Kanon 電波的 Short Story






 天使たちの集う場所♪






 第二話「親ばかと思い出の場所」






 おう、元気か?

 俺は・・・全然元気じゃないぞ、見ての通りずたぼろだ。

 まったく、あいつらときたら加減て物を知らなさすぎるぞ?

 しかしこんな事ぐらいでへこたれる俺じゃない!

 えっ? 見えないから解らない?

 ・・・・・・。

 ま、まあ気を取り直して先に進もう。

 何とか旦那としての威厳を見せつけて納得させると、俺たちは急いで学校まで戻ってきた。

 これから財布が軽くなるんだけどな・・・うぐぅ。

 いかんいかん、脱線してしまうところだった。

 とにかく入学式にぎりぎり間に合い、我が愛しくて可愛い娘たちの晴れ姿をビデオに収めることに

 成功した。

 親ばかだと笑うなら笑え、謎ジャムがたらふく食いたいならな。

 俺のライブラリーに新たなる映像がまたひとつ加わった、よし!

 「後でお願いしますね、祐一さん」

 「もちろんです、秋子おかあさん」

 失礼、秋子おかあさんのライブラリーにもだった。

 「それでは、新入生代表の挨拶です。一年B組水瀬小雪さん」

 「くー・・・」

 あ・・・寝ちゃっているよ小雪の奴。

 俺はふと、隣を見る。

 「くー」

 ぐあっ、おまえもか名雪!

 まあ納得はできるかな? つまらない話を延々と聞かされたからなぁ。

 司会の生徒が小雪の名前を何回も呼ぶが一向に起きる気配がない、さすが名雪の娘!

 目が一本線になる寝顔も可愛いぞ、さすが俺の娘♪

 「この親にしてこの娘あり・・・それをみんなの前でやることも無いのに、はぁ〜」

 香里が深いため息と共に頭を横に振って嘆いていた。

 「仕方がないだろう、名雪の娘なんだから・・・」

 「何を他人事みたいに・・・祐一の娘でしょ!」

 「うむ、香里の言う通りだ。可愛いよな〜」

 「・・・・・・」

 香里、なんだのその呆れかえった表情は?

