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 Pia・キャロットへようこそ!!2 2018MIX・SPECIAL Z






 PRESENTED BY じろ〜






 前田耕治の朝は早い。

 少なくても一緒に住んでいる三人の女の子達より早起きである。

 今日もいつもと変わりなく起きると、キッチンにいってコーヒーメーカーのスイッチをいれる。

 キャロットの厨房で鍛えた腕で、素早くプレーンオムレツとサラダを用意する。

 もちろんパンも彼女達が起きてくる時間に合わせてトースターに入れる。

 全ての準備が整ってなにげにテレビのスイッチを入れた。

 ぱちっ。

 「さて、今日のニュースはなにかな?」






 「な、なんだって〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」






 滅多に聞こえない耕治の叫び声に、夢の中にいた女の子達はベッドから跳ね起きてリビングに飛び出してきた。

 「どうしたの、耕治?」

 「耕治お兄ちゃん、どうしんですか?」

 「なになに、耕治お兄さん?」

 出てきたあずさ、美奈、ともみは耕治が見ているテレビに注目した。

 ニュースで流れていた事は、昨日あずさが潤から聞いた事柄が事細かに解説されておりおまけに自分の名前が

 大々的報道されていた。

 そうなれば誰だって驚くであろう。

 「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」

 あずさは朝から憂鬱な事を思い出して、頭に手を当てていきなり不機嫌な顔つきになって大きなため息を付いた。

 しかし、美奈とともみはそれはもう嬉しそうに微笑むと二人は手を取り合って抱き合って喜んだ。

 「美奈、美奈嬉しいですぅ〜♪」

 「私も嬉しいです〜〜〜〜〜♪」

 そんな二人を見てますます不機嫌になっていくあずさだったが、ふと耕治を見るとまだ固まったままだった。

 「こ、耕治?」

 耕治の肩を掴んで揺するとようやく気が付いたようにあずさの顔を見た。

 「なああずさ・・・」

 「何?」

 「なんで俺の名前がシンジ君と一緒に書かれているんだ?」

 「そんなの知らないわよ!」

 「何怒っているんだよ、あずさ?」

 「べ、別に怒って・・・きゃっ?」

 耕治はあずさの腰を掴むとソファに座っている自分の膝の上に乗せるとおでこを付き合わせてその大きな瞳を見つめた。

 「そっか、昨日の午後から様子が変だと思ったけど、これだったんだな・・・」

 「ふ、ふんっ」

 「くすっ」

 ちゅっ。

 拗ねてそっぽを向くあずさが妙に可愛くって、耕治はその赤く膨れたほっぺたにキスをしてしまう。

 「こ、耕治!?」

 「可愛いなぁ〜あずさは♪」

 「も、もう耕治ってば・・・」

 キスされたほっぺたを押さえて満更でもなさそうなあずさは、少しだけ気分が良くなった。

 「あ〜あずさお姉ちゃんだけずるいですぅ」

 「いいなぁ〜あずささん」

 と、いつもならここで耕治が二人のおでこにキスしたりしてあずさが怒り出すのが普通なのだが、

 今回は近寄って来る二人を手で制した。

 「さあ、みんな朝食を食べてキャロットへ行こう」

 「耕治?」

 その態度を不思議に思ったあずさの頭をぽんぽんと叩いて微笑むと、耕治はあずさの肩を抱き寄せてテーブルに

 促した。







 碇シンジの朝は早い。

 別に昔のように朝食を作ったり弁当を用意するわけでもないが・・・。

 ただ、ミサトとアスカの世話を一年近くもしていたため、身に付いた習慣と言う物になっているからである。

 今はユイがいるおかげであれやこれやと世話をしまくるので、シンジは早朝ランニングをしていた。

 もうエヴァに載ることが無くなってももう少し体を鍛えたいと思い、新しい生活が始まってから走り始めていた。

 他に加持やミサトに暇を見て格闘の手ほどきをして貰い、わずかずつだけど筋肉も付き始めていた。

 「ん? なんだろう、何か遠巻きにこっちを見ているみたいだけど・・・」

 いつもの公園で軽くストレッチをしながら自分に視線を送る人達が気になるシンジだった。

 確かに一定の距離を保ってカメラを担いだ人達が沢山いる。

 しかし誰もシンジの側に近寄ろうとはしない、それどころかカメラを構えようともしない・・・それは何故か!?

