新世紀エヴァンゲリオン After Story



 

 GLORIA



 

 第一話 A HOUSE CAT





 ざしゅっ。

 びしっ。

 がしっ。

 訓練室の中で一人の男と一人の少年が闘っていた。

 嫌、むしろ男が少年に技を教えているらしい。

 「よし、今日はこれくらいにしとこうか」

 「はい、ありがとうございました」

 男の方はほとんど息を切らしていないが、少年の方は汗だくで息も荒い。

 「だいぶ腕が上がったな、シンジ君」

 「嫌、まだまだですよ加持さん」

 「そんなことないぞ、アスカより飲み込みが早いぜ」

 「そんな、おだてても何も出ませんよ」

 「そいつは残念」

 「まあ、夕食ぐらいなら何とか・・・」

 「はは、いつもすまないなシンジ君」

 加持は心底喜んでいった。

 今では兄弟みたいなシンジと加持である。

 曖昧だったミサトとの関係も加持の告白により、少しは進展したらしく

 二人は同棲を始めた。

 しかしミサトの料理の腕はなかなか上達しなかった。

 何しろ加持にとっては毎日が命がけのような物らしい。

 「葛城の奴が作る物はいくら何でも・・・」

 その言葉を遮るように後ろから殺気とともに声が聞こえた。

 「か〜じ君、あたしの作る物がなんだって?」

 「あ、いや、その、何だ、ちょっとユニークな味で・・・」

 しどろもどろになる加持。

 こめかみをピクピクしてジト目で睨んでいるミサト。

 「ミ、ミサトさん、今日はビーフシチューですからどうぞ食べにきてください」

 すかさず助け船を出すシンジ。

 「あらそう、じゃあお邪魔しちゃおうかしら・・・」

 食い物に弱いミサトであった。

 ウインクをしてシンジに礼をする加持。

 シンジも笑って答える。

 「それじゃシャワーでも浴びて帰るとするか」

 「はい」

 「あたしは駐車場にいるから早く来てねん」

 そう言って三人は部屋を出た。






 最後の戦いから一年が過ぎていた。

 ゲンドウの思惑もゼーレの計画も叶うことはなかった・・・。

 たった一人の少年の思いがそれを許さなかった。

 自分を犠牲にしてまでこの世界のことを託してくれた少女のために・・・。

 最後の戦いの後、ミサトはNERVと戦略自衛隊の戦いのVTRを世界中の各マスメディアに流した。

 ゼーレに唆されたとはいえ、日本政府のした事を簡単に許せるミサトではなかった。

 そしてこの事件が明るみに出た後、日本政府は国民どころか世界中から非難を浴び内閣は

 総辞職となった。

 そして政府の後を引き継ぐ形で日本の復興を、すべてNERVが行った。

 ゲンドウなき後、冬月がNERV総司令の任を果たしていた。

 加持は特殊監察部主任に昇格して、もっぱら書類の整理におわれていた。

 ミサトは暇になった作戦部の仕事より、他の国や各機関との外交が主な仕事になっていた

 そして世界の各国も注目する中、NERVは日本を立て直しいった。

 ここで活躍したスーパーコンピューターマギの実力はすごかった。

 今や日本の中枢を支えているのはマギといっても過言ではない。

 駆け足ともいえるくらい日本の政治経済は復興していった。

 そしてそれの管理をしているのが技術部主任赤木リツコその人であった。

 そしてシンジの大事な人である。

 生き返った後、リツコは人が変わったように優しくなっていた。

 嫌、素直に生きることを彼女が望んだからだ。

 最初はゲンドウの償いのつもりで一緒に暮らしていたシンジだが、リツコ本来の優しさに

 惹かれていきまたリツコもシンジの暖かさに惹かれていった。

 余談ではあるがリツコ、ミサト、加持、マヤ、日向、青葉、そして冬月達主だったメンバーは

 LCLの海から戻ってきた時、実年齢より少し肉体は若返っていた。大体七歳くらいだけれども・・・。

 もっとも一番喜んでいたのは女達三人らしい・・・。

 まあそんなこと気にするシンジとリツコではなかったが・・・。

 そんな彼女の元にシンジが迎えにきた。






 カコカコカコカコカコカコカコカコ。

