おーふなコラム

Kanonのコラム

その1 Kanonはにっかつロマンポルノである
 昔、日活という映画会社がありました。石原裕次郎や小林旭、宍戸錠などのスターを擁してアクション映画で一世を風靡した会社です。
 しかし後に経営が傾き、18禁映画を主力にするようになりました。社名もひらがなに変えて「にっかつロマンポルノ」という形で。
 私はKanonというゲームをプレイしたとき、80年代のにっかつロマンポルノを連想せずにはいられませんでした。相米慎二、森田芳光、那須博之、金子修介、周防正幸など、後に日本映画界を背負って立つことになった監督たちがデビューした頃のロマンポルノを。

 Kanonというゲームは、ご存じの通り「泣かせゲー」です。
 18禁ではありますが、Hシーンは二の次、という感じが漂ってます。
 この辺が、いま名前を挙げた監督たちが若い頃撮っていたポルノ映画の印象と重なるんです。

 当時も、日本映画界は冷え切っていました。若い監督たちが企画を出しても、撮らせてもらえない状況だったのです。
 ただし、ポルノ映画という形でならそれが可能でした。ポルノ映画は低予算でも撮れますし、それなりの需要もありましたから。
 しかも、ポルノ映画というのは、Hシーンさえ入っていれば、他の部分がどういう形でもたいして文句は言われません。そこで彼らはポルノ映画の形を借りて、自分の映画を撮っていったのです。

 Kanonもそうですよね?

 確かに「泣かせゲー」としてがんばってはいますが、それだけでヒットは難しいでしょう。
 しかし、18禁にすれば、最低限の売り上げは見込めます。
 というわけで私は、18禁版で制作費をある程度回収しながら、後に出した「全年齢対象版」が実は本命だったんじゃないかと思ってるんですが、どうでしょう? どうも、あちこち細かいところをバージョンアップしているようですし。(誤字脱字とか、グラフィックとか)

 とまあ色々言いましたが、実際プレイしてどうだったかというと…
 ええ、泣きましたとも。ボロボロというか、ダクダクというか、もう、涙流しまくり。
「これなら、Hシーンなんかいらん!」と思いましたね。やっぱ全年齢版も買おうかしらん。
25-Mar-2000  By おーふな

その2 舞のストーリーはこれでいいのか?
 私が最初にKanonをプレイしたとき、辿り着いたエンディングは舞のものでした。
 話がわかりにくいという声もけっこう聞きますが、母親と雪うさぎの動物園のあたりなんざぁ私にとってはモロにツボで、えー歳こいて夜中にボロボロ涙流しながらディスプレイに向かっていたものです。
 でまあ、そこから始めて、5人ともなんとか終わらせて、「あー面白かった」ではあったんですが…

「こりゃなんか、ちょっと間違ってるだろ」というか、
「惜しいなー、もうちょっと考えればいいのに」という感じはぬぐい去れませんでした。

 いえ、それぞれのヒロインにもストーリーにも特に文句はないんです。
(名雪のストーリーはちょっと薄味すぎたかな、という気はしないでもないですが)
 それより、私が最初に辿り着いたのが、舞エンディングだった、という点が「ちとマズいんじゃないの?」と思わざるを得ない点だったのです。

 初回のプレイで、私はこの手のゲームで最初いつもやるように、八方美人的なアプローチを試みました。
 早い話が、どの女の子にもいい顔をして、いずれ来るに違いないであろう破局(笑)をできるだけ先送りにするプレイスタイルです。
 おそらく、何らかの情報が前もって与えられていない限り、初回プレイにおいてこういった軟弱なプレイスタイルは一般的だと思います。

 そしたら、その結果が舞エンディング。

 …こりゃあちょっとマズくないですか?
 舞、栞、真琴ファンの方々には申し訳ないですが、Kanonヒロインの中で格を見れば、明らかにエースはあゆです。名雪が2番手で他の3人は少し格下でしょう。
 ところが、軟弱に、当たり障りのない方向にプレイしていくと、エースあゆでも2番手名雪でもなく、どう見ても変化球な舞エンディングに辿り着いてしまう…。
 これは作り手側の意思だとは思えないんですよね。どっちかというと、あまり深く考えずに作って計算外の結果になってる、という気がします。
 だってそうでしょう。舞との出会いは、名雪に親切にしようと思わなきゃ起きないんですから。名雪狙いで舞が飛び出てくる結果になってるわけです。
 で、出会っちゃった後の舞がらみの展開といえばご存じの通り、自分から積極的に舞を切り捨てようとしない限り、他のヒロインのエンディングには行けない仕組みになってます。
 ああ、なんて凶悪なんだ。あの状況で、自分から舞を切り捨てられますか?

