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 Pia・キャロットへようこそ!!2 2018MIX・SPECIAL X






 PRESENTED BY じろ〜






 某第三新東京市地下、ジオフロントに在る秘密組織・・・。

 言わずもがなネルフである。

 ここ最近、使徒も倒して五月蠅いぢぢい達も居なくなり我が儘しほうだい男が司令をやっているおかげで、

 すべてのベクトルが息子のシンジと自分の老後に傾いている。

 その所為で特殊監査部の主任加持リョウジの仕事は、エヴァのパイロットの護衛と銘打った単なる覗きの様な

 行動に落ちぶれていたけれど、以外にも本人は楽しんでいた。

 加持にとっても殺伐とした世界より、今ののほほんとした時間の方が楽しくて半ば本気で仕事をしていた。

 おかげでシンジどころかミサトにも気付かれず完璧にその身を隠して行動していた。






 「碇司令、この間の物です」

 「うむ」

 自分ではビデオを録画して在るのだが、加持の撮るスナップはビデオでは撮れないバッチリなアングルの物が

 多くて、その分をこうして受け取っていた。

 加持から受け取った封筒の中身を確認するために目の前に写真を広げて見せた。

 「ほう・・・シンジ君もなかなかやるもんだな」

 ゲンドウの横で立っていた冬月も一緒になってその写真を見て感想を述べた。

 「ふっ・・・私の息子だからな」

 「違うだろ、ユイ君の息子だからだ」

 冬月の容赦無い一言にゲンドウの肩がピクリと震えた。

 「なぜ?」

 「碇・・・お前にユイ君をこんな風に口説けるとは思わんし、それに・・・」

 「なんだ?」

 「全部聞いているぞ、お前がどうやってユイ君にアプローチしたかなどはな」

 「ふ、冬月?」

 驚いた拍子にいつものサングラスがずり落ちて、何ともつぶらな瞳が・・・気持ち悪い。

 「それとな、日本政府からさっき報告が来ていたぞ・・・碇」

 「な、なんですか冬月先生?」

 普段の柔和な冬月とはまるで別人のような迫力に、ゲンドウも思わず学生時代の呼び方に戻ってしまった。

 「どうやらお前とはな、じっくりと徹底的にとことん話し合わなければならないと今日ほど感じた事は無かったぞ」

 「せ、先生・・・」

 「さあ来い碇、どうせここに居てもやることも無いんだから・・・今日一日たっぷり時間を掛けて話そうではないか」

 「え、あ・・・」

 冬月に襟首を捕まれて猫のように縮こまったゲンドウは、引きずられるように奥の部屋に連れて行かれた。

 残った加持以外は誰もいないこの広い司令官室で、胸のポケットからタバコを取り出すと火を着けて一服した。

 「ふぅ〜・・・、これもシナリオの内ですか、碇指令・・・」

 奥にある小さな部屋から冬月の怒鳴り声が響いてきたので、加持はゲンドウの冥福を祈りながらこの部屋を後にした。

 「この馬鹿弟子がぁ!! だからお前はアホなのだぁぁぁぁ!!」

