第1問
▲5二金(右図) △同玉 ▲5三金 △同玉 ▲5四金 以下詰み。
持駒が五枚で負けになることから、最初のうちは持駒はできるだけ少ない方がいいと思いがちだが、この問題でわかるようにそうではない。飛角金銀の場合に限るが、むしろ持駒は多い方がよいのである。
この問題の場合、頭金の王手によって、先手は自分の持駒を強制的に相手の持駒に変換している。このことを、私は持駒を「渡す」と呼んでいる。今は、先手に持駒を四枚渡す能力があるため、後手の持駒は一枚しかないのにもかかわらず、即詰になってしまうのである。
第2問
▲5二歩 △同金 ▲同と △同金 ▲同飛成(右図) △同玉 ▲5三金 △同玉 ▲5四金 以下詰み。
しかし、前問のように持駒を蓄えなくても、相手に駒を渡すことは可能である。本問のように、相手の駒を取りながら王手を続けることができれば、持駒が少ない状態からでも詰んでしまう。特に、金将を取れるなら詰みはかなり近いといってよいだろう。
実戦では、このように五枚渡さなくても、四枚渡す能力があれば十分である。四枚渡せるなら、相手は王手でない限り駒を取ることができない。歩を突いてもどこかで止まらざるを得ず、と金を作ることもできない。要するに、自分が四枚渡せるなら相手は何もできないのである。
第3問
▲1二飛(右図) △2一玉 ▲2二金 △同飛 ▲同飛成 △同玉 ▲2三歩成 以下詰み。
本問の先手は、持駒の飛金、2三にできると金、取ることのできる2三の飛と、合わせて四枚渡す能力がある。後手の持駒は一枚なので、合計五枚となり簡単に勝てるように見える。
しかし、すぐに▲2三歩成 とすると先に自分の持駒が五枚になってしまう。そこで、歩を成るより先に持駒を使っておく必要がある。普通の感覚なら▲4二飛 だろうが、資本還元将棋では、△3二桂合 と後手にも持駒を消費されて何をやっているのかわからない。
持駒を使いつつ後手玉を逃がさない手が、▲1二飛 である。△同玉 なら、今度こそ▲2三歩成 が可能になる。そこで、△2一玉 と粘るが、頭金から追い打ちをかけて詰め上げることができる。
第4問
▲5二歩 △同金 ▲同と △同金 ▲6二金(右図) △同玉 ▲5二飛成 以下詰み。
第2問との違いは、後手の3三歩、そして先手の持駒が増えていること。それがどんな意味を持つかは、前問を解いた方にはおわかりだろう。
第2問と同じように進めてみる。▲5二歩 △同金 ▲同と △同金 ▲同飛成…、そう、同飛成とはできないのだ。そこで、飛成の前に金を捨てなくてはならない。それが、▲6二金 である。後手の3三歩のおかげで、△4二玉 には▲5二飛成 △3一玉 ▲3二金 という、通常の意味での詰みがある。
第5問
▲5四銀 △4四玉 ▲5三銀不成(右図) △3四玉 ▲4四銀成 △2四玉 ▲3四成銀 △1四玉 ▲2四成銀 まで。
前問まで、「何枚渡す」と簡単に書いてきたが、実戦の中では事はもっと複雑である。特に、角銀の持駒は相手に渡しきれない場合がある。本問では、生の銀将の不自由さによって、上部に脱出して玉をとらえるのが難しくなっている。
同じようでも、▲4四銀 としてしまうと△5四玉 で、以下▲5五歩 △6五玉 でも、▲5五銀 △4五玉 でも捕まらない。逃げられて困る場所に、▲5四銀 と進出するのが好手である。▲5三銀不成 に△5四玉 には、▲5五歩 △4五玉 ▲4四銀成 を用意している。
第6問
▲7三角 △4二玉 ▲5一角成 △同玉 ▲6二銀 △4二玉 ▲5三銀不成 △3三玉 ▲4二角 以下詰み。
実戦では、玉の周りに受ける駒が密集していることが多い。そのような場合には、銀や角では王手ができなくなることがある。本問では、後手の持駒がすでに二枚あるので、先手の角角銀を渡すことができれば詰みとなる。しかし、▲6二銀 △同銀 ▲4二角 △同金 のような単純な手段では王手が続かない。そこで一工夫して、▲7三角(右図) と離して打つのが好手である。(▲8四角 も可。)
逆から▲3三角 では、△6二玉 と逃げられて、▲5一角成 には△同金 ▲8四角 △7三角 で王手が続かないし、▲5一角打 は、△7二玉 ▲7三銀 △同桂 ▲同角成 △同玉 ▲6五桂 △8四玉 ▲6六角成 △7五銀 で脱出されてしまう。左右対称のようでいて、そうではないのだ。
▲7三角 に対し、後手は△同桂 では左辺の脱出口がふさがってしまうので、△4二玉 と粘る。そこで、先手も▲5一角成 とし、原型のまま角一枚を渡すことに成功した。しかし、再び▲7三角 では、△6二角 で失敗する。次の手は合駒を許さないよう、つけて打つのが絶対なのだ。つけて打つといっても、4二と6二、角と銀という4通りがあるが、そのうち詰むのは▲6二銀(右図) だけである。
まず、先に角を使ってしまうと、▲6二角 △同玉 ▲7三銀 △5一玉 ▲6二銀不成 △4二玉 ▲5三銀不成 △3三玉 ▲4四銀不成 △2四玉 というように、脱出が止まらない。次に、右から▲4二銀 と打つと、△6二玉 ▲5三銀不成 △7二玉 ▲7三歩 △8二玉 ▲7二歩成 △9二玉 ▲8二と △同銀 となって、角を活かせずに終わる。
▲6二銀 △4二玉 ▲5三銀不成 に、△3二玉 なら、壁銀の形が響いて▲3三歩 で詰みとなる。そこで、△3三玉 と逃げるが、▲4二角(右図) がぴったり後手玉の脱出を防いでいる。
以下、△3二玉 には▲3三歩 だし、△同金 なら▲同銀不成 △4四玉 ▲4五金 までの詰みである。
この問題は、中級編にしては難しかったかもしれないが、玉の周りに駒を埋める受けの有効性がわかったのではないだろうか。
ちなみに、5二の駒が飛車だと4手目を△同飛 と取って詰まない。