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 Pia・キャロットへようこそ!!2 2018MIX・SPECIAL [






 PRESENTED BY じろ〜






 窓から入り込む月明かりに、人気の無い店内のいる二人の姿が照らされる。

 ピア・キャロット3号店の店長の耕治とマネージャーのあずさである。

 耕治は書類の整理をしていたあずさに声を掛けて、仕事の後残るように話しておいた。

 二人きりの店内でテーブルに向かい合わせに座ってお互いの顔を見つめた。

 「ごめんな疲れているのに、でもゆっくりと二人で話したかったから・・・」

 「ううん、平気よ・・・それで話って?」

 「うん、今朝のニュースの事なんだけどね・・・あずさはどう思っているか聞きたいんだ」

 「あれね・・・」

 あずさは小さくため息をついてから窓の方に視線を向けると、頬杖をついてぼんやりと夜の街を眺めだした。

 耕治は、何かを考えそして思っているあずさの横顔を黙って見つめた。

 しばらく黙ったままのあずさが視線を戻すと、俯いて耕治と顔を合わさずに話だした。

 「別にいいんじゃない、私が決める事じゃ無いし・・・」

 「あずさ?」

 「今日みんなが来たのもその為なんだし・・・耕治の好きなようにしたら?」

 「あずさ・・・」

 「みんなが幸せになるんだったら私はそれでいいと思うわ・・・」

 「・・・・・・」

 「耕治?」

 そこまで言って耕治の様子がおかしい事に気がついたあずさは、眉をひそめた。

 自分を見つめる耕治の目が優しく、そして顔には暖かい微笑みを浮かべていた。

 「今、ここには俺とあずさの二人しかいない・・・だから言ってもいいんだよ?」

 「わ、私は何も無いわよ、今言ったでしょう・・・」

 「違うよあずさ・・・俺が聞きたいのはそんな建前じゃ無いんだ、一人の女の子の本音なんだよ?」

 「本音・・・」

 「そう・・・だから周りの事なんて考えないで、あずさの本当の気持ちが知りたいんだ」

 「私の気持ち・・・」

 今自分に向かって耕治の言った言葉を、あずさ口の中で繰り返し呟きながら少し俯いてしまう。

 耕治は手を伸ばすとテーブルの上に握りしめていたあずさの手に、自分の手をそっと重ねた。

 はっとして顔を上げたあずさは変わらずに微笑んでいる耕治を見つめながら呟いた。

 「私・・・」

 「うん」

 「私・・・私、本当は嫌なの・・・だって耕治には私だけを見て欲しいからっ!」

 大きな目を潤ませてあずさは心の奥底に閉じこめようとした本音を耕治にぶつけた。

 そう言って顔を伏せるとテーブルの上にぽたぽたと滴がこぼれた。

 耕治は回り込むとあずさの隣に座って肩を抱いて自分の胸に顔を押しつけた。

 そんな仕草にあずさの涙腺は完全に緩んでしまい、次から次にと涙が溢れ出し耕治の胸を濡らした。






 あずさが落ち着くまで耕治は肩を抱いたまま黙っていた。

 「私ね・・・」

 「うん?」

 「きっと凄い我が侭なところがあるの・・・」

 「そうかなぁ?」

 「うん、耕治には見せてないだけよ、だから本当は嫌な事とか言いたい事あったの、例えばね・・・」

 「例えば?」

 「耕治がお店でほかの女の子と話しているとか、家でもミーナやともみちゃんにべたべたされているのとか?」

 「うん、ほかには?」

 「あとは留美さんとかに抱きつかれて、鼻の下伸ばしているところなんか・・・」

 「うっ、そう見えたんだ・・・」

 「あのね、休日とか私と二人だけでいて欲しいとか、そのもっと・・・あの・・・」