 「う、怖いぞ冬月・・・」

 「馬鹿者! 誰が呼び捨てにしろと言った? 師匠と呼ばんかぁ!」

 「は、し、師匠」

 まるで今までの自分の扱いに対しての仕返し(?)の様な冬月の攻撃に、ゲンドウは一日中説教をくらって

 さんざんな日だったが、こんな事でめげる様な髭おやぢでないのはネルフのみんなは知っていた。

 最強組織のトップ二人が朝からこんな事やっているので、いかに日本が平和なのが解るそんな朝の風景だった。






 一方、こちらはPiaキャロット第三新東京市店。

 冬月と同じ様でもしくはそれ以上の騒ぎが、最近のあずさの頭痛の種になっていた。

 それも毎日朝から何回もお店の中で同じメンバーで、同じ様な事を・・・。

 「ちょっとシンジ! この間、マユミとは何も無かったでしょうね?」

 「えっ? べ、別に・・・」

 遠慮のないストレートな質問に、シンジはどもりながら目をそらした態度にアスカの目尻がつり上がった。

 「シンジ、何でそこで目をそらすのよ? やっぱり何かしたのね〜!」

 それを横で聞いていたマナとレイがシンジに躙り寄った。

 「シンジィ〜私は信じているけど・・・でも本当はどうなの?」

 「碇君、教えて」

 普通、仕事の最中にこんな事やってるとお客達に迷惑が掛かるはずなのだが、逆にこれが毎日も続くとお客達の方が

 楽しんで見ているので、今や別の意味でキャロットは連日満員御礼で売り上げが伸びる一方だった。

 「さあ、きっちりと吐いて貰おうじゃないの! どうなのよシンジ?」

 「シンジ!」

 「碇君!」

 「く、苦しい〜・・・」

 アスカに首を絞められてもはやシンジの命は風前の灯火だった・・・だがしかし!



 がん!



 「くぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 アスカはあまりの痛さに叩かれた後頭部を押さえて、声にならない声を上げてしゃがみ込んでしまう。

 後少しでお花畑に行きそうになったシンジを救い、少々目がいっちゃっているアスカの頭をトレイが凹むぐらいに

 思い切り叩いたのは、肩を怒らせている留美だった。

 「私のシンジ君になんて事するのよ!」

 そう言って凹んだトレイをカランと捨てると、自分の胸にシンジの頭を引き寄せて抱きしめる。

 「ちょっと留美さん・・・シンジが誰の物ですって?」

 「マナちゃん、留美の言ってる事解んないのかしら?」

 「ええ、全然解りません」

 「あらそう、残念だわ・・・」

 留美とマナはにこやかに笑いながらもお互いに隙を見せまいと、じりじりと間合いを取って牽制しあった。

 その間も留美の胸に顔を抱きしめられていたシンジはちょっとだけ幸せな気持ちで失神していた。

 しかし二人は忘れていた、ここにもう一人シンジに一直線に恋する乙女がいる事を・・・。

 「くすくす・・・使徒三体確認、A・Tフィールド展開」



 どん!