 答えは一つだった、碇ゲンドウにほかならない。

 「私達(ゲンドウ&ユイ)の許可無しにシンジの私生活を邪魔しよう物ならば、容赦はせん」

 情報公開で対使徒戦及びゼーレとの戦いでゲンドウの非情なまでの、もしくはユイに会いたさに息子すら利用する

 外道ぶりを知っている彼らは誰も逆らうなんて出来なかった。

 言わずもがな・・・誰だってベイクライトで固められて芦ノ湖に沈められたくは無かった。

 結果、遠巻きに見ている彼らであった。

 そんな事知る由もないシンジは、何だろうと思いつつも再び家までランニングを始めた。

 家に着くとシャワーを浴びて汗を流してサッパリしてからリビングに行くと、ゲンドウがテーブルに座って新聞を

 読みながらユイの作る朝食を待っていた。

 「おはよう父さん、母さん」

 「うむ」

 「おはようシンジ、朝食もうすぐ出来るから」

 「うん、所で父さん・・・」

 「なんだシンジ?」

 「また何かやったの? 朝から僕の事を遠巻きに見ている人達がいるんだけど・・・」

 「ふっ、問題ない」

 ゲンドウは新聞を畳んでテーブルの上に置くと、いつもの様にファイティングポーズを取って口元を隠しながら

 サングラスを片手で位置を直しながら答えた。

 「あのね父さん・・・問題が有るからあんなに人が集まっていたんだろ?」

 今のシンジはゲンドウの心の中を知ってしまったから、ちっとも臆することなくポーズを取る髭おやぢを

 ジト目で睨んでいた。

 「むっ・・・だが、消して悪い事をした訳じゃ無いぞ」

 「その辺は私が保証するわ、シンジ」

 「そう? 母さんが言うんなら大丈夫かな・・・」

 ユイの言う事に対しては絶対の信頼を寄せている為、あっさりと信じるシンジだが視界の角で笑顔になってこちらを

 見つめているゲンドウには一抹の不安を感じられずにはいられなかった。

 事実その危惧は現実となって我が身に降りかかろうとは夢にも思っていないシンジだった。






 「さて、みんな忘れ物はないかな?」

 「もちろん」

 「美奈もないですぅ」

 「ともみも無いよ」

 「よし、それじゃ行こうか!」

 と、ドアのノブを握って回して開けたそこには・・・。

 「おはよう耕治♪」

 「おはよう耕治君♪」

 昨日再会したばかりの潤と瞳を潤ませた留美が満面の笑顔を浮かべて立っていた。

 「お、おはよう、所でなんで潤と留美さんがここに?」

 「ああ、言ってなかったよね・・・昨日隣に引っ越して来たんだ、これからよろしく♪」

 「留美は昨日そのまま潤君と再会を祝して乾杯してそのまま泊まっちゃったから♪」

 「そうだったんだ・・・じゃあ俺達仕事に行くからまたな」

 耕治はあっさりと踵を返すとあずさの手を握って歩き出した。

 「あ、うん」

 「ま、待ってよ〜耕治君! 留美を置いてかないで〜」

 慌てて耕治の後を追いかける留美の後ろ姿を見送りながら潤は一人首を捻っていた。

 「何か耕治の様子が昨日と違うような・・・」

 流石に舞台女優である彼女は何となくだけど直感で耕治の心の変化に気が付いていた。

 もちろん留美は頭の中が薔薇色に染まりきっているため全然解っていない。

 ちなみに耕治は今朝のニュースを見たと言うのに割れ関せずと言った感じであずさと話しながらキャロット

 迄の道のりを歩いていた。

 その後ろを歩いている美奈とともみと留美の三人は小声で話していた。

 「何か耕治お兄ちゃん変ですぅ」

 「そうですね、今朝もおはようのキスしてくれなかったし・・・」

 「ええっ!? 二人ともそんな事して貰っているの?」

 「「はい」」