 最後の台詞は尻つぼみになり真っ赤になって俯いてしまったあずさだったが、何を言いたいのか耕治は察しがついた。

 「そっか、そこまで嫌な思いさせてたんだ・・・無神経だったね、ごめんあずさ」

 「ううん、でもね耕治のこと信じているから口に出そうとしなかったの・・・」

 「あずさ・・・」

 「それにそんなに嫉妬深いところ見せたら耕治に嫌われちゃうかなって思ったしね」

 「馬鹿だなぁ・・・例え世界が変わったってそんなことは有り得ないよ」

 「本当?」

 「多分♪」

 「もうっ、耕治!」

 ぽかぽかと耕治の胸を叩くあずさの顔は、ぎこちないけど笑顔になっていた。

 「やっぱりあずさには笑顔が一番似合っているよ、好きな女の子にはいつも笑顔でいて欲しいな♪」

 「あ、ありがとう耕治」

 「だから、みんなと結婚してそれであずさを悲しませてしまったら意味がないんだよ」

 「うん」

 「俺にとってあずさは何時だって一番大好きで大切な愛している女の子なんだ」

 「私も世界で一番耕治のこと愛しているわ」

 「それが聞きたかったんだ、あずさが幸せじゃ無いならそんなことした俺自身も許せなくなる・・・」

 「耕治・・・大好きよ耕治!」

 本当に自分の事を信じて好きでいてくれる愛しい耕治を、あずさは思いっきり抱きしめた。

 改めてお互いに気持ちを確認し合った二人の間には、今まで以上に大好きと言う気持ちが溢れ出していた。

 あずさの顔には幸せな気持ちが一杯の笑顔が浮かび、そして嬉し泣きしていた。

 「みんなには悪いけど今度のことは・・・」

 「待って耕治」

 「ん、何?」

 「あのね、今耕治の前で素直になれたし言いたいことも言えたから私はすっきりしたの」

 「うん、それで?」

 「さっき私って凄い我が侭だって言ったの覚えている?」

 「覚えているけど、それが・・・」

 体を起こして耕治と見つめ合うあずさは、笑顔のまま言葉を続けた。

 「だからね・・・ミーナを幸せにしてくれる?」

 「へっ?」

 「ううん、ミーナだけじゃない・・・ともみちゃんも涼子さんや葵さんや潤君やつかさちゃん、春恵さんと

 かおるちゃん、早苗さん美樹子さん、ユキちゃんと紀子ちゃん・・・あ、もちろん留美さんもね?」

 「でも、あずささっき嫌だって・・・」

 「さっきまではね・・・でも耕治がどんなに私のこと愛してくれているか解ったから納得できたの」

 「本当?」

 「もちろん♪ それにミーナに幸せになって欲しい気持ちは確かにここにあるから・・・」

 そう言って自分の胸に手を当てて肯くあずさに、耕治は包み込みように自分から抱きしめた。

 「我が侭って本当だったんだなぁ〜」

 「当然よ、それに耕治だって満更じゃないんでしょ?」

 「さあどうかな?」

 「あーっ、はぐらかしたわね!」

 「あははっ、さてそろそろ帰ろうか? みんな待っているだろうしね♪」

 そう言いながら耕治は立ち上がって先に歩き出そうとした。

 「待ちなさい! 私だけ喋らせて狡いわよ、耕治・・・ぐっ!?」

 後を追って立ち上がったあずさは突然口元を押さえると、そのまま洗面所の方に走っていってしまった。

 「あずさ!?」

 ただ事じゃない様子に耕治は慌ててあずさの後を追って洗面所に駆け込んだ。

 「はぁはぁ・・・」

 「大丈夫かあずさ? どこか具合悪いのか?」

 あたふたする耕治を無視して鏡の中の自分を見つめながらあずさは思い当たることが在った。

 「もしかして!?」

 「なんだ、どうしたあずさ?」

 真剣な表情で側にいる耕治に顔を向けると、あずさは少し頬を赤くして小さな声で呟いた。

 「あのね・・・」

 照れながら話すあずさの言葉に耕治は一瞬ぽかんとしてから、大事な物を扱うようにそっと抱きしめて喜んだ。