 「きゃっ」

 「わわっ」

 「〜〜〜!!」

 どういう訳かシンジだけを残して、留美とマナと側にいたアスカも見えない力に吹っ飛ばされてしまった。

 それを見ていたお客さん達からレイに向かって拍手と歓声が上がり、ちょっとだけほっぺたを赤く染めて照れた。

 レイは気絶しているシンジをそっと抱え上げると、その髪を優しく撫でながら呟く。

 「碇君は大丈夫・・・私がずっと側にいて守ってあげるから」

 その時浮かべたレイの笑顔にお店の中にいたほとんどの男性客達は、みなふにゃけてでれでれに鼻の下を伸ばした。

 「つぅ〜・・・こんのぉ〜レイ! あんたなんて事すんのよ!?」

 吹き飛ばされた時にまた同じ所をぶつけて大きなたんこぶができたアスカは、髪を逆立ててレイに詰め寄る。

 「不幸な事故だったわ」

 アスカの視線から目をそらして少し俯いたレイの唇の端が幾分つり上がっていたのを、見逃すアスカではない。

 「こ、こ、殺してやるぅ〜!!」

 「クスっ・・・無駄よ」

 レイの言う通りアスカがどんなに殴ろうが、蹴飛ばそうとしてもA・Tフィールドがある限り、彼女に

 指一本触れることは出来なかった。

 さらに留美とマナを巻き込んでの四大怪獣の決戦会場となった店内の中央で、あずさとマユミは暫し呆然と眺めていた。

 「全く毎日飽きもせず・・・まあ店の物はトレイ以外壊していないし、お客様にも迷惑どころか受けちゃって

 いるし、はぁ〜・・・Pia・キャロットってこんな店だったかしら?」

 「はぁ、私にはよく解りませんけど・・・」

 ふと、騒ぎを眺めているマユミに対して、あずさは頭に浮かんだ疑問を聞いてみた。

 「でもいいの、マユミさんは何もしないで?」

 「ええ、信じていますから」

 マユミのその答えは何の迷いも戸惑いも感じられない気持ちいい言葉だった。

 「ふぅ〜ん・・・幸せ者なのねシンジ君って」

 「彼が・・・シンジ君が教えてくれたんです、信じる事の大切さを・・・」

 「はいはい、これはごちそうさまでした♪」

 頬を染めてにっこりと笑うマユミを見てあずさはため息をしながらも彼女の芯の強さに感心してしまった。

 なんてほのぼのした事を二人が話している姿の後ろで隠れる様に騒ぎを見ている影二つ。

 「なんか凄い事になってますね・・・」

 「まあイベントだと思えばいいし、お客様にも受けているしね」

 「ねえお兄さん、どうしてこんな所で隠れて見ているの?」

 「うん、その方が面白くてしかも安全に見られるからね♪」

 「それもそうですね♪」

 耕治とともみは笑い合うとあずさが見たら嫉妬するぐらいに肩を寄せ合ってその騒ぎを楽しげに見ていた。






 「やれやれ・・・君達いい加減に静かにした方が良いんじゃないかな?」

 留美、アスカ、レイ、マナの四人がにらみ合っている所に一人の少年が声を掛けながら現れた。

 渚カオル・・・すっかり影が薄くなってしまったシンジの自称心の恋人である。

 「ちょっとカオル! その格好は何なのよ?」

 シンジと同じウェイターの制服を着たカオルはいつもの様に普通の女の子なら一発で虜になりそうな笑顔を

 浮かべるとアスカに答えた。

 「もちろんここでアルバイトをするからさ、シンジ君と一緒にね♪」

 「こぉんのぉ〜いけしゃぁしゃぁと言ってくれるじゃないの!」

 「あなた・・・また撲滅されたいの?」

 レイの瞳が赤く輝き始めようとした時、そばにいた留美とマナは目の前にいる少年の事をアスカに

 訪ねた。

 「アスカちゃん、この子誰かしら?」

 「私も初めてみたわ、教えてくれないアスカさん?」

 さっきまで争っていた事も忘れてアスカとレイは、目の前に立って笑っている少年の事を二人に説明して

 あげる事にした。

 「こいつはね、隙あらばシンジを狙っている変態でナルシストな女の敵で人類の敵・・・ホモなのよ!」

 「変態は用済み、ホモはだめ・・・碇君の貞操は私が守る」

 二人の説明を聞いた留美とマナはちょっと首を傾げた後、肯いて同時に口を開いた。



 「「なるほど・・・要するにホモなのね?」」



 「失敬な・・・僕が一つになりたいのはシンジ君だけだよ、それ以外は興味は無いよ」

 憤慨だとばかりに両肩を上げて軽くため息をつくと額に手を当てて瞼を閉じた。

 カオルの発言に店内にいた女性の何人かは興味ありそうな瞳でカオルの事を見つめていた。

 「あんたぁバカ? それが一番問題なのよ!」

 「クスクス、もう一度撲滅してあげる・・・」

 「何だかよく分かんないけど、とにかく私のシンジ君を狙っているなら受け手立つわ!」

 「ちょっと興味あるけど、私のシンジをホモになんかさせないわ!」

 約一名別の意味でどきどきしながらも、四人の恋する乙女達は怪しい少年に対して戦闘態勢をとった。

 まさに一触即発のでんじゃらすぞ〜ん、でもここで肝心な事に気がつかない五人だった。

 そう・・・気絶したシンジはどうしたのか?

