新世紀エヴァンゲリオン After Story





 GLORIA






 第八話 Resolution






 「ごめんねリツコ、冗談なんだから許してよ?」

 じろっ。

 「うそ」

 「嘘じゃないわよ」

 じーっ。

 「どうかしら」

 紅茶を飲みながらアスカを睨み付けるリツコの視線はとことんマジだった。

 笑顔のアスカとジト目のリツコが作り出すこの場にシンジはなかなか口だし

 できなかった。

 「ほんとにからかっただけなんだから信じてよ!」

 「・・・・・・」

 リツコは紅茶を一口飲んではアスカを睨み付ける動作をしばらく続けたが、

 飲み干してしまったためジッと見つめるだけになった。

 しばらくして小さくため息をついた後、シンジの方を向いていつもの優しい顔に戻ると

 紅茶のお代わりを頼んだ。

 「わかったわ・・・とりあえず納得する事にしたわ」

 それだけ呟くと、今度は美味しそうにシンジの入れた紅茶を味わって飲んだ。

 「もう、大体何でシンジを攻めないであたしばっかり攻めるのよ?」

 「だってシンジ君からアスカに迫ることはあり得ないから」

 きっぱり言い切られたアスカは今度は逆にカチンときてしまった。

 「それどお言う意味?」

 「そのままよ」

 妙にあっさりと言われるとさらにアスカの顔が険しくなっていた。

 「ふ〜ん、それじゃあたしがシンジを誘っても大丈夫だと?」

 「勝手にどうぞ」

 「さっきと言ってることが違うんだけどなぁ〜」

 「・・・・・・」

 「ふん、あたし寝るから明日のお弁当よろしくねシンジ!」

 やたら自信ありげにしているリツコを睨んだ後、そう言って隣のマナの家に行ってしまった。

 アスカが出ていくのを見送った後リツコを見ると下を向いて悲しげな表情を浮かべていた。

 「リツコさん?」

 「・・・だめね、シンジ君がそんな事するわけないのにね」

 シンジはリツコの不安を消すように後ろからそっと抱きしめた。

 「ごめんなさい、僕の方こそ・・・」

 「ううん、いいの」

 シンジに頭を預けて目を閉じて安心すると、しばらく何も話さない静かな時間が流れた。

 そのままで居たかったリツコだが、今日の決定した事を伝えようと思ったらまた俯いて

 沈んだ顔になってしまった。

 「シンジ君、あの・・・」

 「僕が必要なんですね?」

 驚いて顔を上げてシンジの方へ振り向くと、いつもと変わらずに暖かい笑顔でリツコを

 見つめていた。

 「エヴァが必要になるくらいの事が起きそうなんですね」

 「・・・そうなの、でもどうして?」

 「学校の帰りに襲われた事もそうですが、アスカが僕のガードに付くのも変だったから」

 「それにマナのこともちょっと・・・」

 「シンジ君・・・」

 リツコは驚いていたと同時に感心していた。

 2年前の逃げていたばかりのシンジとはまるで違うすべてを受け止めそれに立ち向かう

 男の顔をしていた。

 「大丈夫ですリツコさん、僕は乗ります・・・エヴァに」

 「ごめんなさい、私・・・」

 「僕は守りたい、リツコさんを、みんなを、そしてこの街を!」

 ちょっときつめにリツコを再び抱きしめるとシンジは迷いのない瞳で言った。

 「・・・ありがとう、シンジ君」

 リツコの頬に流れた一筋の涙を指でそっと拭うといつまでも抱きしめていた。






 「惣流・アスカ・ラングレーです! みなさんよろしくぅ♪」

 アスカは腰に手を当ててVサインをして教壇で転校の挨拶をした。

 しかし、挨拶よりも皆アスカの容姿に見とれていて呆然としていた。

 モデルと言っても通じるその見事なプロポーション、綺麗な髪に輝く瞳に

 同じ高校生とは思えなかった。

 教室を見回したアスカはヒカリを見つけると側に近寄っていった。

