6/19 村井教授の「タイムマシン」「テレポーテーション」試案の段


 6月19日の日本経済新聞では、「21世紀夢の技術展」という特集がありました。この企画は、21世紀どのような 技術が実現して欲しいかということをビジネスマンのみなさまにアンケートしてその結果について 記事にする一方、企業経営者や研究者のみなさまに「実現して欲しい3大技術」をあげて答えてもらうというものでした。 おもに上げられたものとしては量子コンピュータなどの新しいコンピュータ技術、環境保護、高性能 ロボットなどの実現などでした。

 しかしここに「タイムマシン」や「テレポーテーション」の実現を上げ、しかもそれぞれ2010年、2015年には 試作機を実現できると答えたお方がいらっしゃった。知る人ぞ知る日本におけるインターネットの第一人者 、慶應義塾大学の村井純教授です。荒唐無稽というなかれ、村井教授はただ実現して欲しいなあと上げた だけでなく、その具体的な方法についてお答えになられました。

 これから将来、世の中のありとあらゆる所にコンピュータが埋め込まれることになれば、その周囲にある 画像が蓄積されることになる。これをインターネット経由である人についての情報を収集、分析すれば、 その人が過去に何をしていたかということが手に取るように分かるのです。これが村井教授の「タイムマシン」 です。

これを聞いてがっかりなされた読者の方は多いかもしれません。「なんだ、タイムマシンというから自分が 過去や未来に自由に行くことのできる装置かと思ったら、単に過去の情報をえられるだけのものジャンかよ」 全く、その通りです。

それでは、もう一つのテレポーテーションはどうでしょうか?村井教授によると、物の形や成分を分析する 装置と、分析結果から物質を合成する装置をインターネットを繋ぐ。こうすることによって相手先へ 元のものと全く同じ物質を「転送」することができる。これが村井教授の試案である。村井教授は形質 情報を送って粘土で形を再現する技術は既に成立しており、後は中身をどう送り届けるかということ が問題であるとしている。 また情報量の肥大化が予想されるため、計算式によって情報を圧縮するという具体的な案を出されておられる。

この話を聞いた読者の方の中には「なんだ、それじゃあ物を別のところに転送するんじゃなくて、単に 複製を作るだけじゃないか。だまされた」とおっしゃられる方もおられるかもしれません。

ここで大切なのは、村井教授のタイムマシンは、リアル(現実世界)で流れた時間をバーチャル空間で巻き戻す という考え方であり、インターネットを通して世界じゅうのどんな時間でも巻き戻して視聴すること ができるという点がその特長であります。村井教授は何もリアルな空間で自分が時間を超越するタイムマシン を実現しようというのではなく、自分をバーチャルな空間に置いて、バーチャル空間で時間を超えるという ものであることです。

もう一つのテレポーテーションのほうは、圧縮した情報を相手方に送り届けて、相手方のほうで復元して もらうというコンピュータネットワークの基本的な考え方を踏襲しています。すなわち村井教授の提案する テレポーテーションとは物体を直接転送するのではなく、物体の情報をデジタル化して送信し、復元する というデジタル情報処理によって実現することであります。

少なくとも言えることは、村井教授は自分が時間を超えるとか、唯一無二のある物がリアルな空間を越えて 転送されるとか、そういうことを考えているのではないということ、すなわちリアルワールドにこだわっていない ということであります。はっきり言えば村井教授はすでにインターネットが形づくるバーチャルスペースの 住人であり、その考え方はデジタル的であるということでしょう。

今回の企画では他にも多くの方がみずからの意見を述べられておられました。その中にタイムマシンの 実現は21世紀中には不可能と述べられる方がいらっしゃっただけに、村井教授の意見は余計に際立って 見えたものでした。でも実際のところは、不可能とおっしゃられた方はあくまで「リアル」空間において 不可能だとお考えの様子だということであり、村井教授は「バーチャル」空間において実際に可能だとお考え だということであろうということでありました。

最後に一つ。タイムマシンの21世紀中の実現は不可能とおっしゃられた方がおっしゃられた言葉を紹介したい。

「2030年の社会は情報技術革命が進み、人同士が直接会って話すことは少なくなり、バーチャル(仮想的)な 世界が、生活により深く入りこんでいると思う人がいるかもしれない。しかし、私は現在のバーチャル全盛の 反動として、未来の人々は人と会うことをより強く求めるようになると思う。」

いかにもリアルワールドに生きていらっしゃる方らしいご意見と思われます。しかし、この定義が成り立つのは、 人間の生存はリアルワールドに依存していて、ネット上のコミュニケーションやテレビゲームが形づくるバーチャル ワールドは、あくまでもリアルワールドにおける人間の機能を補完するものであるという考え方に依存している のではないかと思われます。

しかし、この主:リアルワールド ⇔ 従:バーチャルワールドという関係がいつまでも続くかどうかは私にも 自信がありません。もしも、バーチャルワールドとリアルワールドの主従の関係が逆転した時(既に避けがたく そうなりつつあると私には思われる)、ともすればアメリカのドットコム野郎のごとく、家から一歩も出ることなく 生活費を得るための仕事を行い、必要なものは全てオンラインショッピングで購入し、インターネットを通じて 友人関係を築き上げる人が決して珍しくないものになるかもしれません。

本題に戻って、日経の企画でご意見を賜った方々のうち、村井教授を除く7人は間違いなくリアルワールド に存在する方であることは明らかであると思われました。それだけに、村井教授の一見して奇想天外な 意見は、ネット社会に足を突っ込みつつある私にとっては、より説得力のあるものだったのかもしれません。

以上

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