Pia・きゃろっとへようこそ!!2 After Story






 Pia・キャロットへようこそ!!2 DASH






 Menu4 再会の時






 「ねぇ耕治! 早く早く!」

 「わわっ、手を引っ張るんじゃない潤!」

 

 今日は約束した通りに耕治は潤とトモロゥーランドに遊びに来ていた。

 前に来たときは潤が女の子とは解らず女装した危ない奴だと思っていたが、今日は

 正真正銘女の子の潤が元気一杯に耕治を引きずり回していた。

 もっともこれをデートだと思っているのは彼女だけなのだが・・・。

 「だって〜、ずっと楽しみにしてたんだから♪」

 「そうか、そんなに好きだったのか遊園地が」

 

 がくっ。

 

 「そうじゃない!」

 「ん? 違うのか」

 「こ、耕治と来るのが楽しみだったの!」

 「あっ」

 細くて綺麗な首まで真っ赤に染めて叫んだ潤を見て、ようやく今日はデートだと理解した耕治

 は思わず照れて頭をかいた。

 「ごめん潤、これってデートってことだよな?」

 「う、うん」

 俯き合って顔を赤くしている二人は、誰が見ても初々しいカップルに見えた。

 潤は耕治がデートだと解ってくれて内心凄く嬉しかったが、耕治は自分のことばかり

 しか考えていなかったことに気がついて反省をしていた。

 耕治は小さく頷いた後、今度は自分から潤に手を差し出した。

 「それじゃ行こうか潤」

 「うん!」

 潤はその手を握ると改めてデートを楽しんだ。

 耕治も今は潤の事だけを見ることにして、一緒に遊ぶことにした。

 「なあ潤、これはちょっと恥ずかしいんだけど・・・」

 「だ〜め! 今日は私に付き合ってくれるんでしょ?」

 「うっ、」

 「んふふ〜♪」

 上機嫌の潤を見ると何も言えなくて耕治はなすがままだった。

 ちなみに今乗っているのはメリーゴーランドなのだが、なぜかここの馬はカップル専用というか

 二人乗りでしかも女の子が彼氏の膝の上に乗るというナイスな物だった。

 つまり耕治の膝の上に潤が乗っているという何とも言えない姿で、他には誰も乗ってなく

 二人の貸し切りのようにいつまでも回っていた。

 潤は幸せな微笑みを浮かべて終始耕治の胸に顔を寄せて上機嫌だったが、耕治は恥ずかしくて穴に

 入りたい気持ちだった。

 さらに係りの人が気を利かして二回も連続で動かしてくれて、ずっとそのままの格好で

 見物人達の視線にさらされていた耕治の顔は降りてからも恥ずかしくて真っ赤に俯いたままだった。






 「あ〜・・・」

 「耕治、大丈夫?」

 精神的にダメージを負った耕治はベンチにもたれて呆けていた。

 傍らにはさっき買ったジュースを持った潤が心配そうに見守っていた。

 メリーゴーランドの後も、恋人同士が乗る様な物やアトラクションで耕治の精神は

 限界に達していた。

 「・・・ん、大丈夫だけど」

 「ごめんね耕治、ちょっと調子に乗り過ぎちゃって・・・」

 シュンとする潤を見ると耕治はその頭に手を載せて軽く叩いた。

 「そんなことないよ潤、久しぶりに楽しかったよ」

 「ホント?」

 「ああ、だからそんな顔するなよ」