 店内を見回すと遅番で来たトウジに担がれて、ヒカリに後を任せてマユミと共に休憩室の方に運ばれていった。

 「おはようございます・・・ってまたやっているんですね?」

 「おはようヒカリさん、ええいつも通りの事をね・・・」

 ヒカリの問いかけにももはや当たり前の様にため息をついて返事をするあずさだった。

 「あれ? 渚君がどうしてここに・・・」

 「ん、ああ彼ね・・・昨日みんなが帰った後にやって来てアルバイトをしたいと言ってきたから、こちらとしても

 男手が欲しかったのでお願いしたのよ」

 「そうなんですか、でもどうして渚君まであそこにいるんですか? 仲裁しているのとはちょっと違うみたいですし」

 「・・・彼もね、シンジ君を狙っている一人なのよ」

 「そ、それってまさか!? ・・・ふ、不潔、不潔、不潔よ〜!」

 顔を真っ赤にして手で頬を押さえて思いっきり頭を振っていやいやするヒカリを、あずさはやはりため息をついて

 肩を落とすしかなかった。

 しかしそう落ち込んでもいられないのがマネージャーなので、あずさは仕方なしにヒカリを宥めてからアスカ達に

 向かって歩き出そうとした時、ともみと仲良く肩をくっつけて話している耕治の姿が視界を掠めた。

 「・・・そう、こんな時でも女の子といちゃいちゃしてるのね、ふっふっふっ・・・」

 あずさの笑顔はそのままだったが、額には怒りのマークが二、三個浮かんでいたのをヒカリははっきりと見てしまった。

 『やっぱりあずささんて誰かに似てるのよね・・・』

 しかし、耕治達の方には行かず四大怪獣とモーホーナルシストのいる方にあずさは肩を怒らせて歩いていった。






 そんな騒がしいフロアと違って、休憩室は本当に静かだった。

 トウジは担いでいたシンジをソファーに寝かせると後はマユミに任せて戻ろうとした。

 「それじゃマユミさん、後よろしゅう」

 「えっ、あ、はい」

 「誰も来ない内がチャンスやで!」

 「ええっ!? あの、その・・・」

 「ははっ、ほな・・・」

 トウジはブイVサインをしてマユミに笑いかけたら、ドアを閉めフロアの方に歩いていった。

 残されたマユミは気絶してソファーに寝かされているシンジのそばに座ると、その頭をそっと持ち上げて

 自分の足をその頭の下に入れて膝枕をしてあげた。

 結構大胆な事かもしれなかったが、マユミにとってそれは自然に体が動いてしまった結果でありそれは少しも嫌ではなく

 むしろシンジに対して愛しさがよけいに募る事となった。

 「ふふっ、シンジ君の寝顔を見るのはこれで二回目ですね・・・」

 厳密に言えば気絶しているから寝顔では無いけど、さっきまでの苦しんで青い顔とは違って気持ちよさそうに

 どこか安らいだ表情をしていた。

 マユミは頬をピンク色に染めてシンジの顔を見つめながら、そっと彼の髪の毛をなでながら歌を口ずさんでいた。

 それは偶然にもシンジが幼い時に聞かされていたユイの唄う子守歌と全く同じものだった。

 二人だけのこの部屋で誰にもじゃまされる事無く、ただ時間がゆっくりと進んでいた。

 「歌、上手だね・・・」

 「えっ?」

 瞼を閉じたままシンジは感想を述べた。

 「もう・・・いつから起きてたのですか、シンジ君?」

 シンジが目を開けると真っ赤な顔したマユミが見つめながらも照れまくっていた。

 「うん、実はマユミさんが膝枕をしてくれたあたりから・・・」

 「ひどいです・・・」

 「ごめん、もしかして怒った?」

 「そうですね・・・でも、歌が上手って誉めてくれたから許します」

 「うん、ありがとうマユミさん」

 二人はお互いに瞳を見つめて微笑みあった。

 「でも、シンジ君の寝顔って可愛いんですね♪」

 「う〜ん、ちょっと恥ずかしいなぁ・・・」

 「なんかお母さんの気持ちが少しだけ分かったような感じでした」

 そう言ったマユミの微笑みは、小さい頃のシンジが見たユイの笑顔に似ていると思った。

 「そうだ、そう言えばさっき歌っていた歌は・・・」