 「やったーっ!!」

 深夜のキャロットの店内に耕治の喜んだ大きな声が響き渡った。






 一方その頃潤の部屋で宴会の準備をしていた葵や涼子たちは、耕治とあずさの到着を今か今かと待っていた。

 「遅いわね・・・」

 「そうね・・・」

 いつもなら我先にと一人でもビールを飲み出す葵だが、今日に限ってはウーロン茶しか口にしておらずぼーっ

 としていた。

 葵の呟きに涼子も中身が減っていないコップを両手で掴んだまま答えた。

 「まあそう簡単にいくとは思ってないけどね・・・」

 「あずさちゃん泣いてないかなぁ・・・」

 静かにグラスを傾ける潤の横に並んで座っているつかさは、不安な色を隠せずいつもの笑顔が無かった。

 「かおるねむいよ〜・・・」

 「あらあら、それじゃもう寝ましょうかおる?」

 「や〜おにいちゃんがくるまでまつの〜!」

 「そう・・・」

 しかしすぐに瞼が閉じてしまったかおるは春恵の膝の上で可愛い寝顔を見せてしまった。

 「はいどうぞ」

 持ってきた毛布をかおるに掛けてあげる早苗に頭を下げる春恵は、何となくドアの方を向いてしまう。

 「耕治さん遅いですね・・・」

 「ええ・・・」

 春恵の側に腰を下ろした早苗はかおるの寝顔を見ながら自分も春恵と同じように耕治のことを待っていた。

 今ここにいない美奈とともみは隣の自分たちの家で料理を作っていた。

 いつもなら楽しい会話などしながら作るのだが必要なこと以外喋ろうとしなかった。

 「耕治お兄ちゃんとあずさお姉ちゃん、遅いなぁ・・・」

 「うん、でも・・・」

 「大丈夫だよ、二人とも♪」

 「「留美さん?」」

 テーブルの上に在る皿から味見と称してつまみ食いしていた留美が、後ろから二人に声を掛ける。

 「どうしてですか?」

 「ん〜、なんとなくだけどね〜」

 「何となくですか?」

 「そうね・・・さあ、今はそれよりも料理作っちゃおう♪」

 「「はい!」」

 留美に励まされ二人は少しだけ微笑み合うと、手際よく料理を仕上げていった。

 そして出来上がった料理を隣の潤の家に運んで用意が整った時に、みんなの待っていた人がドアを開けて中に

 入ってきた。

 「遅くなりました〜」

 「ごめんさい、お待たせしちゃって」

 みんなの視線が二人に集中してしばらく誰も無言のまま時間が過ぎていった。

 彼女たちの顔には不安の色が浮かんでいてそれに気がついた耕治とあずさは、お互いに顔を合わせると同時に

 肯いてからニコッと笑顔を浮かべて耕治はみんなに向かって言葉を告げた。

 「えっと、ここに来るまでなんて言って良いか考えていましたけど・・・」

 耕治の言葉の一言一句を聞き逃さないようにみんなは真剣な表情で耕治の顔を見つめた。






 「みんなで幸せになりましょう♪」






 一瞬何を言われたのか解らずにぽかんとしていたけど、すぐに耕治の言葉を理解すると皆それぞれ喜んだ。

 「やったわ! 今夜は思いっきり飲むわよ〜♪」と葵はビールを一気に飲み干す。

 「うそ・・・本当に?」口元を押さえて信じられないのか呆然とする涼子。

 「思いは通じたってところだね」クールに言ってはいるが頬が赤くなって緩んでいる潤。

 「きゃる〜ん♪ うれしいんだわん!」はしゃいで部屋の中を転がり回るつかさ。

 「ふぅ・・・」安心して気が抜けたのか胸を押さえて小さく深呼吸する春恵。

 「良かったですね」その隣で春恵に声を掛けるのは笑顔の浮かんだ早苗。

 その中でも美奈とともみはあずさの側に近寄って真剣な顔で問いかけた。

 「本当にいいの、あずさお姉ちゃん?」

 「うん、耕治の言った通りよ♪」

 「でも・・・」

