Pia・きゃろっとへようこそ!!2 After Story






 Pia・キャロットへようこそ!!2 DASH






 Menu6 留美の笑顔






 きき〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!






 「とうちゃ〜く! 見て見て耕治君、すっごく素敵でしょ〜?」

 「・・・・・・」

 「耕治君?」

 「・・・・・・」

 「あれ?」

 「・・・・・・」

 「もう耕治君てばぁ〜、でも寝ちゃうなんてよっぽど疲れていたんだね!」

 それが大きな勘違いである事に留美が気が付くこともなく、耕治は気絶していた・・・。

 イニシャル R2(るみるみ)

 それが留美の運転する車に乗った祐介が最初に言った言葉だった。






 今日が休みの耕治に合わせて強引に休みを取った留美は、朝も早くからキャロットの寮に訪れてまだ寝ていた耕治を

 またしても強引にちょっとそこまでと言葉巧みにドライブに連れ出した。

 耕治の意識がはっきりした時すでに遅く、留美の車から逃げ出すことも出来ずに目的地に着くまで意識は再び無くなった。

 それで留美が何をしていたかと言うと耕治の目が覚めるまでその胸にすり寄ってごろにゃん状態だったのである。

 「・・・ううん、あれここは?」

 「あ、やっと起きたんだね耕治君」

 「留美さん・・・何してるんですか?」

 「うん、耕治君に甘えているんだよ♪」

 「はい?」

 「もう〜耕治君てばっ! ん〜」

 「何、目を閉じるんですか?」

 「耕治君にキスして貰うため〜♪」

 一瞬留美の顔に見とれるが、耕治は顔を逸らすと窓の方を向いて黙り込んでしまい薄目でそれを見ていた留美は、そっと

 耕治から離れるとドアを開けて車の外にでた。

 「外に出てみない、耕治君?」

 留美の問いかけに少し間を置いてドアを開けて車の外に出た耕治の目の前には、綺麗な草原の丘が広がっていた。

 「こっちこっち! 耕治く〜ん」

 先に出た留美が草原の中から手を振って元気な声で自分を呼んでいるので、耕治はゆっくりと留美の方に歩いていった。






 「ここはね・・・留美の秘密の場所なんだよ〜♪」

 「秘密の場所?」

 「うん、お兄ちゃんだって知らないの、耕治君が初めてだよ」

 十二月にしては温かく風も無いこの草原に耕治と留美は向かい合って話していた。

 「でも良いんですか? そんな大事な所に俺なんかが来て・・・」

 「耕治君だから連れてきたの・・・だって一番大好きな人だから・・・」

 「留美さん、俺は・・・」

 「でもね、今日はそうじゃないの・・・ねえ耕治君、耕治君の好きな女の子ってあずさちゃんでしょ?」

 留美の顔から拭いた様に笑顔が消えて、普段の彼女から想像できない真面目な雰囲気に耕治は黙って顔を背けた。

 「やっぱりそうなんだ・・・何となく似てたからそうじゃないかなって思ったんだけど・・・」

 「・・・似てた?」

 「うん、耕治君はそっくりだよ・・・留美のよく知っている人にね」

 「店長さんですか?」

 留美がよくお兄ちゃんと似ていると自分に向かって言ってた事を思い出して、耕治は自嘲気味に答えた。

 「ううん、違うよ・・・もっとそっくりなの、特に心が・・・」

 「心?」

 留美はくるっと回って耕治に背中を見せるとそのまま話を続けたので、耕治も聞くことにした。

 「その人今の耕治君と同じ・・・好きな人に好きって言えないの、なぜだか分かる?」

 「俺は別に・・・」

 「それはね、凄く優しいの・・・ううん、優しすぎちゃって言えなかったの・・・」

 耕治の呟く声を聞き流して、留美は空を見上げながら懐かしむように話すことを止めなかった。

 「その人には昔からずっと好きな人がいたの、でも友達も同じ人を好きになってしまった・・・」

 その留美の言葉に今の自分と真士の事が重なって、耕治は彼女の背中から目が離せなくなってしまった。

