Pia・きゃろっとへようこそ!!2 After Story






 Pia・キャロットへようこそ!!2 DASH






 Menu2 眠れぬ夜



 

 *未成年の飲酒は法律で禁じられています。
   お酒は二十歳になってから飲みましょう♪




 「はぁ・・・」

 

 耕治の目の前では花も恥じらう乙女達があられもない姿で酔いつぶれて眠り込んでいた。

 外は凍てつく寒さだが部屋の中はうたた寝できるくらい温かくエアコンで調節されているから、

 みんなが風邪を引くことはないが目のやり場に困るので一人ずつ布団を掛けてあげた。

 「はぁ、良くこれだけ飲んだよな・・・」

 耕治の部屋にはビールの空き缶が足の踏み場もないほどに散乱しており寝る場所を作るのにも、

 このゴミをかたさなければならないのはもはや避けようがなかった。

 「それにしても、みんな俺の事男と思ってないのかなぁ・・・」

 そんなことはなく寧ろみんな耕治の事が好きなのだが、ちっとも気がつかないのは本人だけだった。

 一人で部屋のゴミをかたずけながら耕治は数時間前に行われた歓迎会の様子を思い出した。






 「それでは、耕治君との再会を祝して乾杯〜♪」

 「「「「乾杯〜♪」」」」

 

