検証!新ストライクゾーン
今季からストライクゾーンの高目が広がった。
公認野球規則によると、「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間」がストライクゾーン。
しかし、実際の試合での上限は、ルールよりも低かった。
これをルール通りにしようというのが、今回の改正である。
試合時間の短縮、国際的ストライクゾーンへの対応が、改正の目的らしい。
従来よりもボール2個から3個分(約15〜20cm)高い球もストライクになるので、投手有利になると世間はうわさした。
シーズンが終わった今、成績を見ながら「新ストライクゾーン」を検証したい。
まずは、1997〜2002年の防御率を比較する。(手元にあるのが、この6年間のデータだけなので・・・)
セ・リーグ、パ・リーグとも防御率はよくなった。
過去2年、極端な打高投低だったパ・リーグの変化が著しい。
2000年のパで、チーム防御率が3点台だったのは西武だけ。
昨年は西武とロッテの2チーム。
今年は6球団すべてが3点台以内におさまった。
パ・リーグでは1975年以来の出来事である。
打率(被打率といってもいいが)も低くなった。
ただし、セの1997年は.258、今年は.257なので、そう驚くほどの落ち込みとも言えなさそう。
今季は、横浜、オリックスの歴史的貧打線が足をひっぱったからだ。
もっとも注目すべきは、1試合(9イニング)あたりのフォアボールの数だろう。
今年の四球数は、両リーグとも前年の70%ほど。
4.00個にせまる勢いだったパは、ここ6年間ではじめて3.00を切り、2.73を記録した。
ついでに個人の実際の与四球数も見たくなる。
昨年の最多は、セが井川(阪神)の89個、パは松坂(西武)の117個。
それが、ホッジス(ヤクルト)67個、シールバック(日本ハム)66個と今年はずいぶんおとなしくなった。
個人の9回あたりの与四球というと、ヤーナル(オリックス)で比較するとわかりやすい。
昨年、ぼくはヤーナルにノーコン王の称号を与えた。
9回あたり5.77もの四球を出したからだ。
ところが今季は3.40と大幅に少なくなった。
ノーコン王2位だった前川(近鉄)は、5.44→3.49。
具(オリックス)は5.06→2.89。
松坂は、4.38→1.84。
井川は4.17→2.28。
荒れ球の面々が軒並み与四球を減らした。
むろん、ストライクゾーンだけのせいにするのは失礼だが・・・
出塁率(もしくは被出塁率)も大幅ダウン。
打率と四球がダウンしたのだから、当たり前だ。
まるで日本経済のようなグラフばかりだったが、奪三振は景気がいい。
フォークボール全盛のせいか、あるいは外国人選手の増加のせいか、近年、奪三振率は右肩上がりだ。
たとえば、2000年になるまで、チーム奪三振が1000を超えたのは、たった4チーム。
1997年の横浜が1015奪三振。
1989年の広島と1993年の巨人が1006奪三振。
1995年のロッテが1004奪三振。
それを、2000年になると、巨人が1039個であっさり塗りかえた。
2001年も中日と西武が1000奪三振以上を記録。
さらに今年は、巨人が1087個で日本記録を更新した。
西武も1074奪三振でパ・リーグ記録。
そのほか、広島、ヤクルト、中日、近鉄の合計6チームが1000の大台を突破した。
意外なことに、新ストライクゾーンはホームランに影響を与えなかったようだ。
パ・リーグは狂乱の2001年よりは減ったが、ここ6年間では2番目の多さ。
セの本塁打も昨年より増加している。
さて、以上6つの項目を見てきたが、どうだろうか。
ホームラン数は変わらずに四球が減るなら、スピーディで楽しいと思う人もいるだろう。
あるいは、こんな意見もあるだろう。
投手の最も重要な能力は制球力で、打者のは選球眼である。
これほどストライクゾーンが広くては、その能力の見せ場がない。
ただ投げて打つだけの大味な試合になってしまうと。