ファンタジーKanon
 

                                           第2話:事の発端…
 

「…祐一君、上です!」
「おう!」

優の声に反応し、俺は自分の上空を見上げた。
すると、木々の間より大きな犬が5匹、こっちに向かって落りてくる。

ザシュ…

頭部に機械を埋め込まれたサイボーグ犬…これで何匹目だろう……
俺はそんな事を思いながら、サイボーグ犬を1匹、手にしている刀で斬りつける。

PiPiPi…
ボン!!

頭部にある機械部分を損傷し…何やら音を出しながら爆発するサイボーグ犬…
その度に…俺の中で何かが痛む。

「…はぁあっ!」

俺の隣でも香里が、サイボーグ犬を殴りつけている。
…香里の表情も、とても辛そうだ。

「……てや!」

優も…悲しげな表情を浮かべている。

「………」

舞も…表情は相変わらずの無表情ではあるが、瞳には悲しみに染まっている。

「……うぐぅ」

あゆも…今にも泣き出しそうな表情で…弓を射っている。
辛い…それは皆、同じだった。

「「「「「………」」」」」

5匹のサイボーグ犬の破片…
それを見ながら俺達はうつむいていた。
…倒さなければ、自分達に身の危険が及ぶという事は理解している。
でも…

「…犬さん…ごめん。」

ポツリ、と舞が呟く。
今まで…もう20匹以上のサイボーグ犬と対峙してきた。
けれども…やはり、嫌だ。
戦うためだけに…身体を改造それた犬達…
応戦しなければ…こっちが、強化された爪や牙に切り裂かれる事となってしまうだろう。

「…行きましょう。いつまでも…この様な所で、じっとしているワケにはいきませんから。」
「そうね。優君の言う通りね…。まだ、半分も来ていないのだから…」

そう言って香里は背負っていたリュックから地図を取り出す。

「…今、ボク達は何処ら辺に居るのかな?」
「確証を持てませんが…もうすぐで川に辿り着けるでしょう。そうすれば…半分です。」
「…先は長いわね。」

地図を広げながらあゆ、優、香里の3人が話しをしている。
俺は…というと舞と一緒に先程のサイボーグ犬達のお墓を作っていた。

「……」

舞は相変わらず、何も言わず黙々とお墓を作っている。
こんな時に…何の言葉もかけてやれない自分が…
歯痒かった。

「祐一。」
「ん…どうした?舞。」
「…佐祐理達、大丈夫かな?」
「…大丈夫だろ。もしかしたら…もう目的地に着いてるんじゃないか?」
「…うん。」

俺達は今…青森県にある樹海にいる。
恐山…と呼ばれる山の麓に広大に広がる樹海…
…ちなみに、細かい事は気にしないのが約束だ、こういう話だしな。
目的地は…この樹海に佇む『城』……
…いっかいの高校生だった俺達が、何でこんな事をしているのだろうか…
事の起こりは…
今から1週間ほど前…
 
 
 
 

「はぁ…はぁ…何とか、間に合ったな。」
「うん、良かったね。」
「うぐぅ…」

その日も…俺達は名雪の寝坊が原因でギリギリの登校だった。

「相変わらず心臓に悪い登校の仕方してるわね。」
「祐一くんもあゆさんも、毎日ご苦労様です…」

席のところにまで来ると、香里と優がいつもの台詞で迎えてくれる。
ちなみに優は、転入してきて最初の方は俺の事を呼び捨てにしていたが、
『やはり…人を呼び捨てにするのは、気がひけますね。』
と言って今では『君』を付けている。
…俺は別にどうでもいいのだが、まあ優がそうしたいのならそれでいいだろう。

「別に、好きでやっているワケじゃないぞ。」
「うぐぅ…」

朝はだいたいいつも通り…
そして…放課後…
今思えば、それが全ての始まりだった。
 
 

「名雪が!?(俺・祐一)」
「名雪が!?(香里)」
「名雪さんが!?(優)」
「名雪さんが!?(あゆ)」
「名雪さんがですか!?(美汐)」
「名雪さんが!?(栞)」
「…名雪が!?(舞)」
「ふぇ…名雪さんがですか!?(佐祐理さん)」
「名雪が!?(秋子さん)」

「「「「「「「「「誘拐された!?」」」」」」」」」

放課後、皆で水瀬家に来ていた俺達に…信じられないような事態が報告された。

「はぁ…はぁ…そ、そうなのよ。」

その事態を報告してきたのは真琴だった。
真琴は名雪と同じ陸上部に入部した。
だから、部活の練習がある日は名雪と共に練習をしていた。
真琴の話によると…

陸上部の後、お腹が減った為に名雪と真琴の2人は大急ぎで家へと向かっていた。
そこへ、妙な黒服の男が5人、突然現れたかと思うといきなり名雪を車へと押し込み、去っていったと。
その後真琴は、その場に残された紙切れを拾い、更に急いで帰ってきたそうだ。
ちなみに真琴が拾ったと言っていた紙切れには…