 「ねえミーナ、私の顔見て解らない?」

 「えっ?」

 そう言われてあずさの顔見た美奈は、そこにあるのは美奈が憧れて大好きな微笑みが在った。

 「ミーナが幸せにならないと私も悲しいから、ね?」

 「あ、あずさお姉ちゃ〜ん!」

 近頃滅多に泣かなくなった美奈だったが、この時は子供の頃の様に大きな声であずさの胸に顔を付けて

 泣き始めてしまった。

 「ほらぁミーナ、泣かないの・・・みんな見てるわよ、ね?」

 「うっ・・・すん・・・う、うん・・・」

 一生懸命こぼれてくる涙を拭う美奈だったが、後からどんどん溢れ出てくるからどうしようもなく

 そのままあずさの胸に顔を付けてしがみついていた。

 「ミーナ・・・」

 あやすように頭を撫でるあずさの顔は姉であり母親のような慈愛に満ちた表情で美奈の事を見つめていた。

 「あの、あずささん・・・」

 「ん?」

 「私もいいんですか?」

 「もちろんよ、あとユキちゃんや紀子ちゃんもかまわないわよ?」

 「あっ・・・はいっ!」

 ともみの顔にも嬉しくてたまらないといった笑顔が浮かんですぐに親友たちに電話をしにいってしまった。

 「耕治君♪」

 留美は耕治の首に自分の腕を回して抱きつき、潤んだ瞳でその顔を見つめた。

 「はい、なんですか留美さん?」

 「キスしたいんだけど良いかなぁ?」

 「あれ? 留美さんは確かシンジ君にぞっこんじゃなかったんですか?」

 「うっ」

 ニヤニヤしながら留美を見つめ返す耕治だが、その腕はしっかりと彼女の体を支えていた。

 「まあ向こうはなかなか激しいかもしれないですけどがんばってください」

 「ううっ」

 確かに一時はシンジに迫っていた事は事実であり、留美の顔は焦りのためか次第に笑顔が引きつり始めた。

 「美奈応援しますぅ♪」とえへへとあずさに抱かれながら最初に言ったのは美奈だった。

 「ともみも同じく応援します♪」と携帯電話で連絡を終えて相乗りするように笑顔全開のともみ。

 「あ、あうあう・・・」

 耕治たちの様子を盛り上がりながらも気にしていた葵たちからも、留美に励ましの声が次々とあがる。

 「へぇ〜そうなんだ、がんばってね〜♪」とニヤニヤとビールを片手にご機嫌の葵。

 「がんばれぇ〜留美さん♪ ぱちぱち〜」と拍手しているのは顔が真っ赤になり出来上がってしまった涼子。

 「ふえっ・・・」

 「幸せになってください、留美さん♪」とウィンクしながらグラスを掲げるのは潤。

 「応援するんだワン♪」と着ぐるみなのになぜかしっぽを揺らして喜んでいるつかさ。

 「うくっ・・・」

 「あの・・・なんて言うかその、がんばってください」と遠慮がちに言う春恵。

 「がんばれぇ〜・・・むにゃむにゃ」幸せそうに微笑んでいながら眠っているかおる。

 「留美さん、ファイトですよ!」となぜか笑顔でガッツポーズの早苗。

 「る、留美は・・・」

 そしてトドメの一言は、耕治の横で美奈を抱きしめてウィンクしながら笑う彼女の口から聞こえた。

 「あと二、三年もしたらシンジ君も耕治みたいに素敵になるからそれまでがんばってね♪」

 「ううっ、みんなひどいよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 そんな留美を見て一同大爆笑してしまい、大いに拗ねまくった留美だったが耕治にキスされたらとたんに

 へにゃ〜となって喜んで耕治を押し倒そうとしたが、それはみんなに反対されたのは言うまでもない。

 とにかく今日という日は耕治とあずさ、それにみんなにとってにとっても忘れられない日となった。

 ただ、今後一つ問題があるとすれば・・・耕治が長生きできるかどうかだけだった(笑)