 声を合わせてニッコリ笑う二人を見て留美も絶対にして貰っちゃおうと思いにへら〜と締まりのない笑顔を

 浮かべていた。

 「えへへへ〜♪」

 「留美さん・・・その笑顔怖いですぅ」

 「留美さん・・・壊れちゃいました」

 そんな言葉も今の留美には全然聞こえない、頭の中には決してあり得ない光景が浮かんでいた。



 『耕治君、朝だよ〜♪』

 『あ、おはよう留美さん』

 ちゅ。

 エプロンを着けた留美を抱き寄せると耕治はおはようのキスをする。

 『あん、もう朝食の用意出来てるから』

 『いつも美味しい留美さんの料理を食べられるなんて俺って幸せだな〜♪』

 留美の手料理・・・それはミサトカレーにも勝るとも劣らない究極の最終兵器。

 耕治も良く実験台・・・もとい試食に付き合わされ、綺麗なお花畑に何回も遊びに行った事が在るほどだった。

 その腕前は更にグレードアップされていると二号店店長の祐介から聞いている耕治は決して留美の作った物は

 口にしないようにあれやこれやと理由を付けて断っていた。

 だからそれは消して叶うこと無い留美の淡い夢だった。

 「あ〜んもう留美困っちゃう〜♪」

 そこに立ち止まっていやんいやんしている留美を出勤途中のサラリーマンや学生達が遠巻きに見ながら

 なぜか哀れみの視線を送るが、ちっとも気づかないで耕治達に置いてけぼりにされていた。






 ぴんぽ〜ん。

 「ほらほら、マユミさんが迎えに来てくれたわよ♪」

 「か、母さん」

 ニコニコしながらユイは照れて赤い顔をしたシンジの背中を押して玄関に送っていった。

 靴を履いて玄関のドアを開くとそこにはいつものようにマユミが立っていた。

 いや、マユミだけじゃなかった・・・彼女の後ろにアスカとレイとマナの三人が満面に笑みを浮かべて立っていた。

 「お、おはようシンジ君」

 「「「おはよう、シンジ(碇)(君)!!」」」

 「お、おはようみんな・・・どうしたの朝から家に来るなんて?」

 「う、うん・・・」

 マユミは何か言いたげに後ろの三人に視線を送るが、当の三人はどっかの誰かさんと同じく・・・

 夢の世界に行きかけていた。

 「ぐふっ・・・にへら〜」

 「ぽっ」

 「うふふっ・・・」

 シンジはマユミの手を握るとため息を付きつつ歩き出した。

 「い、行こうかマユミ・・・」

 「そ、そうですね、このままじゃ遅刻してしまいますね」

 得体の知れない不安を感じながら三人をその場に残して、二人は仲睦まじくキャロットに向かって行ってしまった。

 その様子を玄関で見てから目の前にいる三人を困った様子で見つめたユイは頬に手を当ててため息を付いた。

 「シンジって案外冷たいのね・・・これもあの人がいけないのかしら?」

 そんな事言うユイもそのままドアを閉めてしまい台所で朝の片付けをしながら、ゲンドウの頭をお玉で叩きながら

 早く行くように催促していた。

 ユイに言われていつもの制服に着替えたゲンドウは玄関の前に立っていた美少女の置物を一別しただけで

 そのままNERV本部に出勤していった。

 それからさらにたっぷり30分はその場で夢の世界に行ってた三人は、確実に遅刻が決定してしまった。






 その頃、一足先にキャロットに着いた耕治達にめがけて沢山の記者やカメラマンがどっと押し寄せてきた。

 シンジには規制が掛かっていた為、もう一人の耕治の所に群がってきたのである。

 「前田さん、今の心境をお願いします!」

 「一夫多妻制についてどう思われますか?」

 「その人達がそうなんですか?」

 「この事で奥さんはなんと言っていますか?」

 口々に質問を投げかけるマスコミに耕治はため息を付いてから大きく深呼吸すると、大きな声で叫んだ。