 軽やかなタッチでキーボードの上をリツコの指が動く。

 まるで音楽を奏でる楽器を弾くように。

 指を止めてふっと息を抜くその横顔に、紅茶が入ったカップを差し出すシンジ。

 「お疲れさまです、リツコさん」

 「ありがとう、シンジ君」

 自分の愛する人に極上の笑顔で答えるリツコ。

 最近はシンジの影響か紅茶を飲むようになっていた。

 紅茶を飲むリツコの横顔を見て、ふとシンジは噂を思い出していた。

 最近NERVの中でもリツコの人気はうなぎ登りであるとミサトが言っていた。

 元々美女の上に優しい性格と暖かい笑顔が加わったのである。

 よく食事に誘われるなどいろいろあるが、そんなことは歯牙にも掛けずにシンジ一途でいる。

 「まだかかりそうですか?」

 「ううん、ちょうど切りがいいから終わりにしましょう」

 そう言ってコンピューターの電源を落として立ち上がった。

 「さあ、帰りましょうシンジ君」

 「はい」

 シンジの身長はこの一年で170センチを超えていた。

 そんなシンジを見つめてすこしぼうっとするリツコ。

 「どうかしました?」

 怪訝な顔をしてリツコに聞く。

 「あ、うん、なんでもない」

 答えながらシンジの腕を両手で抱きしめるリツコ。

 照れるシンジに向かって頬を染めて言う。

 「さあ、家に帰りましょう!」

 二人は仲むつまじく歩いていった。






 「で、何でミサトが家の夕食を食べているのかしら?」

 ジト目になってミサトを睨むリツコ。

 「まあいいじゃない、ね〜シンちゃん?」

 ビールまで持ち込んでご機嫌のミサト。

 「すまんりっちゃん、このとうり・・・」

 手を挙げて頭を下げる加持。

 「すいませんリツコさん、僕が誘いました」

 シンジがすまなそうな顔をする。

 「いいのよ、別にシンジ君を怒ってないから」

 あわてて笑顔でシンジに話すリツコ。

 「あら〜、やっぱり愛する人には態度が違うわね〜」

 ミサトはニヤリと笑う。

 リツコは黙ってミサトのシチューを取り上げた。

 「ミサト、最近太ったみたいだからもういらないわよね?」

 「え〜そんな〜、ごめんリツコ、許して〜?」

 ミサトの願いもむなしく目の前でシンジが作ったシチューを食べ始めるリツコ。

 「最近忙しくてお腹が空くわ、あ〜あ、おいしいわ〜シンジ君が作ってくれたシチュー」

 ぱくぱく勢いよくミサトの分を食べてしまうリツコ。

 ミサトはスプーンをくわえたまま涙を流して恨めしそうに親友を見つめていた。

 呆気にとられていたシンジは、気づいて新しい皿にシチューをよそってミサトに渡した。

 「はいミサトさん、黙って食べた方が良いですよ」

 「ありがと〜シンちゃん!」

 皿を受け取ると抱え込むようにしてシチューを食べるミサト。

 「もうシンジ君!ミサトには甘いんだから・・・」

 軽くシンジを睨むリツコ。

 「はは、とにかく座ってくださいリツコさん」

 シンジは苦笑いで答える。

 「しっかしよく食べるな〜りっちゃん、そんなに食べるのは初めてみたよ・・・」

 昔からリツコのことを知っている加持もちょっと驚く。

 なにしろ、二皿目となった自分のシチューを変わらずにぱくぱくと食べるリツコ。

 「だって・・・シンジ君の料理おいしいから・・・」

 ちょっと恥ずかしくなり赤くなって俯いてしまうリツコ。

 「それにしても太らないのはずるいわよ〜」

 「そうね、なんでかしら?」

 ミサトのぼやきを軽く交わすリツコ。

 リツコは料理ができないわけではないけれど、シンジの方が抜群に上手い。

 それに仕事が忙しいことも相まって、家のことは彼に任せていた。

 もっともミサトと違ってずぼらではないことをシンジは知っている。

 だからこそ自分ができる事でリツコを支えてきた。

 そんなシンジの気持ちがリツコはたまらなく嬉しかった。

 お互いを、他人を思いやる気持ちが二人の中をますます強くしていった。

 ふと目と目とが合って笑い合うシンジとリツコ。

 そんな幸せそうな二人を加持とミサトは温かく見ていた。

 「リツコ、幸せ?」