 「ここまでバカだと怒るどころか呆れるしかないでしょう?」

 「うぐぅ」

 「あ、祐一くん。それはボクの台詞・・・」

 あゆ・・・おまえは未だに自分の事は”ボク”なんだな? まあ似合っているから良いけど。

 「あなたがやっても可愛くないわよ」

 「そうか・・・可愛くないってさ、あゆ。元気出せよ」

 「うぐぅ、それはボクじゃなくて祐一くんのことだよ!」

 「なに? そうなのか?」

 「何か話がずれていない、祐一?」

 「そうだったな・・・今は小雪の事だよな?」

 「うぐぅ、無視しないでよ!」

 香里に言われていつものごとくあゆをほっといて、おれは小雪のキュートな寝顔を撮る為に、

 再びビデオカメラを構えようとした。

 「意味が違うでしょ! この大バカぁ〜!!」

 香里の大声にみんなが注目する中、俺は香里に見事なパンチを喰らいノックアウトされた。

 俺はうぐぅの音も出ないで体育館の床に沈んだ。






 俺が担架に乗せられて運ばれた後、残された我が愛しい娘たちは・・・香里より呆れていた。

 「もうっ、恥ずかし過ぎるわよ!」

 「お、落ち着いて香お姉ちゃん」

 母親の香里より怒っている香を宥めようとしている志穂は、今にも泣きそうな顔だった。

 「ふぇ、お父様大丈夫でしょうか?」

 「・・・祐一パパ、不死身」

 心配そうに呟く佐緒理の肩をぽんぽんと叩いて気遣うのは命である。

 「うぐぅ、パパが死んじゃったようっ」

 「あう〜、誰が肉まん買ってくれるのようっ」

 今一ずれている二人、何故かたい焼きを食べているなゆと肉まんを頬ばる美琴だった。

 「ふぅ・・・でもこれだけの騒ぎで寝ていられるのは、小雪お姉さんと名雪おかあさんぐらいですね」

 感心しているのか呆れているのか、無表情なので解らない真美は小さく呟く。

 そして原因となった小雪はと言うと・・・。

 「くー・・・」

 猫まっしぐら・・・じゃなくて、熟睡街道まっしぐらであった。

 「うにゅ・・・くー」

 もちろん名雪も同じである。

 よく似た二人の母娘は気持ちよさそうに椅子に座ったまま、春眠を貪っていた。

 しかし、残念ながらその眠りは妨げられる事になる。

 ごん。

 「う〜いたいよ〜いたいよ〜」

 「このお馬鹿、何もこんな所で寝ることはないでしょう!」

 「香酷いよ〜、う〜・・・あ、たんこぶ出来たよ〜」

 「もう一発欲しいの、小雪?」

 香は拳にはぁ〜と息を吹きかけてニコリと小雪に笑いかける。

 「う、ううん、もう大丈夫だよ。すっかり目が覚めたよ〜」

 「そう・・・残念だわ、せっかく夢の世界に逝かせて上げようと思ったのに・・・」

 「か、香お姉ちゃん・・・」

 冷や汗を流している小雪を本当に残念と思っているらしい香が肩を落とすと、志穂もさめざめと

 涙を流していた。

 ごん。

 またしても同じような音が、父兄席で寝ている名雪の頭から聞こえた。

 「う〜痛いよ〜香里〜」

 「当たり前よ、痛がるように力を込めて殴ったんだからっ!」

 「う〜・・・あっ、たんこぶが出来てるよ、香里〜?」

 「さあ、まだ寝ぼけているみたいだからもう一発いきましょうか?」

 香里は微笑みを浮かべて指をばきばきと鳴らし、一歩一歩ゆっくりと名雪に近づいていく。

 「い、いらないよ、香里。もう起きたから平気だよっ」

 「はぁ・・・残念だわ、祐一の所に送って上げようと思ったのに・・・」

 「うにゅ? そう言えば祐一はどこ?」

 きょろきょろと辺りを見回す名雪に栞が説明をした。

 「名雪さん、実はお姉ちゃんが幻の右で祐一さんを保健室送りに・・・」

 「栞!」

 そして名雪を含めた妻たちの視線は、いつの間にか香里に集中する。

 「な、なによ、あたしが悪いって言うの?」

 香里のその問いかけに応える人は誰もおらず、ただ冷ややかな視線だけが香里に注がれていた。






 そんな事とは知らない俺は、保健室で生き返える事に成功した。

 「懐かしいなぁ〜」

 俺は久しぶりの保健室の空気を堪能し、天井を見上げていると数々の思い出が脳裏を過ぎった。

 「ん、そう言えばここで香里と初めてキスしたんだよなぁ・・・」

 にへら。

 「まあそうなんですか?」

 「ええ、そうなんです・・・って秋子おかあさん!?」

 「はい、祐一さん」

 ベッドの脇で椅子に座って俺を見つめながら秋子おかあさんがニコニコしていた。

 「ど、どうしてここに?」

 「娘たちに代わって祐一さんに付き添っていました」

 ああ、秋子おかあさんは相変わらず優しいよなぁ・・・。

 「ありがとうございます、秋子おかあさん」

 「遠慮しなくても良いんですよ、祐一さんは私の息子でも在るんですから・・・ね?」

 うおっ、その小首を傾げて微笑む顔がとっても可愛い!

 どきどきどきどきどきどき。

 どきがむねむね・・・間違った、胸のどきどきが激しくなってきた。

 「どうかしましたか、祐一さん?」

 はい、どうかしているんです。秋子おかあさんの笑顔に見とれてしまいました。

 「あ、いえ、その・・・はぁ・・・」

 「ふふっ、おかしな祐一さん」

 ああっ、もう辛抱たまらん! その微笑みは反則です、秋子おかあさん!!

 「でも、なんか元気が無いようですけど?」

 「だ、大丈夫です、大したことありません」

 そうです、もう元気が有り余っているぐらい俺の体の一部は激しく燃えさかっています!

 「う〜ん・・・それじゃ元気が出るおまじないをして上げます」

 そう言って秋子おかあさんは俺のほっぺに顔を近づけて・・・。

 ちゅっ♪

 俺は一瞬硬直した後、顔が真っ赤になって撃沈してしまった。

 それは香里に殴られた時よりインパクトは遙かに大きく、絶大な攻撃だった。

 ああ、惚れてしまいそうです・・・秋子おかあさん〜!

 「あら? 祐一さん?」

 秋子おかあさんの呼びかけに俺は反応することも忘れて、ひたすらふにゃけた顔で惚けていた。

 「ちょっとあれだったかしら?」

 しかしその顔に浮かんでいる表情は反省しているとは思えないぐらいに、嬉しそうだった。

 俺、転がりそうです・・・いいかな?

 「何を考えているの、祐一?」

 気を取り直して声がした方に視線を動かすと、そこには眉がきりりとつり上がった香里が拳を握りしめて

 俺の事を睨んでいた。

 「なにって・・・そりゃ〜決まっているだろう」

 「決まっているって?」

 「ここは香里と初めてキスした所だからな♪」

 「や、やだっ祐一、覚えていたの?」

 急に顔を真っ赤にしてあたふたし出した香里を見て、俺は内心ほっとした。

 「それじゃ後頼みましたよ、香里さん」

 「あ、はい秋子おかあさん」

 何事もなかったように微笑んでみんなの所に行ってしまった・・・少し寂しいなぁ〜。

 しかし今は余計な事を考えないで香里に集中した。

 「なんか懐かしいよな・・・あの時はこうして俺が風邪引いて寝ていたんだっけ?」

 「そうね、まああの時は急に倒れたからびっくりしたけど・・・」

 「今回は香里に殴られたけどな♪」

 「もうっ! ・・・でもちょっとやりすぎたわ、ごめんなさい祐一」

 「気にすんなって、俺と香里の仲じゃないか!」

 「うん、ありがとう祐一」

 ここで俺はちょっとだけ意地悪をするつもりで香里に言ってみた。

 「どうせなら言葉よりして欲しい事が在るんだけどな?」

 「え、もしかして・・・」

 俺の顔を見つめて何をして欲しいのか悟った香里は、頬を赤くして顔を近づけてくる。

 「もう・・・今回だけだからね」

 そして俺と香里は思い出の場所で、再びキスを交わした。






 「「「「「「「何やっているの二人とも?」」」」」」」







 声がした方に俺と香里が振り向くと、入り口でジト目になった妻たちが睨んでいた。






 そして俺の財布は更に軽くなることが、この時点で確定した。






 つづく。






 なんか書いていたら某かおりんと似てきたが、決してそうではない(笑)

 秋子さんの危険(笑)な誘惑から祐一は自分の暴走を押さえることが出来るのか?

 いくら何でもそれはまずいと思うぞ・・・多分。

 ところで祐一の職業は何だろう? 考えていなかったかな?

 まあ電波だからその内明らかになるかもしれないです。

 第三話「決戦! 浩一の隣は誰だ?」

 


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