ACE COMBAT V electrosphere

 ANOTHER STORY






 翼を持つ者 



 第一話 「敵襲」





 ウウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 突如、ニューアーク空港のサイレンがけたたましく鳴り響く。

 UPEOの本拠地に敵襲など久しぶりの事だった。

 にわかに慌ただしくなってきた司令室では、レーダーに写った機影をチェックしていた。

 「司令、現在こちらに向かっているのは全部で16機です」

 「機種は?」

 「はい、戦闘機12、爆撃機4です」

 「識別信号はどうか?」

 「ゼネラル、ニューコムとも違います、所属不明機です」

 「くっ、何処のバカだ? 迎撃用意、スクランブルをかけろ!」

 「現在エリック、フィー両機とも発進しました」

 「敵部隊、レンジ2に入りました! 後20分でこちらに到達します」

 「レナと新人は着陸させろ、特にレナは実弾装備してないからな」

 「了解」






 レナは連絡を受けると機体を降下させて着陸態勢に入ったが、ホークは機首を反転させると

 敵部隊の方に向かった。

 「まって、あなたも着陸して下さい」

 「大丈夫、無理はしないから!」

 「あっ」

 大型のフェリータンクを外すとホークの機体『F4ESスーパーファントム+』は

 アフターバーナー全開で突っ込んでいった。

 「レナ、新人はどうした?」

 エリックから通信が入った。

 「あの人、敵に向かっていったわ」

 「なんて無茶なことを・・・」

 それを聞いていたフィーも驚く。

 「16対1だぞ!? いくら何でも落とされるぞ!」

 「急ぎましょう」

 「ああ」

 二機の『MIG−33ファルクラムSS』はレナの『Su−37スーパーフランカー』の

 脇を通り過ぎるとホークの後を追っていった。

 「気をつけて」

 二人に声をかけるとレナは着陸コースに機体をのせた。






 「レナ機着陸しました」

 「新人はどうした?」

 「あと1分で敵部隊と接触、戦闘に入ります」

 「全く無茶な奴だ! 死にたいのか?」

 司令の怒りをよそに敵部隊に近づいていくホークの機体がレーダーに写っていた。

 「ホーク機のスピード、マッハ2.7を越えました」

 「何をする気だ? そんなスピードで突っ込んでも敵に当てられる物じゃないぞ」

 司令以下オペーレーターの人達も彼の行動が理解出来なかった。

 「ホーク機敵部隊と接触! ああっ!?」

 「どうした?」

 「敵二機レーダーから消えました、撃墜したようです」

 「ど、どうやって落としたんだ?」

 「衝撃波」

 帰還していたレナが司令室でその様子を見ていて予想したことを呟いた。

 「それは?」

 「おそらく音速で密集している敵部隊に飛び込んで衝撃波をぶつけたと思います」

 「そんなことが可能なのか?」

 「理論的には、でも相当な覚悟が無ければ出来ません」

 レナの言葉にみんなは二の句が継げなかった。






 「二機も落とせたのはラッキーだったな」

 ホークは呟くとアフターバーナーをカットして旋回すると、逃げまどう敵機

 『F−15Sイーグル+』の後ろにピタリと着ける。

 HUD(ヘッドアップディスプレイ)に敵機をとらえるとミサイル用のマーカーが重なる。

 ピピピピッ、ピーッ。

 「もらった!」

 カチッ。

 スティックの横にあるスイッチを親指で素早く押す。

 機体の下から火を噴きながらミサイルが敵機に吸い込まれていく。

 ドカン!