 「お客様の迷惑になりますからキャロットの前に集まらないで下さい!!」



 呆然としているマスコミの人達を睨んでから、そのまま踵を返してキャロットの中に入ると開店準備を始めた。

 「耕治お兄ちゃん・・・怖いですぅ」

 「ともみもそう思いました」

 今までに耕治があんなに怒った所を見たことがない二人は、ビックリして立ちつくしてしまった。

 「さあ二人とも、仕事の時間よ」

 一番耕治の行動を不思議に思ったあずさはそれでも美奈とともみを連れて、耕治の後を追うように店内に入っていった。

 怒鳴られて呆然としたマスコミの人達は何とも言えずにその場で閑散として誰か来ないかと、律儀にも耕治の

 言われたとおりキャロットから少し離れた所に屯していた。

 若いが優しくて気さくな人物としての評判が有った耕治のイメージだともっと話してくれるかと思っていたのだが、

 いざ会ってみたら怒鳴られただけであった。

 その事からマスコミの間では、耕治は今回の事についてあまり良い感情をもっていないとの憶測やそのほかいろんな

 噂が彼らの間で囁かれた。

 そんな中、シンジとマユミがこちらに向かって歩いてきたのに気がついたマスコミだったがゲンドウの通達を

 知っているために近づく事が出来なかった。

 だが、一人のカメラマンがマスコミの中から抜け出してシンジに近づいて写真を撮ろうとした瞬間、どこからか現れた

 黒ずくめの男達数人がカメラマンを取り囲んでその身柄を拘束した。

 「こちらに来ていただけますか」

 「は、放せ! 俺には報道の自由が有るんだ!」

 「連れて行け」

 「うわっ!?」

 これまたどこからか現れた黒い車にその男達はカメラマンを押さえたまま乗り込むと、あっと言う間に走り去った。

 「何、今の・・・?」

 「さあ・・・」

 シンジとマユミは目の前で起きた事がなんなのか訳が分からないといった感じで首を捻っていたが、事情を知っていた

 マスコミのみんなは走り去った車の方を見つめながら手を合わせて拝んでいるのが多数見受けられた。



 『あいつ・・・もう、会えないだろうな・・・』



 取材に来ていたマスコミの頭の中は明日は我が身と言う事とゲンドウの言葉が嘘では無かったと解ってしまった、

 そんな熱い夏の日の爽やかな朝の出来事だった。






 開店時間の過ぎた店内には次々とお客さんが来店してきたが、マスコミの人は先ほどの出来事で誰もいない。

 その中でウェイターをしている耕治にニュースを見た何人かが質問をしようとしたが、ニッコリと笑って

 「プライベートの事はお答えできませんので」

 と、誰もが魅了される笑顔でさらりと断るのでそれ以上聞くことは出来なかった。

 それに何より真面目に働く耕治の姿を見て、野暮なことを聞くのは失礼だと感じるお客さんがほとんどだった。

 従って店内はいつもと同じ様にくつろげる空間、キャロット本来の姿を醸し出していた。

 「あん、耕治君ってなんて格好いいの〜♪」

 目を潤ませて愛しい耕治を見つめる留美は盛んに熱い思いをハートに乗せて飛ばしていたが、耕治は全然意に介してない

 のか額に汗して仕事に集中してがんばっていた。

 「耕治が格好いいのは知っていますから、仕事をしてくれませんか留美さん?」

 「は〜い、留美がんばりま〜す♪」

 ポニーテールをぴょこぴょこ揺らしてフロアに出ていく留美の姿を見ていたあずさは、軽いため息を付いて見送った。

 「留美さんの気持ちも分かるんだけど、それより耕治の考えの方が気になるのよね・・・」

 額に汗して動き回る耕治の姿を見つめながら、ちょっと不安な気持ちであずさは一人呟いた。