 その頃、とある部屋で一人の男が電話で話していた。

 「ええ、どうやら上手くいったようです・・・」

 「いや・・・そんなに気を遣わなくてもこちらとしては例の物を・・・」

 「おおっ・・・そうですか、ではこれからもよろしく・・・」

 電話を切りいつものようにファイティングポーズで机に肘をつくおやぢの口元はニヤニヤしていた。

 「ふむ、現六種類に加えてさらに試作品までとは・・・出来る男はちがうな」

 「あとはシンジ君だけのようですね・・・」

 顎に生えた無精ひげを指でなぞりながら肯く男は煙草に火を付けて煙を揺らめかした。

 「ああ、しかしあいつもかなり自己主張するようになったから問題ない」

 「強くなりましたからね、シンジ君は」

 「ふっ、当然だ・・・私とユイの息子だからな」

 「それは納得ですね」

 「今回の関しての君の報酬も望み以上の物が手に入ることになった」

 「むっ・・・うれしい誤算と言ったところですね」

 ニヤリ。

 ニヤリ。

 ほとんど暗闇の部屋の中で男たちは自分の野望と希望が叶ったことに暫し感慨に浸っていた。

 誰が野望で誰が希望なのか知っているのは自分だけだった。

 そしてそんな二人を見てこめかみを押さえる白髪交じりの男はため息をついて瞼を伏せた。

 「NERVは必要なのか? 今日ほど存在意義を考えさせられた日は無かったよ・・・」

 ニヤニヤしている二人を横目に鞄を手にすると、男は一人寂しく部屋を後にした。

 しかし平和が何よりだと思い、それならば構わないかと思う気持ちが心の中に確かにあった。

 冬月コウゾウ・・・彼に幸せが訪れるのはまもなくだが、それは別に語られて然るべき物語である。






 当の噂のシンジと言えば・・・風呂場で湯船に浸かりながら一人悩みまくっていた。

 「はぁ〜・・・父さんも母さんもなんて事してくれたんだよぉ・・・」

 頭にタオルを乗せてぼやくシンジは今日の帰りの出来事を、苦虫を噛み潰した様な表情で思い出していた。

 「お疲れさまでした〜」

 「お疲れさまでした」

 「今日もご苦労様シンジ君、マユミさん、明日もよろしくね」

 「はい」

 「はい、あずささん」

 二人はお辞儀をしてから帰ろうと出口のドアを開けたそこには、ニコニコ顔の四人(?)が立っていた。

 「遅いわよ、シンジ!」

 「待っていたわ、碇君」

 「一緒に帰ろう、シンジ!」

 「やあシンジ君、僕と一緒に帰ろう・・・ごはっ?」

 アスカに肘鉄、マナに裏拳、トドメにレイのA・Tフィールドで飛ばされて夜空に輝く星となったカオルを

 唖然と見つめてしまったシンジだった。

 「カオル君・・・また会えるよね?」

 夜空の星座が一瞬微笑んでいるカオルに映ったが、気を取り直すとマユミの手を引いて家に帰ろうと歩き出した。

 「ちょっとバカシンジ! あたし達を置いていくなんて随分偉くなったわね?」

 「嫌なの? 碇君・・・」

 「酷いんだーっ、シンジって!」

 三人の女の子に言い寄られてビクビクするシンジの手を、ぎゅっと握り返しながらマユミが三人の前に立ちはだかった。

 「やる気、マユミ?」

 「・・・・・・・」

 「独り占めは許せないわね」

 「いえ、そんなつもりは無いのですが・・・一言良いですか?」

 「何よ?」

 アスカが睨むがマユミは怯むことなく、いつもの感じで話し出した。

 「その・・・今の皆さんの顔はとても怖いですよ、それじゃシンジ君も怯えてしまうと思いますけど?」

 そう言われて三人はお互いの顔を見て黙り込んでしまった。

 「皆さんがシンジ君を好きなのは解ります、でもあなた達は自分の気持ちを押しつけているだけじゃないのですか?」

 「そ、それがなんだって言うのよ?」