『水瀬 名雪は預った。警察には知らせるな。返してほしくば相沢 祐一と真田 優の2人を必ず連れて来い。他には何人いても適わない。ただし、命の保証はしない。
今日の夜11時に町外れにある廃工場へと来い。
                      神風会3番隊 桐生 宗一』

「…神風会!?」
「胡散臭い名前ね…」
「でも…私と祐一君を名指しで指名してますよ。」
「何故でしょうね。別に…身代金の受け渡し、とは違うようですし…」

正直、謎が多すぎていた。
この時点で判っているのは、名雪の命が俺と優に掛かっている…という事だけだった。

「警察には…やっぱり、知らせるんですか?」
「やめておいた方がいいわよ栞。」
「でもお姉ちゃん…」
「いい、栞。これは普通の誘拐事件じゃないわ。確かに、あたし達だけじゃ危険かもしれないけど…」
「じゃあ…」
「栞さん、相手は何の躊躇もなく、自分たちの居場所や名前、更には所属しているグループまで明かしています。」
「これじゃあまるで…わざと俺達に有利な方向にしている、みたいだな。」
「そうです。つまり、相手にとって…警察は恐れるに足りるのでしょう。こうなってしまった場合、警察に協力を要請するのは、かえって逆効果です。」
「そうよ。相手が相手なりにスジを通してきたのなら、こっちもそれに応えなきゃ。」

そんな香里と美汐の考え…
一見、無茶苦茶ではあった。
しかし、意外な事に秋子さんもこれと同じ考えだった。

「そう…ですね、ここは危険ですが、警察には伏せておきましょう。」
「…」
「祐一さん、優さん。名雪を…お願いします。」

と、挙句の果てには秋子さんに頭まで下げられてしまった。

「秋子さん、頭を上げてください…。」
「そうです。私達は…たとえ止められても、廃工場に行くつもりです。」
「……そうですか。有難うございます。」

その後、やはり俺と優だけでは不安なので香里に美汐、舞の3人も行く事になった。
秋子さんに佐祐理さん、それにあゆと真琴は水瀬家に待機となった。
廃工場に行くメンバーが決まったとき、時刻は午後の6時…
指定された時間にまで5時間あったので香里達は一旦自宅に戻り、準備をしてから再度、水瀬家に集まる事にした。
 

「…祐一さん。」
「何ですか?秋子さん。」

香里達が家に戻った後、夕飯を食べ終えた俺に秋子さんが声をかけてきた。

「…これを…」
「……刀、ですね…」

秋子さんから手渡されたのは一振りの刀だった。

「…普通の刀よりは、役にたつと思います。」

廃工場に行くのに対し、以前魔物との決戦の時に舞に貰った日本刀を持っていこうと思っていた俺にとっては、少し心強かった。
『肢閃刀・昂露』、それが俺の貰った刀の銘だった。
こういった事態の今、何故秋子さんがこのような物を持っていたのかは、頭の端にもなかった。
そして午後9時半頃…
香里達が来た。

「…ねえ祐一。」
「ん…何だ?香里。」
「町外れに廃工場なんかあったかしら…」
「さぁ…俺に聞く事じゃないだろ。」
「それもそうね…」
「それだったら…『久瀬総合薬品』の工場じゃないですか?祐一さん、香里さん。」
「久瀬…総合薬品、ですか?佐祐理さん。」
「はい。確か…先月に倒産したと思いましたよ。」
「よく知ってましたね、倉田先輩。」
「ええ…そりゃあ……もう………」

あ…何か佐祐理さんから、殺気が…
そうか…久瀬って確か、あいつの名前でもあったな。

「…祐一、倉田先輩…何か凄くない?」
「ああ。ちなみに言ってしまうと、舞も凄いぞ。」
「あ…」

そう。
殺気を出しているのは何も佐祐理さんだけではない、舞も…凄まじい殺気を出している。
…まあ、当然と言えば当然だな。

「「祐一君」」
「ん?どうした、優、あゆ。」
「見つけましたよ、先月の新聞。」

後ろを振り向くと優とあゆの2人が何枚かの新聞を持って立っていた。
日付は3月31日?4月5日までの朝刊と夕刊だった。
…ちなみに、今日は5月1日だ。

「…えーと…あ、これね。3月31日の夕刊。」
「…『大手薬品会社?久瀬総合薬品倒産』…か。」
「原因としては…『設立当時より融資を行っていた夕日銀行が、融資の停止を発表したのが3月25日、それ以降株が下がりつづけ、まさに異様とも言えるハイスピードで倒産。なお、夕日銀行が何故融資を打ち切ったのかはいまだに不明…』…だそうです。」
「…うぐぅ。難しいよ…」