 「ああ、あれは私のお母さんが小さい頃に歌ってくれた子守歌です」

 「子守歌?」

 「はい、曲名は覚えていませんが小さい頃私を寝かしつける時に、いつもお母さんが歌ってくれました」

 「ふぅ〜ん・・・いや、僕もそれに似ている歌に聞き覚えがあるんだ・・・」

 「シンジ君もですか?」

 「うん、確か母さんが歌っていたのにそっくりなんだ」

 「おばさまが?」

 「多分同じ歌だと思うんだけど・・・」

 「じゃあもしかしてこの歌の曲名を知っているのでしょうか?」

 「う〜ん・・・どうかなぁ、でも今度聞いてみるよ」

 「ありがとうシンジ君、私ずっと知りたかったから・・・」

 そして何となく言葉が途切れて見つめ合っていると、お互いに自然と顔が近づいていく・・・。

 シンジがマユミの頬にそっと手を添えて、優しく自分の方に引き寄せる。

 「マユミさん」

 「シンジ君」

 一瞬、お互いに優しい眼差しで見つめ合ってからゆっくりと瞼が閉じていく・・・。

 静かな部屋の中でシンジとマユミはお互いの鼓動だけを感じていた。






 そんな二人が休憩室でいい雰囲気になっているとは気づくわけも無く緊張感が最高潮に達しようとしたその時、

 このお店の最強のマネージャーが睨み合っている輪の中に怒りもあらわに登場した。

 「いい加減にしなさい、あなた達!!」

 「うるっさいわねぇ〜! 邪魔しない・・で・・・」

 あずさの言葉に反論したアスカは、最後まで言葉を口にすることが出来なかった。

 しかしアスカだけには留まらず店内にいたすべての人達があずさの表情を見て会話をやめて息を潜めてしまった。

 いつもの様に最高の笑顔を浮かべているあずさだったが、額に浮かんだ怒りのマークと背中にしょった燃えさかる

 地獄の炎みたいなオーラに言いしれぬ恐怖を感じていたからである。

 つき合いの長い留美はいち早くあずさの怒りが頂点に達していると感じると、アスカ達に小さな声で話しかけた。

 「ちょっとアスカちゃん、ここはひとまず謝った方が良いわ」

 「そ、そうね、そうした方が良さそうね、ねぇレイ?」

 「アスカ、その意見に従うわ」

 「霧島マナ、任務了解」

 「そうだね、僕もその意見には賛成するよ」

 怪獣四匹とモーホー一人はそれぞれ顔を見回して肯くと、あずさに向かって頭を下げて謝ることにした。

 「「「「「お騒がせしてすいませんでした」」」」」

 いきなり騒ぎの本人達が謝ったので面食らったあずさだが、怒りを抑えると今度はいじめっ子の様な笑顔を

 浮かべてお仕置きの言葉を述べた。

 「分かりました、それでは渚君は今日から暫く倉庫整理をしてください、残りのみんなは今日から居残りで

 礼儀作法を特訓して貰います」

 「えっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

 アスカが思わず大きな声で叫ぶとあずさはジト目になって睨むとトドメを刺す様に宣言する。

 「あなた達は仕事をしている時間と騒いでいる時間とどちらが多いのかしら?」

 「うぐぅ」

 二の句が継げないアスカを見ながらお客さん達も皆肯いている。

 「いいですね?」

 「あ、あのあずささん、留美は別にしなくても・・・」

 控えめに反論する留美をちらっと一別しただけであずさは無視して話を続けた。

 「よろしいですね?」

 「「「「「はい」」」」」

 そしてそれぞれ仕事に戻るのを見届けるとお客さん達からなぜか拍手喝采を浴びて照れるあずさだった。

 肩を落として項垂れるみんなに満足したのか踵を返すと、今度は笑顔ではなくて目をつり上げて怒りを表した表情

 になって視線の先にいる耕治に向かってずかずかと歩いていった。

 「ねえねえお兄さん」

 「ん、どうしたのともみちゃん?」

 「あずささんがこっちに来ますけど、その・・・」

 「うん?」

 ともみの怯えたような目線を追って振り向いた耕治は、立ち上がるとともみの手を握ったまま裏口の方に歩き出した。