 そんな不安を吹き飛ばす、元気なかしまし娘が遅刻の罰を終えてフロアに戻ってきた。

 「ううっ、足が痺れた〜」

 「足が変・・・」

 「正座は何度やっても駄目だわ〜」

 ふぅっとため息をついてあずさが振り返ると、見た目は凄く可愛いウェイトレス姿のアスカ、レイ、マナの三人が

 愚痴をこぼしていた。

 「あのね・・・あなた達がちゃんと遅刻しないで来てくれればそんな事しないで済むのよ、解っている?」

 「は〜い」

 「はい」

 「はい、気をつけま〜す」

 返事だけは素直なだけに始末が悪い事が解っているので、ほとんど諦めたように肩を竦めるとあずさは苦笑いを

 するしかなかったが、すぐにその表情が一変した。

 目の前の三人娘の顔がとろけたようにぐにゃ〜とした笑顔になって妙な声をあげたからである。

 「ぐふっ・・・」

 「ニヤリ・・・」

 「えへへっ・・・」

 「あ、あなた達・・・」

 さすがのあずさもちょっと引いてしまうような笑顔と雰囲気に、三人娘の心境が留美と一緒なのに気がついて

 更に深いため息をつくと諦めて自分の仕事に戻った。

 でも、幸か不幸か幸せ一杯の三人は切れることもなくスムーズに仕事をこなしていくので結果的には良かった。

 いつもこうだと良いのだが、それではつまらないと思うお客さんも中には居たかも知れないが・・・。

 しかし、アスカ、レイ、マナは知らなかった・・・シンジが一夫多妻制の事などまして自分が第一号に指名されて

 いようとは・・・事実を知らない、ちょっと哀れな三人だった。






 その肝心のシンジはマユミの他トウジとヒカリ達と休憩室で漸く昨日のニュースの内容を聞かせられていた。

 「な、なんだよそれ!?」

 「シンジ君、全然知らなかったのですか?」

 「うん、変な物見たから昨日はすぐに寝ちゃったし・・・」

 「変な物?」

 「ごめんマユミ、それだけは思い出したくないんだ」

 「そう・・・」

 はっきり言いきるシンジが本当に嫌な顔をしたので、マユミはそれ以上深く追求するのをやめて話題を元に戻した。

 「それでアスカさん達が今日あんなに機嫌が良かったんです」

 「そ、そう言われても・・・そうだ、トウジはどう思う?」

 「そないな事聞いてどうするんだ、このうらぎりもん!」

 「なんで僕が裏切り者なんだよ?」

 「シンジ・・・一人だけいい目を見るなんて、わしは許さへんで〜!」

 「どう許さないのか教えてくれる、トウジ?」

 迂闊な男であった、朝から一緒に働いて側にいるヒカリの事をすっかり忘れて熱弁を奮ってしまう。

 トウジの顔を冷ややかな目つきでヒカリはじーっと睨んでいた。

 「ほ、ほなわしはお先に・・・」

 「待・ち・な・さ・い」

 額に流れる汗を拭うと、トウジはいきなり立ち上がり倉庫整理に託けて逃げ出そうとしたがすぐに掴まると、

 逆に仁王立ちになったヒカリが立ちふさがった。

 「さあ、徹底的に話しましょうか、トウジ!」

 「か、勘弁して〜なぁ、ヒカリ?」

 「だ・め!!」

 「とほほ〜」

 ヒカリに怒られている自業自得なトウジを苦笑いで見ていたシンジは横にいるマユミに向くと、

 アスカ達の事をマユミと話した。

 「はぁ〜しかしこれもきっと父さんの差し金なんだ・・・」

 「くすっ、本当に可愛いお父様ですね」

 「全く我が身かわいさにそんな事しかしてないんだから」

 「そこが良いんじゃありませんか?」

 「いや、それが一番の大問題なんだよ、母さんの事が関わると特に・・・ま、まさか!?」

 「くすっ、がんばってくださいシンジ君」

 「ええっ!? それってどういう意味なの?」

