ファンタジーKanon


                         
第3話:深夜の攻防
 

ドサ…

静寂な闇に…何かが倒れこむ音が聞こえる。
俺の目の前には黒服の男が1人倒れている。
そして、俺のやや後ろにも1人倒れている。
合計2人…

「見張りが2人だけなんて…なめてるのかしら?」

とボヤく香里、その後ろでは優と美汐が周囲を監視している。

「どうだ?舞。人の気配はするか?」
「…(コクリ)。」

頷きながら舞は右手の指を5本立てる。
5人…か。

…ガサ

物音がした。
誰かが草を掻き分ける音…

「…舞、香里。」
「「…(コクリ)」」
「優、美汐…監視頼む。」
「「…(コクリ)」」

暗闇の向こう側より、人の影らしき物が動いた。

「「……」」

すぐさま香里と舞が左右に散った。
優と美汐は物陰に隠れている…
今、連中には俺しか見えていないハズ…

「誰だ!」

気づいた…
ドタドタ、と足音をさせながらこちらに向かって走ってくる。
数は…3人。

「グレイブ!!」

俺は走り寄ってくる3人が間合いに入ったのを確認し呪文を唱えた。
硬質化した地面が、次々と槍となって突き上げる。

「う…」
「があ…」
「く…何だこれ?」

ドゴ!!

「な、何!!」

ビシ!!

「ぐわあ…っ!!」

人影が躊躇している間に、香里と舞が奇襲をかける。

「は!」

バシ!

「がぁっ…!!」

…で、残った輩は、俺が…と。

目の前に現れた3人を倒し、俺は周囲を見まわした。

「ねえ祐一、あと2人よね…?」
「ああ。だろ?舞。」
「…(コクリ)」

バギ!

「が…ぁ!!」

ゴギリ!

「…ゲガギグ!!」

途端に後ろの方で呻き声が2つ、響いた。
 
「祐一君、残っていた2人は片付けたよ。」
「これで全員のはずですよね。」

優と美汐の2人だった。
…サンキュ。

「祐一、行きましょう。名雪を助けに。」
「祐一…行く。」
「祐一君、行きましょう。」
「祐一さん、行きますよ。」
「ああ。」

そして俺達は…
廃工場の内部へと入って行った。
 
 

廃工場の中は、物音1つせず…明かりも1筋も入っていない。
真の静寂と暗闇だった。

「「「「「………」」」」」

ガタン

「「「「「!!!」」」」」

突然、明かりがついた。
急に光りがでたので、闇に目が馴れていた俺(達)にとっては少しキツイ。

『よく来てくれたね、相沢 祐一・真田 優。』

何処からともなく声が聞こえる。

「…お前が桐生 宗一か!?名雪は何処だ!!」
『ふふ、まあ慌てるな。水瀬 名雪は君達のすぐ近くにいる。見てみたまえ、おっと、彼女には何もしていないので安心したまえ。』

え…すぐ近く!?

「名雪、何処にいちのよ。」
「名雪…何処?」

周囲を見渡してみる。

……
………

「何か…名雪さん、らしい…です、ね。」

美汐が半ば呆れたような呟いた。

「ま、まあ…いいじゃないですか。」

そう言う優も、顔の端が少々引きつっている。
名雪は無事…の様だ。
見る限り…

「名雪!!」
 
香里が怒鳴る。

「……」

舞が睨む。
で、当の名雪は……

「く?…」

寝ていた。
ご丁寧にベッドまで用意されている。
その中で名雪は何事も無かったかのように、平和な寝顔を見せていた。

『しかし、1つ聞いてもよいかな。』
「…何だ!?」
『彼女は一体どうゆう神経をしているのだ?大人しく縛られていると思ったら、寝ていたのだが…』
「名雪はいつも夜の8時には寝るからな…」
『…だからといって……』
「まあ、名雪を人質にした時点で間違っていたんだ、諦めろ。」
『…く……』

流石の敵さんも、これには参ったようだな。
…しかし、普通は寝ないよな…普通は。
やっぱり名雪は秋子さんの子だ、普通という常識はまったく当てはまらない。

『さ……さて、そろそろ本題に戻ろうか。』
「…そうだったな、何故、俺と優が命を狙われなければならないんだ?」
『…知る必要は無い…と言いたいところだが、一応言っておこう。何も知らない人間を殺すなだ、俺のプライドが許さない。』
「…大層なプライドで。」
『そもそも、我々・神風会が欲しいのはお前達2人の『魂』なのだよ。』
「…魂!?」

…これは意外な所できたな…
まさか魂とは…

『さて…もういいだろう。』
「何!?」
『お喋りは終わり…という意味だ。』

その声が途切れると、このフロア全体に殺気が充満しているのを感じた。

「祐一、どうする?」
「…とにかく、名雪を助け出すという目的は達成できた。後はいかにしてこの場を脱出するか、だな。」
『逃がさないよ!!!』

ザザ!!

