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Pia・キャロットへようこそ!!2 2018MIX・SPECIAL
PRESENTED BY じろ〜
「いらっしゃいませ♪ Pia・キャロットへようこそ♪」
今日も元気にお客様を案内するウェイトレスの声がお店のドアを開けると聞こえてくる。
〜Pia・キャロット〜
ファミレス史上最強のお店と歌われ、常に人気ナンバー1を維持してきたPia・キャロットの今日は
第三号店の開店初日に当たる。
この都市の秘密組織のむっつり髭おやぢにどうしてもと泣きつかれて、ここ第三新東京市にオープンした。
「初日からこんなにお客様にきていただけるなんて嬉しいな〜」
「良かったわね♪」
この店の若き店長、前田耕治はマネージャーの前田(旧姓日野森)あずさと店の前で来店してくれている
お客様を見て感慨に耽っていた。
「でも、気を抜いたら駄目です店長さん♪」
「わかっているよマネージャーさん」
二人は視線を交わして微笑み合った。
「えっ、俺が三号店の店長ですか!?」
店長の祐介に次のオープンする店のことで話があると呼ばれた耕治は、説明を聞いて驚いていた。
「もちろん冗談じゃないよ、それにあずさ君にはマネージャーをしてもらおうと思っているんだ」
「あずさもですか?」
「うん、さとみや涼子さんの二人からも仕事に関してはお墨付きをもらったからね、それに新婚ホヤホヤの
二人を引き離すなんてね野暮は出来ないしね♪」
「店長!」
「いやすまん、でもあずさ君なら前田君とも息もぴったりだから三号店も安心して任せられると僕と
オーナーの意見も一致しているんだ」
「まあ、そう言うことなら」
からかわれたことにちょっと声を挙げたがどこか照れながらも耕治は内心喜んでいた。
「あ、それからフロアリーダーは留美に任せようと考えているんだが、どうかな?」
「そうですね・・・留美さんなら申し分ないですよ」
「あとは二号店からは美奈ちゃんとともみちゃんをそちらに任せるからよろしく頼む」
「え、二人ともこちらに配属でいいんですか?」
「ああ、それはかまわないんだがあとのスタッフはそちらの方で募集してくれないかな?」
「はい、わかりました!」
改めて姿勢を正すと店長の祐介はまじめな顔つきになって耕治の目を見ながら言った。
「それではちょっと遠いけどがんばってくれるかな?」
「わかりました、精一杯がんばってきます!」
そう言われたのが一ヶ月前のことだったが、開店準備をしているとあっという間に日にちが過ぎて今日を迎えた。
「おっ、ここがそうだ」
「そうみたいだね」
「ほな、はいってみようやないか」
楽しそうに話しながら三人組の高校生達がキャロットに近づいてきた。
「「いらっしゃいませ、Pia・キャロットへようこそ♪」」
耕治とあずさが三人に向かって挨拶をするとメガネを掛けてデジカメを持った少年が一歩前に出た。
「あの、写真一枚いいですか?」
堂々と聞いてくる少年にあずさは一瞬困ったような表情をして耕治の顔を見てからニコリと笑った。
「私で良ければいいけど、でもお店の中ではウェイトレスの仕事の邪魔はしないようにして下さいね♪」
「わかりました! それじゃ一枚・・・」
そう言って微笑んだあずさを移すためにケンスケはシャッターを押した。
「ちょっと! 何やってんのよ相田!?」
「何って見てわかんないの惣流? 写真を撮っているに決まってるじゃないか」
「シンジも何黙って見てんのよ!?」
「しょうがないじゃないか、これがケンスケなんだから・・・」
「全く何奴もこいつも! スケベなんだから!」
「それよりも何で惣流がこないな所におんねん?」
「あたしだけじゃないわよ、ほら・・」
アスカは自分の後ろに隠れるように立っているヒカリの手を引っ張った。
「委員長も一緒だったんかいな?」
「あ、あたしは、その、アスカに連れられて・・・」
顔を赤くして俯いたヒカリはそれ以上何も言えなかった。