 「あ、あのお兄さん、どこ行くんですか?」

 「うん、実は美味しいアイスをともみちゃんに食べさせてあげようかなって・・・」

 逃げ出した耕治の背中にあずさの怒りの声が突き刺さる。

 「こらぁ〜耕治! ちょっと待ちなさいよ〜!」

 早足になってその言葉を振り切ろうとした耕治の前に、義妹の美奈が調理場の方から顔をのぞかせた。

 「あ、お兄ちゃん、どこに行くんですか?」

 「美奈ちゃん!」

 がしっ。

 「ええっ?」

 いきなり大好きな耕治に手を握られてぽっと頬を赤く染めてしまう美奈は、耕治の父性本能をいつも刺激する。

 『今日も可愛いなぁ・・・』

 などと思いつつ、美奈に聞かれたことに耕治は微笑んで答えてあげる。

 「いや、ちょっとともみちゃんとアイスでも食べに行こうかと思ってね、美奈ちゃんも行く?」

 「はい、もちろんおごりですよね?」

 「はいはい」

 「耕治〜!」

 「まずい、早く行こう!」

 二人の手を引きながら耕治はあずさから逃げるように店の外に走り出した。

 「もう、耕治ったら・・・」

 あずさが店の外に出てあたりを見回したが、すでに耕治の姿は無くともみと美奈と共にどこかに行ってしまった。

 「帰ってきたらミ〜ナも一緒にとっちめてやるんだから!」

 あずさの怒りとは関係なく、今日も雲一つない綺麗な青空にどこまでも彼女の叫び声が響き渡っていた。






 今日も賑やかだけど騒がしい一日が終わり、シンジはマユミと送りながら帰ることにした。

 同じ様にトウジもヒカリを家まで送りながら帰る事にしたが、反対方向なのでお店の前でシンジ達と分かれた。

 そしてその様子をお店の中からウィンド越しに睨み付けている五人の瞳は、まるでレーザー光線を発射しようと

 するみたいに異様なぐらいぎらぎらと輝いていた事にシンジとマユミは気づかずに歩き出した。

 「くうぅ〜シンジのヤツ、この私を無視して先に帰るなんてゆ・る・せ・な・い〜!」

 アスカは頑丈なはずのトレイをがしがしと囓って見事な歯形を付けていた。

 「碇君・・・私はもう必要ないのね・・・」

 レイは悲しい言葉と違ってその視線はマユミの方にロックオンされていて、今にもA・Tフィールドで

 攻撃するように目標を追尾していた。

 「シンジィ〜私の事好きだって言ったのは嘘なの・・・ううっ」

 ハンカチでこぼれる涙を拭きながら反対の手でどこからか持ちだしてきたのか手投弾を握りしめていた。

 「このままじゃあの子にシンジ君をゲットされちゃうよぉ〜」

 留美は睨み付けながらも明日にでもシンジ君を車に乗せてどこか遠くの知らない町に駆け落ちしようかと

 考え、それが顔に現れて思わず涎をこぼしそうになった。

 「ふふっシンジ君、男の友情とやらは女の子の出現で意図もたやすく壊れてしまうけど、

 僕には関係ないから安心してくれたまえ・・・」

 やっぱりホモなのか自分の体を抱きしめてあらぬ妄想に体をくねらせて悶えているカヲルだった。

 しかしみんながそれぞれの思いを巡らせていたのは、ここまでだった。

 「さあみんな、楽しい楽しいお行儀の時間ですよ♪ 早くこちらに来て並んでくださいね〜」

 あずさはにこりと笑いながら手にはハリセンを持って立っていた・・・そう彼らには地獄の特訓が待っていたからである。

 「「「「「は、はいぃっ」」」」」

 我先にとあずさの前に直立不動の姿勢で並ぶアスカ達だったが、一番遅かったカヲルはいきなりハリセンの

 往復ビンタ攻撃にあえなくダウンした。

 「遅いですね渚君、呼ばれた時は素早く来てね♪」

 「は、はい・・・」

 鼻血を垂らしながらそれでも笑顔を崩さないのはさすがと言っておきたいのだが、端から見ると情けないこと

 この上なかった。

 「それでは、まず最初に挨拶から始めましょう、『いらっしゃいませ、ピアキャロットへようこそ♪』」

 「「「「「いらっしゃいませ、ピアキャロットへようこそ♪」」」」」

 ばしっ!

