Pia・きゃろっとへようこそ!!2 After Story






 
Pia・キャロットへようこそ!!2 DASH






 
Menu3 始まりの朝






 「えっ? 前田君がキャロットに・・・」






 「そうなんですぅ〜・・・あぅあぅ〜」

 あずさの目の前には、花も恥じらう乙女にあるまじき匂いを振りまいて朝帰りしてきた美奈が布団の中で

 おでこに冷えぴたくんを張り付けて二日酔いと戦っていた。

 幸いおばさん達は出掛けていたので気づかれなかったが、帰ってくるなり玄関で座り込んでしまう

 美奈にあずさは呆れてしまった。

 最初は葵あたりに無理矢理飲まされたのかと思ったあずさだったが、美奈が眉をひそめながらも嬉しそうに

 耕治のことを話すのでようやく理解できた。

 「えへへ、だから美奈とっても嬉しいんですぅ〜♪ いたぁ〜」

 「はいはい、解ったから今日はおとなしく寝ていなさい」

 「ごめんなさい、あずさお姉ちゃん・・・」

 あずさは美奈の部屋を出てキッチンに行くと紅茶を用意した。

 「前田君、帰ってきたんだ・・・」

 一人になりその名前を口にするとあずさの胸の中は苦しくてせつなくなり、胸を押さえて目を閉じると耕治

 のことを考え始める。

 前田君。

 私・・・。

 私・・・あなたのこと・・・。

 あなたのこと・・・やっぱり忘れるなんて、できない・・・。

 最後に交わしたキスを思い出し無意識に自分の唇に指先を当てる。

 だって・・・だって今でもあなたのことが・・・好き・・・。

 大好きなの・・・。

 俯いたあずさの頬を伝って心からあふれた想いが滴となってこぼれる・・・。

 あずさの耕治への想いは色あせることなく、より一層募るばかりだった。






 一方、そのころキャロットでは・・・。

 開店以来、最悪な展開にもはや手の打ちようがないかと思われていた。

 美奈と同じように潤とつかさも二日酔いでへろへろになり、おまけにアルコールの匂いが凄くてとても

 お店で働ける状況ではなかった。

 と、なると今日のキャロットのスタッフは店長、涼子、葵、そして耕治の四人だけだった。

 「店長、どうしましょう?」

 「むぅ、これは困ったな・・・」

 ピークが過ぎて落ち着いた店内を見渡しながら話していた耕治と店長の側に葵と涼子がやって来た。

 「あー、さすがにきついわ」

 「そうね・・・四人じゃちょっと・・・」

 ちなみにこの二人は朝起きるとなぜか元気一杯っだったのが耕治には不思議でならなかった。

 「・・・ふむ、これは何とかしないと駄目か」

 二人の疲れた様子を見て、そう呟いた店長は事務所の方に歩いて行った。

 「葵さん、涼子さんどうぞ」

 用意してあったドリンクを二人に渡した。

 「う〜ん、ビールじゃないのが残念だけどありがと♪」

 「何言っているの葵、ありがとう耕治君」

 耕治が差し出したアイスティーを二人は美味しそうに飲み始めた。

 手持ちぶたさになった耕治は見慣れないウェイトレスの格好をした涼子の姿を何となく眺めた。

 「ん? 何、耕治君?」

 「あ、すいません・・・涼子さんのウェイトレス姿って初めて見たからつい・・・」

 「そ、そう・・・に、似合わないかな?」

 「そんなこと! 凄く可愛くて・・・そのよく似合っています!」

 「あ、ありがとう・・・」

 二人はお互いに顔を赤くしてそのまま俯いてしまう。

 「な〜に〜、あたしはのけ者?」

 「な、何言ってるのよ葵」

 「そ、そうですよ」

 「何よ何よ、二人でらぶらぶしちゃってさ〜、仲間はずれにしないでよ〜♪」

 いきなり涼子と耕治の間に入ると両腕で自分の胸に二人を抱き寄せた。

 「こうなったら三人でらぶらぶよ〜♪」

 「ちょ、ちょっと葵!?」

 「く、苦しいですよ葵さん!」

 昨日に引き続いて今日も葵の胸で息が詰まる耕治だったが、その顔に浮かぶ笑顔はまだどこかぎこちなかった。






 「す、すいませんちょっとトイレに・・・」

 耕治は葵の腕から抜け出すと早足で店の奥に歩いて行った。

 そんな耕治の後ろ姿を葵は今まで浮かべていた微笑みを消して見つめていた。

 「どうしたの葵?」

 「彼、何か無理しているわね」

 「やっぱり・・・」

 「涼子も気づいていたの?」

 「これでもマネージャーをしていますからね」

 葵はにやぁ〜と笑うと涼子の耳元で誰にも聞こえないように小さく呟いた。

 「違うでしょ? 大好きな耕治君の笑顔だからでしょ♪」

 「あ、葵!?」

 「あっ、ありがとうございました〜♪」

 涼子の抗議から逃げるように側を離れるとレジに入って精算するお客様の相手をし始めた。

 一人になった涼子は振り返って耕治が消えた方を見て一人呟いた。

 「何があったのかしら・・・」

 そんな二人の気持ちを知ってか知らずか耕治は洗面所の鏡の前で一人佇んでいた。

 「だめだな・・・やっぱり思い出しちゃうな」

 鏡に映った自分の顔をみて耕治は苦笑いを浮かべた。

 キャロットのどこを見ても俺は日野森の姿を探している・・・。

 いないのはわかっているのに・・・。

 それなのに俺は・・・・。

 頭を横に軽く振った後、蛇口を捻り勢いよく出した水で顔を洗い出した。

 

 ぱん!

