2002年のイチローを分析する
アメリカ大リーグの長いシーズンが終わった。
イチローは2年連続の首位打者を逃し、マリナーズもプレーオフに進めなかった。
リーグ4位の打率をけなすつもりはないが、昨年より3分ちかくも成績を落としたことが、つい気になってしまう。
試合 | 打数 | 得点 | 安打 | 2B | 3B | HR | 打点 | 四球 | 三振 | 打率 | 長打率 | 出塁率 | 盗塁 | 盗塁死 | |
イチロー2002 | 157 | 647 | 111 | 208 | 27 | 8 | 8 | 51 | 68 | 62 | .321 | .425 | .388 | 31 | 15 |
2001 | 157 | 692 | 127 | 242 | 34 | 8 | 8 | 69 | 30 | 53 | .350 | .457 | .381 | 56 | 14 |
イチロー本人は、取材に対し、「今年もベストを尽くした。打撃の感覚に狂いはない」と答えていたようだ。
その言葉が真実ならば、打率ダウンの原因は、彼の前を打つ打者にあるのではないか。
イチローが打席に立ったとき、塁上に走者がいれば、ヒットゾーンは広がる。
走者を牽制するために、内野手が塁を離れることができず、塁間が大きく空くからだ。
しかし今年は、彼の前の打者が出塁できず、ヒットゾーンが狭まったのではないだろうか。
ぼくはそう仮説を立て、検証を始めた。
2002年 | ← | 2001年 | |||
割合 | 打率 | 割合 | 打率 | ||
走者なし | 66.62% | 0.332 | 65.61% | 0.313 | |
走者あり | 33.38% | 0.301 | 34.39% | 0.420 | |
1塁 | 14.99% | 0.227 | 15.77% | 0.382 | |
2塁 | 4.48% | 0.483 | 8.96% | 0.448 | |
3塁 | 1.39% | 0.222 | 1.85% | 0.250 | |
1,2塁 | 6.49% | 0.310 | 4.48% | 0.448 | |
1,3塁 | 2.63% | 0.353 | 2.78% | 0.556 | |
2,3塁 | 1.08% | 0.143 | 1.24% | 0.375 | |
満塁 | 2.32% | 0.467 | 1.70% | 0.545 |
2002年、イチローの全打数のうち、塁上にランナーがいたときの割合は、33.38%で、無走者のときが66.62%である。
なんとこの比率は、昨年とさほど変わらないではないか。
これでは打率ダウンの原因を、前の打者に求めるわけにはいかない。
それどころか今年のイチローは、ランナーがいたときのほうが打率が悪い。
走者なしなら打率.332だが、走者ありだとかろうじて3割。
前の打者に責任がないなら、悪いのは後ろの打者だということで、イチローに続く主力打者の成績を調べた。
2002年 | ← | 2001年 | |||||
打率 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 本塁打 | 打点 | ||
ブーン | 0.278 | 24 | 107 | 0.331 | 37 | 141 | |
マルティネス | 0.277 | 15 | 59 | 0.306 | 23 | 116 | |
キャメロン | 0.239 | 25 | 80 | 0.267 | 25 | 110 | |
オルルド | 0.300 | 22 | 102 | 0.302 | 21 | 95 |
巧打者オルルドをのぞいて、軒並み成績が悪化してしまった。
イチロー後の打者の不振により、敵投手はピンチであえてイチローと勝負する必要がなくなった。
四球もやむなしという、厳しい攻め方をするようになった。
その結果が打率ダウンなのではないだろうか。
2001年、ランナー2塁のときの打数は、8.96%。
それが今年は4.48%と半減した。
打数が減ったわけは、四球が多くなったためである。
昨年、ランナー2塁のときの四球は6個。
今年は17個とおよそ3倍になった。
しかもそのうち14個が敬遠四球だった。
イチローの今シーズン合計の敬遠四球は27個で、ア・リーグ最多。
まさに最も恐れられる打者という証明である。
敬遠豆知識
今年のナ・リーグの最多敬遠は、ボンズで68個。
これは大リーグ新記録。
今までの記録が45個だったのだから、いやはやとんでもない・・・