 葵のかけ声とともに涼子、潤、つかさ、美奈の元気な声が部屋の中に響き渡った。

 お世辞にも広いとは言えない耕治の部屋に自分を含めて六人も集まり歓迎会と称する宴会が始まった。

 「さあ耕治君、まずは一気に飲んでね♪」

 葵は誰から見てもビールとわかる液体が並々と注がれたジョッキを耕治に強引に持たせた。

 「あの葵さん、俺まだ未成年なんですけど?」

 「だいじょ〜ぶ! この葵さんが許すからぐぅ〜っと一息で飲んでね♪」

 すでに缶ビールを数本飲み干して酔っぱらい全開になっている葵のジト目に逆らう勇気が耕治にある訳もなかった。

 「わぁわぁ〜耕治君早く飲んで〜♪」

 「ああっ? 涼子さんも出来上がっている、とほほ・・・」

 キャロット唯一の良心回路である筈の涼子もすでに葵の”ほらほら飲んで攻撃”に合い、すでに目が据わっていた。

 「しかたがない・・・」

 逃げ場がない耕治は開き直ったような表情になると覚悟を決めて手に持ったジョッキの中身を一気に飲み干した。

 「ぷはぁ〜うっぷ・・・」

 「お〜さすがは耕治君、良い飲みっぷりよ♪」

 「わぁ〜わぁ〜耕治君かっくいい〜♪ ぱちぱちぃ〜♪」

 久しぶりのビールの所為か気持ち悪くて胸を押さえてテーブルに寄り掛かった耕治に、未成年の彼女たちが

 心配になって耕治の廻りに集まって声を掛けた。

 「大丈夫耕治?」

 「耕治お兄ちゃん死んじゃイヤですぅ〜」

 「耕治ちゃん! しっかりして・・・」

 潤、美奈、つかさの気遣いに応えるように耕治は顔を上げて力無く笑って見せた。

 「あ、ありかとう・・・大丈夫だよ、多分・・・うっぷ」

 そして三人の女の子達は互いに目配せをした後頷いて、酔っぱらいのお姉さま達にそろって宣言した。

 「耕治の代わりに僕たちが飲みます!」

 「美奈もがんばりますぅ〜!」

 「耕治ちゃんのためならビールの一杯や二杯・・・」

 「ちょ、ちょっとみんなだめ・・・」

 しかしみんなは耕治の制止を聞かずに、葵と涼子が用意したビールの缶を掴んだかと思うとしっかり掴むと

 持ち上げて一気に飲み始めた。

 ごくごくごくごくごく・・・。

 『耕治のため・・・耕治のため・・・』

 ごくごくごくごくごく・・・。

 『耕治お兄ちゃん・・・美奈がんばりますぅ・・・』

 ごくごくごくごくごく・・・。

 『耕治ちゃん・・・つかさにお任せ・・・』

 三人の見事な飲みっぷりに耕治は唖然として、見守ることしかできなかった。

 だがこの時、無理にでも三人を止めておけば良かったと後に耕治は後悔することになるとは、

 夢にも思ってはいなかった・・・。






 「ほぉらぁ〜耕治君・・・もっと飲んで〜♪」

 「もう・・・飲めませんて葵さん」

 葵の差し出したビールの缶を耕治は丁寧に手で押し返した。

 「ぐすっ・・・いいわよ、どうせ耕治君は私のことが嫌いなんだわ・・・」

 「あ、葵さんそんなこと無いですよ」

 「じゃあ私のこと好きなのね? うれしい〜ぐびぐびぐびぐび・・・」

 どう事態が転んでも結局、葵はビールを飲み干していことに変わり様がなかった。

 「耕治君・・・」

 「はい?」

 そこには酔って顔を赤く染めた涼子がビールをこくこく飲みながら耕治の顔を座った目でじぃ〜と睨んでいた。

 「葵が好きなのね? じゃ涼子のことは嫌いなのね・・・」

 「そ、そんなこと無いです」

 「よかったぁ〜、こくこくこくこく・・・」

 「あの・・・涼子さん?」

 すでに自分の世界に入り込んでいる涼子は、またしても耕治の前で服を脱ぎ始めた。

 「あ〜ん熱いわぁ〜、これも脱いじゃえ〜」

 あっという間に下着以外みんな脱いでしまったので、耕治は涼子の方を見ないように横を向いた。

 しかしそこにも耕治に熱い視線を送る一人の女の子が頭をゆらゆらさせながらビールを飲んでいた。

 「そうら! 耕治らんて全然女の子の気持ちがわかってないんらから・・・」

 「潤、もうやめとけって・・・」

 耕治が潤の手からビールの缶を取り上げたら、今度は耕治の腕にしがみついてきた。

 「らによ〜・・・ふん! 耕治がみ〜んなぁ悪いんらからね・・・」

 酔っぱらって顔を真っ赤にした潤は耕治の顔を潤んだ瞳で見つめた。

 「はいはい・・・みんな俺が悪いんです」

 「わかればよろひい・・・」

 その言葉を聞いた潤は満足そうに何度も頷くとそのまま耕治によりかかって寝始めてしまった。

 「耕治お兄ちゃん・・・美奈はもう飲めませぇ〜んですぅ〜・・・」

 美奈はすでに自分の指定席だと言わんばかりに耕治の背中にしがみついて甘えていた。

 「ほっ、美奈ちゃんはどうやら静かに・・・」

 「うっぷ・・・耕治お兄ちゃん、美奈気持ち悪い・・・」

 「ちょ、ちょっと美奈ちゃん!?」

 耕治は慌てて側にあったビニール袋を、背中に寄り掛かっている美奈に渡そうとした。

 「すぅ〜」

 「ほっ・・・」

 どうやら美奈は大好きな耕治の背中に顔を埋めてニコニコしながら夢の中にいってしまった。

 そして最後の一人はさっきから静かにひたすらにビールを飲むつかさが耕治の横に座っていた。

 「つかさちゃん、そろそろ飲むのは止めた方がいいんじゃない・・・」

 しかし耕治はこちらを見たつかさの顔を見て、言いかけた言葉を最後まで言えなかった。

 「・・・耕治ちゃん」

 「は、はいぃ〜」

 怖い、普段のつかさからは想像もできないくらい異様な迫力で耕治を睨んでいた・・・。

 「耕治ちゃん、ホントは誰が好きなの?」

 「え、それはその・・・」

 つかさの迫力にすでに酔いが醒めてしまった耕治は逃げることができず、こめかみに冷や汗が流れ始めた。

 すると突然いつものキャロットにいる時のようににこっと笑うと耕治に言った。

 「もちろんボクだよね〜♪」

 そう言ってつかさは耕治の腕にしがみついたかと思ったら、潤と同じように眠り始めてしまった。

 「ふう・・・助かった、しかし・・・」

 そして耕治の廻りで眠っている五人の美女と美少女を見て思った。

 何て事はなかった・・・、ただ単に大虎が二匹から五匹になっただけだったと。

 「何でこういうときに俺は酔えないんだ・・・」

 一人ごちた耕治は部屋のあちこちに散らばったビールの空き缶をかたすために、眠っている彼女たちを

 起こさぬように静かに掃除をし始めた。






 「うん、こんなものかな・・・」

 とりあえずゴミはみんなかたしてテーブルの上も綺麗にした耕治はみんなに布団を掛けた後、

 上着を羽織るとそっと部屋を抜け出して寮の前で夜空を見上げていた。

 「はぁ〜」

 冬の夜空に輝く星座を見ながら耕治は考えていた。

 俺はどうしてキャロットに戻ってきたんだ・・・。

 将来の仕事のためだけにか・・・。

 それとも、あの日無くした大事な物を取り戻すためか?

 キャロットの仕事は好きだ・・・でもそれだけじゃなかったはずだ・・・。

 表面的にはみんなの前では明るく振る舞っていた耕治だが、一人になり考える時間ができると

 どうしてもあの夏の日の事が頭に浮かんで離れることがなかった。


 
 「さよなら、これであなたの事忘れるわ・・・」




 「何しているのかな・・・日野森」

 バイトも終わって二学期が始まって学校で真士に会った時、耕治は聞かされた・・・。

 「耕治、俺あずさちゃんに振られちまった」

 「なんで・・・」

 夏休み最後の日にデートの待ち合わせの場所に行った真士は日野森に言われたらしい。

 「ごめんなさい真士くん、やっぱり私好きな人がいるの、だから・・・」

 それ以来、真士も日野森とは会うことはなかったらしい・・・。

 俺は・・・俺は真士の応援をした筈だった。

 真士に上手くいって欲しかった。

 何がいけなかったんだろう・・・。

 だけど、ただ一つ解っていることがある。

 それは日野森も真士もお互いに傷ついただけだった。

 おれは苦笑いしていた真士に何も言えなかった。






 「会いたいな・・・日野森に」

 思わず耕治の口からでた言葉は彼の心の奥にしまわれた本音だったのかもしれない・・・。

 「でも無理かな・・・」

 耕治は自嘲的に笑うと明日からの仕事のため、休むために部屋に戻った。

 耕治の告白みたいな物を聞いていたのは凛とした冬の星空だけだった。






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 どうも〜じろ〜です♪

 SS第二話でしたがいかがなもんでしょう?

 読んだ方の中には不満な方もおられるかもしれませんが

 じろ〜としてはがんばって書いていますので御免なさい。

 よいよ次はあずさの登場になります♪

 美奈から耕治が再びぴあ・キャロットにいると聞いたあずさは・・・。

 あずさの心の葛藤が上手く書けると良いのですが・・・。

 でも人の心って難しいですよね。

 それではMenu3でお会いしましょう♪

 1999/9/5 加筆修正


 

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