その30.レーザーセンサの実験(後編)
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1.なんとなく、目的が判らなくなってきた

 タイトルからしてレーザーセンサの実験としているけど、実際にはこのサンワのMA-LS1で使われているセンサ(多分PixArtのもの)の実験でしか無い訳で、いろいろとやっている内にレーザーか光学式かの違いというよりかはセンサのメーカーの違いの方が影響が大きいような気がしてきた。

 それはさておき。
 とりあえず、前編では33回転してるターンテーブルの直径15cmあたりを見て測定したら、全然センサが正しい値を出力してなかった訳なので、直径3cmまで周速度を小さくして再試験してみた。
 しかし、これでもまだ速すぎて、盤面までセンサが近い時は良いのだけど、遠く離すとまた正しい値が出力されない状況だった。
 とはいえ、これ以上中心に近づけると別の問題(直径が小さくなってもかなり正しい値が出るのは以前に実験したけど)が有るかも知れないので、とりあえずこれでデータを取ってみた。
#というか、実験の治具(フレーム)の長さが足らないというのが本当の理由だけど・・・

 以下、見づらい表で申し訳ないが、左端の行の5mm〜120mmというのがセンサ(をセットしたフレームの下側の面)と盤面との距離(誤差±1mm程度)で、上端の列のL,M,S,無というのが、盤面の状態Lが大きな模様で無しが緑色の発泡ボードのそのもの。
 データはそれぞれの位置でXY軸について値の最大値・最小値・平均値・標準偏差を100サンプルから計算している、例外としてデータエラーが発生しサンプル数が少ない場所も有る。
 データエラーというのは、どうもXY軸の最大値127とか-127の辺りでデータ取得に使ったアプリで読み取り不可になるらしい。これがデータそのものの問題なのか、読み取り側の問題なのか、ソフトを改造する時にヘマをしたのか、追求すると面倒なのでこういうモノだとスルーして下さい。

 表のバックの色別の意味は、

 緑: 正常なデータ(データの暴れは多少は有る)
 黄色:正常なデータと不正なデータ(カーソルがうにうにと微動するような)が混在。
 赤: 不正なデータ(80mmより下は意味無いのでデータは掲載せず)。
 灰色:センサの反応なし。

 補足しとくと、不正なデータや反応なしというのは、あくまで”この回転速度では”という前提で、もっと遅い速度(例えば回転のし始めとか)では反応してたりする。
 ただ、この実験装置だとそれより遅い速度で一定速に出来ないので、同じ条件ではこうなるという事。
L M S  
5mm X軸 Y軸 X軸 Y軸 X軸 Y軸 X軸 Y軸  
-1.00 7.00 -1.00 7.00 -1.00 7.00 -1.00 5.00 最大値
-74.00 -3.00 -71.00 -5.00 -71.00 -5.00 -72.00 -3.00 最小値
-55.43 0.83 -50.31 1.14 -50.68 1.45 -63.17 0.89 平均値
22.54 1.80 23.83 2.37 25.42 2.17 18.23 1.41 標準偏差
10mm -2.00 7.00 -1.00 9.00 -1.00 7.00 -2.00 5.00 最大値
-77.00 -4.00 -73.00 -3.00 -98.00 -5.00 -78.00 -1.00 最小値
-54.52 1.49 -58.04 2.40 -61.17 2.11 -72.50 1.47 平均値
23.85 2.28 20.61 2.29 18.20 2.27 12.53 1.16 標準偏差
20mm -2.00 6.00 -2.00 4.00 -1.00 3.00 -103.00 2.00 最大値
-110.00 -2.00 -110.00 -4.00 -110.00 -2.00 -108.00 -1.00 最小値
-90.02 0.96 -90.98 0.93 -98.44 0.67 -106.12 0.31 平均値
30.77 1.50 35.80 1.46 26.63 1.11 0.94 0.53 標準偏差
30mm 8.00 21.00 -2.00 2.00 -1.00 2.00 -1.00 2.00 最大値
-127.00 -38.00 -126.00 -5.00 -126.00 -5.00 -127.00 -6.00 最小値
-74.46 -1.36 -103.65 -0.94 -107.13 -1.20 -98.15 -1.13 平均値
55.17 5.05 35.86 1.47 33.43 1.50 38.78 1.54 標準偏差
40mm 9.00 5.00 エラー頻発で
データ取得不能
エラー頻発で
データ取得不能
-1.00 6.00 最大値
-127.00 -14.00 -119.00 -2.00 最小値
-54.44 0.18 -95.27 1.72 平均値
55.95 2.33 33.00 1.60 標準偏差
50mm 4.00 47.00 エラー頻発で
データ取得不能
22.00 47.00 13.00 17.00 最大値
-127.00 -31.00 -21.00 -84.00 -11.00 -26.00 最小値
-22.57 -0.35 -0.08 -1.94 0.19 -0.51 平均値
39.01 6.82 4.45 15.51 2.77 4.20 標準偏差
60mm 12.00 43.00 21.00 11.00 10.00 12.00 23.00 5.00 最大値
-127.00 -24.00 -125.00 -33.00 -17.00 -38.00 -5.00 -27.00 最小値
-17.72 -0.07 -1.89 -0.46 0.18 -1.19 0.94 -0.87 平均値
39.63 7.95 17.29 5.95 3.05 5.79 3.65 3.52 標準偏差
70mm 14.00 16.00 4.00 26.00 6.00 16.00
-7.00 -31.00 -9.00 -23.00 -5.00 -15.00
-0.05 -0.63 -0.29 -0.42 0.23 -0.13
2.87 5.70 2.48 4.78 2.20 3.69
80mm 不正な値 不正な値
90mm 不正な値 不正な値
100mm 不正な値
110mm 不正な値
120mm
2.実験結果からの考察