「大変だね洞木さんもアスカに連れ回されて」
「何ですって!? このバカシンジ!」
そう言ってシンジに殴りかかりそうになったとき、シンジを庇うように一人の女の子が二人の間に立った。
「碇君に乱暴な事しないで」
「ふん! 出たわねファースト!」
「私の名前は綾波レイ、間違わないで」
「くっ、あんたも言うようになったわね・・・」
苦虫を噛み潰したような顔をしてアスカはレイのことを睨んでいた。
「ありがとう、綾波」
「ううん、いいの」(ぽっ)
振り向いたレイはシンジの顔を見つめながら頬を赤く染めて微笑んだ。
「全くいつでもどこでも雰囲気作って二人の世界には入り込むんじゃないわよ!」
暫く呆気にとられてみていた耕治だったが、気を取り直して目の前の少女達に声を掛けた。
「君たち、もし良かったらうちでバイトしてみないかな?」
「誰よあんた?」
やり場のない怒りを抱えたままアスカは鋭い眼差しを耕治に向けた。
「ああ、ごめんね・・・僕はこの店の店長の前田耕治と言うんだけど」
「店長? ふん、どう見てもボーイにしか見えないわね!」
思いっきり失礼なことを言うアスカに対して、全然気にしていない笑顔を浮かべると話を続けた。
「はは、まあ最近までずっとそうだったから仕方がないかな」
「それでその店長が何の用なの?」
「見ての通り今日から開店したんだけど、人手が足りなくてねウェイトレスを募集しているんだ」
そこまで行った耕治の跡を継いであずさが話し始める。
「あなた達ならうちの制服がよく似合うと思うんだけど、どうかしら?」
二人の話に耳を傾けていたレイはシンジのことをジッと見つめた。
「ん、どうしたの綾波?」
「碇君・・・私似合うと思う?」
「うん、きっと似合うんじゃないかな」
シンジの言葉にレイは嬉しそうに微笑むと耕治の方に振り返った。
「私・・・ウェイトレスしてみたい」
「ありがとう、君たちはどうする?」
「何でこのあたしがバイトなんてしなきゃなんないのよ!?」
「あ、あたしは、その・・・」
アスカは思いっきり否定的だがヒカリはトウジの方をちらちら見ている。
「そうだ、ついでと言っては失礼なんだが男手もあったら嬉しいんだが・・・」
ヒカリの仕草にピンときた耕治はシンジ達にもバイトの話を持ちかけた。
「う〜ん・・・どうしようかな?」
シンジはそこまで言ったときに、レイが期待に輝く目で見つめていたのに気がついた。
「碇君・・・一緒にアルバイトしてみたい・・・だめ?」
レイは可愛らしく首を傾けるとシンジに熱い眼差しを送った。
「え、あ、うん、別にいいけど」
「ありがとう碇君」
レイは飛び切りに嬉しい笑顔を浮かべるとそのままシンジの顔を見つめていた。
「あらあら、可愛い恋人同士ね♪」
二人を見て感じたことをあずさが素直に言うと、それを聞いたアスカの眉がピクピクし始めた。
「や、やっぱりあたしもしてみようかな〜」
「ア、アスカ?」
ころっと意見が変わったアスカに思わず転けそうになるヒカリに向かって、ニコリとした顔で見つめた。
「もちろんヒカリもつき合ってくれるわよね?」
「え、あ、あたしはその別に・・・」
そこまで言いかけたヒカリの口は凍らせたように動かなくなってしまった・・・。
『ア、アスカ・・・目、目が笑ってないよ〜』
「くれるわよね、ヒカリ?」
アスカのあまりの怖さにヒカリはただ首を縦に振るだけだった。
そんな複雑なアスカの心を知らないシンジは両隣の親友達にも聞いてみた。
「トウジとケンスケはどうする?」
「う〜んそやな・・・新しいバスケットシューズも欲しいしええかな」
「僕は遠慮しておくよ、これから忙しくなりそうだから・・・」
ずいぶんと素っ気なく応えたケンスケではあったが頭の中は新しい写真の事で一杯だった。
『そう、なんと言ってもうちの高校ベスト3の女の子があの服を着るんだ・・・』
ケンスケが見つめる先・・・それは店の中で働くウェイトレスの制服だった。
Piaの制服の中で一番の人気でもあるメイドタイプを今回は使用していた。
