9thNight Endless Nightmare
-1-
藤沢の命は、辛うじてこの世に留まっていた。 沢木と同じ病院に担ぎ込まれた藤沢には、葵が付き添っている。 …案外死ぬか生きるかの境目なんて、そんなものかもしれない。 沢木にはいなかったからなぁ…。
そうそう、藤沢の事故の話は、もう横浜中の知るところになっているようだ。 あの後警察が来る前に現場から逃走した、翔が相手だった事も。 今やBLRの赤碕と言えば、死神とか悪魔とかいうのが一般的な認識みたいだ。 それなりに相応しい評価とも言えなくもないけど。
それは置いといて、翔は【声】の正体を突き止めるべく、箱根行きを決めていた。 織田が藤沢に話さなかった、横浜最速伝説の秘密。それを聞けば、或いは何かわかるかもしれない。 とか言いながら、本牧埠頭に顔を出す翔。まだ石川兄弟を気にしているのか?
石川弟「…………赤碕!! オレと走ってくれ…………」
はあ?話がよく見えないんだが…。
石川弟「オレ……おまえに話さなきゃならないことがある……」
話せばいいじゃん。なぜ走る?
石川弟「…………オレ、間違ってた……。オレ、根っから純情だから……。 『カタハ』の兄貴にはついていけない!兄貴のやってる事は、オレ、理解できない……」
根っから純情かどうかはともかくとして、ヤツの行為が理解できないのは人類共通だろう。
翔「おまえたち……………いったい何をしてきた? おまえたちの『ショータイム』…… それがすべてのはじまりだった。そうじゃないのか……?」
石川弟「見ろよ……ここ本牧埠頭……オレたちは代々ここをNRのたまり場として受け継いできた。 それが今じゃ……チーム辞めるヤツが多くて……どんどん仲間が減ってるんだ」
いい事じゃないか。 本来埠頭というのは、海陸輸送の転換が行なわれる港湾施設の中でも、最も重要な部分だ。 走り屋のたまり場にするために、莫大な費用をかけて建設したわけではない。
翔「……今のこの事態がおまえたちのショータイムの結果なんだろ……?」
石川弟「ショータイム…………最初はただの兄貴の口癖だった……。 兄貴は今夜、HIGHWEY AREAの『関東最速UNIT』の結成会に参加してる。 今なら……おまえに話せる……」
ああ…そういや以前健三が、石川弟から何か聞いたとか話していたような……。 …で、だからどうしてBattleしなけりゃならないんだ!? しかもヤツと同じCVCで…。 なんか…もう馬鹿馬鹿しくなってきた。ちょうどいいや、私は少し休ませてもらう。 勝手にやってくれ。
|