 爆発して粉々になって落ちていく敵機。

 「よし、次」

 スロットル全開でスティックを引くと、機体を上昇させて次の目標に狙いを付ける。

 「右の奴が三機団子になってるな・・・よし、そっちから片づけるか」

 ホークの機体は翼端から白い雲を引きながら旋回していくと敵機に向かっていった。

 自分の機体より性能が上の物を相手にしていたが、その顔には余裕すら浮かんでいた。






 ようやく交戦空域に到着したエリックとフィーは、目の前で起きている事に驚きを

 隠せなかった。

 「おいおい冗談じゃないぜ、すでに4機も落としてやがる!」

 「なんて人なの」

 「奴の機体はファントムだぞ、それに引き替え相手の機体はイーグルなのに!?」

 「新人らしくない凄い腕だわ」

 「こっちも負けてらんないな」

 「ええ、行きましょう」

 二人は交信を切るとそれぞれ敵機を捕捉して、戦闘を始めた。

 こちらの二人もSARFのメンバーに恥じない腕の持ち主なのは言うまでもなかった。

 あっという間に二機が空の藻屑となって、地上にと落ちていった。

 これにより敵部隊の内、戦闘機の半分は撃墜したことになった。

 通常なら不利な展開だったが、三人は物ともせずに次々と敵機を撃墜していった。






 さすがに敵も落ち着いてきたのか、ホークに反撃をしてくるようになった。

 無論、性能の差から言えば敵機の方が上だったがそれを補って余る腕が彼にはあった。

 「これで決まりだな」

 ピーッ、カチッ。

 敵機をロックオンした合図と共にホークはミサイルを発射した。

 ドカン!

 「よし!」

 ビーッ、ビーッ!

 後方レーダーが敵機の接近を感知して、警告をした。

 「ちっ、尻に付かれたか・・・ちゃんと着いて来いよ」

 やや、機首を上げながら一直線に飛んでいくファントムをイーグルがぴったりと追撃していく。

 普通ならば旋回して振り切るなどするはずなのだが、ホークは機体を安定させて

 ただ真っ直ぐに少しずつ上昇を続けていた。

 そして、敵がロックオンしてミサイルを発射した瞬間、ファントムはいきなり敵の前から消えた。

 何もいなくなった所をミサイルが通過していった。

 目の前で起きたことに呆然としていた敵パイロットはレーダーを見たがそれらしい機体は無かった。

 慌ててあたりを見回そうとした瞬間、彼のイーグルは下から強いショックを受けて火を噴いた。

 その横を垂直に上昇してきたファントムが通り過ぎていった。

 「相手が悪かったな」

 火を噴いて不規則な回り方をして落ちていく敵機に向かって呟くと、残りわずかの敵に向かっていった。

 ちなみに、彼が使った戦法は第二次世界大戦中日本の零戦乗りが使った必殺技「木の葉落とし」

 と呼ばれる物で後ろに着かれた敵に対してはかなり有効な方法だった。

 それは機体を垂直に降下させて相手の死角から攻撃をする物である。

 まして機体の重いジェット戦闘機なら降下スピードも速く、一瞬消えたように見えたのは仕方がない。







 この後、3分も経たずに敵部隊は全滅をした。

 そして、誰もが新人のホークの腕を見せつけられた最初の戦闘だった。

 しかし、帰還した彼を待っていたのは司令のお小言と基地の回り三周という手痛い物で

 司令室を出た直後にそのドアを蹴飛ばして叫んでいたのをみんなに目撃されていた。

 もちろんレナもその様子を見ていてが、無意識に顔が綻んでいたのをエリックとフィーに

 見られてからかわれていた。

 SARFの頼もしき仲間が増えたそんな日だった。






 NEXT 翼を持つ者 第二話 レナ


 第一話です。

 ホークの取った戦法は実際にかなりのテクニックが必要かと思います。

 機体を垂直降下させるなんて一歩間違えたらそのまま下に落ちちゃいますね。

 それから戦闘機に関してはなるべく読む方が解るように現行機種のカスタムが

 主な物になりますのでお暇な方は雑誌などで見てください。

 ちなみに私は「F4EJスーパーファントムU」がお気に入りです。

 これは現自衛隊も使っている機体です。

 あとは今は作られていない「F20タイガーシャーク」ですね。

 「F5EタイガーU」をベースにアフターバーナーを改良した「F18ホーネット」のエンジンを

 載せた機体でしたが、三機作られた内二機は無くて最後の一機が現存するだけだと思いました。

 それと「サーブJ35Fドラケン」かな、特にこの機体はかなり古いのですが

 設計思想は30年は進んでると言われている機体です。

 この二機は新谷かおる著「エリア88」に出ていますから、読んでみるのも良いでしょう。

 私は同じ作者の「ファントム無頼」が好きだったなぁ・・・。


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