に一方的に飛角が成り込めれば勝ちはかなり近くなるだろう。また、駒数が少なくなっても大駒が残っていた場合には、その動きのダイナミックさを活かして盤の端にある駒をかすめ取るのが有効になる。しかし、その強力さから逆に早期に交換されてしまい終盤まで残らないことの方が多い。

飛車と角では、普通の将棋以上に飛車が強い。「飛車と角では動けるマスの数が飛車の方が多いので飛車の方が価値がある。」という話は将棋を学び始めた頃よく聞かされる話だが、まさにそのまま当てはまっている。盤面の中央付近に歩が進んできたとき、飛車は右に左にスムーズに動けるのに対し、角は自分の駒に進路を妨害されてうまく働くことができない。

二枚換えがどちらが得かは難しい問題である。飛車と金2枚の交換は飛車の方がよい気がするが、角と銀桂なら銀桂の方がいいかと思ったりもする。正直よくわからない。




序盤の戦術

序盤に限ったことではないが、駒損をしないことが重要だ。角道を開けるために突いた歩をかすめ取られたり、飛車先を強襲されることのないよう気をつけなければならない。
特に棒銀は有力な戦法だと思う。角道を開けにくいことと合わせると、がっちり受けることは難しい。少なくとも龍を作ることはできるだろう。したがって、棒銀に対しては受けを最小限にして同じく棒銀で対抗するのが最善だと思う。

そのように飛車が活躍する展開になると、どちらか苦しい方が飛車交換を仕掛けて飛車が消えてしまうことが多い。また、角も▲7六歩 △3四歩 となった時点で交換されてしまいやすい。そうして、地味な展開の中盤戦になると、よりいっそう持ち駒不使用将棋独特の世界に突入していく。

中盤の戦術にはいる前に、端の重要性を指摘しておこう。序盤で端歩を突くか、突かれたとき受けるかは悩むところである。おそらくどちらがいいとはいえないと思うが、例えば、先手が▲1五歩 と突き越すと、普通はさばきにくい桂馬を▲1三桂成 △同香 ▲1四歩 のように使えることは覚えておくべきだろう。その代わり、後手の△1四歩 から香を交換されてしまって手損に終わることも考えられる。



中盤の戦術

大駒が交換されてしまうと、玉がすぐに詰まされる危険性はほとんどなくなる(大駒があってもなかなか詰まないが)。そこで、玉、金、銀を中央に繰り出して、陣地取り合戦となる。五段目まで制圧できれば、相手の歩が守りにくくなってどれかをかすめ取ることができるだろう。こつは、できるだけ置き去りになった駒を作らないように交換を繰り返しながら、金銀がスクラムを組んで前進していくことである。

しかし、どちらにもミスがなければそのまま金銀まで交換されてしまうことだろう。そうなれば、終盤に突入となる。



終盤の戦術

 ほぼ同形   後手、右辺を制す 

大会の試合の一つで左上のような局面になった。(棋譜を保存し忘れたので記憶の範囲で再現しています。)ここでの後手の最善手は△5四玉 だろう。右辺と左辺では右辺の方が駒数が多いので、右辺を重視すべきだと思う。実際、△5四玉 に▲7五玉 なら、 △8五歩 ▲同歩 △同桂 ▲同桂 △5五玉 ▲7四玉 △4六玉 ▲7三玉 △3六玉 ▲8二玉 △9五歩 ▲同歩 △同香 ▲同香 △3七玉(右上図) という展開で後手が駒得し勝ちとなる。タイミング良く△8五歩 や△9五歩 と突き1対2の交換をして駒損を少なくしているのがうまい手順だ。
そこで、△5四玉 に対しては、▲5六玉 と対抗して千日手になりそうだ。

 先手、右辺を制す  実戦では△7四玉 だった。これに対しては▲5五玉 と先手が右辺を制して勝つことができる。
▲6六玉 △7四玉 ▲5五玉 △7五玉 ▲8五歩 △同歩 ▲同桂 △同桂 ▲4四玉 △2五桂 ▲同桂 △2四歩 ▲3三桂成 △7六玉 ▲3四玉 △7七玉 ▲2四玉 △8八玉 ▲9五歩 △同歩 ▲同香 △同香 ▲2三玉 △1五歩 ▲同歩 △同香 ▲同香(右図) となって、一枚多い先手の勝ちである。(実戦の手順とは異なる。というか覚えていない(^^;)

すでにお気づきかもしれないが、初めの図で後手が一番指したい手は「パス」なのである。玉がどちらかに動いたため、先手玉が五段目に進出できてしまう。後手玉が動かなければ先手玉は前進できない。
つまり、このように動かす駒がほとんどない終盤戦では、相手に手を渡した方が有利になる場合があるのだ。例えば、△9二香 には▲9八香 というように。



最後に

持駒不使用という独特の世界はいかがでしたか?想像した以上に違う世界だったのではないでしょうか。

上で使用した棋譜を勝田将棋盤で置いておきます。こちら


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written by mozu

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