 

 耕治は何かを吹っ切るように鏡に写った自分の顔を両手で叩いてフロアのほうに戻った。






 「すいません、遅くなりました!」

 しかし、戻った耕治を出迎えたのはお客さんではなく一人のウェイトレスの女の子だった。

 「ああっ! 耕治君久しぶり〜♪」

 「留、留美さん!?」

 そして近寄ってきたかと思うとそのまま耕治の首に両腕を回して抱きついてしまった。

 「あ〜ん、耕治君にまた会えるなんて・・・留美感激〜♪」

 「で、でもどうしてここに?」

 「あのね、お兄ちゃんにね『耕治君がピンチだから助けてくれって』言われたから」

 「俺が?」

 「こらみるく! 誰がそんなこと言った? それにいつまで前田君に抱きついているんだ?」

 「え〜、せっかく会えたのに〜、お兄ちゃんの意地悪!」

 あっかんべ〜をして離れようとしない留美を、涼子と葵は顔を見合わせて頷くと二人掛かりで

 強引に耕治から引き剥がした。

 「あ〜ん、酷いよ二人とも! 留美と耕治君の仲を引き裂くのね?」

 「ちがいます! ここはお店の中だから・・・」

 「そうそう♪ それに耕治君はあたし達とらぶらぶするんだから駄目よ〜♪」

 「え〜! 耕治君、二人と付き合ってるの? 留美かなしいよぉ〜」

 「もう何勝手なこと言ってんですか! 俺は誰とも付き合っていません!」

 滅多に怒らない耕治が珍しく怒ったのでさすがの葵達もちょっと引いてしまった。

 「や、や〜ね〜冗談よ、おこっちゃいやぁ〜ん♪」

 「ごめんなさい、留美が悪かったの・・・」

 「あ、すいませんつい大きな声で・・・」

 耕治が肩を落として苦笑いを浮かべて謝った。

 「まあ、とにかく留美には暫くこちらを手伝ってもらうことになったからみんなよろしく!」

 「耕治君、よろしくね〜♪」

 「こちらこそよろしく」

 改めて留美と挨拶を交わしたあと耕治は、ピークが過ぎた今の内にと倉庫整理に励むことにした。

 もちろん涼子と葵の二人もそれぞれの仕事に戻っていった。

 「ねえ、お兄ちゃん」

 「こら、お店では店長と呼ばないと駄目だろ?」

 普段の呼び方を注意された留美だけど、それよりも耕治のことが気になり祐介に聞いてみた。

 「うん、それでね耕治君何かあったの?」

 「さあ・・・その辺は聞いてみないと解らないな」

 「何か留美には耕治君が凄くつらく見えちゃうんだけど・・・」

 「そうか・・・ただ、前田君が私のところに来たときの顔は何かを求めている感じはしてたかな」

 「なにかって?」

 「それは解らないけどな、きっと見つかるんじゃないかな?」

 「ふぅ〜ん・・・」

 祐介は留美の肩を軽く叩いた後、店長の顔に戻って仕事を促した。

 「さあ木ノ下留美さん、お仕事をしてもらえませんか?」

 「は〜い、木ノ下留美! お仕事ガンバりま〜す♪」

 片方に寄せたポニーテールを揺らしながら元気にフロアの方に向かった。






 一人黙々と荷物をかたしている耕治は、休むことを忘れているかのようにその手を止めなかった。

 それは、まるで何かを考えないようにするための行動だったのかもしれなかった。

 「ふぅ〜・・・見事にばらばらに置いてあったな〜」

 倉庫の中は暖房が効いていないが耕治の額にはうっすらと汗が付いており、それを手で拭うとした時

 冷たい缶ジュースが顔の横に差し出された。

 「お疲れさま、耕治君♪」

 振り向いたそこには留美がニコニコして立っていた。

 「ありがとう留美さん」

 受け取ってプルタブを開けると耕治は一気に飲み干してしまった。

 「くす、もう一本持ってくればよかったかな?」

 「いえそんな、充分ですよ・・・」

 二人は並んで壁により掛かりながら暫く無言でいたが、ぽつりと留美が話し出す。

 「ねえ耕治君」

 「なんですか?」

 「あのね、あんまり無理しないでね」

 「無理って・・・」

 「見てる留美の方がつらいから・・・ね?」

 何か言おうとして留美の方を見ると、潤んだ瞳で耕治のことをジッと見つめていた。

 「・・・うん」

 耕治はただその一言を言って小さく頷いた。

 「よし! じゃあ留美が元気の出るおまじないをしてあげる♪」

 

 ちゅっ♪

 

 「留、留美さん!?」

 「えへへ、それじゃがんばってね〜♪」

 ほっぺたを押さえてぼーっと立っている耕治を残して留美はフロアの方に駆けていった。

 「・・・ありがとう、留美さん」

 そう呟いてまた自分の仕事に戻った耕治だが、先ほどみたいに思い詰めた表情は消えていた。





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 お待たせしました、第三話です。

 ちょっと前に買ってあったゲームをしたらはまってしまい大変でした。

 それが久しぶりに心に来た物でその余韻があってなかなか気持ちがこちらに戻りませんでした。

 なんていうか・・・恥ずかしいのですが泣かされてしまいました。

 ハッピーエンドにはなりますがその課程で思わず涙ぐんでしまいました。

 でも、たまにこんなゲームをやると良いですね。

 今、ちょっとこちらの話も書きたくなりましたので近々形にしたいと思います。

 それではMenu4でお会いしましょう♪

 1999/9/5 加筆修正


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