 やはりね、素直にプレイした場合に辿り着くエンディングは、名雪かあゆじゃなきゃいけないんじゃないかなあ、と思わずにはいられないんですね。

 この文章をお読みになっている方は、DNMLブック作者の方も多いと思います。
 選択肢を設けて、DNMLをゲームとして作られる方は、そのブックの中で素直な選択をした場合のストーリー(=一番最初に辿りやすいストーリー)が、そのブック全体を代表するものになっているかどうか、一度チェックされた方がよろしいかと考えます。
 最初に読むストーリーが異色作だと、正当に評価されないかも知れませんよ。
02-Apr-2000  By おーふな

その3 マッチポンプ
 若手の本格ミステリ作家、倉知淳の小説に「約束」という短編があります。
 (創元推理文庫『日曜の夜は出たくない』に収録)

 この短編の主人公は、小学校低学年の寂しい少女です。
 少女は、冬のある日、新しい友達と出会います。
 それから毎日ふたりで一緒に過ごし、少女の寂しさも一時慰められるのですが、友人の側のとある事情のせいで、彼と別れなければならなくなってしまいます。
 そして、別れの日。いつもの場所に急ぐ少女が出会った事件とは…

 てな感じの作品です。けっこう前に読んでいた本なのですが、こないだ久しぶりに読み返してみてびっくりしましたね。

 まるで舞かあゆみたいじゃないですか。

 しかも、この少女の名前は、舞の「ま」とあゆの「ゆ」を取って「麻由」というんですよ。

 おおっ、Kanonのパクリか? と思うと…
 この小説が発表されたのは1994年なので、そういう可能性はありません。

 そうすると、Keyの方でこの小説をパクったのか? と思うと…
 すみません。そんな可能性はまずあり得ないと思います。いま要約した部分以外の要素が、ちっとも似ていませんし、何よりも、ストーリーのツボそのものが全く違っていますから。

 …つまりこの文章は、自分で火をつけて、自分で消してるだけの、人騒がせな文章なわけですね。
 こーゆーのを「マッチポンプ」といいます。
15-Sep-2000  By おーふな

その4 水の星に愛をこめて
 久しぶりに、Kanonのミニコラムを3連発でいきます。

 Kanonの登場人物は、名前で2グループに分けられます。

  Aグループ:相祐一、水瀬水瀬秋子、村真琴、天野美川澄舞、北川潤
  Bグループ:月宮あゆ、美坂栞、美坂香里、倉田佐祐理

 見てお分かりのように、に関連した文字を名前に使ってるキャラが多いんです。主要キャラ11人中7人、63.6パーセント。

 この「多い」「11人中7人」ってのが曲者で、「統一されてる」というほど圧倒的でなく、そうかといって「バラけている」とは言いにくい。
 統一されてりゃこっちは「Kanonという物語と水の関係は?」とか考えてコラムのネタにすることもできますし、バラけてればそれはそれで「ああ、あんまりいろいろ勘ぐられたくないから気を遣ってるんだな」と思いますが、11人中7人ってのはあまりにも中途半端です。
 なんだか、作者側の意図が見えないんですよねー。あんまり深く考えずに、字面と響きだけで名前決めて、その結果なんて全然気にしてない感じ。

 もうちょっと、なんとかならなかったのかなあ。
01-Aug-2001 / 04-Nov-2001  By おーふな

その5 田甲里黒墨
 タイトルは、直木賞持ちの推理小説家、泡坂妻夫氏の小説に出てくる書道家の名前で、「たこざと・こくぼく」と読みます。……この名前の、ビジュアル的でお茶目な仕掛けに気づきましたか?