 「だ、だって・・・」

 上目使いで瞳を潤ませて見つめる潤の頭を無意識に掴んで、耕治は自分の胸に抱き寄せた。

 「こ、耕治!?」

 「見たくないんだ、女の子の涙って」

 「・・・」

 あの夜の公園の時とは違うはずなのに、人混みで賑わっている遊園地の中で耕治は

 潤の泣きそうな顔を見た瞬間思い出してしまった。

 怒った顔で涙をこぼしながら自分を見つめていたあずさの顔を。

 あんなに辛かったことはなかった。

 あんなに苦しかったことはなかった。

 そう思うと自然に腕に力が入って潤の体をきつく抱きしめてしまった。

 「こ、耕治・・・」

 「あっ、ご、ごめん痛かった?」

 「ううん、大丈夫だよ」

 「本当にごめん」

 「耕治・・・」

 耕治は謝ると潤を離し俯いたまま肩を落としていたが、すぐに顔を上げると潤に笑いかけた。

 「それより、今日はデートなんだから楽しまないとな?」

 「・・・うん、そうだね」

 立ち上がり、耕治は座っている潤に手を差し出した。

 「それでは参りましょうか、お嬢様?」

 「エスコートよろしくね♪」

 耕治の手をしっかりと握ってベンチから立つと、潤はまた耕治を引き回して午後も楽しんでいた。






 「ありがとう耕治、今日は楽しかった♪」

 「俺も久しぶりに楽しかったよ」

 日も暮れて二人は遊園地を出て駅に向かって今日のことを話ながら歩いていた。

 そして小さな公園にさしかかった時、潤は耕治に声をかけた。

 「ねえ耕治、ちょっと寄っていいかな?」

 「ん、別にいいけど」

 二人は中に入っていき、誰もいないブランコに潤が腰掛けて小さく揺らしていた。

 ブランコの漕ぐ音だけが聞こえている以外、会話もなく暫くしたら潤が話し出した。

 「耕治・・・元気出た?」

 「潤? 何言って・・・」

 顔を上げて真剣な目で見つめる潤に、耕治は言葉を止めてしまった。

 「解るよ、だって私は役者を目指しているんだもの」

 「そうだったな」

 「それに、耕治がキャロットに戻ってきてからずっと見てたから」

 「そっか」

 「私や留美さんだけじゃないよ、葵さんと涼子さんだって気づいていたはずだよ」

 「そうか、それじゃみんなに迷惑かけちまったかな?」

 「ううんそうじゃないよ、心配してたんだよみんな、耕治の事」

 潤の言葉に、耕治はみんながこんなに自分のことを気に掛けてくれた事に感謝しつつ、

 それとは反対に心配をかけた事に反省をしていた。

 「だからね、すぐにとは言わないけどいつもの耕治に早く戻ってね」

 「解った、ありがとう潤」

 「うん」

 潤の笑顔に釣られるように耕治も少しだけ顔を綻ばしていた。

 「あとね、もう一つ話があるんだけど・・・」

 「話って?」

 潤は俯いていたがその顔は徐々に真っ赤に変わっていったが、夜の公園の街灯じゃ暗くてそれ

 だけでは耕治が気づくことはなかった。

 「いたっ」

 「どうした潤?」

 突然、痛がって指先を反対の手で包み込むと、口にくわえる仕草をした。

 側に寄ってそれを見ようとして耕治が頭を下げたその時、潤はいきなり立ち上がって

 自分の顔を近づけた。

 

 「んっ・・・」

 