 「久しぶりヒカリ、元気だった?」

 「ア、アスカ・・・」

 ヒカリとしては珍しくアスカに抱きついて泣き出してしまった。

 「ごめんね、連絡もしなくて・・・」

 アスカは再会をした親友の背中を優しく撫でてあげた。

 「惣流、委員長泣かすとトウジが怒るぜ?」

 「ふん、よけいなお世話よ相田!」

 「別に怒りゃせんけど、ずっと委員長は心配しとったからな・・・」

 「ま、こっちも事情があってね・・・」

 「・・・でも、また会えてよかったわアスカ」

 ヒカリは涙を拭いながら笑顔でアスカを見つめた。

 「私もよヒカリ、いろいろあったみたいだしぃ〜」

 ニヤリと笑うアスカの顔を見てヒカリは何か嫌な予感が頭から離れなかった。

 その後は休み時間ごとに質問の嵐だったが、それをさらりと答えるアスカの態度は

 以前と違い優しさを醸し出していた。

 そんな様子を見ていたシンジは、本当に元気になってよかったと見つめていた。

 ちなみにアスカが質問に答えるたびにシンジを見るクラスの男子達の目がだんだんと

 殺気を帯びてきたのはやぶさかではなかった。

 そしてお昼の時間になったので、今日はヒカリ達と一緒に食べることにしたシンジは

 みんなで屋上に行った。

 「はいアスカ、お弁当」

 「久しぶりにシンジの弁当だから楽しみだわ♪」

 喜んで受け取るとこれまた元気よく食べ始めた。

 「はい、こっちはマナだよ」

 「ありがとうお兄ちゃん」

 マナもシンジの作るお弁当が好きだから喜んで受け取った。

 その様子を見慣れているとはいえ、トウジとケンスケとヒカリはちょっと呆れてしまった。

 「しっかし惣流・・・、料理の一つくらい出来んと嫁の貰い手がないやろ」

 「うっさいわね〜、別に良いのよそんなこと考えてないし」

 トウジを睨むアスカだがその手の箸が止まることはなかった。

 「まあ、それが惣流だから・・・それにいきなりそんなことになったら怖いじゃないか?」

 「相田・・・どういう意味?」

 「別に、ただ自分らしいのが良いって事を言いたかっただけさ」

 これ以上言うと自分の身が危険だと身を以て知っているケンスケは、黙ってパンにかぶりついた。

 「確かにそうかも・・・はっ」

 つい口走ったヒカリをアスカはにっこりと微笑むと、顔を耳元に寄せて囁いた。

 「ヒカリ・・・鈴原との事しっかりと話して貰うわよ」

 アスカの嬉しそうな顔と対象的にヒカリは自分の迂闊さを悔やむように苦笑いをしていた。






 ジオ・フロント第三ケイジ。

 NERVが所有する最後のエヴァンゲリオン零号機。

 第十六使徒との戦いに於いて、自爆して失われたが再生してあった物でしかもそのコアは

 初代零号機の物を集めて作り直した物でもあった。

 リツコは一人LCLに浸っているエヴァを見つめていた。

 「・・・母さん、ごめんなさい、静かにしといてあげたかったけど・・・」

 その呟きに答える人はなく、ただ静かに零号機が佇んでいた。

 「先輩、最終チェックに入りますのでコントロールルームまできて下さい」

 ケイジの入り口からファイルを両手に抱えたマヤが、声を掛けた。

 「今行くわマヤ」

 マヤの後を追って行こうとしたリツコだがふと立ち止まり振り返ると、囁いた。

 「お願い・・・シンジ君を守って、母さん・・・」

 そして今自分に出来ることをするためにケイジを後にした。

 その時、LCLにわずかだけど波紋が広がったことにリツコは気づかなかった。

 一方、機能が回復した発令所の方ではミサトが加持と状況確認をしていた。

 二人は昨日から泊まり込みで部下からの連絡と対抗策の立案に追われていた。

 「加持君、時田博士の足取りは掴めたの?」

 「いや、まだ掴めない・・・」

 「NERV監査部が総動員しても掴めないとはまずいわね」