その1.このセンサの限界付近での挙動

 イロイロな要素でセンサが限界に達する時には、

 正常な動作
  ↓
 不正な値が混ざる(実験条件のバラツキが原因かも)
  ↓
 不正な動作
  ↓
 無反応が混ざる(実験条件の(以下同文))
  ↓
 無反応

 という経過を辿るようだ。
 では、そのイロイロな要素というのは、

 (1)センサから対象面までの距離
 (2)対象物の模様の大きさ
 (3)対象面とセンサの相対速度

 の3点が確認されたと見て良いだろう。
 他に光源の距離と方向も影響しそうなのだけど、この実験仕様では上記の三点より限界が高いために評価不能のようだ。

 さて、3点のうち、(1)と(2)はセンサから光学的に対象物が見えているか(ピントが合っているか)どうかが問題なのだろうと直感的に思う。
 では、(3)は何だろう? センサ内での処理の問題なんだろうけど、模様がぼやけるとスピードが上がらないというのはどうも直感的には判らないなあ。

 因みに、ターンテーブルをゆっくりと回した時の各模様での限界距離を概ね計測すると、以下のようになる。
 それぞれ断続的にではあるけど、回した方向に対応してカーソルが動いている状態でうにうにと止まっている状態では無い。
模様無し S柄 M柄 L柄
90mm 110mm 130mm 165mm
下の画像は、L柄での様子。
その2.このセンサからの距離と移動量

 この実験で、センサからの対象面までの距離と移動量の相関が取れたら面白いな、と思っていたんだけど、結果からすると予想とは逆の傾向が見られた。

 逆というのは、距離が離れれが対象物が小さく見える(センサの見るエリア内での速度が小さくなる)ので、移動量が小さくなるのでは?と想像していたのだけど、どうやら距離が離れるほど移動量が大きくなる傾向が有るらしい。

 これはどういう事なのだろうか?
 センサ内の演算の都合なのだろうけど、ちょっと直感的な説明が思いつかないなあ・・・

 ただ、これを移動量の調整に使えるかも知れない。とか直感的に思ったりするけど、ピントが外れていくので動作する対象面の幅が狭くなる(ツルテカで動作不良とか)事になり、ソフト的な対応の方が合理的だよな、と直ぐに思い直した。
3.その他の考察

 とりあえず、ここまでデータが取れるという事は、もっと遅い回転(いや回転で無くても別に良いんだけど)をするモノでテストすれば・・・
 とか一瞬考えたんだけど、そこまでこのセンサの挙動を解析した所で大した意味もないな、という事でどっちかというと別のセンサをテストした方が面白いかも。
 とはいっても、違うレーザー式のセンサはアジレントのを入手する(ロジテックのマウスを買う)くらいしか選択肢が無いし。
 一般的な光学式のマウスのセンサだと、このテストは厳しいかなと思いつつ、そこらに有った光学式マウスを見てみると・・・

 あれ?そういえば光学センサって必ずレンズが付いてるような。
 対してこのPixArtのレーザーセンサの下には只の素通しの透明プラ板が付いているだけで、レンズは無い。

 これは、光学式のセンサだと集光する必要が有ってレンズが付いているけど、レーザー式だと不要だ、という事だろうか?
 でも、これがこのセンサがとても遠くまで感応する(光学式がとても近くしか感応しない)事と関連は無いのだろうか?

 となると、同じPixArtの光学式センサを使ったマウスを見てみたい気分だけど、どれがそうなんだろう?日本で普通に売っている中に有るのだろうか?
 これが発光部のマウント兼センサ受光部のカバーとなるパーツ。
 中央の四角い部分が素通しの透明プラスチック。

 通常の光学マウスだとここに凸レンズが付いていると思うのだが。

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