「「「「「!!」」」」」

俺達の周囲を、あっという間に黒服の者共が取り囲んだ。
や…やばい。

「…斬る。」

…舞は殺る気だ…
流石に人殺しは……な、舞…

「…斬る!!」

…駄目だった。
舞に俺の思いは届かなかったか…

「やるしか無いみたいね…」
「そう…ですね。」
「仕方ありません…」

 俺を除いた皆が、それぞれ武器を構える。
やれやれ…
確かに、仕方ないな。

「よし、ただし皆、名雪の事を忘れるなよ。」

そう言うと俺も武器を構えた。

『かかれ!』

黒服達の持っている獲物はナイフと拳銃…
比率は7:3ってトコか…

「弧月閃!!」
「雷神脚!!」

舞の剣が衝撃波を放ち、香里の蹴撃は雷撃を帯びる。
…どうやら今、俺達の相手をしている黒服達は特殊戦闘員等といった特別な相手では無いらしい。
ごく普通の…と言うのもまた変だが、まあ一般の極道関係者といった所だろう。
となると、厄介なのは数か…

「てやぁっ!」

俺も負けじ…と思い、剣を斜め上に勢い良く振る。
黒服数名を上空へと押し上げた。

「ウッドカッター!!」

ザザザザザザシュ!!!!

そこへ美汐の魔法が放たれる。
舞散る葉が鋭利な刃となって黒服共を切り刻んだ。

「は!」

優は名雪を守りながら双剣を振っている。
2本の刃を乱れる事なく、流れるように的確に敵を斬り付けている。

「ヴァレスティ・ストライク!!」

舞の剣が光り輝く。
その光りは1羽の怪鳥となって放たれた。

バーーン!!!

激しい閃光と音、そして大量の土煙が周囲に立ち込める。
…舞、何か暴れ気味だな。

「雷雲拳!!!」

…暴れ気味なのは舞だけではなかった。
香里の右手掌に雷が集中、一気にそれが弾けた。

ピシャーーーーーーーーーン…!!

そして更に土煙が周囲に立ち込める。

「げほげほ…」

あまりのケムタさに思わず咳き込んでしまう。
耳を澄ませば周囲からも咳き込む音が聞こえてくる。

「…そろそろ、撤退…するぞ。」

俺は息苦しいなか、そう叫ぶと名雪の元へと駆け寄った。
名雪は合いも変わらず寝ていたが、優のおかげで無事なようだ。

「…」

俺はいまだに寝ている名雪に半ば呆れながらも、名雪を背負って走り出した。
 

「…」

廃工場の外へと出る。
俺の後ろでは優と美汐が咳き込みながら立っていた。

「ちょっとやり過ぎたかしら。」
「……かもしれない。」

そして香里と舞も俺の後ろに立っていた。
ただし、こちら2人はまったく咳き込んでいない…のは、何故!?
何はともあれ、皆無事みたいだな。

「皆無事か?」

念のため、聞いておく。

「ええ、大丈夫です。」

うん、優は大丈夫みたいだな。
…体中砂だらけだが…

「私もです…ケホケホ。」

美汐、咳き込んでおいて大丈夫か!?
…こっちも砂だらけか…

「あたしもよ。」
「…大丈夫。」

…この2人は本当に大丈夫のようだな。
さて…
俺は廃工場とは逆の方向を見た。
すでに、優・美汐・香里・舞の4人はそっちを見ていた。

「…居るんだろ?誰かは知らないが…」

俺の声が暗闇に響く。
そして…

「気づいていたか…」
「結構鋭いんだな。」

暗闇より2つの人影が現れる。
声からして『桐生 宗一』ではない。
けれども先程廃工場にいた黒服共とはまた、雰囲気が違った。

「あまりあたし達をナメないでね、お2人さん。」

と、香里。
声は笑っているが、顔は笑っていない。

「大方桐生とやらの部下でしょう。」
「そのようですね。」

そう言いながら美汐と優が武器を持ちなおし、構える。

「…俺は柴田 太一。」
「そして渡部 純だ。桐生様の命により、貴様等の命…貰いうける。」

柴田と渡部…ね。
この2人が自己紹介をしている間に、廃工場に残っていた黒服共10数名が俺達の後ろを囲んでいる。
…今度は逃げられそうにないな。

 

つづく。
 
 

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あとがき

ル:ふぅ…
瞬:…ふむ、新たなる敵ってワケ?
ル:まぁ…似たようなものだね。
瞬:ふーん…
ル:さて…ここで突然ですが、これからしばらくここ『あとがき』で登場人物達の簡単設定を
発表したいと…
瞬:第1回目、記念すべき(?)トップを飾るは…
ル:言わずと知れた主人公、相沢 祐一!!
祐一:おう。

相沢 祐一
年齢:17歳
性別:男
身長:不明
体重:不明
学年:3年
装備:無銘の逸品(舞に貰った日本刀)
   肢閃刀・昂露(秋子さんに貰った日本刀)
得意系統術:土系
その他:香里とは恋人の間柄ではあるが、最近はとてもラブラブできる状況ではない。
    何故、命(魂)を狙われるかは判らない。

祐一:…何か随分といい加減だな。
ル:気にするな。
瞬:もし、聞きたい事があったらメールでどうぞ。
ル:お答えできる範囲で応える…と思います。
祐一:感想、苦情等もどうぞ…
ル:では次回を…
 


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