 「それに気づいたその人はどうしたと思う? 自分は身を引いてその友達に協力する事を考えちゃったの」

 留美は耕治の視線を背中に感じながら、再び微笑みを浮かべて言葉を続けた。

 「でも結局はその人は好きな人に自分の気持ちを正直に伝えたんだよ、どうしてか分かる?」

 そこまで言って留美は振り返ると耕治の顔を見つめながら留美はもっとも大切な事を耕治に教えてあげた。

 「それは二人とも同じ気持ちだったから、誰よりも何よりもお互いが大好きで大切な人だからなの」

 「だけど・・・俺は、俺は真士に嘘を付いていたんだ」

 今まで黙って留美の言葉を聞いていた耕治は初めて本音をポツリと口にした。

 「そんな俺が自分の気持ちに正直になんてなれ無いよ・・・」

 留美の視線から目を背けて、指が白くなるほど拳を握りしめながら唇を噛みしめていた耕治の頬を一筋の涙が流れた。

 「ごめんね、耕治君」

 耕治の涙を見た留美は近づいて自分の額を胸に押しつけると、そっと背中に手を回していつまでも抱きしめていた。






 その後暫くお互いに一言も話さずにただ草原の中で立っていたけれど、日が傾きだしたので車に戻ると草原を後にした。

 帰りは安全運転の見本の様な運転で走っていたので耕治は気絶する事無くただぼんやりと窓の外を眺めていたが、

 不意に留美から遠慮がちに声がかかった。

 「ねえ耕治君、ちょっと寄り道しても良いかな?」

 「えっ、いいですけど・・・どこに?」

 「お腹空いたから食事なんてどうかな〜って、へへっ」

 留美の笑顔に耕治も釣られるようにちょっとだけ笑顔になったので、安心した留美は前を見つめて運転に集中した。

 目的地に着くまで一言も話さない二人だけども、さっきまでと違い重苦しい空気はどこかに行ってしまい留美の口ずさむ

 歌が車の中に流れていた。

 「とうちゃ〜く♪」

 駐車場に止まった車から降りた耕治はお店を見て驚いたまま立っていたが、留美に腕を引かれて店の中に連れ込まれていった。

 「いっらっしゃいませ、ピア・キャロットへようこそ!!」

 耕治を出迎えたのは可愛い制服と美味しい食事が評判のファミリーレストランのピア・キャロット一号店のウェイトレスだった。

 「こんばんわ〜翔子ちゃん」

 「あ〜留美ちゃん久しぶり〜♪ 今日はひょっとしてデートだったの?」

 「うん、実はそうだったの〜」

 「いいな〜留美ちゃん・・・あっ、いけないお席に案内しますね」

 「ありがとう翔子ちゃん、ところで今日さとみお姉ちゃん来てる?」

 「うん、来てるけど・・・」

 「ちょっとお願いできるかな?」

 両手を会わせて拝む仕草をする留美を見て笑った翔子は注文を聞いて、呼んでくるからと言い残して席を後にした。

 それから留美は改めて目の前に座っている耕治の方を向いて話しかけた。

 「あのね耕治君、さっき留美が話した事憶えている?」

 「・・・草原での事ですか?」

 泣き顔を見られた事を思い出して恥ずかしいのか耕治は視線を留美から外して返事をした。

 「うん、今ここに来る人がそうだから・・・」

 「えっ?」

 「それと今案内してくれた翔子ちゃんがその人の友達だよ」

 「それって・・・」

 それっきりニコニコしたまま黙り込んだ留美を不思議そうに見ていた耕治の前に、二号店店長の奥さんであり留美の義理の

 姉に当たる木ノ下さとみが現れた。

 「今晩は前田君、それと留美〜・・・今日はお仕事の日じゃなかったのかな?」

 「今晩は、さとみさん」

 「ゆ、有給だよさとみお姉ちゃん、えへっ」

 真面目に挨拶する耕治に比べて留美の方は聡美の視線から逃げるように顔をあさっての方向に向けて答えた。

 「遅刻が多い留美に有給なんて有ったのかしら・・・」

 「もうっ、さとみお姉ちゃんの意地悪ぅ〜」

 「はいはい、ところで今日は前田君とデートだったの?」

 「うん! そうなの、えへへ・・・」