 「ただ、戦自の奴らにも聞いてみたがかなり前から潜伏してるらしい」

 ミサトは眉間にしわを寄せて考え込んでいたが、目の前に差し出されたコーヒーを

 受け取ると表情を和らげて一口飲んだ。

 「・・・これはまだ俺の感でしかないんだが、どうも時田の目的が気になるんだ」

 「どう言うこと?」

 加持は声を潜めてミサトと顔を付き合わせて囁いた。

 「今回、直接行動してきたのはシンジ君に対してだけだ・・・」

 「そうね、今の所はね・・・」

 「でも考えて見ろ、なぜここでシンジ君を襲う必要がある? これほど見事に足取りを

 消しているのにこれじゃ逆効果だ」

 「確かに変ね・・・あたしなら途中で行動を起こすなんて馬鹿なことはしないわ」

 ミサトが頷くのを見て加持は確信めいた話しを続けた。

 「たぶんシンジ君を襲ったのは別の目的があったんだと思う」

 「それって・・・」

 「つまりシンジ君を傷つけて誰が一番苦しむかって考えると・・・」

 「リツコ!?」

 ミサトは自分の考えを口に出すと、それを見ていた加持は小さく頷いた。

 「おそらくまたシンジ君を狙ってくると思う・・・それもりっちゃんを苦しめるためだけに」

 「あのインテリバカ!」

 「ああ、それに上手くいけば一石二鳥だからな」

 ミサトは空になった紙コップを握りつぶすと、ゴミ箱に投げ捨てた。

 「・・・もう容赦しないわ!」

 「学校の方は護衛を直接付けたからとりあえず大丈夫だ」

 「直接って・・・」

 「彼女が自分から言い出してね、それで任せたんだ」

 加持はいつものようにシニカルに笑っていた。

 その笑顔で誰がシンジに付いているか解ってしまうミサトだった。

 「なるほど・・・それで朝会ったときリツコの機嫌が悪かったのね」

 きっと昨夜はあの三人に何か有ったと確信したミサトは、イヤらしい笑いを浮かべて

 今日の夜はビールが美味くなると期待に胸を躍らせていた。

 「くしゅん」

 「先輩、風邪ですか?」

 「違うわよ、どうせミサトあたりがよからぬ事を考えているのよ」

 「そうなんですか?」

 「それよりマヤ、シンジ君のデータと零号機のハーモニクスのズレをマギにシュミレートさせて」

 「は、はいっ」

 朝から機嫌の悪いリツコに逆らう勇気など持ち合わせていないマヤは、言われた通りに

 データを打ち込み始めた。

 ここではまさしく神様のリツコであった。






 薄暗い部屋にモニターの明かりだけが照明となってキーボードを打つ男の姿を浮かび上がらせて

 いたが、その目は狂喜に彩られていた。

 「くっくっくっ・・・まだまだこれからが本番だぞ・・・ひっひっひっひっ・・・」

 「私は負けたわけではない・・・そうだ、負けるはずがないのだ・・・ひゃっひゃっひゃ」

 男はすでに何処を見てるか解らない瞳で叫んでいた。

 「くっくっくっ・・・ひっひっ、見ているがいい・・・赤木リツコ・・・」

 かつてはとても知性的だったその顔は今ではまるで死人のように青く、頬はこけて髪は

 汚らしく伸び放題だった。

 時田シロウ。






 第三新東京市に再び戦いの幕が静かに上がり始めていた・・・。



 つづく


 すいません、ペンペン出し忘れちゃった・・・。

 まずいなぁ〜どうしよう・・・。

 ペンペンファンのみなさまごめんなさい。

 次こそは必ず出ると思います、だってアスカの歓迎会が入る予定だから

 きっと大丈夫です、多分・・・。

 ラストまで後少しですのでもう少し付き合って下さい。

 その日は朝から雲もなく静かな日だった・・・。

 街にはなぜか不穏な空気が漂い始めていた。

 シンジは登ってくる朝日を見て決意する。


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