これは売れると確信したケンスケの頭の中はバラ色に輝いていたが、後にアスカに絞められて
さんざん奢らされるのは別の話。
「そうか、女の子三人と男の子が二人なんてよかったな〜あずさ?」
「そうね・・・ちょっと不安だけどね」
「なんで?」
「はぁ〜」
小さくため息をもらして、相変わらず恋愛ごとに疎い耕治を見てしょうがないなぁ〜と思うあずさだった。
「それじゃ詳しい話は明日する事にして、今日はテーブルの方へ案内しよう」
店長直々に案内されてシンジ達は店の中に入っていった。
しかしそこでシンジは見てはならない物を見てしまった気がしてならなかった・・・。
「と、とうさん?」
シンジ達が案内された隣の席にはNERV御一行様が雁首そろえて食事をしていた。
「む、シンジか」
いつものようにファイティングポーズでテーブルの上にひじを突いてシンジに視線を向けるが
ゲンドウの前にある皿を見てシンジは驚愕した。
それは決してあり得ない物でありどう考えても間違いとしか言いようがなかった。
「碇君、どうしたの?」
シンジの様子がおかしいことに気づいたレイは、同じようにシンジが見てる物を見た。
それはPia・キャロットで子供に大人気のスペシャルお子さまランチだった。
「あの碇さん、それは今日だけの特別サービスですからね♪」
「ふっ、問題ない」
あずさの話にいつものように応えるゲンドウではあったが、お子さまランチを目の前にそんなこと言っても
説得力があるわけがない。
「全く恥をかかせおって・・・大学生の時からちっともかわらん奴だな」
「どうも、冬月先生」
「誰もほめとらんよ」
シンジは気を取り直して他の人達を見ると皆笑いをこらえて変な顔になっていた。
「あの、ミサトさん?」
「ぷぷっ、駄目シンちゃん・・・今、話しかけられるとあ、あたし・・・ぷっ」
両手で口を押さえて必死に笑いをこらえているミサトは涙を流してシンジに応えた。
「葛城君」
「は、はい・・・ぷぷっ」
「減棒及びボーナスカット」
その瞬間、ミサトの顔は泣き笑いから号泣に素早く変化してテーブルの上に頭を伏せて泣いていた。
「無様ね」
ミサトに一瞥をくれてリツコはコーヒーを一口飲んだ。
「あら、ここのコーヒーって美味しいわね」
「ありがとうございます、それもうちの自慢の一つなんです♪」
リツコの意見に軽く頭を下げてお礼を述べるあずさだった。
「これからもよらせて貰うわ」
どうやらリツコにはゲンドウがお子さまランチを食おうが使徒を食べようが興味がないらしい。
シンジはマヤ、シゲル、マコトのオペレーター三人組を見るとそれぞれゲンドウの方を見ないようにして
顔を背けて何とかしのいでいた。
「あのマヤさん?」
「何、シンジ君?」
シンジに呼ばれてついゲンドウの方に視線が行ってしまったマヤは、両手で自分の顔を覆ってしまった。
「先輩・・・私、私汚れちゃった・・・」
「辛いわね潔癖性は・・・汚れたと感じたときにそれが解ると」
リツコは淡々と言い切るとマヤの方も見ずに静かにコーヒ−を味わっていた。
マヤになんて言っていいかおろおろしているシンジに加持が妙に真剣な表情で話しかけた。
「シンジ君、今日はまた真実に一歩近づいた気がしてならないよ」
「加持さん・・・僕は今まで以上に父さんのことが分かんなくなりましたよ」
「ふっ、すべては心の中だ、今はそれでいい」
何をどう言おうと目の前にあるお子さまランチがすべてを否定していることに、ここにいる
人達の中でゲンドウだけが気がついていなかった。
シンジは天井を見上げると、家で帰りを待っているユイの事を思って心の中で呟いた。
『母さん・・・いったい父さんのどこが可愛いかったの?』
それを理解するにはまだまだ人生経験を積まないといけないシンジだった。
とにかくゲンドウの方をあまり見ないことにして席に座るとシンジはメニューを見て選び始めた。
「そうそう、今日はお一人様一品サービスするから好きな物頼んでいいわよ♪」
