彼女がボリビアにやってきた E
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写真 ： ラパスのホームステー先で、キャラクターパンを作っている彼女とジャアンナ。
８月９日
この日はラパスの町にいた時にホームステーしていた時の家族を訪ねた。
この家族には３人の子供がいて、彼女にここの子供達にパンを焼いてもらいたかったからだ。
家のブザーを押し門を入ると子供達が抱き付いてきた。
俺に一番なついていたジョアンナという６歳の女の子が久々の再会のために俺にベタベタであった。
後で彼女に聞いた話だが、その光景に少々嫉妬したそうだ。
パンを作るのは時間がかかるらしく、早速彼女は台所に入り準備にかかった。
俺は子供達と遊んでいた。するとしばらくすると彼女がこまった表情をしてやってきた。
パンを作るための粉だと思って買った袋を開けるとそれはマーガリンのような油であった。
その家にもパンを作るための粉らしき物があったのでそれで代用してパンを作ることになった。
パンを発酵させている間に丁度昼食となった。
この日のメニューは牛の心臓料理であった。
４０００ｍの高地にも関わらず彼女は普通に食事ができていた。
パンはちゃんと発酵して膨らんだ。この日に彼女が作ったパンはキャラクターパンで、ドラエモン、キティーちゃん、
アンパンマン、ゾウ、カメであった。
パン生地で形が作り、チョコレートで絵を描きはじめると子供達は興味深くその光景を見ていた。
パンを焼いている間にみんなでバレーボールをして遊んだ。
パンは一向に焼けてこない。１０分、２０分しても白いままであった。
後で火力を一番小さくしていたことに気づき、火力を上げるとパンは茶色く色づき始めた。
３０分は焼いたのでパンの水分が飛んでしまったのではないかと彼女は心配していたが、実際食べてみるとふっくら
した美味しいパンに仕上がっていた。
子供達が喜んだのはもちろんの事、大人達まで喜び、彼女のパンはボリビアでも大成功であった。
その次の日の明け方、彼女は体調が悪くなり苦しんでいた。
体に触れると、明らかに発熱しているようだった。
体温計はなかったが、３８度後半は熱が出ていただろう。
頭痛もひどいことから風邪と高山病を併発したようだ。
俺もボリビアに着いた時、全く同じ病気になって丸々３日間ベットから起きれず寝込んだ。
その時は３９度という高熱がでた。食中毒の次は高山病にかかった彼女はあまりにかわいそうである。
解熱剤を飲ませ様子をみることにした。高山病だけだったらこれで頭痛は回復するはずである。
数時間後、熱は下がったが鼻の奥が炎症しているらしく、ビタミン剤、胃薬、抗生物質を飲ませ様子を見ることにした。
今回の旅行のもう一つの目的地である世界最高峰にある湖、ティティカカ湖へ向かうことをどうしようかと考えた。
数時間後、薬が効き本人も移動できるというので約４時間のバスの移動をすることにした。
ティティカカ湖が見えはじめると病人であるはずの彼女も目を輝かしてその景色を見ていた。
４時間のバスの移動を終えコパカバーナというティティカカ湖半にある小さな町にたどり着いた。
レストランで魚料理を食べて空腹を満たした。
その後波止場に行き、カナダ人旅行者と船をチャーターして、インカ文明が始まった場所と言われる、太陽の島へと向かった。
湖の向こう側にはアンデス山脈がそびえ雄大な景色が俺達を歓迎してくれた。
約１時間半後、太陽の島へとたどり着いた。そのころは薬が切れていたため彼女は、また苦しそうであった。
島に着くとすぐに宿があるのかと思っていたが宿は山の頂上にしかなかった。
町の子供に５０円程小遣いを渡し、道案内がてら彼女のザックを背負ってもらい、急な山道を登り４０分ほどトレッキング
するとようやく宿に着いた。
俺ですら頭痛になるほどハードな登りだったので、彼女は宿に着くなりベットの上でダウンしてしまった。
このような状況を誰かが見ていたら、「鬼の田中！」ときっと言われただろう。
しかし彼女は、病気と格闘しながらも弱音は吐かず
「大丈夫、大丈夫、ごめんね。」と言って必死に俺について来てくれるのであった。
やはりこれは普通の女の子では出来ないことであると思った。
この日の夜は薬が効き体調が良くなり、夕食の後外に出て星を眺めた。
以前ボリビアの星空が見たいと言われたことがあり、この太陽の島はボリビアで一番星が奇麗だと言われていて
是非ともその星空を見せてあげたかった。
夜空を見上げると、そこには無数の星と天の川があった。
彼女は天の川を見たのがはじめてだったらしくとても感動していた。
その喜ぶ顔をみていると、病気に苦しみながらもここまで連れてきて良かったと思えるのだった。
しばらく空を眺めていると、星が何個か流れた。
彼女が願い事する暇もなくあっという間に星は流れてしまったが、流れ星を見せることが出来て俺も嬉しかった。
写真 ： ティティカカ湖へ向う途中でバスに乗り込むところ。