 「さあ・・・どうなんでしょう」

 クスクス笑うマユミの笑顔にぼーっと見とれるシンジだが、事態は切迫した状況に成りつつあるのを認識していた。

 ゲンドウだけならまだしも、ユイまで組んだとなるとシンジには到底勝ち目がない。

 「父さん、母さん、僕は玩具じゃ無いんだけどなぁ・・・はぁ」

 耕治とは対照的にシンジはがっくりと項垂れると困った顔をしていたが、マユミはそんなシンジを優しく見つめていた。

 中学生の時とは違ってマユミはかなり明るくなっていた、これもシンジの影響なのかは定かでない。






 普段のどたばた騒ぎも無く本来の姿で営業できた日が今日が初めてのキャロット三号店の閉店間際に、

 ニュースを見た彼女達がお店にやって来た。

 「ねえ葵・・・やっぱり急に来るなんて止めた方が・・・」

 「な〜に言ってるの涼子、こう言うのは思い立ったら吉日なのよ? 出遅れてたくは無いでしょう♪」

 「でも、あずささんとかかなり気にしていないかしら・・・」

 「う〜んその辺は良く解らないんだけど、潤君の話だとあんまり怒っていなかったって」

 「そう・・・」

 「あのね涼子、その気合いが入った服を着ているのは誰の為なの?」

 「そ、それは・・・その・・・」

 「はいはい、真っ赤なお顔で返事してくれちゃって・・・」

 葵のセリフ通り、涼子の顔は良く似合っている白いロングのワンピースに引き立てられるように真っ赤に染まっていた。

 かく言う葵も夏を良い事に、真っ赤なビスチェにミニスカートとせくしーだいなまいつなボディを惜しげもなく

 披露してキャロットへの道すがら何人も悩殺しまくっていた。

 「あ〜ん葵ちゃん、ボクが中に入れないにょ〜」

 「あ、ごめんつかさちゃん」

 続けて入ってきたのは今も相変わらずコスプレしているつかさだが、何もこんな所まで来てと思う葵と涼子だった。

 何せつかさの格好ときたら、基本はキャロットのメイド服タイプなのだが頭と胸に何やら大きな鈴が付いていた。

 「ふ〜ん、ここが三号店なんだにょ」

 きょろきょろ店内を見渡すたびに大きな鈴がりんりんとなって、これじゃまるで呼び出し用のベルと思われちゃう

 じゃないかと葵達は笑っていた。

 事実、それはそうなったのか見知った顔のウェイトレスが一人こちらに歩いてきた。

 「あ〜待ってたんだよ、みんな!」

 「うん留美さん、ひさしぶりだにょ♪」

 「つかさちゃん、ばっちり決まっているね♪」

 「もっちろんだにょ!」

 さすが昔に自分がやっていたので違和感無くつかさを迎える留美を見た葵達は、耕治の苦労がそこから少しだけ

 伺えた気がした。

 「あ、葵さんも涼子さんもお疲れさま〜」

 「留美ちゃん、今の気分はもう最高〜って感じかな?」

 「う〜ん・・・留美的にはそうなんだけど、耕治君がねぇ・・・」

 「前田君がどうかしたの?」

 「うん、今日の朝から何だけど例のニュースを見ても何か素っ気ないんだぁ・・・」

 「騒いだりとか喜んだりしてない?」

 「特には何も・・・あ、そう言えば美奈ちゃん達が耕治が怒ったところ初めて見て怖かったって言ってたっけ?」

 留美の言葉にまさかと思いつつ涼子は事の真相を確かめる為、留美にそのいきさつを聞いてみた。

 「えっ、前田君が怒ったの?」

 「ん〜何でもお店の前に群がっていたマスコミの人達に向かって『ここに集まらないで下さい』って・・・」

 「へ〜珍しいわね、あの耕治君が怒るなんて」

 「確かにそうね・・・」

 二人の言い分ももっともだった、耕治が二号店で働いていた時にずっと一緒に働いていたが怒った耕治を見た事は

 一度もなかったからである。

