蓬莱愚連隊 有明へ、13日編」
                    記者 1年戊午組 萬屋富禄[H686577] 新聞部所属

    
 建前で創作活動大事といっても、部費を確保するという現実の前には敵わない。
 それを商業主義等々批判することは簡単である。
 しかし、各人はそれぞれの役割を確実に果たし、生き生きとしていた。
 その実態をレポートする。

 「市場調査に基づくジャンル、絵柄」を追求した特別編纂同人誌が並ぶ。
 特別編制の編集とライターが本を手にとって頁をめくる。
 「よし、これなら行ける」
 ぽつりと、しかし確信をもった一言が漏れた。
 売り子をしている人間にとっては、いかに効率良く本を販売し、並ぶ人々の負担を減らすかが目標となる。
 手際良く札を数え、暗算で合計金額と釣りを渡す。この間約3秒。
 「ありがとうございました」の声が絶えず響く。

 工作活動も行われた。
 スタッフに変装した部員が、人気サークルの行列を誘導する。
 しかも強引に誘導するのではない。
 一見、他のスタッフと同様に4列にしたり2列にするように声をかけ、手で仕切り、ロープを張っていく。
 鮮やかさは本物のスタッフに決して劣らない。
 後で聞くと、「晴海新館はこんなもんじゃなかったから・・」と遠い目をしていた。
 かなりのスタッフ経験者らしい。
 そしてこちらのブースでもサークルの本が買えるなどといって並んでいる人々が思わず飛びつくように仕向ける。
 実際朝のうちに対象となるサークルの本を交換会や委託で受け取っているので嘘にはならない。
 さらには事前に相手サークルに所属しているライターを引き込んでゲスト参加本、突発本(予定外の出版物)を置く。

 錬金術研究会兼任の工作員は、単純な呪術を使う。「たいしたもんじゃないさ。ただこのプラカードを入場者に向ければ、あら不思議」
 一見ただの絵があるだけだ。といってもかなり人気のある某先生のイラストである。
 そこに一言、「限定テレカ在庫あります 東(サークル名)」と書いてある。
 「裏に方陣が描かれてあるから必ずこれを見るようになる。」
 あとは呪文を一言。「本日のみです」。入場客の足が早くなり、そして確実にブースに殺到する。
 こうしてサークルの売上は上がり、本はさばけていく。

 それでも利益をさらに追求する為、いや並ぶ人々の欲望を満たすための道具が登場した。
 狂的科学部謹製全自動印刷・製本装置「MS-AP1000」(仮称)。
 しかしそれは期待にはそぐわなかった。
 起動時直後、大爆発を起こしたのだ。
 爆発は周辺サークルブース2ブロック(半径約10m)に及んだ。幸い怪我人はなし。
 しかし「すわ、テロ再発」と騒然となり、準備会が駆けつける。
 責任者は速やかに詰所に連行。発売停止の赤紙がばんと張りつけられ饗宴は終わった。
 様子をうかがおうと東1ホール本部詰所に行く。
 ドアの向こうから、外に聞こえるほどのスタッフの怒声が響く。怒り心頭の様子、無理もない。
 たまにおとなしい声がするのはコミケット代表の米澤氏であろうとのこと。
 長くなりそうだったので退散した。
 あとは戦後処理が待っていた。散らばった本やら机を片付ける間に閉会。

 「うーん、即日コミケ中止になってもまずいからねぇ」と件の錬金術研工作員は神妙な顔をすると聞いたことのない言語で呪文を唱えた。 なにも変化がなかったようにみえたが「これでなんとか中止にはならないようにしといた」とのこと。
 実際に効力があったのか、2日目以降もコミケは続くのだった。

                                                              (8月14日)

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