 「声が小さい! それからもっと笑顔で!」

 「「「「「はい」」」」」

 この日、キャロットの灯りは夜遅くまで消える事は無くまたハリセンの心地良い音と女の子達の(一部男)

 異様な叫び声が夜の町にいつまでも続いていた。

 そんな店の中を仕事帰りに窓越しで覗いていたミサトとリツコは今度から私たちもハリセンで躾けようと、密かに

 ネルフの技術部に制作を依頼したのは余談である。

 ちなみにユイは昔それを使っていたらしいが今じゃもっぱらお玉を使ってゲンドウのお仕置きに使っている。

 ハリセン・・・それはエヴァよりも凄い究極の兵器なのかもしれない・・・。






 「ただいま〜」

 「あ、あのお邪魔します」

 シンジはマユミを誘って自分の家に帰ってきた。

 最初はそのまま家まで送ろうかと思ったのだけれど、さきほど休憩室で話していた子守歌の事が話題になったので

 どうせなら家で食事をしながら聞いてみないかとシンジの誘いをマユミが受けた結果である。

 「お帰りシンジ・・・っといらっしゃいマユミさん♪」

 「あのね母さん、ちょっと聞きたい事が有ったから一緒に来て貰ったんだ」

 「そう・・・、それじゃ夕食の後でも良いかしら?」

 「はい、かまいません」

 「ふふっ、じゃあ今日は自慢のシチューだから是非とも食べていってね、マユミさん♪」

 「あ、はい」

 「ありがと、それじゃシンジ手を洗ったらリビングの方に一緒に来てね」

 「うん、所で父さんはいないの?」

 「さっき冬月先生から電話があって今日は徹夜でお仕事だそうよ」

 「ふ〜ん・・・」

 大した事している訳でもないのになんかする様な事有ったのかなぁと思ったが、すぐにゲンドウの事は無視して

 マユミを洗面所の方に案内して仲良く手を洗ってテーブルに着いた。

 そして自慢料理と言うだけのことはある絶品のシチューを、マユミは自分でもびっくりするぐらいお代わりまで

 して食べてしまった。

 おまけにその時シチュ−と言ったらこれでしょとキッチンからユイがワインを持ってきて、シンジの制止を聞かず

 マユミに進めて飲ませてしまった。

 すっかり酔いが回ったのか顔が真っ赤になってしまったマユミは意識はあるが、頭をふらふらして気持ち良さそうに

 微笑んでワイングラスに口を付けて飲み続けていた。

 「マ、マユミさん大丈夫?」

 「・・・くすくす、はい大丈夫ですよシンジ君、うふふ・・・」

 潤んだ瞳で見つめられてちょっとどきどきしたシンジだけど、ユイの方に向くとちょっと責めるように睨んだ。

 「母さん・・・」

 しかしユイの方もほろ酔い気分で頬をピンク色に染めてニコニコしているだけだった。

 「ねえ・・・シンジ君」

 「何、マユミさん?」

 振り向いたら隣にマユミがシンジの肩に寄りかかると潤んだ瞳のまま見つめた。

 「あのね・・・私のことマユミって呼んで欲しいの・・・だめ?」

 「えっ? う、うん別に良いけど・・・」

 「うふっ、じゃあ今すぐ呼んで♪」

 「あ、うん・・・それじゃマ、マユミ」

 「嬉しい・・・シンジ君、大好き・・・」

 そのままシンジの首に腕を回して幸せそうに眠り込んでしまったマユミにシンジはどきどきしていたが、視線を

 感じるとそこにはさらにニコニコしたユイがじぃ〜と二人の事を見つめていて、シンジの顔はトマトの様に

 真っ赤になって体が固まり暫く動けなくなってしまった。

 その後寝てしまったマユミをユイが自分のベッドに連れていって抱き合うように寝てしまったので、シンジは

 自分の部屋に戻ると明日の朝食は自分が作るんだろうなと思いながら眠りに落ちていった。

 その夜、ゲンドウがいない碇家は平和(?)で静かな時がゆっくりと過ぎていった・・・。






 次の日シンジとマユミがバイトに出かけようとドアを開けると、そこには白くなったゲンドウが立っていた。



 「あらあなた、お帰りなさい♪」






 2018年、祭りはフィナーレに向かって爆進中らしい・・・。



 To Be Continue


 遅れて申し訳ございません。

 すでにカウンターは30.000アクセスオーバーです。

 このまますぐに第六話執筆に突入です(笑)

 次でとうとうゲンドウのしてきた事が発覚してしまかなぁ・・・。

 ますますマユミと大接近のシンジに対して四大怪獣とモーホーにもはや

 打つ手無いのか?

 このまま一気にゴールインになってしまうのか?

 いやいやそんなことは無いであろう・・・多分。


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