どうやらお子様には難しい内容だったかもしれない。
まぁ…少し、難しかったかもしれないけどな。

「ええと…4月1日の朝刊から4日の朝刊までは、内容は同じみたいですね?。」
「4月4日夕刊…これが問題ね。」
「…何処がだ?香里。」
「これよ…」
「ん?」

俺は香里に指摘された一面を読んでみる…

「ええと…『先月の31日に倒産した?久瀬総合薬品に新たな疑惑が浮かび上がった。?久瀬総合薬品は数年前より暴力団と裏取引をしているとの疑惑があった。』…って、暴力団!?」
「それに、5日の朝刊…『暴力団との疑惑が浮かび上がっている?久瀬総合薬品に、暴力団との癒着を示すと思われる帳簿が発見される。その帳簿には、現在厚生省の許可が無ければ販売の出来ない薬品・劇物が含まれており、大麻も含まれていた。』…と。」
「極めつけは5日の夕刊ですよ。『町外れの?久瀬総合薬品所有している薬品工場の地下倉庫より、3kg末端価格にして6億円もの大麻が押収された。』」
「…町外れの薬品工場!?」
「そこね。」

なるほど…でも…入れるのか?

「しっかし…息子が息子なら、親父も親父だったワケだ。」
「あはは?ですよね?。」

…佐祐理さん、目が笑ってないですよ。

「ねえ祐一、今思ったんだけど…久瀬って確か、元生徒会長の事!?」
「…そ。舞を目の仇にして、佐祐理さんを自分の物にしようとした悪の根源…と、少なくとも俺はそう思っている。」
「……ま、何があったかは聞かないでおくわね。」
「そうしてくれ。あの時は色んな事があったからな…」
「…栞の事も?」
「そうだな…栞とデートした後、舞踏会に直行した事もあった…」
「………まあ、あの時の事は大目に見てあげるわよ。」
「感謝。」
「いえいえ…。」

そんな事をしているうちに時間が夜の10時を回ったので、俺達は出かける事にした。

「祐一さん、それに皆さん…名雪を、お願いします。」
「大丈夫ですよ秋子さん。名雪は絶対に、俺達の手で助け出します。誰も死なせたりなんかはしませんから。」
「お姉ちゃん、気をつけてくださいね。」
「ええ、油断なんかしないわ。」
「あうーっ…美汐、頑張って。」
「はい。私も頑張りますから、真琴も大人しくしていてくださいね。」
「舞、祐一さん達の力になってあげてね。」
「…判ってる。」
「うぐぅ…優くん、大丈夫!?」
「はい、私は大丈夫です。」

秋子さん、栞、真琴、佐祐理さん、あゆに送られて俺達は家を出た。
 
 

「…なあ美汐。」
「はい。」
「それって…薙刀か何かか?」

町外れの廃工場に向かう途中、俺は美汐の持っている長い物体に注目した。
白い布に包まれていて、よくはわからないが何となく…そんな気がしたのだ。

「そうです。天野家に伝わる『薙刀・天桜(なぎなた・あまざくら)』です。」
「……」

薙刀・天桜…ね、ま美汐らしいと言えば美汐らしいな。

「そういえば…祐一さんのは、日本刀ですか?」
「ああ。一振りは美汐達がいったん自宅に戻っている間に秋子さんより譲り受け物、そしてもう一振りは以前、舞に貰った物だ。」

美汐に説明をしていると、後ろにいた舞が服の袖を引っ張ってきた。

「…何だ?舞。」
「………」

舞は軽く俯いている。
…どうやら、俺があの時に貰った日本刀を今でも持っている事が嬉しかったようだ。

「…そういえば舞、剣はあの時のままか?」
「…ぽんぽこたぬきさん。」
「別の…って事か?」
「…はちみつくまさん。」

そう言いながら舞は持っている剣を俺に見せた。
…よくは判らないが、微妙に装飾等が違うようだ。
それに刀身も少し長めだ。

「…祐一は、何を貰ったの?」
「俺か?俺のは『肢閃刀・昂露』っていう業物。」
「…凄い。」
「そうなのか?」
「…(コクリ)」

…なるほど、何処が凄いのか良く判らないが舞が言うのだから凄いのだろう。

「で、舞のは名前あるのか?」
「…『デストロイヤー』…」

…す、凄い名前…
こっちも別の意味で凄いな。

「祐一。」
「ん…何だ、香里。」
「そろそろ着くわよ。」
「…そうか。」

目の前には…明かりの無い、広大な暗闇。
その中にひときは、光りの存在しない部分があった。

「あれが…廃工場…」
「あそこに名雪さんが…」

時刻はPM10:50…

「行くぞ。」

俺の声が…夜の闇に響いた…

 

つづく。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき

瞬:連載?
ル:もとより
瞬:あまりギャグでない気が…
ル:…
瞬:祐一君と香里さん、2人あまりラブラブじゃ…
ル:……
瞬:僕達はいつ…
ル:………
瞬:いつ…
ル:少なくとも、名雪誘拐編では出番無し。
瞬:『肢閃刀・昂露』って、パクリじゃん。
ル:…
瞬:『デストロイヤー』も…流石に薙刀・天桜は気がつかないけど…
ル:……
瞬:やれやれ…こんな奴が書く駄文だけど、感想・苦情等お持ちしてますよ。
ル:では次回…

 


 戻る


 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル