矢倉の基本といえる図１の局面から▲６八角とするのが森下システムの第一歩。
森下システムの良さを簡単にいうと後手の動きを見てから、右の銀を▲３七銀〜▲４六銀、▲４六歩〜▲４七銀と指し手を決めることができるところ。
優秀な森下システムなのだが雀刺しの破壊力の前にあまり指されなくなっている。ここでは天敵といえる後手が雀刺しにする形を考えていきたい。
逆にいえば雀刺し対策がしっかりすれば森下システムも復活するといえる。
対雀刺し
図１の局面から▲６八角△９四歩▲７九玉△９五歩と進んだ図２が対雀刺しの基本図といえる。
私なら図２の局面では▲３八飛として郷田システムの展開にしてしまう。
以下、後手が雀刺しにする場合の指し方は郷田システムのところで述べた。
ここではそれ以外の展開を取り上げる。
図２の局面から 雀刺しに対して考えられる先手の構想としては
１．▲３七銀として▲４六銀から中央で動く構想
２．▲８八銀と受ける構想
３．▲８八玉と平凡に指す構想
が考えられる。
個人的な意見としては １．は先手の方が指しやすくなる ２．は まあまあ先手も指せる ３．は先手がまずくなるといったところ。
具体的に考えてみよう。
１．▲３七銀として▲４六銀から中央で動く構想
後手が△９四歩〜△９五歩と端をねらってきた手に対して▲３七銀とあがる（図３）。
図３の局面で△６四角ならば▲４六銀・▲３七桂戦法になるだろう。
そうなると後手は森内流にする展開が予想される。
図３の局面から後手が雀刺しにすると図３から△９三香▲４六銀△９二飛▲５五歩△同歩▲同銀で図４の局面。
図４の局面からはすぐに△９六歩と攻める手と△７三桂と力をためる手が考えられる。
△９六歩ならば以下
▲９六同歩△同香▲同香△同飛▲５三歩△同角▲５四香
で図５の局面。
図５の局面から
△９八歩▲８八銀△９九歩成▲５三香成△同銀▲９七歩
△８九と▲同玉△９二飛▲５四歩△６二銀▲８三角で図６。
図６の局面は 角と桂香の交換で先手の駒得、手番も実質先手なので先手がやれる。
図４の局面に戻って後手がすぐに攻めず△７三桂と力をためた図７の局面。
図７の局面では▲８六銀でも▲８八銀でも▲５五銀の存在が大きく先手がやれる。
以上のように森下システムに対して後手が△９四歩〜△９五歩とくれば先手は▲３七銀〜▲４六銀〜▲５五歩 として先手が悪くはならない。
ただし先にも述べたとうり▲３七銀とあがった手（図３）に対して△６四角ならば森内流は避けられない。
２．▲８八銀と受ける構想
図２の局面から
▲３七銀△９三香▲４六銀△９二飛のとき
▲５五歩としないで▲８八銀と用心する展も開考えられる（図８）。
図８の局面のように▲８八銀とすればとりあえずはつぶされることはない。
図８の局面からは
△７三桂▲３七桂△４三金となりお互い玉を囲い合う展開となり形勢は五分。
なお△７三桂▲３七桂△８五桂と攻めてきても▲８六歩で受かる（図９）。
図９の局面から
△９七桂成▲同銀△９六歩▲８八銀△８五歩▲同歩
△９七歩成▲同桂△９六歩▲９八歩△９七歩成▲同歩
△同香成▲同香△同角成▲９五香である（図１０）。
図１０の局面は 両取りがかかって先手良し。
３．▲８八玉と平凡に指す構想
図２の局面から▲８八玉は先手がまずそうである。
以下、△７三桂▲２六歩△９三香▲２五歩△９二飛
▲３七銀△８五桂▲８六銀△９七桂成▲同銀△９六歩
で図１１の局面。
図１１の局面では▲９六同銀と▲８六銀が考えられる。
▲９六同銀ならば以下
△同香▲同香△同飛▲９九香△９七歩▲同香
△同角成▲同桂△７一香で図１２の局面。
図１２の局面は次の△７二香打や△７五歩がきびしいので先手まずい。
先手の▲２六歩、▲２五歩、▲３七銀の３手を
▲３八飛、▲５七銀、▲６五歩にしておけば▲６六銀の形で受かることは郷田システムのところで述べた（ただし △４三金右がはいってないので１手遅れる）。
▲８六銀と図１１の局面でかわしたらどうなるだろう（図１３）。
図１３の局面から
△８五歩▲８四桂△８二飛▲８五銀△９七歩成▲同香
△同香成▲同桂△９六歩▲同銀△８四飛▲８六香
△９四飛▲９五歩△９三飛▲８二香成△６四歩
で図１４の局面。
図１４の局面で先手もやれないこともなさそうだが次の△６五歩から△７五歩がきびしい。
以上のように「森下システムVS雀刺し」は先手が平凡に玉を囲っているとまずそう。
対策を立てれば先手良しの展開がいくつかありそれほど雀刺しを恐れることはない。
プロ間での流行も現在主流の▲４六銀・３七桂戦法から森下システムへ再び戻ることは十分考えられる。