メニューを見ているシンジ達に、あずさが注文する前にさりげなく言った。
「ありがとうございます、それじゃ・・・」
「はいはい! あたしはこのDXプリンアラモード♪」
元気良く手を挙げるとシンジが注文するのを遮ってアスカが一番に注文した。
「アスカってプリン好きよね、あたしはチーズケーキのセットで」
さすがにヒカリは遠慮して無難な物を選んだ。
「わいはこのステーキセットのライス大盛りでたのんます♪」
「ちょっと鈴原?」
「ええやん委員長、好きな物頼んでいいと言ってるんやし」
「ええ、もちろんかまわないわよ」
「僕はコーヒーでいいや」
ケンスケはメニューも見ずにあずさに注文を告げた。
「遠慮しないで好きな物選んでいいのよ?」
「でも、僕はアルバイトする訳じゃないから・・・」
「言ったでしょう、今日はサービスするからって」
「ホントですか? それじゃお言葉に甘えてこのエビピラフのコーラセットをお願いします」
「はい、エビピラフのコーラセットですね♪」
「綾波は何にするの?」
「碇君、私これが食べてみたい・・・」
そう言ってレイが指した物はゲンドウが食べていたスペシャルお子さまランチだった。
「あの、申し訳無いんですがこれお願いできますか?」
シンジはレイのためにスペシャルお子さまランチをあずさに注文してみた。
「そうね、今日はサービスするって言ったから特別ね♪」
「ありがとうございます、よかったね綾波!」
「碇君、ありがとう」
自分のために無理なお願いをしてもらったシンジに、レイはテーブルの下でシンジの手に自分の手を重ねて感謝した。
「あ、綾波・・・」
真っ赤になって俯いたシンジを見たアスカはテーブルの下に頭を突っ込んだ。
「ちょっとレイ!? 何シンジの手を握っているよ!!」
「あなたには関係ないわ」
「このっ、人が大人しくしていれば・・・」
「はい! そこまでにしてね、お店の中では他の人に迷惑が掛かるから喧嘩なんて駄目よ」
すかさず二人の様子に気づいたあずさが間に入って喧嘩が起こるのを止めた。
「ふん!」
「ごめんなさい」
とりあえず誤る二人を見て、あずさは特にアスカの方が気になった。
『ふふっ、素直になれないところが昔のあたしにそっくりかな・・・』
あずさはそっぽを向いているアスカの耳元に顔を寄せるとにそっと呟いた。
「素直にならないと後悔しちゃうわよ」
驚いたアスカがあずさの方を見るとさりげなくウインクをして微笑んでいた。
アスカは自分の気持ちに気がついてあずさが応援してくれたことに、照れた笑いを浮かべて応えた。
「さあ、最後は君ね、何にするのかな?」
「今日のおすすめのハンバーグとドリアのセットをお願いします」
シンジは美味そうに出来上がっているメニューの写真を見て、決めていたものを注文した。
「ご注文は以上ですね? 少々お待ち下さい」
そう言って行きかけたあずさは振り向くとシンジ達に自己紹介を始めた。
「言い忘れてたけど、私の名前は前田あずさと言います、よろしくね♪」
笑顔を絶やさず軽くシンジ達にお辞儀をすると、あずさは注文を伝えるために店の奥の方に歩いて行った。
料理を待っている間アスカはヒカリと、トウジはケンスケとそしてシンジはレイと話していた。
「もうアスカったら強引なんだから・・・」
「ごめんヒカリ、でも鈴原も一緒だからちゃらにしてよね?」
「うん、まあいいけど」
表面的には怒っているヒカリだが、ホントのところはトウジと一緒に働けることになってアスカに感謝している。
「しかし、綾波さんてずいぶん積極的になったわね〜」
「まったく冗談じゃないわよ、特にシンジに対しては遠慮が無くなったのよ!」
「ふ〜ん」
アスカとヒカリがそっと視線を横に向けると、頬をピンクに染めてシンジを見つめて話をしている
レイの姿が映った。
「本当に可愛くなったわね・・・綾波さんて」
「まあ、ふつうの女の子してるって言うのかな・・・」
「そうね」
「でも、シンジのことは別問題だからね!」