 でも本題はそれとはほとんど関係なく、美坂姉妹の名前の話。
 ご存じの通り、美坂姉妹の名前は「香里」と「栞」です。これ、耳で聞く分には「かおり」と「しおり」でいかにも姉妹らしいんですが、なぜか字面が不統一です。姉の香里に「里」の字を使ったなら、普通は妹の栞にもどうにかして「里」の字を使おうとするでしょう。なにしろ、発音的にはクリアしてるんですから。

 発音的には気を配って、字面には無頓着。
 自分の娘たちに、こういう名前の付け方する親って、どういう性格か想像できます?
 私にはできません。
(いや、そりゃ、たぶん、栞の名を先に決めたからだろうな、というのはわかりますけどね。作品世界の中で考えたらそりゃまずいでしょ。妹の名前を先に決めてから姉の名前を考える親なんてあり得ないわけだし)

 もうちょっと、なんとかならなかったのかなあ。
 ……って、前のと同じ結論じゃん。


 追記:このコラムに関しては、読者の方から鋭い指摘がありました。こちらをご覧下さい。

01-Aug-2001 / 04-Nov-2001  By おーふな

その6 しめすへんにみぎ
 結局、今回のミニコラム3連発は、すべて名前がテーマとなりました。
 最後は、Kanonキャラの名前で、私がいちばん気になっている点。

 それは「なぜ祐一と佐祐理さんの名前に、同じ文字を使ったのか?」という点です。

 いや、気持ちは分かるんですよ。この「祐」という字を漢和辞典で引いてみると、この字には「神の助け」という意味があると出ています。Kanonの主人公の名前にふさわしい名前だと思います。
 ……ちょっと余談ですが、「神の助け」が「一つ」ってことは……やっぱ祐一が選んだ以外のヒロインたちは、物語の裏で不幸な目に遭ってると考えるべきなんでしょうね……ううっ、ツライことに気づいてしまった……。

 佐祐理さんの方だって、「佐」も「祐」も「助ける」という意味を持つ字ですし、「理」には「人の行うべき道」という意味がありますから、これまた佐祐理さんというキャラにはぴったりの名前です。

 意味合いから見れば二人ともぴったりの名前ですが……というか、ぴったりの名前だからこそ、できれば使う文字をうまくずらして欲しかったな、と思います。ぱっと見た目に、手抜きに見えるんだもん。
(でなきゃ、他に字を知らないか、って感じですな。どっちにしても良い評価にはつながらないでしょ)

 もうちょっと、なんとかならなかったのかなあ。
 ……って、結局三つとも同じ結論じゃん。
01-Aug-2001 / 04-Nov-2001  By おーふな

その7 シンクロニシティ
 マンガの『あずまんが大王』を読んでて、ふと思いつきました。

「……そう言えば、あずまんがの榊さんとKanonの舞って、よく似てるな」

 キリッと凛々しい系の女の子で、無口で、動物に噛まれてる。

 こうなると「どっちが先?」と思うのは理の当然でしょう。
 早速調べてみました。

 Kanonの発売日は、1999年6月。
 あずまんがの連載開始は、1999年2月号から。

 うーん、僅差であずまんがの勝ちか……
 いや、待てよ?

 あずまんがの連載開始は2月号ですが、榊さんの初噛まれは連載2回目分ですから3月号。だから発売日は1月後半で、ってことはおそらく描かれたのは1998年12月でしょう。

 じゃあKanonは、というと……聞いた話ではこのゲーム、やたらに発売延期を繰り返したそうですね。で、当初の発売予定は1998年末だったらしいじゃないですか。
 舞が自分の手を犬に噛ませるエピソードは、佐祐理さんと舞の出会いのキーポイントですから、割に早くから設定されてたと推定されます。少なくとも、6月発売間際に突っ込んだ感じはしないでしょ?

 ……なんだか、どっちが早いとも言えなくなってきましたね。

 まあ私の調査程度では、決定的な答えなんて出るはずありません。この辺が限度でしょう。しかし……

 二人の才能あるクリエイターが、ほぼ同時期に「動物に噛まれる無口な女の子」というモチーフを思いついたということは、実に興味深いことだと思います。きっと時代がそれを要求したに違いありません。

 ……どんな時代だ。
09-Jul-2002  By おーふな

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