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欲張り
高校に上がったばかりの頃。俺には仲のいい女友達ができた。
中等部からの繰り上がり組と、他校からの進学組とで、変わり映えのなかった学校にも目新しさが生まれた。彼女は、他校から受験してウチの高校に進学してきた。女の癖にバイクが好きで、車の話もそこそこできた。やたらとつるみたがる女子とは、ちょっと違ってた。だから、仲良くなった。週末や放課後、彼女と過ごすことが多くなった、そんな頃―――。
『これ、俺のアニキなんだ』
初めて家に遊びに来た彼女は、その日から、アニキの話ばかりするようになった。やたらと、家に来たがった。彼女はただの『女子』になり、俺は彼女と遊ばなくなった。
必須で入ったクラブの先輩に、アニキの後輩だという人がいた。とても親切で、他のヤツ等よりちょっぴり贔屓されてるような気がして、俺は嬉しかった。古い映画に詳しくて、よくあちこちの映画館に連れていってくれた。もちろん、二人きりで。
『ウチのアニキ……知ってるよね?』
家まで送ってくれた彼女は、その時、俺を見ていなかった。彼女の目当てがアニキだと知って、俺はクラブを変わった。
友達の紹介で始めたアルバイト先で、ちょっとアニキに似た感じの綺麗な人がいた。アニキが『女』だったら、こんな感じかな、と思った。ある日、大学帰りのアニキが車で迎えに来てくれて。
『あ、俺のアニキなんです。こちら、この店のオーナーで……』
その日から、彼女の態度が一変して、俺はバイトを辞めた。
アニキは頭良くて、とても綺麗でスタイルが良くて。そんなことは、もうずっと前から知っていたけど、俺はちょっぴり傷ついてきたんだよ。
オヤジやオフクロも、アニキがいるから、俺に好き勝手やらせてくれている。メンバーの皆だって、アニキがいたからこそ、俺を慕ってくれている。京一だってアニキの『弟』だから、俺と遊んでくれてる。
でもね、俺はやっと見つけたんだ。
アニキではなく、俺を必要としてくれて、望んでくれるヤツを―――。
□□□
「……どうした?」
「え、なにが?」
「ずっと……上の空だっただろう」
火を付けようとした煙草を取り上げられて、啓介は初めて涼介の視線に気がついた。攻めるような、心の中を見透かすような視線。
「そうだった? さっき……良くなかった?」
「いや、少しばかり乱暴だったかな」
「あ、ゴメン……」
「いいさ。……嫌いじゃないから」
情事の後の、とろりと潤んだ瞳に戻って。涼介は、煙草を返してくれた。
「藤原と……」
「え!?」
「今日、藤原と会っていたんだろう?」
「あ、ああ。ちょっと食事しに行ってただけ」
「ふぅん」
「俺と、藤原が二人きりで会ってるの……イヤ?」
「別に。例え、お前と藤原がホテルに行っても、俺は気にしないぜ?」
「な、なんだよ、それ!」
「ムキになるなよ。ただの、例え話さ…こら、やめろよ……けい…っ…」
大好きだよ、アニキ。世界中で一番好き。大丈夫。俺の一番は、絶対にアニキだけ。
だけど、アニキに『京一』がいたように、俺にも『誰か』が欲しいんだ。
これって、欲張りなんだろうか―――?
END...and continue
いきなりですが、新シリーズです……っていうか、『エンペラー』のサイドストーリーです(笑)
いえね。いっつもアニキばっかり、とっかえひっかえいい目見てるような気がして……。
けーしゅけ猫可愛がりの(●◇●)としては、ちょっと遊び相手を作ってあげようかな〜なんて考えちゃったわけです。
ええ、もちろんお相手は『彼』ですけどね(^m^)
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