目の前でいちゃついているライバルに熱い視線を送りつつも、さっきあずさに言われたことを心の中で
思い浮かべていたアスカだった。
『素直になるか・・・・一番あたしが苦手な事じゃないのよ!』
「いや〜持つべき者はやっぱ友達だよな!」
「何臭いこと言ってんのや?」
「トウジ・・・これで新作が撮れることになってまた一儲けできそうだよ♪」
「程々にしとかんと後で惣流にどつかれるでほんま」
「もちろん委員長の写真はトウジに最初にあげるさ」
「な、なにいっとんねん? 別にヒカ、委員長の写真なんてその」
「付き合ってんだろう? 気づいてないのはシンジぐらいだよ」
「・・・・・・・・・・・」
「まあ、当分は退屈しないですみそうだな」
早速カメラを構えてシャッターを押すケンスケだが、ちゃんとあずさに言われた通りにウェイトレスの
邪魔をしないように細心の注意を払って行動していた。
『まあかくしてもしゃあないけど、ヒカリがあれを着たら結構可愛いやろな・・・』
この中では密かに進行している二人の恋は、もちろん誰にも邪魔される事は無かった。
「・・・さっきはごめんなさい」
「どうしたの? 綾波」
「碇君の予定も聞かずに、勝手なお願いをしてしまって・・・」
「ううん、別に怒っていないし・・・それに」
「それに?」
「綾波が自分からしてみたいことを言うのが嬉しくってね♪」
シンジは照れながらもレイが自分から積極的に行動したことについて感動していた。
「本当に?」
「うん!」
「ありがとう碇君、私がんばるから・・・」
「いっしょにがんばろうね綾波!」
テーブルの向こうからアスカが殺気を込めた視線を二人に向けていたが、そんなことには全然気づかないほど
二人の世界はまさしく絶対領域に包まれていた。
程なくしてシンジ達の目の前には、出来上がった料理がテーブルの上に並べられた。
しかし、ウェイトレスの女の子は立ち去ろうとはせず、ジッとシンジの顔を見つめていた。
「あの、なにか?」
「ふ〜ん・・・耕治君の言ってた通り結構格好いいんだ〜♪」
「は? あの」
「ああ、ごめんね、 私は木ノ下留美、あなたお名前は?」
「え、僕は碇シンジです」
「明日からよろしくねシンジ君♪ 待ってるからね〜」
留美はシンジに向かってウインクしながら投げキッスをすると、スカートを翻してテーブルを離れた。
いつまでもぼーっとして留美の立ち去った方を見ているシンジは、レイとアスカが殺気のこもった視線を
向けているのに気づく訳が無かった。
「シンちゃ〜ん♪ 鼻の下伸びてるわよ〜」
しっかりと今の状況を隣から見ていたミサトは、シンジの顔を指でさしながらニヤニヤしていた。
「あの、その、ただ綺麗な人だな〜って・・・いてててててっー」
向かい合っているアスカは足を踏んづけ、隣にいるレイはシンジのほっぺたを遠慮無くつねった。
「ふん!」
「・・・」
「自業自得だな、シンジ」
「全くその通りやな」
アスカとレイはシンジを無視して食べることに集中して、ケンスケとトウジには同情すらしてくれない。
「いててて・・・僕が何したんだよ?」
「ふっ」
まだまだ子供だなと思いつつ女の子にもてているシンジを見て、ゲンドウは内心凄く羨ましかったが
その感情がサングラスをした髭面に浮かぶことはなかった。
ちょっともめたりもしたが、とにかく目の前の料理をシンジも食べ始めた。
「こ、これ・・・」
一口食べてみたシンジはちょっと意外な味に驚いてしまった。
普通、ファミリーレストランの料理はどこも似た味だからあまり期待していなかったのだが、
ぴあきゃろの料理はほかの店とは比べものにならないほど美味しかった。
「このハンバーグ凄く美味しいな♪」
「ホント? 碇君?」
「うん、悔しいけど僕の作った物よりちょっと美味しいかな」
以外にも喜んで食べているシンジをレイは不思議そうに見つめていた。
「・・・そうだ、ちょっと食べてみる綾波?」
「え?」
シンジは自分のハンバーグを細かく切ってレイの前にフォークで差し出した。