 「もちろんよ」

 ミサトはリツコの返事を聞いて心の底からこの二人の幸せを願った。






 食事が終わったら加持とミサトは自分の家に帰った。

 もちろん帰り際にからかうことを忘れない。

 「今日も美味しかったわシンちゃん、ごちそうさま」

 「ミサトもいい加減まともな物をつくらないと加持くん死んじゃうわよ?」

 「う、五月蠅いわね〜、す、少しは上達したわよ!」

 「ほんと?加持君」

 「ま、ま〜それなりになったかな・・・」

 「何よ?その言い方は・・・」

 「リツコさん、本当にミサトさん上達しましたよ」

 「ほら、シンちゃんは解ってるわよ〜」

 「ホントなのシンジ君?」

 「ええ、ご飯とおみそ汁は食べられるようになりました」

 「それは確かに上達したわね、ミサト」

 「シンちゃんまで・・・トホホ・・・」

 「そ、それじゃまた明日なシンジ君」

 「ええ、学校が終わったらお願いします」

 「あの・・ミサトさん・・・その・・お休みなさい」

 「はいはい、どーせあたしは家事不能女です・・・」

 「いつまでいじけているのよ、大人げないわね」

 「フン、悪かったわね」

 「お休みミサト、加持君」

 「お休みりっちゃん」

 「シンちゃん、襲われないようにきおつけてねん」

 「ミ、ミサトさん!?」

 「なに言ってるのよミサト!!」

 「あははは、お休み二人とも」

 手を振りながら二人は隣の部屋に入っていった。






 シンジとリツコは二人で寄り添うようにリビングのソファーに座っていた。

 誰もじゃまをする者はいない静かなとき・・・。

 「ねえシンジ君、私今すごく幸せなの・・・シンジ君は?」

 「もちろん僕も幸せです・・・だってリツコさんがここにいるから・・・」

 「ありがとうシンジ君、あなたがここに居てくれてよかった・・・」

 「僕もリツコさんがここに居てくれてうれしいです」

 見つめ合い静かに目を閉じ、唇が触れるだけのKISS.

 不意にリツコはシンジの胸に顔を寄せて話す。

 「なんかね・・・幸せすぎて怖いの・・・」

 「どうして?」

 「これは夢なのかもしれない・・・そう思うとね・・・」

 シンジは優しくそっと、リツコを抱きしめた。

 彼女の不安を消し去るように・・・。

 「大丈夫、僕はずっとリツコさんの側にいます」

 リツコの頬に手を添えてその瞳を見つめながらシンジはKISSをする。

 いつもより長く・・・。

 それはリツコの不安を静かに消し去っていった。



 「キザ・・・」

 「え?」

 「シンジ君てキザね・・・」

 「そうですか?」

 「意識してやっているとしたら間違いなく将来はプレイボーイね」

 「そんなことないですよ」

 「どうして?」

 「いつだって僕が見ているのはリツコさんだけだから・・・」

 リツコだけに見せる取って置きの笑顔。

 少しの間瞳を潤ませてシンジを見とれていたが、自分からシンジに抱きついた。

 「やっぱりキザね・・・」

 そう言いつつも心が温かいモノで満たされていくリツコだった。

 まだまだ二人には時間が沢山あった。




 そして二人はお互いの手を握りしめて眠る。

 寝てる間も離れないように・・・。






 夜空に浮かんだ満月が二人を見守るように輝いていた。


 

 つづく


 エヴァ連載小説第一話です。

 読んで頂いたようにシンジとリツコのラブラブストーリーです。

 さんざん利用され最後に愛していた男に撃たれてしまうなんて可哀想すぎたので

 この話を書くことにしました。

 私の話では幸せいっぱいであまあまなリツコです。

 まあこの先ではちょっとアクションありのサスペンスありのシンジ大活躍の話ありです。

 もうラストの話はできていますのでそこに向かって書いていくだけです。

 もちろんちゃんとハッピーエンドになります、でもちょっとどたばたありかも・・・。

 それではこの続きで。

 じろ〜でした。




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