 瞬間、時間が止まった様に二人は動かなかった。

 それはとても長いようで短い時間だったけど、潤は耕治にキスをした。

 そして、そっと離れると呆然としている耕治を見つめて、潤は自分の気持ちを告白した。

 「私は耕治が大好き!」

 「・・・潤」

 くるりと耕治に背を向けて二、三歩いて夜空を見上げながら言葉を続けた。

 「耕治にね、誰か好きな人がいるのは解るの」

 「だからすぐに答えてくれなくてもいいから、でもちゃんと考えて欲しいの私の事も・・・」

 近寄ろうとして耕治がよく見ると少し潤の肩が震えていたが、あえてそれを

 無視して後ろ姿を見つめながら返事をした。

 「ありがとう・・・ちゃんと考えるよ、潤の事」

 「うん」

 耕治の返事を聞いて振り向いた潤の顔は笑顔で溢れていた。

 「じゃあ帰ろうか」

 「そうだね」

 二人は元来た道に戻ると、会話もなく並んで歩き出した。

 突然、思い出した様に耕治は隣を歩いてる潤の手を握ると、潤の家に着くまでその手を

 ずっと離さなかった。

 ビックリした潤は頬をピンク色に染めて俯いていたが、その顔には微笑みが浮かんでいた。

 そして次の日からは、耕治に夏の時の様な笑顔が戻りつつあった。






 今日が同じシフトの耕治と留美は休憩室で一休みしていた。

 「ねぇ耕治君、潤君と何かあったでしょ〜?」

 「ええっ、べ、別に何も・・・」

 「あやしい」

 「ホントに何にもないですよ」

 「うそ」

 朝から耕治は顔を合わすたびに留美から同じ質問を繰り返しされ続けていた。

 ジト目となった留美の視線から顔を背けるとフロアから戻ってきた潤と目があった。

 「あ、耕治♪」

 瞬間、潤が顔を赤くして微笑みを浮かべたのを嫉妬の炎に燃えた留美の目は逃さなかった。

 「やっぱり何かあったんだ!」

 「る、留美さん落ち着いて・・・」

 「酷いよ耕治君、留美の気持ちを知ってるくせにぃ〜」

 「えっ、留美さんの気持ちってなんですか?」

 二、三回瞬きをした留美は耕治の顔をジッと見つめてしばし考えていた。

 次の瞬間、留美は今までの顔とは違い天使の微笑みを浮かべて喋りだした。

 「そう言えば言ってなかったんだよね、留美の気持ち♪」

 「そ、それって・・・」

 留美は側にいる潤にちらっと目配せしてから、手を挙げて宣誓するように元気よく言った。

 「木ノ下留美は前田耕治君の事を愛してま〜す♪」

 「ちょ、ちょっと留美さん!?」

 そう言って耕治に抱きついてキスをしようとする留美の事を凄い目で潤が睨んでいた。

 「あん、耕治君〜」

 「あ、俺店長に用事があったので先に行きますね」

 潤の様子がおかしい事に気がついた耕治は、慌てて留美の腕を振り解くと素早く部屋を抜け出した。

 「ちょっと、木ノ下留美さん?」

 「なあに、神楽坂潤さん?」

 二人は微笑み合いながらお互いを見つめていたが、その目はとことん怖かった。

 逃げ出したあとに残った恋する乙女達の間に何があったかは耕治には永遠に解らなかった。

 耕治が廊下で一息ついてると遅番の美奈とばったり出会った。

 「おはよう美奈ちゃん」

 「おはようございます、耕治お兄ちゃん」

 美奈の笑顔を見た耕治はさっきの二人みたいにはならないでと心の中で祈った。

 「あ、そう言えば店長が呼んでいましたよ」

 「そう、ありがとう」

 「ふふっ」

 ちょっとだけ話している間、なにが嬉しいのか笑っている美奈にその理由を聞いてみた。

 「ん、どうかしたの美奈ちゃん?」

 「何でもないですよぉ」

 「そ、そう」

 「それじゃ耕治お兄ちゃん、また後で」

 「うん、がんばってね」

 美奈を見送った後に言われた事を思い出して耕治は事務所のドアをノックすると開けて中に入った。

 「何か用ですか、店長?」
 
 




 しかしそこにいたのは店長の他にもう一人いた。

 彼女はゆっくりと振り向いて入り口に立っている耕治のことを見つめた。

 「前田君・・・」

 彼女に会いたかった、でも会いたくはなかった。

 彼女の笑顔が見たかった、でも泣き顔しか思い出せなかった。

 呆然としている耕治の頭の中をいろんな想いが駆けめぐった・・・。

 そして彼女の名前を呟いた。






 「日野森・・・」






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 遅れに遅れた 第四話です。

 どうも体調崩してSSが書けませんでした。

 申し訳ありませんでした。

 さて、あずさが耕治の前に姿を現しました。

 苦悩する耕治。

 そしてあずさの思いは耕治に何を感じさせるのか?

 ではMenu5で会いましょう。

 1999/9/5 加筆修正


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