 「シンジ君の気持ちも考えて欲しいと言うことです」

 「シンジの気持ち?」

 「そうです、私はシンジ君が好きです、でも自分の気持ちを無理に押しつけたりはしませんでした」

 「それにこのままじゃ碇君に本当に嫌われてしまうかもしれません、それでも良いのですか?」

 凛とした雰囲気で話すマユミの言葉にアスカとレイとマナは静かに話を聞くようになった。

 「アスカさんもレイさんもマナさんも私よりも魅力的なのですから、そう言うところをシンジ君に見て貰った方が

 少なくても今の行動より良いと思いますけど・・・」

 ニコッと笑うマユミの笑顔にアスカ達の顔から険しい表情が消え去り、穏やかな顔に変わっていった。

 「それにシンジ君だってアスカさん達の事嫌いじゃないですよね?」

 「えっ?」

 傍観していていきなり話を降られたシンジは間抜けな顔でマユミの顔を見つめた。

 「本当・・・シンジ?」

 「碇君・・・」

 「シンジ?」

 さっきまでとは違い潤んだ瞳で懇願するように自分を見つめる美少女三人に、シンジはほっぺたを赤くして答えた。

 「うん、その・・・アスカも綾波もマナも嫌いじゃないよ」

 自分たちを見つめ返しながらはっきりと言うシンジの姿に、アスカもレイもマナもほっとした表情を浮かべた。

 その様子を見てふぅと小さく深呼吸したマユミは呟いた。

 「それにシンジ君はみんなを大事にしないといけないと思いますけど?」

 「どうして?」

 微笑んだまま黙り込んでしまったマユミに怪訝な顔をするシンジに向かって思い出したようにアスカ達が喋り出した。

 「そうよね・・・病室であたしにした事まさか忘れたとは言わないわよねぇ〜?」

 「あ、あれはその・・・うっ」

 「碇君と一つになった時の事、今でもはっきり覚えているわ」

 「あ、綾波その言い方はちょっと・・・」

 「そうよ! 私の裸見たんだから責任とって貰わないとね♪」

 「せ、責任って言われても・・・」

 今度は楽しそうに笑いながらシンジに迫るアスカ達を、マユミは止めようとしなかった。

 「マ、マユミ?」

 「くすくすっ、ユイさんがいろいろと話してくれました♪」

 「ぐあっ」

 まさかマユミの口からユイの名前が出るとは思わなかったシンジは、その時だけ自分の母を恨んでしまった。

 「か、母さ〜ん!」

 夏の夜空に虚しいシンジの叫びと、マユミ達の楽しそうな笑い声が響き渡った。

 「はぁ〜・・・」

 ため息付きながらもそろそろ出ようかと立ち上がろうとした時、突然風呂場のドアがからからと開いた。

 「たまには母子水入らずで入りましょう、シンジ♪」

 「か、母さん!?」

 慌てて股間を押さえて湯船に沈んだシンジはユイに背中を向けて見ないようにした。

 確かに自分の母なのだが年齢と違って外見は二十代中頃と見間違うほどの美貌と肌の艶があり、

 シンジと一緒に買い物に行くとよくシンジの姉に間違われてユイは喜んでいたりもした。

 そのためかどうも世間一般の母親とはかけ離れているため戸惑うことも多かったが、今回のはさすがにシンジの

 予想範囲外の行動だった。

 「あらあら、母さん相手に恥ずかしがること無いでしょう?」

 「そんなことより早く出て行ってよ!」

 「彼女が出来ちゃったら冷たくなって母さん悲しいわ〜」

 「な、何言ってるんだよ!?」

 と、思わず振り向いてしまったシンジの目の前には、側に来ていたユイの体が目の中に飛び込んだ。

 「・・・・・・」

 「みつめちゃいやん♪」

 頬に手を当てて赤くなった部分を隠そうとしたが、肝心な部分は隠そうとしないユイの体をシンジは凝視してしまった。

 それからきっかり十秒後・・・。

 ぶはぁ〜っ!