 「それはどうもごちそうさま」

 そんな二人の会話を見ていた耕治は留美が何を自分に伝えたかったのか段々と理解することが出来たが、まだ素直になれない

 自分が心に少し残っていた・・・。






 さとみを交えた三人で食事を済ませてからキャロットを出た留美は、耕治を寮まで送ることにして今日最後のドライブを

 満喫していた。

 最後に寮の前でタイヤを鳴らして車を止めて耕治を下ろした後、留美は名残惜しそうに耕治とちょっとだけ話していた。

 「今日はごめんね耕治君、無理矢理付き合わせちゃって・・・」

 「そんな事無かったですよ、ありがとう留美さん」

 「あっ、やっと笑ってくれたね耕治君♪」

 「えっ、そうですか?」

 「うん、作り笑いじゃない耕治君の笑顔だよ!」

 留美の指摘通り確かに耕治は笑っていた、作り笑いじゃなく苦笑いでもない普通に楽しそうに笑っていた。

 まだ少しぎこちない、けど耕治らしい笑顔を見た留美の顔もそれに合わせるように微笑みを浮かべて耕治を見つめた。

 「あの耕治君、最後にちょっとだけ良い?」

 「うん、聞かせてください留美さん」

 「あのね、このままじゃ誰も進めないの、耕治君が一歩前に歩き出さないと」

 「うん」

 「誰だって傷つくのは怖いよ、でもね、それでもがんばらなきゃいけないんだよ、さとみお姉ちゃん達みたいにね」

 「そうですね、怖いけど・・・でも、がんばってみます」

 「うん、がんばってね耕治君」

 「今日は本当にありがとう、留美さん」

 「それとこれは内緒なんだけどね・・・ちょっと耳貸してくれる耕治君?」

 「はい?」

 「えいっ! ん・・・」

 「んんっ!?」

 手招きして誘う留美に、言われた通りに耕治は顔を近づけていったその時留美が耕治の首に腕を回すと潤に負けないほどの

 情熱的なキスをしてなかなか放さなかった。

 意外なほど強い力で抱きついていた留美を放すことが出来なかったが、満足したのかようやく腕を解いて離れたそこには

 留美が頬をピンク色に染めて微笑みながら耕治を見つめたままだった。

 「留美負けないよ! きっと耕治君を振り向かせてみせるからね!」

 そう言った留美の綺麗でそして真っ直ぐな笑顔に耕治は思わず見とれてしまい、暫く動けなかった。

 そして留美ははっきりと自分の気持ちを言葉と行動で伝えたら、また明日キャロットで会おうねと言い残して家路を急いで

 帰っていった。

 そして寮の玄関先に一人立ちつくしていた耕治は夜空に浮かんだ月を見て思っていた。






 素直になろうと・・・たとえそれが親友を傷つける事になるとしても・・・。

 潤だって留美さんだってあんなに勇気をだして自分の気持ちを伝えてくれたんだ。

 だから俺も・・・。






 決意した耕治の顔には自然にあのみんなが慕っている笑顔が浮かんでいた。

 そして明日の為に部屋に戻っていった。

 だが耕治は気づいていなかった。

 カーテン越しに留美と耕治のキスを目撃してしまったあずさの事を・・・。

 「前田君・・・」

 ぎゅっとカーテンを握りしめたあずさの指が彼女の気持ちを表しているかの様にきつく震えていた。






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 遅れに遅れましたが第六話です。

 潤やるみるみに励まされて何とか前に進もうとする耕治ですが、

 今度は留美とのキスシーンを目撃したあずさが耕治と目をさける様になってしまう。

 そんな二人を見ていた美奈は、そしてつかさは・・・。

 次回はこの二人が大活躍(?)・・・もとい大迷惑かな?

 もちろん葵さんも涼子さんもそれから早苗さんも密かに二人をバックアップ。

 Menu7で会いましょう♪

 1999/11/28 初版




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