『美味しんぼ』全盛期における海原雄山
素っ気ない態度をとりながら実は士郎にメロメロという海原の方向性が決まった第5集以降から、究極VS至高の対決が始まる第15集までの間において、海原は士郎を叩きのめしながらも(ときどき士郎にしてやられたりするが)至るところで士郎に助け船を出して、士郎に対するゆがんだ熱愛ぶりを見せつけてくれる。ここではそうした海原の臭さがにじみ出ているエピソードを考察する。
第9集/第1話 「ハンバーガーの要素」
美食倶楽部を辞めてハンバーガー・ショップを開くことになった宇田が、うまいハンバーガーを作るために山岡の力を借りる話である。
海原は「失せろ!愚か者に興味はない!二度と私の前に姿をさらすなっ!」(P.10)と大激怒する。しかし開店前日になると、わざわざ宇田が去年つけたピクルスを携えて来店し「こんなものは美食倶楽部の客の口に合わん、漬けたおまえが責任とって始末しろ」(P.45)などと発言した。実は開店祝いとして持ってきたのであった。
またこの回では『美味しんぼ』のキャラクターの中でも絶大な人気を誇る美食倶楽部調理場主任・中川得夫が良い味をだしており、中川ファン注目のエピソードであるといえる。
第10集/第1話 「横綱の好物」
大原社主が思い違いをして恥をかきそうになるところを、海原が救うお話である。
話の中で海原は「満座の席の中で大原社主を笑い倒して、赤っ恥を書かせてやろう」(P.11)と言って山岡に注意を促した。この言葉によって山岡は大原社主の間違いに気づくことになる。最後の方になると海原はご満悦の表情を見せてくれ(P.23)、海原ファンの心を震わせる。
第13集/第1話 「激闘鯨合戦」
悪徳環境保護団体に苦戦する山岡に、海原が助け船を出してやるお話である。山岡の方は「くそ・・・またしても雄山の掌の上で・・・・・・」(P.104)と悔しそうな表情だが、海原は息子の役に立ててうれしのか、思いっきり笑みを浮かべる(P104)。
これまで見てきたような海原の人情性は「究極VS至高」が始まると一気にボルテージを上げ始め、海原はついに「臭すぎて爆笑」型キャラクターの頂点を極めることになる。