 見事なぐらい盛大に鼻血を振りまいてシンジは湯船にブクブクと沈んでいった。

 「はぁ・・・これじゃ孫の顔はまだまだ先のようね」

 湯船からシンジを助け出して呟くユイの目が在る一点でぴたりと止まった。

 「まあシンジったらいつのまに・・・ぽっ」

 裸で抱き合うちょっと危ない状況で、じ〜っと見つめたまま我が息子の成長を喜ぶユイだった。

 余談ではあるけど、ちょうどその時帰宅してきたゲンドウが風呂場にやって来てしまいその様子を目撃しまった。

 その夜、一晩中泣き続けたゲンドウは初めてシンジに負けたと思ったが息子の成長をちょっとだけ喜んだ。

 「シンジ・・・すでに私を越えていたんだな、ふっ」

 「そうですね、あんなに立派に育っていたんですね」

 「ユイ・・・何か言いたいことがあるのか?」

 「いえ、お休みなさいあなた」

 「むっ」






 翌日、朝早く駅のホームで仕事とこれからの準備のため帰る涼子たちを見送りに来ていた耕治とあずさの前に、

 入れ違いに停車した列車から美樹子とユキと紀子が降りて来た。

 「あっ、やっほー耕治、あずさちゃん♪」

 「ふん・・・来てあげたわよ、感謝して欲しいぐらいね」

 「ユ、ユキちゃん・・・あの、お久しぶりです耕治さんあずささん」

 「いらっしゃい、早いですね三人とも」

 「相変わらず素直じゃないわね、ユキちゃん?」

 「ほっといてよ!」

 「はいはい」

 苦笑いのあずさに笑いかけると紀子はふふっと笑いながら喋りだしてしまう。

 「もうユキちゃんたら・・・本当はともみちゃんから電話が来た時、一番喜んだの誰でしったけ?」

 「紀子! それは・・・」

 拳を振り上げて紀子を追い回すユキの顔はそれが嘘じゃない証拠に真っ赤に染まっていた。

 「そうそう耕治、これ真士君から預かってきたんだけど」

 「真士から?」

 よいしょと持ち上げたバッグの中は栄養ドリンクで一杯だった、そしてその中にメモがあった。

 『ふぁいと一発だぜ! 死ぬなよ親友♪』

 「あの野郎・・・」

 久しぶりの親友の言葉に耕治の顔は苦笑いだがどこか嬉しそうだった、そしてその中から無造作に一本掴むと

 蓋を開けて飲み干した。

 「期待に応えてがんばらないと殴られそうだな?」

 呟きながら自分たちの周りで追いかけっこしているユキの腕を捕まえると、耕治はその体を高く持ち上げた。

 「きゃっ、何するのよ!?」

 「ほ〜らユキちゃん、機嫌なおしてくれよ♪」

 赤ちゃんをあやすようにユキの体を持ち上げたまま、耕治は笑いかけながらくるくる回る。

 「放してよ! それに私子供じゃないんだからっ」

 「そうかなぁ・・・じゃあ笑ってくれたら下ろしてあげるよ♪」

 「なっ・・・」

 二人のじゃれ合いを笑いながら側で見ているあずさに、美樹子は伺うように顔を見つめた。

 「でも本当に良いの、あずさちゃん?」

 「うん、もちろんよ♪ これからもよろしくね美樹子さん」

 「そう・・・でも、耕治も大変だよね〜」

 「そうね、それになんと言ってもパパになるんだから・・・」

 「ん? ああ、かおるちゃんね?」

 美樹子の問いかけに首を横に振り、あずさは頬を染めて視線を下に向けて無意識に下腹に手を当てた。

 あずさの様子にぴんっときた美樹子は思わず大きな声で叫んでしまった。

 「もしかして耕治の子供〜!?」

 その叫び声にはしゃいでいた三人の動きが固まり、あたりに静寂が流れた。






 「すけべ」






 ぼそっと呟いたユキが上から耕治をジト目で睨んでいた。






 To Be Continue



 十万HIT記念がこんなに遅れて申し訳ないです。

 この時期はなにかと忙しいので(笑)

 さあ最終回まで後わずか・・・このまま幸せに終わるのか、それともじゃまが入るのか?

 それは!

 ひ・み・つ♪

 後少しなので宜しかったらお付き合いしてください。

 それでは〜。


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