ちょっと戸惑ったレイだが、シンジが微笑みながら頷くのでそのままハンバーグにかぶりついた。
もぐもぐ。
「どう、綾波?」
「美味しい・・・けど」
「けど?」
「碇君の作ってくれたハンバーグの方が・・・好き」
「あ、ありがとう綾波」
ここ数年シンジの努力でレイはかなり肉料理を食べられるようになってはいたが、それはシンジが作った
ものに限ってだった。
でも、どうやらきゃろっとの料理は食べられたから後でレシピを聞いてみようかなと思うシンジだった。
そんなことを考えながら再び食事をしようとテーブルに向き直ると、そこにはいろんな表情をした人達が
シンジとレイに注目していた。
中でもアスカの顔と言ったらとても正視できるような状態でなくシンジの背中に冷たい汗が流れだした。
「・・・あ、あすか?」
「シンジ・・・」
「な、なに?」
「あたしにも食べさせてくれないかしら?」
ニコリと天使の微笑みと呼ばれるくらいにさっきとは表情を変えてシンジに微笑むアスカ。
『こ、こわい・・・』
そして目を閉じて可愛く小さくあ〜んと口を開けてアスカはハンバーグを待つ。
ぱく。
アスカは口の中に入った物を美味しそうに食べようと目を開けるとそこにはフォークを持ったレイの姿があった。
「美味しい?」
ほんの一瞬、レイの口の端がわずかに歪んだのに気がついたのはアスカだけだった。
「ふぁ〜す〜と〜」
「物覚えが悪い、あなたやっぱり・・・さる?」
ぶちっ。
「こんちくしょ〜!!」
ぶちぎれたアスカが今まさにレイに襲いかかろうとした時、そのアスカを後ろから抱きしめた人物がいた。
「やあ、シンジ君♪」
「カ、カオル君!?」
「ちょっと放しなさいよ!」
そこには第九とシンジをこよなく愛する男、渚カオルが暴れているアスカを押さえながらさわやかに登場した。
「で、でもどうして?」
「ふふっ、シンジ君が心から僕のことを望んでくれたからここにいられるのさ」
「それじゃ・・・」
「うん、今の僕はシンジ君と同じ普通の人間だよ」
「カ、カオル君!」
シンジは抱きしめられているアスカを突き飛ばすと、カオルの手を握りしめて再会を喜んでいた。
「僕は、僕は・・・」
「何も言わなくてもいいのさ、今僕がここにいるそれがすべてさ♪」
人目も気にせずシンジは俯いたまま泣いていた。
「シンジ君、君の心はガラスのように綺麗で繊細だね」
そしてシンジを抱きしめようとしたとき、突き飛ばされたアスカと怒りのジト目になったレイがカオルを
今すぐ撲滅しようとしているのに気づき、しかたなくシンジの肩に手をおいて難を逃れた。
それからアスカとレイとカオルでシンジのことを巡って激しい口論が始まった。
その騒ぎを少し離れていたところから耕治とあずさは楽しそうに見つめていた。
「なるほど、あずさの言った通りだね」
「そうね、でも私が思っていたより大変かもね・・・」
「まあ、あれぐらい元気な方が楽しくていいんじゃないかな?」
「それもそうね♪」
特に耕治は一番大きな声で騒いでいるアスカを見てふと隣のあずさに笑い掛けた。
「あのアスカって女の子誰かさんにそっくりだね?」
「誰に似てるって?」
「おっと、そろそろ注意しなきゃほかのお客様に迷惑になるな」
あずさが怒るより早く耕治はシンジ達の元に早足で近づいていった。
耕治が行ってしまい怒るタイミングを逃したあずさは一人楽しそうに呟く。
「明日からきっと楽しくなるわね♪」
ぴあ・キャロットを舞台に新しい話が始まる予感を感じながら、あずさも耕治の元に歩いて行った。
To Be Continue
どうも、じろ〜です。
なんかだらだら長くなってしまいました・・・。
このお話は次に何か記念の時に続きが書かれます。
果たしてそれはいつのことになるやら・・・。
でも、きっとそのうちすぐに書いてしまうかもしれない・・・。
たとえば夏休み記念とかお祭り記念とかもう訳がわかんない♪
もし期待している人がいたら気長に待って下さいね♪
それではいつかお会いしましょう♪