 ちょっと真剣な顔つきで考えている葵と涼子の後ろから、遠慮がちに声が掛かる。

 「あの〜耕治さんがどうかしたのですか?」

 怪訝な顔つきで窺うようにお店の中に入ってきたのは、すっかり大人の女性になった早苗である。

 少し長くなった髪は三つ編みにしてスリムになった体に、淡いグリーンで膝下までのワンピースがよく似合っていた。

 また雰囲気も涼子の様に温かく、かつてのあずさに負けないほど人気が在り結構交際を申し込まれていたが、

 早苗自身ははっきりと好きな人がいるからと断っていた。

 「あのね、耕治君の様子がちょっとおかしいから気になっていたのよ」

 「そうですか、とにかく本人に会ってみるのが一番だと思いますけど・・・」

 「会うのが一番だよ〜♪」

 「こらかおる、お話の邪魔しちゃ駄目でしょう」

 「は〜い」

 そして元気な声と共に最後に入って来たのは開店祝いにも来ていた春恵とかおるの二人だった。

 「あれ、ミキさんは来てないの?」

 留美がその事に気が付くと、皆一様に苦笑いを浮かべていた。

 「ミキさん、その・・・締め切りが明日だから今日は来られないって」

 「あ〜なるほど、売れっ子は大変だね〜」

 涼子の説明に留美はうんうんと肯くと、気を取り直して彼女達をキープしてあるテーブルに案内した。






 すっかり同窓会の様な雰囲気を作っているテーブルに、耕治が留美に連れられてみんなのところにやって来た。

 「こんにちは、皆さん」

 ぺこっと頭を下げてお辞儀をする耕治に皆姿勢を正すとみんなの間に緊張した空気が流れた。

 「今日、みんながここに来た用件は解っています」

 にこやかな顔で静かに話す耕治の姿を見て、緊張感が緩んだのかそれぞれの顔に少しだけ笑顔が表れた。

 「しかし申し訳ないのですが、今は何も言えません・・・勝手な言い分でごめんなさい」

 さっきよりも深く頭を下げる耕治を見て、みんな戸惑いながらもお互いの顔を見ていた。

 「ただ、みんなの気持ちはとっても嬉しい事は確かです、ありがとうございます」

 耕治の言葉を黙って聞いているみんなの顔に、耕治自身がいろいろと考えていると言う事は理解できた。

 ならば、私達は彼の事を信じて待ってみようとそれぞれ心の中で思った。

 「ところでみんなは今日はこれからどうするんですか?」

 「え、え〜とね、これから潤君の家に集まって久しぶりに飲みましょうって事になっているんだけど・・・」

 「そうなんだ・・・よし!」

 「んんっ?」

 「後で俺とあずさも行きますので、美奈ちゃんとともみちゃんを先に連れて行って貰えますか?」

 「うん、いいけど・・・」

 「頼みましたよ留美さん、それじゃみんなまた後で!」

 もう一度みんなに頭を深く下げると、耕治は閉店をするために仕事に戻っていった。






 期待と不安が混じりながらもキャロットを後にしたみんなは、仕事が終わった美奈とともみを連れて一足先に

 潤の部屋に向かっていった。

 明かりが消えたキャロットに残っていたのは耕治とあずさの二人だけだった。






 To Be Continue



 だいぶ間が空きましたが、何とか書けました。

 今回は耕治を中心に話を進めましたが次はシンジを中心に持ってきます。

 ただ、耕治とあずさの話し合うシーンは次の冒頭に入ります。

 一体耕治はあずさに何を告げるのか?

 そしてゲンドウ&ユイの手のひらで踊るシンジに幸せはやって来るのか?

 かつて書いた事無いほどの最大人数が集まるこのSS・・・完結まで後何回?(笑)


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