第3章
国境越えの情報を集めるために、国境のゲートへと向かった。国境では車が一台一台チェックをされて
いたが、その横を噂通り人々がノーチェックで歩いていた。
この日はもう夜になっていたので、ブラジルに入るのは翌日にする事にして国境のボリビア側の町キ
ハロの宿にチェックインした。
小さな田舎町だった。南米というよりどこかアジアの田舎を思い出させるような懐かしい雰囲気であ
った。夜の町をぶらぶらと歩くと、かき氷を売るリヤカーがあり、シロップもイチゴ、レモン、メロンがあり
日本と同じ物であった。
八百屋を覗けば、日本と同じ柄入りのスイカや黄色いトウモロコシがある。
ブラジルの影響を大きく受けているからであろうか?ブラジルには世界最大の日本人移住地があり、
農業などの分野は大きく日本の影響を受けていると聞いた事がある。
屋台のおばちゃんから、スイカを一切れ買った。全く日本のスイカと変らない。
むしろ甘くて水みずしく感じた。
店先には、おばちゃんが居眠りをしていたり、テレビのある店には人だかりができていた。
町には外灯はなく、月灯りと店からこぼれる灯りの中歩いた。
晩飯を食べようと思ってレストランを探していると、インディオの人々でにぎわっている店を見つけた。
コチャバンバでは残念ながらインディオはあまり酒場では見ることができないので興味深くその店に入
った。
日ごろ、白人や裕福な階級の下で地味に暮らしているインディオ達が酒を飲み大笑いをして騒いでいる
のを嬉しく感じた。
この店ではステーキを食べたが、旨くもなく不味くもなく普通であった。値段がやはり異常に安かった。
その後ほろ酔い気分で宿に戻って寝た。
早起きして、宿を後にした。ボリビアの最果ての地まで来たのは良いが帰りのルートをまだ考えていな
かった。
サンタクルスまで鉄道が走っているらしいと情報があったので、駅へと向かった。駅には人はいなく、週に
数便確かにサンタクルス行きの列車があるようだ。
次回の列車は2日後の夕方で、切符の売り出しが明日の15:00からと黒板に書かれてあった。
サンタクルスへの帰路の予定もたったので、この日は国境を越えてブラジルへ入る事にした。
パスポートをもっていなかったので、不法入国であるがボリビア人は当たり前のように国境を渡っていた。
住民に混ざりながら、自分のできる限りのすまし顔を作り国境を歩いて渡る。
国境警備隊や入国審査官の横をドキドキしながら通りすぎる。
脱出成功!!。 国境を越えると、オートバイに乗った渡し屋がヘルメットを持って待っていた。
すぐにヘルメットをかぶり、バイクの後ろへとまたがった。
ブラジル入国成功である。
ブラジル側に入ると、道路は奇麗に舗装されていて左にはアマゾンの大湿地帯がひらけ、バイクに乗って
風を浴びるのが気持ち良かった。
バイクの運転手はブラジル人で、ポルトガル語でどこまで行くのか聞かれた。
特に決めてなかったので、とりあえずアマゾン川岸までと答えた。
数十分するとコルンバという町へ辿り着いた。
印象としてブラジルは豊かであると感じた。
白人が多く、町は区画整理され、アメリカやヨーロッパのようであった。
アマゾン川の岸辺へとバイクは辿り付いた。川を見ながらバイクの運転手と話していた。おそらくまだ20
歳ぐらいのなかなか感じの良い青年だった。
ここまでの料金を聞くと2リアル(200円程度)。随分と良心的な値段である。
彼ならば、ぼられる事はないだろうと、バイクで数時間町の見所を周って欲しいと交渉してみた。
10リアル(1000円)で彼に2時間近くバイクで色々と案内してもらった。
色々と説明してくれるのだが、ポルトガル語は聞き取るのがやはり難しい。半分程度しか理解できなかっ
た。
アマゾンの湿地帯を見渡せる小高い丘、釣りをしている人々、前回出張で行ったブラジルの国境の町は
ボリビアよりも貧しいと感じるほどの町であったが、こちらの国境の町は、どうやらブラジルの観光地らしく
洒落たホテルやレストランなどもありリゾート気分の漂う町であった。
この日の夕方はアマゾン川沿いの静かなレストランで夕日を見ながら夕食をたべた。
なんとワニのステーキがあったので、迷わずそれを注文した。
皿一杯の大きなステーキが出てきた。ソースは南蛮揚げにかかっているような醤油ベースに酢を利かせ、
七味系のピリカラと日本人好みのものであった。
ワニは本当に旨い。良く鶏肉のようだと表現されるが、そんな表現ではあまりにもったいない程の味。
自分の表現として、鶏肉のような縦方向の繊維の肉で、鶏肉程パサパサしていなく、豚肉と鶏肉の間の
ような歯ごたえ。
肉の味は、ブリやマグロの油ののった魚の照焼きのようでいて、魚臭さが全くない。
あれは、下手物食いなのではない。ご馳走である。
世界最大のアマゾン湿原(パンタナル)のジャングルツアーに参加したかったが、日程的に無理だったので
今回は諦め、この日は夜にはボリビアに戻って、鉄道駅の近くの宿に泊まった。